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slave sleep~使い魔が来る-8 - (2007/09/16 (日) 13:43:46) のソース

『青銅』のギーシュ⑤

間違いない・・!今のオレの力は!確実に上がっているッ!!」 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・ 

ルイズの行動により、黄金の精神を取り戻し、復活したブチャラティ。戦いを再開する! 
だがその際に彼にとある変化が起きていた・・・・。 
そしてその変化は、ルイズにも起こっていたッ!! 
「アイツの後ろにいる『霊』はなんなの・・?アイツは・・一体・・?」 
ルイズにはブチャラティの"スティッキィ・フィンガース"が見えているのか・・? 
ギーシュもまた驚いていたッ!! 
「ブチャラティ・・・・一体何をしたんだ・・?一瞬で・・・僕のワルキューレを・・?」 

その変化に一番驚いていたのは他でもないブチャラティ! 
「これはジョルノの時のような感覚の暴走などでは断じてないッ!!これはまぎれもなくオレ自身に変化が起きているッ!!」 
そして、体の痛みが少し引いているのに気づく!! 
「足が・・・・まだ動く!!」 
ギーシュに向かって走るッ!! 

ギーシュが動かないッ!!やはりショックは大きいか? 
「・・・・・なぁーんてショックを受けると思ったかい!? 
そのルーンが光ったら強くなるなんてスデに想定の範囲内だッ!!」 
ギーシュが造花の花弁を散らすッ!そしてワルキューレ(×7)!! 
「僕はすでにこの戦いをずっと前から感じ取っていたんだ。精神が覚えていると言えばいいのかな。
そんなパワーアップくらいではこのギーシュ・ド・グラモンはうろたえないッ!!」 
ワルキューレが突進するッ!!ブチャラティが構えるッ!! 
(オレに起こった変化・・・。まずこれだけの重傷でなお動く事が出来る・・) 
2体のワルキューレの槍が捉えるッ!! 
ズバッ!ズバッ! 
「ああ!剣で真っ二つに!」 
ギャラリーも思わず息を呑むッ!! 
(二つ目・・・。本体のオレ自身が剣を自在に使えるようになっている・・・。) 
彼は一応パッショーネで銃火器などの扱い方もスタンドの扱い方と一緒に学んでいたが、剣は素人のハズだったッ!!
だが今のブチャラティはまるで何十人、何百人もの剣豪を斬り捨ててきた達人のような動きをしていたのだッ!! 
(そして何より三つ目・・!これはかなり大きな利点ッ!!) 
ブチャラティが後ろに控えていた3体のワルキューレを捉え・・! 
「"スティッキィ・フィンガース"!!」 

スタタァン!! 
まさに一瞬の出来事ッ!!その3体のワルキューレが『打撃』一発で粉々にぶち割れたッ! 
「何ッ!?『打撃』だと・・!?だがさっきまでは一発では・・。」 
ギーシュがそう言ってブチャラティがこっちを見ているのに気づくッ! 
「落ち着け・・。まだあいつのスタンドとやらの射程距離には入ってない・・。 
絶対に2メイル近づかずに『伸びる腕』に警戒すれば・・! 
"ワルキューレ"!今から新しく出す奴と連携して奴を・・!」 
ボグシャア!! 
突然の打撃ッ!ブチャラティはまだ5メイル先にいるのに!腕も伸ばしてなかった! 
「ぐあああ!!」 
ワルキューレごと後ろに吹っ飛んだッ!! 
「そんな・・・まさか・・!」 
「S・フィンガースも合わせて強化されている!!パワーは一撃で青銅を粉々に! スピードはそれを3体相手に一瞬でやってのけるほどにッ!! 
射程距離に至っては5メートルに伸びているぞ!」 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・。 

一方ギーシュは不幸中の幸い!ワルキューレを寸前に出していたおかげでギリギリ決定打には繋がらなかったッ!! 

「ク・・・フフ、そうこなくてはいけないな!決闘を侮辱するよりはいい展開だぞブチャラティッ!!」 
ギーシュがかまえ直すッ!! 
「射程距離は5メイルに伸びたんだったな!ならさらに遠距離からッ!!」 
ジャンプと同時に石礫ッ!!衝撃でさらに後ろにッ!! 
だが着地するときッ!! 
ミシッ! 
(く・・・。やはりあまり無理は出来ない・・・。もうこっちの魔力も尽きようとしている・・・。あまり戦いを長引かせることはできない・・・。) 
だがそれはブチャラティも同じッ!! 
(一時的に動けるとはいえオレのダメージが消えたわけではない。動きすぎて自滅なんてマンガのやられ役みたいな展開だけはゴメンだ・・・。) 

((お互い、次の攻撃で勝負が決まる!!)) 

ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールがブチャラティを助けるために跪いてからまだほんの百数十秒しかたっていない・・・ 
二分程しかたっていない・・・・・・。 

あとその半分にも満たない時間で最終の決着はつくであろう・・・ 
彼らをつつみ込む運命を変えることだけは・・・ 
どんな魔法でも、どんなスタンドにもできないのだ・・・ 

次に動いた時!最後の勝負は始まるッ!! 

「なんか使い魔の奴・・。剣持った時から強くなってないか・・?」 
「ああ・・。なんかあの見えない『打撃』、今はアイツからほとばしるオーラそのものが攻撃してるように感じるんだけど・・・。」 
(・・?みんなには『アイツ』が見えていないの・・?存在を感じ取っているだけ・・?) 
ルイズはブチャラティの後ろの存在に今なお困惑していた・・・。 
(アレは・・・ブチャラティが動かしているの・・?ブチャラティ・・・ただの平民じゃない・・? 
私だけがハッキリ見ているのは私がアイツの主人だから・・?) 
使い魔とメイジは一心同体。使い魔はメイジの目となり、手となり、足となる存在。 
その絆がルイズの感覚に変化を表したようだ・・・。 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・。 
「『錬金』!!一体のワルキューレに青銅を集中させるッ!!」 
先に動いたのはギーシュッ!! 

ピタッ ピタッ ピタッ 

「耐久力を強化・・。そして魔力を極限まで脚部に集中させて強化ッ!!」 
タンッ! 
ブチャラティが駆け出す!! 
「いけッ!強化ワルキューレよ!!」 
スタッ!!強化ワルキューレが迎え撃ったッ!! 
「速いッ!!さっきまでより凄く速くなっている!!」 
「さらに耐久力も上がって一撃では破壊できないッ!!」 
そしてブチャラティと強化ワルキューレが接近した!! 
「忘れたか・・?オレには『ジッパー』があるんだぜ・・。"スティッキィ・フィンガース"!!」 

「かかったなアホがッ!!」 
ギーシュが叫ぶッ!! 

「ジッパー?よく覚えているさ・・。それがあれば耐久力は関係ないだろう・・。 
だが逆に考えると、耐久力を上げればおまえはジッパーを使わざるを得ないだろう?」 
ギーシュが造花を前におもいっきり突き出す!! 
「ああっ!!まさかッ!!」 
「君のジッパーは打撃と比べ、出した後にほんのわずかながら大きな隙が出来ているッ!!一瞬。だがこの一瞬を僕は待っていたんだッ!!」 
ギーシュが『石礫』を唱え始めた! 
「僕との間に直線上に強化ワルキューレを置き、その直線のラインを渡っていけば、 
君はワルキューレを攻撃するためにそのまま直線状に走るだろう。だがそれが狙いだ! 
ブチャラティからみて僕がワルキューレの影、『死角』に入りジッパーを使ったために隙が出来る、この一瞬を待っていたんだッ!!
この最後の石礫は発射されてからじゃあ対応できない!突進力を重視したのは彼に考える暇を与えないためだッ!」 
いままでで一番高密度、超硬質に練り上げられた礫ができあがる!! 
「ギーシュが優位に立ったぞッ!!」 
「ギーシュが勝つのかぁ!?」 
「ブチャラティさん逃げてぇーーーーーッ!!」 
シエスタが叫ぶッ!! 
「あ・・あ・・ブチャラティ・・・!間に合わない・・!」 
ルイズが負けを確信する・・! 

「勝ったッ!!こいつをくらって終われッ!!」 

「なるほど・・・死角ができる一瞬をねらうつもりだったか・・・。 
危なかった・・。こっちも策を練ってなければやられていた・・。」 

「えっ!!?」 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・。 

意外ッ!その男は背後にッ!! 
「い、い、いつから!?どうやって僕の後ろに!?」 
「言っただろ?オレにはジッパーがあると・・。」 
ブチャラティが地面に指差す。そこにはッ!! 
「じ、地面にジッパーが・・?」 
「ジッパーは何も切断だけが使い道ではない。オレのS・フィンガースのジッパーは壁や地面に貼ればそこに『中の世界』を作り出す事ができるッ!!
さらに開閉はオレの意思で自在に行うことができるッ!!」 
ギーシュはジッパーを目で辿るッ!ブチャラティとワルキューレのいた所から自分の背後までジッパーは伸びていたッ!! 
「あ、あれかッ!あれで『ゼロのルイズ』の爆発からやり過ごしていたんだッ!! 
だからアイツは無傷だったんだッ!!」 
キュルケも思い出すッ!! 
「じゃあ最初の日、私たちの目を欺いたのもアレと言う事なの!?」 

