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DIOが使い魔!?-30」を以下のとおり復元します。
トリステインの城下町を、ルイズと、それに続いてDIOが歩いていた。 
白い石造りの街は、それなりに綺麗ではあったが、魔法学院に比べると、質素ななりの人間の方が多い。 
道端で声を張り上げて、様々なものを売る商人達の姿や、老若男女が取り混ぜ歩いている様子は、元の世界のエジプトを思わせ、DIOはほんの少しだけ感慨に耽った。 
町の様子を見る限りでは、この世界の文化レベルは、DIOが若かった頃と同じか、それ以下らしい。 
少なくとも車は走っていないようだ。 

「『ブルドンネ街』。トリステインで一番大きな通りよ」 
「…狭いな」 
道幅は5メイルもなく、大勢の人が行き来しているので、歩くのも一苦労だ。 
道行く人と時々肩をぶつからせ、DIOはもどかしそうに呟いた。 

「狭いって…文句をいわれても困るわ。 
そう言えば、あなたの世界はどうだったの?」 
ルイズはトリステイン自慢の城下町に文句を付けられて、眉をひそめたが、ふと思いついたのか、尋ねてみた。 

「道はここよりもだいぶ広いが、その分だけ人間が多い。 
人口密度でいえば、寧ろ私の世界の方が高いかもな」 
「は?でもあんたさっき狭いって……」

「別に…人が多いからといって、そんな事は通行には関係ない…」 
「ふぅ~ん?」 
含みを持たせたようなDIOの言葉に、ルイズは首を傾げたが、どうでもよかったので直ぐに再び前を向いた。 
ルイズの話によると、この界隈には、魔法を使うスリが出るらしい。 
魔法を使うのは貴族だけなのではないのかとDIOが聞くと、メイジの全てが貴族というわけではないらしい。 
いろいろな事情で、勘当されたり家を捨てたりした貴族の次男や三男坊などが、身をやつして傭兵や犯罪者になる例は、少なくないのだそうだ。 
つらつらと貴族のお家事情を話していたルイズだったが、曲がり角で立ち止まり、さらに狭い路地裏へと入っていった。 
悪臭が漂い、ゴミや汚物が道端に転がっていて、どうみても貴族はお呼びではない所だ。 
DIOは顔をしかめた。 
「あっ、あったわ」 
ルイズは四辻に出て、剣の形をした看板が下がっている店を見つけると、ルイズはうれしそうに呟いた。 
そこがどうやら武器屋であるらしかった。 
店にはいると、昼間だというのに薄暗く、ランプの明かりが灯っていた。 
最近どうも日光が苦手になっているルイズには、かえって有り難かった。

壁や棚に、所狭しと剣や槍が並べられ、甲冑も飾ってあった。 
店の奥でパイプを加えていたオヤジが、入ってきたルイズを胡散臭げに見つめたが、紐タイに留めに描かれた貴族の印に気づくと、パイプをはなし、ドスの利いた声を出した。 

「旦那。貴族の旦那。うちはまっとうな商売してまさあ。お上に目を付けられるようなことなんか、これっぽちもありませんや」 
「客よ」 
ルイズは腕を組んだ。 

「こりゃおったまげた。貴族が剣を!おったまげた!」 
からかうような口調でいうオヤジに、ルイズはムッとした。 

「どうしてかしら?」 
「いえ、お嬢様。坊主は聖具を振る。兵隊は剣を振る。貴族は杖を振る。そして陛下はバルコニーからお手をお振りになると、相場は決まっておりますんで…」 
「あら、振って欲しいのかしら?」 
ルイズは懐から杖をちらつかせた。 

「め、滅相もございませんで…」 
オヤジは取り繕うように言った。 
ルイズは杖を仕舞って言った。 

「使うのは私じゃなくて、使い魔よ」 
「忘れておりました。昨今は貴族の使い魔も、剣を振るようで」 
オヤジは商売っ気と、ルイズの顔色を伺うように、お愛想を言ってから、DIOをじろりと見た。

DIOがその赤い眼で見返すと、オヤジは怯えたように、慌てて目をそらした。 

「け、剣をお使いになるのは…この方で?」 
ルイズは首を振った。 

「使うのは確かにそいつだけど、買うのは剣じゃなくて、ナイフよ。」 
オヤジはばつが悪そうにうなった。 

「はぁ…申し訳ありませんが、今ナイフは数があまりなくて…10本ばかりしかありませんで、へぇ」 
「あら…そうなの? 
困ったわね…どうしようかしら」 
ルイズは予想外の返答に閉口した。 
ここで100本ほどまとめ買いするつもりだったのだ。 
早くも目的の一つが頓挫したことになる。 
どうしよう…と悩むルイズに、オヤジが提案した。 

「では、ナイフに加えて、剣も一本見繕うというのはどうでしょうか? 
値段は勉強しておきますが…」 
値段もまけてもらえると聞いて、ルイズはオヤジの提案を受け入れることにした。 

