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サブ・ゼロの使い魔-2 - (2007/06/14 (木) 22:31:24) のソース

「このギアッチョによォォ~ 容赦しねェだと?ええ?おい やってみろクソガキがッ!!」 

とは言え、男―ギアッチョには最初からフルパワーで行く気はなかった。よってたかってピンク頭に 
野次を投げかけていたガキ共は、ギアッチョの凍てつかんばかりの殺気に恐れをなして蜘蛛の子を 
散らすように我先に逃げ出していたし、年齢から考えて教師であると思われるハゲ野郎は仲間を 
呼びに行ったのかもうこの場にいない。ちなみに当のピンク頭は彼の下で腰を抜かしている。 
―そのオレに恐れることなく立ち向かってくるガキ・・・どうやらこいつが筆頭格の強さを持っていると 
理解していいようだ―ギアッチョはそう考えた。こいつをブッ倒し、奴らの戦意を喪失させてから 
ここを出る。なかなかいい作戦じゃあねえかおい。 

「今ここでオレのジェントリー・ウィープスを全開にすればこの中庭を丸ごと凍らせるのはたやすい 
・・・しかし逃げ出したガキ共にそいつを見られると面倒なことになりそうだからなァァ~~」 
「何をぶつぶつ言ってるのよ!くらいなさいッ!」 
キュルケが言い放ちざま大型の火弾を打ち出すが、ギアッチョはそれを意にも解さずキュルケに 
向かって歩き出す―氷でシールドを作ることもせずに。その余裕ぶりにキュルケはカチンときたが、 
「いいわ、ナメているのならそのまま燃え尽きればいい」と思いなおした。2・・・1・・・着弾ッ!! 

バシュウゥウゥウッ!! 

「なッ・・・!!」 
しかし火弾はギアッチョに当たる寸前、大量の水をブッかけられたかのような音を立てて「消え去った」!! 
「そんな 嘘でしょ・・・!?」 
眼前の出来事を信じられないキュルケは2発、3発と火弾を放つ。しかしまぐれであれという彼女の 
願いも虚しく、彼に撃ち出された火弾はその全てが直撃寸前に消滅するッ! 
ギアッチョは歩き続ける。氷のように冷たい眼でキュルケを見据えて。

「炎ってよォォ~~・・・」 

ザッ・・・ザッ・・・ 

「一般的には火が激しくなったものを言うんだが・・・」 

ザッ・・・ザッ・・・ 

「実際に火が激しいはずの単語には炎じゃなくて火が使われることが多い」 

ザッ・・・ザッ・・・ 

「噴火だとか火柱だとかよォー・・・ 」 

ザッ・・・ザッ・・・ 

「なんで噴炎って言わねぇーんだよォォオオォオーーーッ それって納得いくかァ~~おい?」 

ザッ・・・!ザッ・・・! 

「オレはぜーんぜん納得いかねえ・・・」 

ザッ・・・!!

「な・・・何なの・・・こいつ・・・」 
キュルケはもはや完全に敵に呑まれていた。ギアッチョがついに目の前までやってきたと 
いうのに―構えることすら出来なかった。そして。 

バキャァアアッ!! 

「なめてんのかァーーーーッこのオレをッ!!炎を使え炎を!チクショオーーームカつくんだよ! 
コケにしやがって!ボケがッ!!」 
キュルケは宙を舞った。 
「うぐっ・・・い・・・痛ッ・・・ フフ・・・だけどおかげで眼が覚めたわ 今よフレイムッ!!」 
「ムッ!?」 
どこからか現れた化け物が―実際にはギアッチョの眼に入っていなかっただけだが―彼に 
向かって火炎を吐き出す!しかしそれも彼に当たる直前にことごとく消え去ってゆく。 
「・・・まだ理解しねーのか?え?おい 隙を突こうが無駄なんだよッ ・・・・・・」 
そこまで言ったところでギアッチョは気付いた。今火を噴いた化け物の存在に。 
「・・・なんだァ~?こいつがてめーのスタンドってわけか・・・?」 
とは言ってみたが・・・どう見てもこれは「ビジョン」ではない。実体である。 
―いや・・・そういうスタンドがあってもおかしかねー・・・世の中にゃ無生物に命を与える 
スタンドもいるくれーだからな・・・―ギアッチョはそう思いなおすとキュルケに眼を戻し、 
「こいつでブチ割れなッ!!」 
直触りを発動しようとしたその時。

ドゴォッ!! 

