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几帳面な使い魔-3 - (2007/06/10 (日) 00:38:58) のソース

「アンタは平民で使い魔、私は貴族で主人。以上」 

場所をルイズの部屋に移し、椅子に座り、足をくみ、言った言葉がこれだった。 
だがそれで分かったことは何ひとつ無く、 
主人という新たな単語が形兆の心の中にある『分からない事メモ』に追加されただけだった。 

「ここは何処なんだ?」 
続けて最初にしたのと同じ質問をする。 
「トリステイン魔法学院よ」 
これで分かるでしょ?といわんばかりの態度、もちろん有名なので大抵の人はこれで分かるのだが、 
「つまり何処なんだ?」 
形兆には分かるはずもなかった。 

「知らないの?あんた何処の平民よ?」 
「平民?何だそれは?さっきの貴族とか言う言葉と関係があるのか?」 
「そうよ、ってそんなことも知らないの?あんたって相当頭悪いのね」 
いつもなら弟の方が言われる事を言われ、少しヘコむ。が、すぐに気を取り直して質問を続ける。 

「平民と貴族の違いは何だ?」 
「魔法を使えるのが貴族で、そうじゃないのが平民よ、例外もあるけどね」 
「魔法だと?」 
「そうよ」 

ルイズは子供でも知っているような常識すら知らない使い魔の頭の悪さに…… 
形兆は自分の心のメモと質問の答えを合わせ、自分の立場を理解し始めて…… 

頭痛を起こした。

する方とされる方、両方が頭痛を起こしながら続いた質問を終え、 
形兆は一つの『決断』をした。 
自分の状況をルイズに話す、という決断を。 

そして話し終わった時のルイズの反応は 
「ふーん」 
という冷たいものだった。 

予想外の反応に驚きながらも話を続ける 
「元の世界に帰る方法に心当たりは?」 
「知らないわよそんなの」 
「知らないだと?じゃあどうやっておれを召喚した?」 
「サモン・サーヴァントでよ」 
「それでおれを帰すことはできないのか?」 
「無理よ、そんなの、召喚するだけだもの」 
「それでも試す価値はある」 
「サモン・サーヴァントはね、使い魔がいるうちは使えないの」 
「つまりこういうことか?『おれが死ななきゃ使えない』」 
「Exactly(そのとおりでございます) 」 


このようなやり取りが続いていき、会話が終わる頃にはルイズが普段ならもう寝ている時間になっていた。 

肝心の形兆がこれからどうするか、というところでは 
「アンタは使い魔なんだから私に尽くしなさい」 
といって聞かなかった。 
形兆も使い魔にならなければ衣食住の世話をしない、ということで、渋々ながらも使い魔になることで落ち着いた。 
もっとも、このやり取りだけで二時間を消費していたのだが。

そして寝るためにルイズが服を脱ぐ、正々堂々と隠しもしないで、 
「おれに見られて恥ずかしくないのか?」 
と形兆が言っても 
「は?何で?アンタ使い魔でしょ?」 
という言葉だけで着替えを続けるルイズ。 

『自分には人権がない』 
形兆はそれを心のメモに付け加えた。メモするのはこれが今日最後になることを祈りながら。 
そして人権が無いということからルイズの次の言葉を予想する。 
「アンタは床で寝なさい。毛布くらいは恵んであげるわよ」 
予想どおりは気分が悪かった。 

「あと、これ洗濯しときなさい」 
そういって投げてよこされる衣服。 
形兆のやることは掃除、洗濯、雑用といわれていたのでこれも予想どおりだった。

寝る前に洗濯道具の場所を聞こう、そう思いルイズの方を見たが、すでに寝ていた。 
仕方なく形兆は床に横になり毛布を被って、状況を整理してみた。 

・ここは異世界 (月も二つあったしおそらく確定) 
・スタンド攻撃の可能性はおそらく無い (こんな回りくどいことをする必要が無いから)  
・魔法がある (頼んでもルイズは見せてくれなかったが) 
・自分の生死も不明 (生きている気はするのだが…) 
・自分のスタンドは無い (一度死んだから?)(死んでいるから?)(それ以外ということも?) 
・元の世界に帰る方法もない (分からないだけであって欲しい) 
・自分は使い魔で主人はルイズ (イヤだが仕方が無い) 

こんなところだろうか。 
整理してみて自分の状況がヤバイことを再確認する。 
せめて下四つの内一つでも何とかなれば大分楽になるのだろうが、今はどうしようもない。 

とりあえず明日は洗濯のためにも晴れることを願いながら、形兆は眠りについた。 


To Be Continued ↓↓
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