「そうね、別に手持ち無沙汰って訳じゃないから、そうするわ。私は剣のことなんかわからないから、適当に選んでちょうだい。 
値段はどうでもいいから」 
オヤジはいそいそと奥の倉庫に消えた。 
彼は2人に聞こえないように、小声で呟いた。

「やれやれ、どちらもどちらで、おっかねぇ。 
こりゃ、早めにお帰り願った方が吉ってやつだ」 
しかし、さっきの口振りからすると、随分と羽振りは良いようである。 
オヤジは商売根性剥き出しに、ぼったくってみることにした。 
立派な剣を、油布で拭きながら、オヤジは現れた。 

「これなんか、いかがです?」 
1・5メイルはあろうかという、見事な大剣だった。 
所々に宝石が散りばめられていて、鏡のように諸刃の刀身が光っている。 
頑丈そうだ。 

「店一番の業物でさ。 
貴族のお供をさせるなら、このぐらいは腰から下げて欲しいものですな。 
やっこさんの体格なら、ピッタリですぜ」 
DIOは興味がないのか、店の中を見ているだけなので、かわりにルイズが剣を見た。 
ルイズはこれで良いだろうと思った。 
店一番とオヤジが太鼓判を押したのも気に入った。 
おそらくソレは本当だろう。 
…後は、向こうがどれだけふっかけてくるかである。 
(…気づいてるのよ、このスカタン!) 
ルイズは心の中で呟いた。 
オヤジの愛想笑いの下にある、ドロドロした商売根性を、ルイズは敏感に感じていた。 
ルイズはそんな事は全く臆面にも出さずに、値段を聞いた。 

「おいくら?」

「何せこいつを鍛えたのは、かの高名なゲルマニアの錬金魔術師シュペー卿で。 
魔法がかかっておりますから、鉄だって一刀両断でさ。 
ごらんなさい、ここに名前が刻まれているでしょう? 
おやすかぁありませんぜ」 
質問に質問で返してくるオヤジにいらつきながらも、ルイズはどうでもよさげに言い放った。 

「お・い・く・ら?」 
オヤジはムッとしつつも値段を告げた。 

「エキュー金貨で二千。新金貨なら三千」 
(そらきた!) 
ルイズは心の中でペッと唾を吐いた。 
エキュー金貨で二千? 
庭付きの豪邸が買える額だ。 
いくらゲルマニアのシュペー卿だかカペー朝だかが鍛えたといっても、そこまでするはずがない。 
というか、そもそもこんなボロ店が、そんな額の剣を仕入れられる訳がない。 
明らかにぼったくりだ。 
ルイズはふぅとため息をつくと、姉のカトレアが言っていたことを思い返した。

---カトレアから--- 
こういった庶民が利用する店では、貴族の常識はまったく通用しないわ……というのも、値段がすごくいい加減なの。 
日常の値打ちを知らない貴族なんかは、いったいいくらなのか見当もつかいから、すごくカモられてしまうの。 
…でもね、ルイズ。 
その世界では、カモることは悪いことじゃないのよ。 
だまされて、買ってしまう人がヌケサクなの。 
ここで、買い物の仕方を解説するわ。 
例えば---この場合、私はお見通しだよん!…という態度をとって 

「エキュー金貨で二千?カッカッカッカバカにしちゃあいかんよ君ィー。 
高い高いー!」 
…と、大声で笑うの。 
すると 

「いくらなら買うね?」…と、客に決めさせようと探ってくるわ…。 

「ナイフ込みで、五百エキュー金貨にしなさい!」 
自分でもこんなに安く言っちやって悪いなぁ~~というくらいの値を言う。 
--すると 

「オッほっほっほっほっほ~っ」 
本気(マジ)~~? 
常識あんの~~?と、人を小バカにした態度で… 
「そんな値で売ってたら、わたしの家族全員飢え死にだもんねーーっ!」 
ギィーッと…首をカッ切る真似をしてくるの…。 
でもね、ルイズ…ここで気負けしちゃダメよ。

「そ。じゃあ買うのやめたわ」 
帰るマネをしてみましょう。 

「O.K.フレンド。わたし貴族に親切ね。 
ナイフ込みで、千七百エキューにするよ」 
…といって引き止めてくるわ。 

「七百エキューにしなさいよ」 
---値段交渉開始ーッ!---- 
「千六百!」 
「九百!」 
「千四百!」 
「九百五十!」 
…… 
「「千百五十!」」 

「千百五十!買ったッ!」やったーっ! 
四割以上まけてやったわ! 
ざまーみろ!モーケタモーケタ!(ニコニコ) 
………と思っていると 

「バイバイサンキューねっ!(いつもは千百で売ってるもんねベロベロベー)」 
-------- 
「……………………… 
……やれやれだな」 
DIOの呆れた呟きは、2人に届かないまま、虚空に響いた。 

to be continued……
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