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ゼロの兄貴-6 - (2007/05/30 (水) 12:13:54) のソース
通路をプロシュートが前、ルイズが後ろを歩く。 だがプロシュートの後ろ姿から ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ というような音と何かオーラが見える。 「……何?まだ怒ってるの?」 プロシュートがルイズに向き直る。 「いいかッ!オレが怒ってんのはなテメーの『成長の無さ』なんだルイズ! そりゃあ確かに毎回『爆発』起こしてんだ、『ゼロ』と呼ばれて当然だッ! 自分まで『巻き込まれちまってる』んだからな!オレだってヤバかった!」 己の使い魔に一番痛いところを突かれた。 「毎回失敗する理由はオレなんかには分からねぇ! だが!オメー自身の心が『成長』しなけりゃあまた『ゼロ』と言われるだけだッ!」 プロシュートの言っている事はルイズにも十分分かる、だが今まで散々努力はしてきた。 知識だけならそこら辺のメイジ達よりも上だという自負もある、だが魔法は使えない。故に『ゼロのルイズ』と呼ばれる。 これ以上できる事が他に何があろうか。したがって次に出来てた言葉は 「……使い魔がご主人様にお説教しようなって100年早いのよ!今日のご飯無しだからね!」 ルイズが駆け出し通路の曲がり角を曲がり居なくなる。 「オイ!まだ話は終わっちゃいねーぞ!……チッ、ペッシのよーにはいかねーか」 昼食を抜かれたとしてもプロシュートには朝の男からギッた金があるので特に問題はない。 だが、一つ肝心な事を忘れていた。 「ヤバイな……迷ったか?これは」 流石の兄貴も慣れない場所では迷うらしい。 10分程通路を歩いたが全く道が分からず、さすがにイラついてきた。 (ギアッチョならあたり構わずブチのめしてるとこだな) チームである意味ペッシ以上に手のかかる仲間の事を少し思い出す。 ちなみにこの前はニュースにイラついて溜まり場のテレビをブッ壊しリゾットにカミソリを精製されかけていた。 自慢の氷の防御もリゾットの磁力にだけは効かないらしい。 「あ、あの……どうかなさいましたか?」 と、まぁ明らかにカタギの人間じゃあないプロシュートに若干恐れの入った声がかかる。 自分が居た場所、もとい世界では特定の地域を除いてでしか見ることのできないメイド服を着た少女がそこに居た。 「……ああ、食堂に行きてぇんだが生憎道が分からなくてな」 「それでしたら、私も行く途中なのでご案内します」 「助かる」 食堂に向かい歩くメイドと非カタギ、通常であれば明らかに異常な光景である。 途中気付いたのか 「あなたがミス・ヴァリエールの使い魔になった平民の方ですか?」 「まぁ訳の分からねーうちにそういう事になっちまったようだがな。オメーもメイジとかいうやつか?」 「いえ、私も平民です。ここには奉公のために貴族を世話しに来ているんです」 (あのマンモーニ連中の世話か…リゾット以上に苦労してそうだな) 「私はシエスタと申します。よければお名前を教えて頂いてもよろしいでしょうか?」 「プロシュート、意味はオレの国の言葉で『生ハム』だ」 「プロシュートさん…ですね、食堂に着きましたよ」 「グラッツェ」 そう礼を述べプロシュートが中に入ろうとするがシエスタが 「あの、賄い物でよろしければ食べていかれませんか?」 と聞いてくる。 それは使い魔として召喚されたプロシュートを気遣ったものだが、今まで裏街道を歩いてきたプロシュートにとってほぼ初めてとも言ってもいいものだ。 「いや、一応金はあるからな。そこまで世話になるわけにはいかねぇさ」 「そうですか…残念です」 「何かあれば遠慮なく世話にならせてもらうぜ」 プロシュートが微笑を浮かべシエスタにそう返す。 チームの連中(特にメローネ)に見られた日には自殺もんだが、幸いヤツらはここには居ない。 その超レアとも言える兄貴の微笑を見てシエスタも微笑み返す。 「外の方にもお席はありますので」 「そうさせて貰おう」 『魔法学院アルヴィーズ食堂』 本来なら生徒達が食事や談笑する場所であるが、ある一角だけ全く人が座っていなかった。 当然プロシュートが食事をしている周辺である。 注文したのはピッツァとワイン。 細かい味付けは違うがやはりイタリア人としてはこれが一番よく馴染む。 声が小さすぎて聞き取れないが多分『平民』『平民』と言ってるのだろうと思う。 ギャングという事からイタリアに居た時もこのような視線は結構浴びており慣れていたはずだが、どうも不快感がを感じるが何故かはまだ分からない。 ピッツァを食べ終わりワインの香りを味わいながら飲んでいるとメイドがデザートを運んでいるのが見えた。シエスタである。 プロシュートに気付いたのか笑みをこちらに向ける ―が、視線が反れたのか金髪の男と正面から衝突し、その勢いでデザートが重力を脱し男の服に直撃を果たす。 その男にプロシュートは見覚えがあった。このピッツァとワインの代金を提供して貰ったヤツだ。 貴族どうしなら大して騒ぎにならない事だがこの場合は違う。