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ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールがある朝、なにか不安な夢から目を覚ますと、 自分がベッドで巨大な虫に変わっていることに気づいた……なんてことは無かった。 ルイズは普通に目を覚ました。 虫になっていなかったし、不安な夢を見てさえいない。 ただ、普通に目を覚ました。 そしていつもように起き上がろうとして気がついた。 毛布が動かないのだ。まるでベッドに直接縫い付けられているかのようだ。 「どうなってるのよもう!」 何がどうなっているのか分からないがとりあえずルイズは毛布を跳ね除けるためジタバタしてみることにした。 ジタバタ! ジタバタ! ジタバタ! ジタバタ! ジタバタ。 ジタバタ。 ジタバタ。 ジタバタ…… ジタバタ…… ジタバタ…… ジタバ…… ジタ…… ジ…… …… 「ハァーハァーハァー……」 毛布は跳ね除けれなかった。 いくらジタバタしても体力を消費するばかりで無駄だった。 仕方ないので毛布から抜け出そうと試みる。 毛布がはぐれなくてもそれぐらいならできるだろう。 いざ実践しようとしようとしたその瞬間、都合よくドアがノックされた。 ルイズは助かったと思った。 ツェルプストー以外ならこの際誰でもいいから助けてほしかったのだ。 返事をしようとする口を開くが、ノックの相手はルイズの返事も待たずにドアを開けた。 ルイズはその行為に驚き、さらに入ってきた者にも驚いた。 「ミスタ・コルベール!?」 部屋に入ってきたのは先生のコルベールだった。 「おお、起きたのかい。ミス・ヴァリエール」 コルベールはそういいながらルイズが寝ているベッドに近づいてくる。 「なんでここ……あっ!」 思い出した! なんでわたしはベッドなんかで寝ているのだろうか? わたしはさっきまで儀式をするため草原にいたはずなのに! 「その顔を見ると、どうやら状況が理解できずに混乱しているようだね」 コルベールの言葉に引き戻されまた彼に注意が向く。 コルベールはルイズのベッドから約2メイルほど離れたところに立っていた。 「まず説明しておくと、ここは君の部屋だ。儀式からすでに8時間ほど経っているよ」 「8時間!?」 「そう。その間君は気絶していたんだ。気絶する前のことは思い出せるかね?」 「気絶するまえ……たしか使い魔を召喚しようとして」 いつもみたいに、違う。 いつもより物凄い爆発が起きて、土煙の中に影が見えたから土煙の中に突っ込んでそのまま使い魔をさがして、 「それから……」 ……使い魔はいくら探してもいなかったんだった。 そして、そして何故かわたしが自分自身を使い魔にしちゃって、みんなに嗤われて、 「……そうよ。みんながたしか、水平に落ちて行ったのよ!でも、あれ?なんで水平に落ちるだんて言ってるのかしら? そんなことありえないのに。夢でもあるまいし」 「ふむ、ちゃんと覚えているようだね」 「えっ?」 「君が見たものは夢ではないよ。私たちは確かに水平に落ちていったのさ。紛れも無い現実さ」 「うそ」 「嘘じゃない。本当のことだ。みんなが約200メイルほど水平に落ちたよ。君以外のね」 そうだ。みんなが落ちていっているとき、わたしはその場に立ってその光景を見ていた。 そしてそのあと突然目の前が真っ暗になったんだっけ。 「落ちるのが止んだあと、すぐに君のところに行ってみたんだ。そしたら気絶していてね」 「えっと、ちょっと待ってください。それは思い出しましたし、わかりました」 たしかにどうなったかは分かった。 「でも、どうしてこんな状況になっているんですか?」 毛布から出られない。 一体全体その話しからどうしてこんな状況につながるのか理解できない。 するとコルベールは、そういえば、というような顔をして杖を取り出す。 そして呪文を短く呟き杖をベッドに向けて振る。 すると毛布が勝手に自分からはなれ、上に向かって落ちていって天蓋に張り付いた。 「は?」 「ベッドに固定しておかないとそうなってしまうんだよ」 「え?」 「今君の半径約2メイルは物が地面に落ちる力がおかしいんだ」 ルイズにはコルベールの言葉が聞こえていなかった。 ただ上を向いて天蓋に落ちた毛布を見詰めていた。
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