「まあ図で説明するとこういうことになる。」 
● →ワルキューレ 
∥ →ジッパー縦。 
= →ジッパー横 
① 

ギーシュ       ●突撃方向―→           ←― ブチャラティ 

「こうやって普通に突撃を行う。すると、」 
② 

ギーシュ                    ●→  ←ブチャラティ 
  ↑                               ↑ 
『石礫』用意                        こっちからはギーシュが見えない。 
「こうやってワルキューレで死角を作りオレに止めをさすつもりだったんだろ? 
だがオレは・・・。」 
③ 
===ギーシュ==============●=∥ 
 ←ブチャラティ (中に入った。) 
↑                      ↑ 
実は彼からも見えない。          ジッパーを貼って中に入る。。 
「お前の見えない角度から地面にジッパーを貼ってその中に入る。 
おまえ自身も呪文でトドメを指す事に集中して足元に気づかない。後は・・・。」 


④    

ブチャラティ ===ギーシュ==============●=∥ 

    ←―――――――開け!ジッパー! 

「ジッパーの持ち手を持ちながらジッパーを開けば、お前に気づかれる事無く射程距離内に難なく入る事ができると言うワケだ。」 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・ 

「な、なぜ今までそれをもっと速く使わなかった・・?」 
「実戦であろうがなんだろうが、切り札は最後のいよいよ危なくなった時に使うものだろう?」 
場の空気が張り詰めるッ!! 
「ブチャラティが・・・逆転した・・・!」 
「ギーシュが危ないッ!!」 
「逃げろギーシュ!!」 
ジリ・・・・。 
「無駄だ。オレのS・フィンガースのスピードと射程距離は・・・すでにお前を捉えているッ!! 
逃げる事は・・・不可能だ!!」 
モンモランシーが息を呑む! 
「いや・・・・・。まだよ・・。」 
「・・・・・・・フフフフ・・。ハハハハハハハハハ!!!!!!!! 
なぁ~んで僕が逃げなきゃ行けないのかなぁ!?わざわざそっちからトドメをさされに来たのにさぁ!!」 
ギーシュがブチャラティに造花を向けるッ!!その先には・・・発射準備の完了した『石礫』!! 

「僕の作戦が失敗しようが・・、それがどうした!?いくら僕に攻撃を当てるためとはいえ、ここまで至近距離まで近寄ればもうハズす事はない!! 最終的に・・・攻撃さえ当たればよかろうなのだぁ――――ッ!!」 
「・・・・・・・・・・・。」 
ブチャラティは石礫に目を据えるッ!! 
「さらにッ!こうしている間に強化ワルキューレは戻って来ているんだぜッ!! 罠に嵌め返したつもりが、嵌ったのは結局君だブチャラティッ!!」 
ガシャンガシャン!! 
強化ワルキューレが猛スピードでこちらに向かうッ!! 
「ああ!ブチャラティ!!もうダメ!降伏してッ!!」 
「もうおそい!脱出不可能だッ!喰らえッ!!」 
その瞬間誰もがギーシュの勝利を疑わなかったッ!! 
だがブチャラティはッ!! 
(見える・・・。見えるぞ・・・!) 

ズバッ!ガキンッ!! 

「な・・・・え・・?」 
ほんの、一瞬の出来事だった。 
ワルキューレが剣で見事に切り刻まれていた。そして! 
「ぐうッ・・・おりゃぁぁぁぁ!!!」 
バキィィン!! 
石礫を剣だけでぶっ壊したッ!! 
「な・・バ、バカな・・・!こんなはずは・・!」 
「・・・・ゲーム・・・・セットだ・・!!」 

「アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリ 
アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリ!!!!!」 
右頬、顎、左肩、胸、右膝、両脛… 
至る所を殴り付け確実な勝利をもぎ取るッ!! 
最後の力を振り絞った渾身のラッシュだったッ!! 
「ぶっ!ぐおっ!がっ!ぐあっ!ぐえっ!」 
「アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリ 
アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリ 
アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリ!!!!!」 
ドッバァ――――ッ!! 
「ブァガァーーーーーーーッ!!」 
バラッ! 
「アリーヴェデルチ!(さよならだ)」 
ドタドタドタッ!! 
「う、うわあああああああっ!ぼ、僕の体がぁーーーーーーッ!!」 
「ひいいええええーーーーっ!ギーシュがバラバラにぃーーーッ!!」 
誰もが悪夢をみていると錯覚したッ!!あのギーシュが!トドメを刺されたと思ったら、次の瞬間、頭!胴体!腰!右腕!右手首!左腕!左手首!右足!左足! 
計9パーツのバラバラ状態に変わり果ててしまったのだ! 

