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ディアボロの大冒険Ⅱ-5 - (2007/06/18 (月) 22:04:33) の編集履歴(バックアップ)


ディアボロがシエスタに案内されたのは、食堂の裏にある厨房だった。
コックやメイド達が忙しそうに働く様はディアボロがレクイエムをくらう前に居た世界とあまり変わりはない。
コック長のマルトーに会うと、ディアボロとシエスタは事の次第を説明した。
厨房の隅で待っているディアボロに、シエスタはシチューを持ってきてくれた。
「貴族の方々にお出しする料理の余り物で作ったシチューですが……」
「ありがとう」
こっちに来て初めてのんびりできたディアボロ。
初めての精神休息。が、彼はあまりそれを必要だと感じ無い
そしてシチューを一秒で平らげるディアボロ。
その姿を目を丸くして見ているシエスタとマルトー、あまりの早食いに驚いたようだ。

「美味いな…あのシェフの料理を思い出す」
「ディアボロさんは他の国からいらしたんですか?」
「……遠い所からな、いきなり召喚されただけだ」
「大変ですね……ここはどうですか?いい国ですよね?」
「まだ外に出た事が無いから何とも言えないが……すまない、もう十杯ぐらいお代わりを貰えるか?」
「ええ、いいですよ。でもどうしてご飯抜きにされちゃったんですか?」
「……ちょっと、機嫌が悪かっただけだろうな」
「それは災難ですわね」
「つまり、お前さんはその貴族の機嫌が悪いってだけで、食事を抜かれることになっちまったわけか!?」
「アレが悪いわけでもないが………」
「け! 勝手に人を使い魔にしやがった癖に何が罰だ! 魔法を使えるだけで偉いと思ってんのかあいつ等!」

シエスタとマルトーかなりディアボロに同情したようだった。
特にマルトーは大の貴族嫌いらしく、まだ怒りが覚めやらぬ様子だ。
シエスタとマルトーは可哀想な人を見る目でディアボロを見つめた。
又しても一秒で食べ終えたディアボロは、空になった皿をシエスタに返して二人に礼を言った。

「美味かった……ありがとう」
「それは良かったです。お腹が空いたら又来てください。
 賄い食で良かったら、何時でもお出ししますから」
「ふむ…それはありがたい。だが、タダで食事をもらうわけにもいかない。
 私に何か出来ることは無いか?」
取り敢えず、良い人っぷりを二人にアピールするために手伝いを願い出すディアボロ。
「良いって良いって!たくさん作るんだから、今更一人くらい増えたって大したこたない!」
そのマルトーの言葉に彼は首を振った。
(こう言う古い人間は、こうすれば好意を抱くはずだ)
計算高いディアボロ、かなりの策士である。
「融通の効かん奴だな。まあ、悪くはない」
マルトーは呆れながらもディアボロに好感を抱いたようだった。
正にディアボロの計算通りである。
「でしたら、デザートを運ぶのを手伝ってくれませんか?」
シエスタが提案する。

それにディアボロは頷きかけたが、重大な事に気付いた。

(アイテムが一杯で持てんな……差し障りの無い物だけここに置いて行くか)
どうせ、誰も盗らないだろうと思うが念には念を入れるディアボロ。
「これを預かってもらえないだろうか?私の大切な物なのだ」
気付かれない様、装備している攻撃用に差込んでいたのDISCを一枚抜いて、マルトーに渡した。
「おう任せな!お前さんの物をギろうとする不届き者が居たら、包丁で成敗してやるよ!」
そのセリフにあるシェフから石鹸で撲殺された記憶を思いだしディアボロは苦笑いした

そんなこんなで、ディアボロは今。
片手にデザートの並んだ銀のトレイを持ち、食堂に出ていた。
使用人の制服を薦められたが、ディアボロは着なかった、あの格好に何かの拘りがあるらしい。
デザートを貴族達に配るシエスタに付いて回る間、ディアボロは貴族達から視線を向けられていた。

「何であの平民の変態が居るんだ?」
「平民の変態の考える事なんて俺達には分からないよ」
「それも…そうかぁ?」

そして、ディアボロが配っている途中。
金髪で造花の薔薇をシャツに刺した気障ったらしい貴族が居た。
(髪を三連コロネにすれば、あの裏切り者に少し似るな)
などと、ぼんやりと考えるディアボロ。
その似非ジョルノは周りの友人達と一緒に、誰と付き合っているか、という他愛も無い話に熱中している。
(子供の関心は、場所が違ってもあまり変わらないようだな)

などと、相変わらずぼんやりと考えながらもディアボロはデザートを配る。
シエスタとディアボロがその集団に近づいて行くと、件の似非ジョルノのポケットから何かが転がり出た。
(小瓶か?)