貴族とその奉仕に来ているメイド、明らかにシエスタの分が悪い。 当然ながら男がシエスタに対し騒ぎ立てる。 「君…平民が貴族に…『青銅のギーシュ』に何て事をしてくれたんだ!これから大切な用があるというのにどうしてくれる!」 「も、もももも申しわけございません!」 シエスタが男に向かって半泣きになりそうになりながら今にも土下座に発展リーチしかねんばかりに頭を下げている。 とりあえず、治まったのかギーシュが後ろを向く。 「申し訳ありません…ぶつかってしまった時これを落とされたようですが…」 が、頭を下げている時シエスタがギーシュの足元に落ちている小瓶に気付きそれを拾い上げる。 瞬間、ギーシュが凄まじい勢いでそれを否定する。 「こ、これは僕のじゃない、き、君は一体何を言ってるんだ!」 「ですが、確かにギーシュ様の足元に…」 さらに否定しようとするギーシュ、だが周りのそれを肯定する。何時の時代も最大の敵は強敵(とも)という事か。 「ん…?この小瓶はモンモラシーの香水じゃあないか」 「そうか…ギーシュは今モンモラシーと…そういう事か」 こうなってくるとギーシュにはもう収拾する術はない。 そうこうしてると今朝食堂前でギーシュと一緒に居た少女がその集団に泣きながら向かいそして―― グワシィィーz_ィン 少女のビンタが炸裂した。 それを見たプロシュートが (メローネが見たら『スゴク良い!良いビンタだ!手首の(ry』と言うだろうな) と思った程の勢いだ。 そしてビンタを決めた少女が泣きながら走り去った後、新たな少女がギーシュに詰め寄ってきた。 「これは、どういう事かしらギーシュ…!!」 「モ、モンモラシー!違う、違うんだ!あの子はだだの…」 そうギーシュが言い終わる前にモンモラシーと呼ばれた少女がシエスタが持っている香水を取りそれをギーシュにブチ撒ける。 「もう二度とその顔を見せないで…!」 少女二人に捨てられたギーシュ、二股をかけていた当人が当然悪いのだが理不尽な怒りはシエスタに向かっていった。 「君が軽率に香水のビンなんか拾い上げたおかげで、二人のレディの名誉が傷ついた。どうしてくれるんだね!」 シエスタはただ頭を下げ続け謝るばかりだったが他の生徒達の前でビンタと香水を頭からブチ撒けられたという恥からさらに怒りがヒートアップする。 「申し訳ありませんで済めば憲兵なんていらないんだよ!……どうやら君には貴族に無礼を働くとどうなるかを身を以って知った方がいいようだね」 ギーシュが薔薇の造花の杖を出し構える。 メイジが杖を出す時。それは魔法を使う時だとシエスタは十二分に知っていた。つまりこれから自分が何をされるかという事も。 「ひっ……!」 シエスタがうずくまり頭を両手で押さえる。 この騒ぎにギャラリーが出来ていたようだが、誰もギーシュを止めようとしたりシエスタを助けようとはしない。 むしろニヤニヤとした笑みを浮かべ見物している物が多数を占めている。 それを見た時プロシュートが感じた不快感が何か理解した。 あの目だ…あの目と同じだった。 組織の他のチームの幹部連中が自分達暗殺チームを見る目。 利用するだけ利用し、得る物はボスからの不当ともいえる報酬のみ。 他のチームがそれぞれのシマを持ち利益を得ているというのに自分達にはそれがない。 その圧倒的とも言える他のチームとの待遇の差による自分達を見下した目……それと同じだった。 そう思った瞬間プロシュートは行動していた。 頭をかばうようにして縮こまるシエスタは圧倒的な恐怖から泣いていた。 少しだけ視線を上げ上を見る、ギーシュが杖を振り上げていたのを見て少しでも恐怖から遠ざかろうと目を閉じた。 だが、いくら時間が経っても自分が恐れていたものは襲ってこない。あるいはもう襲ってきてしまったのかと思いつつ恐る恐る目を開ける。 「ミス・ヴァリエールが召喚した使い魔君じゃないか…邪魔しないでくれたまえ!」 平民が貴族にあのような無礼を働いたんだ。貴族の使い魔の君がそれが分からないのかい?」 逆行で顔はよく見えなかったが男が振り上げられたギーシュの腕を掴んでいた。 「それとも、平民同士助け合おうってことかい?涙ぐましい友情だね」 「二股かけてたのがバレで無抵抗のヤツに八つ当たりか?マンモーニを通り越してゲス野朗だなオメーは」 ゲス野朗という言葉に完全プッツン来たようである。 「……いいだろう!まずは君から礼儀というものを教えてあげた方がいいようだねッ!」 「何がやりてぇのか言ってみなゲス野朗」 「まだ言うか…!『決闘』だッ!ヴェストリ広場で待っている!準備ができたら何時でも来たまえ!」 そういい残しギーシュが友人とギャラリーを引き連れ広場の方向へ向かっていった。 「あ、ありがとうございます…でも元々関係ない貴方に迷惑はかけられません…私が行って何とか事を沈めてきます…」 「ヤツが決闘したがってるのはオレだ、オメーじゃあねぇ。それに何の問題も無ねぇ」 「で、でも…このままじゃ貴方の命が…」 「ここで万が一オレが死ぬとしてもオレは常にそういう『覚悟』をしてきている」 そう言うと、プロシュートは自分が座っていた席に戻り最後の残ったワインを飲むと広場にと向かっていった。 ←To be continued ----