これにはルイズも顔を青ざめさせるッ! 
「ブ、ブチャラティ・・・!何も・・!何も殺さなくたって・・!!」 
「安心しろ。死んじゃあいない。『今』はな。」 
ブチャラティがギーシュに近づく。 
「さあ、オレの勝ちだ。ここから先はお前をどうしようとオレの勝手だよな。」 
「あ・・・。あ・・。僕は・・・・勝てなかったのか・・?」 
ブチャラティが髪のところをニンジンを掘るように持ち上げる。 
「さて、ルイズ。約束通り『晒し首』を見せてやったぜ。」 
「ぼ、僕は死ぬのか!?このまま死ぬのか!?」 
ルイズは口をアングリさせた。 
「え・・?生きてる!?どうやって生きてるのコレ!?」 
「どうだ?何か感想はあるか?」 
「あ、あるわけないでしょ!この馬鹿使い魔!!無茶しすぎよ・・・!」 
ルイズはもはや展開についていけなかったが、ギーシュは生きていたので安心したようだ。 
そしてブチャラティがギーシュに顔を向ける。 
「さてギーシュ!お前はもう死んだも同然だがまだ生きている。 
だがそれもいつまでも続かないぞ・・・?そろそろ息が苦しいだろう?」 
「い、息が・・・・出来ない・・!」 
ギーシュの顔がどんどん赤くなるッ!酸素が足りなくなっているのだッ! 
「このまま体に繋がなかったら、そうだな、あと4,5分でマジに死ぬぞ。 
それがイヤならこのまま降伏し、あとルイズに対する非礼も詫びてもらおう・・。」 
モンモランシーが心配そうに見ている。 
「ギーシュ・・・。」 

「わかった・・・。僕の負けだ・・・。 
ルイズに対する僕の失言についても謝るよ・・・。」 
ギーシュは俯いて言った。 
「そうか・・・・・・。」 
「ブチャラティ・・。もういいじゃない・・。何もここまでやる必要なんてない・・。」 
ブチャラティはギーシュの胴体を見る。 
「そうだな・・。軽はずみな発言についカッとなってしまったが、コイツはこのまま殺すには惜しいものを持っている・・。ここは『殺害』と言う形ではなく・・・。」 
ギーシュの頭を繋ぐ。 
「頭だけ繋いで『再起不能』という形にさせてもらおう・・・。残りは他の誰かに繋いでもらうんだな・・・。」 
ヨロ・・・。 
ルイズが肩を持つ。 
「ブチャラティ!大丈夫!?」 
「大丈夫・・。一人で歩ける・・。」 
「早くケガを直してもらって来なさいよ!もうゆっくり休んでなさい!」 
「そうだな・・・。もうオレは疲れた・・・。」 
ブチャラティは学院に向かって歩き出した・・。 
「バカ・・・。無茶するんだから・・・!」 

「ギーシュ!大丈夫か!?」 
「ギーシュ!しっかりして!!」 
モンモランシー達数名がギーシュの元に駆け寄る。 
「う・・ううん・・。」 
「ギーシュ!大丈夫!?生きてるわよね!?」 
モンモランシーが腕を繋ぎながら言う。 
「モンモランシー・・・。すまなかった・・。 
結局・・・僕は・・・勝つことが出来なかった・・・。」 
「もうしゃべらないで・・!ケガに響くわよ・・・。」 
ギーシュは空を向いて言う。 
「結局・・。僕は無様なまま終わってしまった・・・。 
運命を変える事は・・できなかった・・。」 
モンモランシーは少し黙ってから言った。 
「そうね・・。あんたは運命を変えられなかった・・。 
でもこれだけはいえるわ。運命を変えようとがむしゃらになったあんたの姿は、とても輝いてた。それこそ、どの宝石にも勝るほどにね・・。」 
「モンモランシー・・・。」 
モンモランシーは続ける。 
「あんたは確かに成し遂げる事はできなかった。でも私は見ててこう思った。 
本当に大切なのは、何かを成し遂げようと行動する強い意志のほうじゃあないかって。 
だから・・・。もういいじゃない・・。もう・・・。」 
ギーシュのパーツは修復完了した。 