拾おうとしたが、今のディアボロはデザートの並んだトレイを持っているので、アイテムが一杯!それ以上は持てない。

そのまま放置してディアボロはデザートを配り終えようとしたが。
似非ジョルノの周りの友人達が目敏く小瓶に気づいた。

「おやおや!?それはもしや!モンモランシーの作った香水じゃないかギーシュ!?」
「おお!そうだな友人よ!この特徴的な色合いは間違いない!彼女が専用に調合した香水だ!」
「つまり!つまり!ギーシュはモンモンと付き合っているのか!」
「いやいや!違うぞ友人よ!今ギーシュは下級生のケティと付き合っているはずだ!」

「違う違う!!黙れ!静かにしろ喋らないでくれ!」

似非ジョルノ…ギーシュと言う名前らしい。が、慌てて友人達の口を塞ごうとしたその時。
近くの席から茶色のマントをつけた少女が立ち上がり、ギーシュの席にやってきた。
青ざめながら振り向くギーシュ。
「ケ、ケ、ケティ。これ、これは違うんだ」
ケティと呼んだ少女は無表情で、弁解をしようとしたギーシュの頬を思いっきり殴った。
続いて巻き毛の少女がそれに続く、その少女をディアボロは憶えていた。
使い魔がカラフルな蛙だったのが印象に残っていたのだ。
(何時か、あの蛙を食べてみたいものだ……)
と、考えているディアボロの視線の先で、消去法でモンモランシーと言う名前だろうその少女が。
「この嘘吐き!とっとと自殺して地獄に落ちてちょうだい!」
極めつけの絶縁宣言をして去っていく。

食堂に沈黙が流れた。
だが、ディアボロは何事もなかったようにデザートを配っている

「どうしてくれるんだ!? 君のせいで二人のレディの名誉に傷がついた!」

いきなりの罵声が聞こえた。
何事かと視線を声のした方に向けるディアボロ

「すみません!すみません!貴族様お許しください!」
「すみませんですんだら、貴族は要らないんだよ!」

何故かギーシュがシエスタに突っ掛かっている。
(どういうことだ?)
分けの判らない行動にディアボロは一瞬唖然としたが。
すぐに気を取り直して。
(面白い事になりそうだな)
取り敢えず、事の推移を見守る事にした。
怒るギーシュと、謝るシエスタ。
「メイドなんだから、気を効かせて拾ってくれても良いだろう!」
「ごめんなさい…貴族様」
何となしに騒動を見ているディアボロは理解した
(つまり、強引に責任転嫁していると言う事か)

冷めた目でそれを見守るディアボロ。
自分の言葉で自身の感情をヒートアップさせているのか、どんどん言葉の調子が跳ね上がって行くギーシュ
それに対して、シエスタは半泣きを通り越して、マジ泣きに入りそうであった
そして、ギーシュが薔薇の造花の杖を出し構えた。
メイジが杖を出す時は魔法を使う時―――ディアボロは授業でそれを知った。
シエスタも知っていたのだろう、そして、これから自分に何をされるかという事も同時に知る事ができた。
その場で蹲り両手で頭を押さえるシエスタ。
この騒ぎに他の生徒達も集まっていたようだ。
しかし、誰もギーシュのアホな行為を止めようとしない、可哀相なシエスタを助けようともしない。
むしろ見世物を笑いながら見物しているような者達が大多数を占めている。

(私には関係無い、が……恩を売っておくのも良いな)
放置しようと一瞬思ったディアボロだが。
暴虐な貴族の手からシエスタを助ければ、厨房の奴等からかなりの好印象を受けるだろうと打算する。
更に、貴族嫌いのマルトーからは英雄扱いされて毎日豪勢な食事ができるはずだと確信している。
ディアボロはその思考をさっそく行動に移した。

シエスタは泣いていた。
少しだけ視線を上げたが、ギーシュが杖を振り上げていたのを見て再度目を閉じる
だが、いくら時間が経っても何も起きない。
恐る恐るシエスタが目を開けると――――

「そこで止めておけ」

「『ゼロ』のルイズが召喚した平民の変態君じゃないか……邪魔しないでくれたまえ!」
シエスタを守る形でギーシュの前に立つディアボロ
「メイドの泣く姿は、平民の変態君には刺激が強すぎのかい?」
嘲笑を浮かべるギーシュ。
それに対してもディアボロは涼しい顔をしている。

「ふん……便器に吐き出されたタンカスが喚くな。見苦しいぞ?」
その言葉に一瞬でプッツンきたギーシュ。
「いいだろう……いいだろう!まずは君に礼儀を教えてあげた方が良い様だッ!」
そのギーシュの言葉にディアボロは。
ギーシュがディアボロに向けた以上の物凄い嘲りの笑みを浮かべる。

「ククク……笑わせるな。タンカス以下のカスが、私にどんな礼儀を教えると言うんだ?」
「グヌヌヌヌ…!『決闘』だッ!ヴェストリ広場で待っている!準備ができたら来たまえ!逃げるなよ!」
そう言い残したギーシュと友人とその他大勢は大股で食堂を出て、広場の方向へ歩いて行った。

「あ、ありがとうございますディアボロさん!」
喜びの表情を浮かべるシエスタ。
だが、瞬時にさっきよりも暗い表情に切り替わる。
「ですが…関係の無い貴方に迷惑をかけられません……私が行って何とかしてきます」
悲壮な決意を浮かべるシエスタの肩に、優しく言い聞かせるように手を置くディアボロ。
これも吊橋効果を狙ったディアボロの計算である
「お前も災難だったな……それに無関係では無いぞ?あのカスはこの私と決闘したがっている。」
「でも!メイジと決闘をしたら死んじゃいますよ!?」
「何とかなる…心配はするな」
そう短く言い残すと、ディアボロは残された料理を平らげて(その間10秒)食堂を出て行った
朝のハミパDISC発動で学園の地図は頭に入っているディアボロ。彼の足に迷いは無かった。


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