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DIOが使い魔!?-3 - (2007/06/08 (金) 17:14:49) のソース

そうしているうちに、コルベールが戻ってきた。そして、その後ろに続く二つの人影。 
『微熱』のキュルケと、『雪風』のタバサであった。 
先程のパニックの折、混乱する生徒達の中で彼女達だけは自分を保っていたのをルイズは見ていた。 
恐らく自分と同じくこの死体の奇妙さに気づいたのであろうその2人がこの場に来るのは不思議ではなかった。 
内心そう思いながらも、キュルケが嫌いなルイズは、突っかからずにはいられなかった。 

「ツェルプストー、何か用?」 

宿命のライバルを前に、自然とルイズはいらだった口調になった。 
そんなルイズの態度をうけながし、キュルケは飄々と答えた。 

「べっつに~。用なんか無いわよ、あんたには。あるとすれば、そこに転がってる身元不明の死体に、かしら?」 

「なによ、ハッキリしなさいよ!」 

キュルケの微妙に的を得ない回答に、ルイズの方が痺れを切らした形となった。 
キュルケはいかにも『呆れた』といった表情を浮かべた。 タバサの方は、さっきからずっと黙って、杖を抱えたままだ。 

「だから、契約よ!するの?その死体と」 

「……あっ」 

キュルケの言葉にルイズはハッとした。

さっきまでの、自分をどこかに置き去りにして来たような感覚は消えていた。 
そうだった。 
このバラバラ死体がどうしてこの場に呼び出されたのかルイズはすっかり忘れていた。 
自分はこれから一生をともにする使い魔を呼び出すために、このサモン・サーヴァントに臨んだのだった。 
万全を期して。 
そうして呼び出されたのが目の前にデンと横たわる、身元不明の死体だったというわけだ。 
つまり………… 
ということは……… 
この理屈から言うと……… 
ルイズの思考が最悪の未来を脳裏に描き出した。 
「こ、こ、これと契約しろっての~!?無、無理よ!無理無理!ぜぇったいいや!」 

ルイズは半狂乱になって無理無理無理と繰り返した。 
契約するということはつまりキスをするということだ。 
そこの死体と。 
ルイズは、今初めて自分がとんでもない状況にあることに気がついた。 
チラリと死体を見る。 
割られたスイカと目があった気がした。 
ぶるっと身震い。 
シャレにならない… 
ルイズはコルベールに助けを求めることにした。

ミスタ・コルベール!召喚のやり直しを希望します!」 

割と切実なルイズの声が広場に響いた。 
何が好きで死体にファーストキスを捧げなければならないのか……ルイズは最早半泣きだった。 
己の不幸を強く呪うとともに、どうしてコルベールだけでなく、キュルケとタバサもこの場にきたのか、ルイズは悟った。 
以前から、サモン・サーヴァントは伝統に基づく神聖な儀式であり、召喚のやり直し等は不可能である旨は、目の前にいるコルベールから耳にタコができるほど聞かされている。 
今更彼が、自分の言葉を覆すとはとうてい思えなかった。 
つまり、彼らは否が応でも私に契約をさせるつもりで、キュルケとタバサは、自分が契約を拒否した場合に、無理矢理ふんじばって契約させるためにいるのだ---ルイズは確信した。 
確信した瞬間にルイズは三人に向かって杖を構えた。

「私に近寄るなぁあああ!!!!」 

ルイズは腹の底から叫んだ。 
親の仇でも見るかのような、鬼気迫る表情に、流石の三人も気圧された。いつも冷静なタバサすら、身を固くしてルイズを見守っていた。 
---妙な誤解をしているようだ…と、三人は感じた。 
そして、おそらくは誤解の原因であろうキュルケが、恐る恐る話しかけた。 
「あのね、ルイズ。変な勘違いしてるみたいだけど、まったくの誤解よ。あんたをどうこうする気は…………」 
「嘘だッ!!!!」 

