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DIOが使い魔!?-15 - (2007/05/27 (日) 23:03:58) のソース
「………………」 知らない天井だ…。 いや、もちろん知ってる。 トリステイン学院の医務室の天井だ。 室内には誰もいない。 窓カーテンの隙間から、淡い月光が射し込んでいた。 自分に降りかかる光が心地よく、ルイズは左手でシャッとカーテンを開けた。 左手………? ルイズはふと違和感を感じ、自分の体を見た。 何ともなかった。 傷が綺麗サッパリ消えていた。 (………ウソ) 2日や3日で治るケガではなかったはずだ。 本当に嘘みたいだった。自分がさっきまで繰り広げていた大召喚劇は夢だったのだろうか。 ---夢……!? ルイズは我が身をバッと抱いた。 そんなはずはない。 あの時感じた痛みは本物だ。 夢であるはずがない。 自分は間違いなく、あのチンチクリンな触手に串刺しにされたのだ。 チクショウ。 サモン・サーヴァントを行ったのがケチのつき始めだ。 ルイズは自分の運のなさにホトホト呆れ果てていた。 あの使い魔のせいで散々だ。 あの使い魔のせいで…………………………………………使い魔!!! ルイズはベッドから跳ね起きた。 全くなんて事。 ケガに夢に使い魔に……今日の自分は大切なことを忘れっぱなしだ。 こうしてはいられないと、ルイズは医務室から飛び出した。 急いで自分の部屋に向かう。 やけに体が軽かった。 全速力で走っているのに、息一つ切れない。 呼吸をする必要すら感じられない気持ちだった。ルイズは自分が生まれ変わったようなすがすがしい気分に包まれていた。どれもこれもあの使い魔のせいだと決めつけながら、ルイズは自室に到着した。 部屋のドアの前でキュルケが、信じられないという顔でルイズを見た。 スゴい、トリステイン最速記録ではないだろうか---バカなことを考えながらルイズはキュルケに聞いた。 「私の使い魔、どこ?」 「え……?ルイズ…?ウソ、だってアンタ…ケガはどうしたのよ!?」 キュルケは面食らった様子で、なかなか会話がつながらない。 ルイズは地面をダンッと踏んで、さっきよりも勢いを付けて聞いた。 「~~ッッそんなことどうだっていいから!私の使い魔、中にいるの!?」 ルイズの剣幕にキュルケは目を白黒させながら答えた。 「え、えぇ、中で寝てるわよ。私とタバサで見張りしてたけど、ここ2日間はビクとも動いてないわ。ちょっと拍子抜けだけど。ちょうど今タバサと交代しようと思ってたんだけど……」 「わかったわ!ありがと!!」 それだけ聞いて、ルイズはドアに手をかけた。 置き去りにされたキュルケは、どういうことよとボヤきつつ、タバサの部屋に歩いていった。 一息でドアを開けたルイズ。 明かりはカーテンから入る月光だけだ。 真っ先に自分のベッドへ視線を向けた。 なにせ契約だけであれだけ手を焼いた使い魔だ。御尊顔の一つでも拝んでやらねば気が済まない。---が、そこには影も形もなかった。 まったく予想外のことに一瞬思考が停止したが、チラと脇に目をやると・隅の壁に、人影がもたれかかっているのがボンヤリ見えた。 上半身こそ裸だったものの、腕を組んでいる様子は夢のソレそのまんまだった。 顔はよく分からない。 ルイズの背中に冷や汗が流れた。 (ウ、ウソツキぃ……!し、しっかり起きてるじゃないの~~!) キュルケを責めてももう遅い。 それに、今のあいつは私の使い魔なんだから、害はないに違いない…………と思いたい。 ルイズは建設的な考えのもと、ルイズは自分の使い魔に話しかけようとした。 「ち、ちょっと、アンタ!そんな所にいないで、ご主人様の前に来なさいよ!」 少し噛んでしまった、情けない--ルイズは思った。 男は何も言わずに腕組みを解いて、優雅な足取りでこちらに向かってきた。 徐々ににその容姿が明らかになる。 あらためて見ると、やはりデカい。 190サントはあろうその身長、自分と並べてみたら大人と子供の差だ。 そのうえ、男が発する威圧感のせいで、ルイズは実際の身長差以上の圧迫感を感じていた。 その顔は、召喚前のスイカ状態とは些か異なる印象を受けた。 真っ赤に光る目が、穏やかで理性的な光を放っている。 男は、自分の2歩手前でピタリと歩みを止めた。 「よ、よろしい。で、アンタの名前は…」 「君…」 そのままの勢いで続けようとしたルイズの言葉はしかし、男によって遮られた。 自分と相手の立場を考えれば、自分のほうが優先のはずなのだが、ルイズは男の声に、逆らえない何かを感じ、言葉に詰まった。 「君が……私を、助けて…くれたんだね?」 アンタにしこたま吸われたからよ、とルイズは思った。 そんな内心とは裏腹に、若干頬を上気させながら答えた。 「え、えぇ、そうよ。私はルイズ。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。あなたのご主人様なんだから。」 ---で、アンタは私の使い魔。と、ピシャリと言う。 男はふむ、と考え込んだようにみえた。 「…………使い魔、といったね。君の言ってることがよく……分からないが、とにかく、私は今どういう状況にあるんだね…?」 使い魔と言われても、少しの不快感も感じさせない男の口調に、ルイズはホッとした。 ふざけるなと言われて、問答無用で襲いかかられたら、万に一つも勝ち目はないのは分かっていた。 それに、どうやらアイツは自分に恩を感じているらしかった。 そして、答えた。 ここがハルケギニアはトリステイン大陸の、トリステイン魔法学院であるということ、自分はその生徒であり、二年生で、春になったらサモン・サーヴァントで各々の使い魔を召喚することになっていたこと。 その召喚で自分が男を召喚したこと。 送り帰すのは不可能であること。 いっきにまくしたてた。 「トリステイン……ハルケギニア…メイジ……」 と、ルイズの言葉を繰り返す男。 ひととおりまとまりがついたのか男は逆に聞いてきた。 「私は今………蘇生したばかりで、弱っている。常人のソレと…ほぼ力はかわらないだろうよ。傷が『馴染む』までには…長い時間を必要とする。だからそれまでの間、いいだろう、君の使い魔とやらになって…やるよ」 ルイズは心のなかでガッツポーズをとった。 「君の執事になる……と、考えればいいのかな?」 男の問いに、ルイズは得意げに指を立てて答えた。 「まず、使い魔は主人の目となり、耳となる能力を与えられるわ」 「ふむ…」 「でも、無理みたいね。わたし、何も見えないし」 「……」 「それから、使い魔は主人の望むものを見つけてくるのよ。例えば、魔法に使う硫黄とか、コケとか…」 「……今の私では、難しいな。」 「そして、これが1番なんだけど、使い魔は主人をその能力で敵から守るのよ」 「ふむふむ……」 「でも、専らは、そうね、あなたの考えで間違いはないわ。洗濯、掃除、その他雑用」 「………」 「ところで、アンタの名前、なんて言うの?」 「……………DIO、だ」 「ふ~~ん。ディオっていうのね」 男はチッチッチッと舌を鳴らしながら指を振った。 「それは少し意味が違う。我が『マスター』。ディー・アイ・オーで、DIOだ」 なにやらこだわりがあるらしい。 どう違うのよ、とルイズは思ったが、彼がDIOと名乗るからにはDIOなのだろうと、ルイズは思った。