「・・・フ・・。何言ってるのさ・・。いつも言ってるだろう?一番素晴らしいのは 
君の、女王陛下も顔負けな神々しい美しさに決まっているじゃないか・・。」 
「それだけ口が聞ければ大丈夫そうね。」 
ギーシュが手をついて上体を起こす。 
「しかし・・・。ブローノ・ブチャラティ・・。結果論とはいえ、結局最終的に彼によって成長のための機会を作ってもらってしまったようなものだ・・。 
彼を見ていると、まるで僕を正しい道へと導いてくれるチームリーダーのように見えるよ・・。」 
ギーシュは偶然か核心をついていた・・・。 
「ルイズ。結局彼は・・・ブチャラティは何者なんだ・・? 
彼のあの実戦慣れした動き、能力、何より彼から痛いほど感じられた『覚悟』・・・。 
戦い終わってから、急に知りたくなったんだ・・。僕は何者と戦っていたのか・・。」 
「・・・アイツは、」 
バタッ!! 
「あ!アイツ倒れちまったぞ!?」 
「ブチャラティ!んもうッ!結局世話かけてッ!!」 
ルイズがブチャラティのほうに向かおうとして、一度止まった。 
「・・・アイツは、私の使い魔よ・・・。 
それ以上でもそれ以下でもない。私が知ってるのはそれだけ。」 
そう言って、ブチャラティの元に走っていった。そして思った。 
「アイツが何者?そんな事、私が一番知りたいわよ・・・。」 
ギーシュもふと呟いた。 
「やれやれ・・・。得体の知れない男だ・・。完敗だな・・。」 


―※― 
―――――我々はみな『運命』の奴隷なんだ。 
形として出たものは変える事はできない・・・。 
現に君はその運命によって命を落とした・・・。 

誰の・・・声だ・・? 

―――――まさか生き返るとは思わなかった。こればかりは僕も見落としていた。 
君はまだ運命の形を留めていないのだ・・・。 

何だ?何を言っている? 

―――――君たちがこれから歩む『苦難の道』にはきっと何か意味があるのだろう・・。 
かつて君が・・・かつての仲間達と歩んだあの道のように・・・。 
君たちの苦難はやがて、あの少年に受け継がれたように、どこかの誰かに希望として伝わっていくような何か大いなる意味となる始まりなのだろう・・。 
僕には何も出来なければ無事を祈ってやることもできないが、君が『眠れる奴隷』であることを祈ろう・・・。 
何か意味のあることを切り開いていく『眠れる奴隷』であることを・・・。 

―※― 

「・・・ラティさん・・。ブチャラティさん・・・・。」 



「ブチャラティさん!!」
起こしたのはメイド服の少女だった・・。
「シエスタ・・。」
「よかった!もう5日も眠っていたんですよ!?
病室だった。どうやら途中で倒れてしまったようだ。
「本当に・・・よかった・・。もしかしたら・・・もう目覚めないかもしれないと思って私もうどうしようかと・・!」
「お、おい・・。オレは大丈夫だから・・涙を拭きなよ・・・。」
ブチャラティが涙を拭いてやる。そして自分の体の異常を確かめた・・。
「これは・・・。ケガが完全に直ってる・・。1ヶ月は安静にしたほうがいいかと思っていたのに・・。」
「ええ、治癒の魔法の効果なんですよ。すごい大怪我だったから直るかどうか
気が気でなかったのですが・・・。でもよかった・・。脈拍も呼吸も良好です!」
「・・!!・・・そうか・・。」
そう言ってブチャラティはふと疑問に思った。
「シエスタ。君がオレを看護してたのか・・?」
「いえ。あなたを看護していたのはミス・ヴァリエールですよ。
シエスタの指した先には、疲れきってブチャラティにもたれかかって眠っていたルイズがいた。
「ブチャラティさんをここまで運んだのも、「『治癒』の呪文のための秘薬の代金を払ってくれたのも、ミス・ヴァリエールなんです。」




