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使い魔は手に入れたい-12 - (2007/07/29 (日) 07:25:18) のソース

朝食というにはあまりに重たい。 
食堂の食事を見ながら改めてそう思う。これらを朝に食べるのは遠慮したいものだ。 
どう見てもディナーだからな。 
そう思いながらルイズの椅子を引く。 
椅子にルイズが座ったのを確認して私も空いている椅子に座ろうとする。 
しかし空いている椅子は無かった。前回座った場所にはマリコルヌが座っていたからだ。 
「マリコルヌ。どうして朝早くから席に着いてたんだ?」 
「べ、別にいいじゃないか」 
マリコルヌは他の奴とそんな話をしていた。
そうか。昨日のことがあるから座られる前に座ってしまおうということか。 
だからってそんなに早く座ろうと思わなくてもいいと思うがな。
しかしこれは好都合だな。なかなかいい言い訳になる。 
そう思いながらマリコルヌの隣に立つ。 
マリコルヌの体がビクリと震える。昨日のことを思い出したのだろう。 
しかし今私は苛立ってないから昨日のようなことはしない。むしろそのことで迷惑をかけたその礼をしてあげようというのに。 
する理由はある。無駄な遺恨を残さないためだ。仮にも貴族だからな。 
マリコルヌの前にあったパンをとりマリコルヌのナイフを使い切り込みを入れる。 
「な、なにをするんだ?」 
すこしビクつきながらマリコルヌが聞いてくる。そりゃ突然自分の食事に手を出されたんだから聞くのは当然か。 
「昨日の謝罪代わりさ」 
「へ?」 
マリコルヌはまるでわからないというような顔をしている。 
わかったらおかしいがな。
切込みを入れたパンの間に彩りを重視しながら具をつめていく。 
ふむ、初めてにしてはなかなかうまくできていると思う。 
「あんたなにしてんの?」 
ルイズは私の行動を奇異の視線で見詰めてくる。 
しかしそれには取り合わず、同じものを後3つ作る。全て彩りを一番に重視してだ。勿論味のことも考えている。 
食べたこと無いものも入れたが。 
彩りを重視する理由は簡単だ。マリコルヌは貴族。見た目がダメなものを食べるわけが無い。 
できたそれらをマリコルヌの皿の上に乗せる。 
「こ、これは?」 
「サンドイッチだ」 
「これが?」 
そう私が作ったのはサンドイッチだった。記憶にあるサンドイッチを真似て作ったものだがなかなかうまくできている。 
彩りも鮮やかでおいしそうだ。 
しかしマリコルヌが疑問に思っているあたり自分が知っているサンドイッチと形が違うのだろう。どうでもいいけどな。 
そのうち二つを私が手に取る。これは私の分だ。それを持ち食堂を出ようとする。 
「ちょ、ちょっとどこ行くのよ!」 
それに驚いたのかルイズが私を呼び止める。 
「外に行くんだ。ここは席が埋まっていて座れないだろう?」 
そう言うと急ぎ足で食堂を出る。 
「椅子を持ってくればいいじゃない!」 
なにやら言ってくるルイズは無視した。朝からあんな食事が食えるか。見てるだけで胸焼けしそうだ。
そして外に出ると適当に歩き出す。
さてどこで食べようか。 
すこし歩くと丁度座り心地がよさそうな場所があった。 
ここで食べるとしよう。そう決め腰を落とす。 
作ったサンドイッチを口にする。 
……うん、おいしいじゃないか。すこし苦かったりするけど。でも気になるようなものじゃない。 
むしろそれが他の味をより引き立てる。 
初めての料理(といえるかどうかは知らないが)はまさに最高の出来栄えだった。 
適当に作ったのにこれだけのものができるなんてもしかして俺天才か? 
いい気分になりながら食べていく。 
そして簡単に1つ目を食べ終えてしまった。 
続いて2つ目を一齧りする。そのとき目に何かが映った。 
何かと思いそれに目を向けるとそこには一匹の子猫がいた。 
その日、私は猫に出会った。


マリコルヌは目の前にサンドイッチを見ていた。 
あのルイズの使い魔が作ったサンドイッチだ。サンドイッチといっていたからサンドイッチなのだろう。 
しかしこんなサンドイッチ見たことが無い。 
パンは完全に切り離していないし具も何種類も入れていた。はしばみ草も入れていたのだ。 
警戒するなというほうが無茶だ。しかし…… 
ゴクリ、と咽喉が鳴る。 
見た目が鮮やかでとてもおいしそうだ。それに自分の前で作っていたのだから何か小細工ができるわけでもない。 
それにあの使い魔は言っていたではないか、昨日の謝礼だと。 
謝礼に変なことをするわけが無い。 
そうだ。なんで僕が食べ物なんかで脅えなくちゃいけないんだ。 
これを作ったのはあの使い魔だけど、このサンドイッチがあの使い魔というわけではないんだ! 
意を決しサンドイッチを手に取る。 
額から一筋汗が流れ落ちる。昨日のことが思い出される。 
それを一緒に飲み込むが如く、マリコルヌは一気にサンドイッチに齧り付いた。 
…………………………………………………これは! 
「……おいしい」 
見た目通り。いいや、それ以上に美味しい! 
こんなにも美味しいサンドイッチがあるなんて!はしばみ草は物凄く苦いことで知られていて皆たべない。 
しかしこれに入っているはしばみ草は別物に思えた。 
確かに苦い。それは間違いないのだ。しかしその苦さが次に舌に触れる食材の味をより鮮明に感じさせてくれる! 
脂っこいものをさっぱりさせてくれる! 
色々な食材をはしばみ草がうまくまとめている感じすらする。これなら美味しく食べられる! 
これが本当のサンドイッチ、まさにサンド・ザ・サンド! 
こんなに美味しいものを僕に作ってくれるなんて!あの使い魔は実は言うほど怖くないのかもしれない。 
このサンドイッチをきっかけにマリコルヌはヨシカゲをあまり恐れなくなった。

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