必死の弁明はしかしルイズの叫びに遮られた。 
これは重症だ。 
このままだと奇妙奇天烈な怪奇事件に発展しそうだったので、キュルケに変わってコルベールが説明に入った。 

「ミス・ツェルプストーの言っていることは本当ですよ。ミス・ヴァリエール。私たちはあなたをどうこうしようというつもりは全くありません。落ち着いてください。」 
「…………分かりました」 

ルイズが杖を下ろす。 
やはり亀の甲より年の功か、今度は説得が通じたようだ。 
取りあえず惨劇は回避されたらしい。 

三人は肩の力を抜いた。そのままの勢いでコルベールが話を続ける。 

「私もこんな事例は初めてで、少々面食らっています。このまま契約をあなたに強制するのも酷というものでしょう。よって私はあなたに選択肢を与えようと思います。 

①覚悟を決めてこのまま契約を行う 

②今回の召喚はなかったことにして、死体を内々に処理。一年間留年の後、再び再召喚 

選ぶのはあなたです、ミス・ヴァリエール。あくまであなたの意志で選んでください」 

意図せずして、責任をすべてルイズにまる投げする形になったことに、キュルケは不快感を感じたが、どうしようもなかったのでだんまりを決め込んだ。 

ルイズは、コルベールのセリフに最初は期待したが、最後にあんまりな二択を突きつけられて目の前が真っ暗になった。 
契約か、留年か… 
おおよその貴族のご多分に漏れずプライドの高いルイズにとって、留年など、屈辱以外の何物でもなかった。 
それならば我慢してこの死体と契約した方が……チラッと、死体を見る。こんどは、ちぎれた左腕が、自分に向かって手を振っているように見えた。 
---留年もアリかな、とルイズは考え直した。

しかし---ルイズの脳裏に、家族の顔、そして、大好きなカトレアの顔が浮かんだ。 
これまで自分が魔法を使えないせいで、何度家族に迷惑を掛けてきたことか… 
自分が留年することで、これ以上大好きな家族に迷惑をかけることは、とてもルイズには出来なかった。 

それに、やはりこの死体は、ただものではない。その考えは、自分の中で確信にまでなっていた。何かとんでもない秘密があるに違いない……ならば、それに賭けてみるべきではないか……? 

暫く考えた後、ルイズはとうとうハラを決めた。 
「ミスタ・コルベール」 
「決断しましたか…?」コルベールが自分の目を見て問う。 

ルイズもまた、コルベールの目を正面から見返した。自分で出した結論に自信を持たなくて、何が貴族だろうか。 
これから起こるすべてを受け止めてみせよう。 

高らかに宣言する。 

「私、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ドラ・ヴァリエールは、この物を使い魔と認め、契約します。」 

一息で言い切る。

コルベールは一言「分かりました」とだけ言った。 

タバサは黙ってルイズを見つめている。 
何か思うところがあるのだろうか。 
一方のキュルケは、予想外の展開に目を見開いた。 
(ルイズ、あんた、決めるときは決めるじゃない) 
自然と頬がゆるむ。 
やはり彼女は私のライバルにふさわしい…感心しつつそう思いながらも 
一方で不安も覚えた。 
今ルイズが契約すると言ったアレ… 
アレはまさに未確認生物だ。 
今はおとなしく死んでいる(?)が、契約を交わした瞬間何が起きるか皆目分からない。 
契約の瞬間は、メイジがもっとも無防備になる瞬間でもある。 
--ルイズの身に何か起こったときは自分が……そう心に決めつつ、キュルケは、堂々とした足取りで死体に近づくルイズを見守った。 

ルイズはどうやらあの割られたスイカみたいな頭部の唇にキスをする事に決めたようだ。 
案外ロマンチストなようだが、割られたスイカは唇部分もほぼ真っ二つになっているので、それに向かって少女が唇を近づける様は、第三者から見るとかなりシュールだった。 
ぶっちゃけ気持ち悪い。ルイズは、スイカ頭を見ないように目を瞑ってその形の整った唇を近づけていく。 

そして、運命の時--- 
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