ブチャラティがルイズの肩に毛布をかけてやって言う。 
「後で、礼をいわなくちゃあいけないな……秘薬って、やっぱり高いのかい?」 
「平民に出せる金額でないことは確かですね」 
そう言って、意地悪そうにシエスタは笑った。 
「5日間ずっと付きっきりで看護していたんですよ・・。包帯を取り替えたり、顔を拭いたり……。
ずっと寝ないでやってたから、今はお疲れになったみたいですけどね」 
「そう・・・・か・・・・。」 
ブチャラティはルイズの寝顔を見ながら、どこか微笑ましい気持ちになった。 
「んん~。アンタご主人様を心配させるんじゃないわよ・・・。ムニャ。」 
「生意気で、ワガママで、傲慢な女だと思っていたけど、けっこうカワイイところがあるもんだな。 
・・・・ありがとうな。ルイズ。」 
ブチャラティは頭を撫でながらそう言った。 
そして思った。オレの命を救ってくれた恩を返すまでは・・・。 
そして、イタリアに変える方法を見つけるまでは・・・。 
――――――――――――――――こいつの使い魔でいても、いいかな 

「あーオホン。お取り込みのところ悪いんだけど・・。」 
全身包帯グルグル巻きの正体不明の男がいた。だがその声に 
聞き覚えがあった。自分の声に似てたから。 
「もしかして、ギーシュか?」 
「ああ、正真正銘"青銅"のギーシュ・ド・グラモンさ。」 
だがその痛々しい姿はブチャラティもビビッた! 
「お前・・・そんな怪我になるほどぶん殴った覚えがないんだが・・・。」 
「まあ・・・いろいろあってね・・・。実は・・・二股ではないことがバレたんだ・・。」 
―※― 
「さあ、アンタも治療を受けにいくわよ。」 
「ああ・・・。」 

ギーシュ様―――――――――――!!!!! 

「「えっ!?」」 

「ギーシュ様!お怪我は大丈夫ですか!?」 
「負けてもかっこよかったですよ!ギーシュ様!」 
「すぐ応急処置を!私"水"使いだから直せますよ!」 
「何よ!私だってできるわそれくらい!」 

ガヤガヤ!ゴタゴタ! 


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・ 

「ひい、ふう、みい・・・・12人ね。ケティも入れたら合計十四股だったって事・・。 
ふぅ~~ん・・・。」 
ギーシュが身の危険を感じ取るッ!! 
「じょ・・じょうだんだってばさぁモンモランシー!ハハハハハ。 
ちょ、ちょっとした茶目っ気だよぉ~~ん!たわいのないイタズラさぁ! 
やだなぁ、もう! ま…まさか、もうこれ以上殴ったりしないよね…? 
重症患者だよ。全身骨折してるし絶対安静にしてないと・・・。ハハハハハハハハハハ・・。」 

「もうアンタにはなにもいうことはないわ・・・。 
・・とてもアワレすぎて・・・。 

何も言えないわ。 

「アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリ 
アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリ!!!!!」 
「ちょ、やめ!骨折部分にひび・・グワァ!!」 
右頬、顎、左肩、胸、右膝、両脛… 
至る所を殴り付け断罪を下すッ!! 
怒りの力を振り絞った渾身のラッシュだったッ!! 
「ぐあっ!ぐえっ!わ、悪かった!僕が悪かったからもう・・!ゆるグパァ!!」 
「アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリ 
アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリ 
アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリ!!!!!」 
ドッバァ――――ッ!! 
「ブァガァーーーーーーーッ!!」 
バラッ! 
「アリーヴェデルチ!(さよならよ)」 

―※― 

「と言うわけで・・ね・・。」 
「・・・・・そうか・・。それで、もう懲りたのか?」 
「まさか!僕はグラモン家の人間だよ?これからも全ての女性を愛でる薔薇でいつづけるよ。 
それより、君には負けた。君の黄金の精神にはいずれ一矢報いて見せるよ。 
これからもよろしく!ハッハッハ!」 
ブチャラティは半ば呆れつつも、 
「やれやれ、これからもいろいろ大変そうだ。」 
半ば楽しみにしていたりもするブチャラティだった。 

ギーシュ・ド・グラモン――――再起不能――――まさかのダブルアリアリで 
                               全治半年(『治癒』のおかげでで2週間)                               
モンモランシー・マルガリタ・ラ・フェール・ド・モンモランシ―――それでもギーシュの看護を行った。 
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール―――部屋に連れて行ってもらうとき
                               ブチャラティに お姫様ダッコを
                               されていたことに顔を赤らめ、ぶん殴る。 
シエスタ―――――――その騒動の後、ブチャラティに食事を作ってやる。 
ブローノ・ブチャラティ――――再起不能から離脱。 

to be continued・・・-> 
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