「うぐぉおぉッ!?」 
上空からギアッチョに空気の塊のようなものが撃ちつけられた! 
「タバサ!」 
キュルケが日の落ちかけた空に向かって叫んでいる。 
「ナメやがって・・・上かァーーッ!?」 
ギアッチョが見上げた空には。 

バサッ 

これまたどう見ても実体の― 
「ドラゴン・・・?」 
―それに乗ってこっちを見下ろしている少女。そして何より彼女の後ろに二つの月が 
「・・・なんだ・・・ありゃ・・・」 

二つの、月が。 

―ここはトリステイン王国の― 

「マジで・・・別世界だってェのか?」 
流石のギアッチョも呆然とせざるを得なかった。

ルイズはじりじりとギアッチョに近づいていた。正直自分が何かの役に立つとは思えなかったが、 
因縁の相手のはずの自分を体を張って助けてくれたキュルケを見殺しになど出来なかったのだ。 
キュルケは「とっとと逃げなさいよゼロ!」と必死に眼で語っているが、そこは妙な意地を 
張らせたらトリステイン一のルイズである。聞き入れるわけがなかった。 
一方ギアッチョは―静かに沸騰していた。 


ここが花京院もビックリのファンタジー世界だとほとんど確定してしまった以上、とりあえずは 
武器を収めて情報の収集にかかるのが最善手だろう。しかしギアッチョに売られた喧嘩を 
見過ごす選択などあるはずがない。 
「後のことは・・・てめーらをブッ倒してから考えるッ!!そっちが空中にいるってんならよォォ~~ 
ちょっとだけ本気をださせてもらうぜェェェー!!」 


ギアッチョの足元が凄まじい速度で凍っていく。それはギアッチョの靴を覆い足首を覆い・・・ 
ルイズは眼を疑ったが、どうやら氷のスーツを形成しようとしているらしい。 
―マズいッ!! 
少女は遅まきながら確信した。何だかよく分からないがこいつの魔法はヤバい!この氷の発生速度、 
スーツを形成する精密さ、何よりそれが無詠唱で行われているということ!更にこの殺人をも 
厭わない覚悟!どこまで暴れるつもりか知らないが・・・死人は出る!絶対にッ!そしてそれを 
阻止するチャンスは今ッ、このスーツが完全に形成されるまでの間しかないことを! 
ルイズは反射的に動いていた。反射的に―だが決死の覚悟で、ギアッチョに飛び掛ったッ! 
完全にタバサに気を取られていたギアッチョは一瞬反応が遅れ、そして―ルイズの殆ど頭突きの 
ようなキスをまともに「食らい」、頭からブッ倒れた!

「ガフッ!!てめー何をしやがったァァ~~!?毒か!?スタンド・・・いや魔法かッ!?」 
ギアッチョとは逆方向にブッ倒れたルイズは、よろよろと立ち上がりながら告げた。 
「・・・契約よ・・・!」 
「・・・ああ?どういう事だッ!ナメやがって クソッ!・・・・・・ぐッ!!?」 
ギアッチョの左手が光り始め、 
「っづぁああぁああぁあああああッ!!!」 
その甲にルーンが浮かび上がったッ! 
こいつを説得するなら今しかない!ルイズはギアッチョの前に仁王立ちになる。 
「聞きなさい!あなたがどれだけ強いか知らないけどここには300のドラゴンを一人で倒した 
偉大な学院長や太陽拳を使える先生がいるのよ!これ以上騒ぎを起こせば先生方は 
黙ってないわ!万一囲いを破って逃げ出せたとしてもあなたみたいな危険人物は四六時中 
追っ手に追われ続けるわよ!悪魔の軍団を一人で倒せるような追っ手達にね!」 
半分以上は今適当にでっちあげた話だったが、 
「・・・」 
ギアッチョには思いのほか効果があったようだった。ルイズは疑われる前に話を進める 
ことにする。 
「ま、貴族を3人も殺そうとしたんだから今のままでもまず終身刑は免れないわね ちなみに 
あなたが入るのは水族館と呼ばれる脱獄不能の監獄よ!」 
これもデタラメである。 
「・・・で、てめーはオレにそれを聞かせてどうしようってんだ?え?おい」 
食いついたっ!ルイズは心中でガッツポーズをした。 
「話は最後まで聞きなさいよ あなたが罪を問われない方法が一つだけあるわ・・・ 
私の使い魔になることよ!」 
「・・・・・・一応聞いとくが・・・そのツカイマってのは何なんだ」 
「主の剣となり盾となるものよ」 

「・・・・・・」 
一瞬の逡巡の後、ギアッチョは舌打ちをしながらもルイズに答えた。 
「まぁいいだろう・・・この世界のことがわかるまではここにいるのも悪い選択じゃあねぇ」 
実際は一度使い魔になってしまえば死ぬまで契約は執行されるのだが―今それを 
言うとこいつはまたブチ切れるだろうと思ったのでルイズはとりあえず黙っておくことにした。 


←To Be Continued・・・
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