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白銀と亀な使い魔-3 - (2007/06/08 (金) 22:57:17) のソース

昼飯時、ポルナレフは苦虫を噛み潰したような顔で食堂の入口の近くの壁にもたれていた。 
そんな顔してそんな所にいるのにはやはり理由があった。 


その日の朝。 
ずっと幽霊だったポルナレフにとって久しぶりの睡眠であったため目覚めも非常に良かった。 
彼は、こんな清々しいのに頭からゆっくり出るようなことはしたくない、と思い、膝を曲げて反動を付け、思いきりジャンプした。 
そして着地ッー! 

グシャァッ! 

「『グシャァ?』」 
その謎の効果音に恐る恐る下を見た。 
見事同時に着地した両足の下にあったのは見覚えのあるピンクの長髪と鳶色の目をした少女の顔だった。 
普段冷静沈着である彼の顔にもさすがに冷や汗が流れる。 
「…あー、おはようございます。ご機嫌は如何ですか?我が主人?」 
「………イッペン死んでみる?」 
彼は散々鞭で打ちつけられボロ雑巾と化した後、一週間の食事を抜かれることとなった。 
朝食ヘ向かう途中 
「まさか亀が夜中の内にベットに載っていたなんて思わなかったんだ…」 
と何度も弁明したのだが、取り消してはもらえなかった。 

しかも泣きっ面に蜂と言う様に不幸は立て続けに起こった。

朝食後、ルイズとポルナレフ(と亀)が教室に入ると全員がその隣にいる男を凝視した。彼等はパニックに陥り、亀の中から男の生首が出て来たということしか覚えてなかったからだ。 
「あいつ…亀召喚しなかったっけ?」 
「違う…あの男の顔をよく見ろ…亀の中から出てた顔だ。ほら脇に亀を持ってる…」 
ルイズ達を指差しクラスメート達がひそひそ話をしだした。 
ルイズはそんな連中を睨み付けたが、ポルナレフは周りにいる使い魔達をしげしげと眺めつつ、壁にもたれ掛かった。 
教師が入って来て授業が始まった。 
ポルナレフにとっては魔法の授業というのは珍しく新鮮なものであったので、それなり真剣に聞いていた。 
その中で分からない単語、トライアングルだの錬金だのをルイズに聞いていたら教師に注意され、ルイズが前に出て錬金をやらされることとなった。 
「ルイズをッ!?先生そればかりはやめた方が…」 
赤毛の褐色の肌をした少女の言葉を皮切りにクラス中から反対のコールが起きた。 
しかし周りの反対を押し切りルイズは前に出ていった。そして呪文を唱えたのだが、何故か爆発が起こった。 
周りの異常な反応にポルナレフの警戒心も久しぶりに覚醒し、他の生徒同様机の下に避難したため無事だったが、教師は助からず最低でも二時間は気絶していた。

教師が意識を取り戻した後、当然罰として掃除をやらされることとなったのだが、ルイズが「主人の責任は使い魔の責任」と掃除をポルナレフ一人に押し付けようとしたのでポルナレフは 
「貴様の事を何故俺が一人でやらねばならんのだ? 
大体成功するという確信もないなら初めからするんじゃない。」 
と拒否した。 
「うるさいッ!あんた使い魔の癖に口答えするつもり!?」 
「別に俺は間違ったことは言ってないはずだが?」 
ポルナレフの態度はルイズが激怒していた所にさらに油を注ぎ込むことになった。 
「もういいッ!あんたまで私を馬鹿にするなら更に三日ご飯抜きッ!」 
「貴様は俺を殺す気か!?」 
「私が上ッ!あんたが下よッ!」 
「お前が下だッ!!」 

結果、更に三日追加され計十日飯抜きという実刑が下ってしまった。

「『ゼロ』のルイズか…よりによって魔法を一つも使えない主人なんて先が思いやられるな…餓死する前に逃げるか…?」 
幸いルイズは亀の能力に気付いていない。というよりどうやら認めたくないらしい。 
「まあその亀がいるからしばらくは大丈夫なんだが…」 
ポルナレフは長い付き合いとなる相棒の亀を見た。 
亀の中にはジョルノ達がいざという時にということで冷蔵庫の中に食料が入っていた。 
しかしそれにも当然限りがある。多分持って一週間しかない。 
どうにか食事を確保せねばその内餓死してしまうのはコーラを飲んでゲップが出るくらい確実である。 
「しかしどうすれば…」 
ポルナレフが思わず天を仰いだその時、 
「あ、あの…どうかなさいましたか?」 
誰かがポルナレフに話し掛けてきた。 
ポルナレフが声の方を見るとメイドの恰好をした黒い髪の少女がこっちを見ていた。相手の丁寧な口調に自身も自然と丁寧になる。 
「いや…特に何も無い」 
ポルナレフはそう言ったのだが、少女は足元の亀を見て、思い出したかのように言った。 
「あ、もしかして貴方がミス・ヴァリエールの使い魔になったっていう平民と亀の…」 
つくづく亀の方が有名らしいな、そう思ったのだが黙っておくことにした。 
「その通りだが…君もメイジか?」 
「いえ、私も平民です。ここには奉公のために貴族の世話しに来ているんです。」 

(どうやらここは魔法だけでは補え切れない所があるから平民をいくらか雇っているらしいな。 
しかしこれはチャンスだ。上手く行けば彼等から食事を分けてもらえるかもしれない。) 
「私はシエスタと申します。良ければお名前を…」 
「私はJ・P・ポルナレフだ。亀はココ・ジャンボと言う。」 
「ポルナレフさんにココ・ジャンボさんですか…人間と亀って何だか変なコンビですね。」 
シエスタはふふっと笑った。 
ポルナレフはその笑みにふとJガイルに殺された妹を思い出した。 
「…」 
「どうかしましたか?」 
「いや、何でもない。ただ、妹を思い出してな…」 
「妹さんを、ですか?」 
「ああ。あいつも君と同じような笑い方をした…いい妹だった。…もう何年も前に殺されたがね…」 
「そうでしたか…」 
ポルナレフの寂しそうな顔に思わずシエスタも黙ってしまった。 
「あ、いや、こんな事を言って済まなかった。今のは聞かなかった事にしてくれ。それより頼みたい事があるんだが…」 
「なんですか?」 
「実はな、あの憎たらしい小娘に十日も食事を抜くと言われてな…だから何でもするから、しばらくの間食事を世話して貰いたいのだ…」 
ポルナレフが頭を下げ頼み込むと、シエスタはまた笑って 
「そんなことでしたか。いえ、ずっとそこにいらっしゃるのでどうなされたのかな、と思いまして…どうぞこちらへ」 
と言って、どこかへ案内しだした。 


To Be Continued... 
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