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ゼロの兄貴-22 - (2007/09/22 (土) 11:23:52) のソース

ニューカッスル城礼拝堂。始祖ブリミルの像が置かれている場所に皇太子の礼服に身を包んだウェールズが佇んでいた。 
周りは戦の準備や脱出者の手伝いなどで忙しいため他には誰も居ない。 
ウェールズもこの式が終わり次第すぐにでも戦の準備に駆けつける予定だ。 
そこに扉が開き。ルイズとワルドが現れた。ルイズの方は昨日プロシュートから式があると聞かされていたものの、まだ戸惑っている。 

もっとも、昨日言われた『なら、気絶させてでも連れ帰るか?オメーにそれをやるだけの覚悟があんのならやってやってもいい』 
これを本気で考えていたため、結婚の事など頭から消し飛んでいたのだが。 
確かに気絶させるなりすればウェールズをトリステインに連れ帰る事はできる。 
…だが、問題はその後だ。『自分一人無様に生き残ったと思い命を絶つ』 
そうなった場合、下手をすればアンリエッタまでもがその後を追いかねない。 
もちろん、自殺するとは限らないが『覚悟』という言葉が重くのしかかっていた。 
死を覚悟した王子を止める『覚悟』ができない自分に対して自暴自棄な気になり落ち込ませていた。 

ワルドはそんなルイズに「今から結婚式をするんだ」と告げアルビオン王家から借り受けた新婦の冠をルイズの頭に載せ 
続いて、何時も着けている黒のマントを外し同じく借り受けた純白のマントをまとわせる。 
ワルドによって着飾られても、思考の渦に埋まっているルイズは無反応でワルドはそれを肯定の意思と受け取った。 
だが、一つある事に気付いたルイズがワルドに問う。 
「………プロシュートは?」 
「彼なら今頃イーグル号に乗ってるところさ」 
それを聞いた瞬間ルイズの心にさらに影が差す。 
あれだけ『今のオレの任務はオメーの護衛だ』と言っていたプロシュートが自分を置いて先にトリステインに帰る。 
(何時までたっても『覚悟』ができない自分に対して呆れ見捨てられたんだ……) 
そう思いさらに自暴自棄な気持ちが心を支配した。

「では、式を始める 
  新郎、子爵ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド。汝は始祖ブリミルの名においてこの者を敬い、愛し、そして妻とすることを誓いますか」 
ワルドは重々しく頷いて、杖を握った左手を胸の前に置いた。 
「誓います」 
ウェールズは頷き、今度はルイズに視線を移すが当のルイズはハイウェイ・トゥ・ヘルが発現してもおかしくない状態だ。 
そんな、状態でウェールズやワルドの声がマトモに聞こえるはずはなかった。 
「新婦、ラ・ヴァリエール公爵三女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール……」 
朗々と誓いの詔をウェールズが読み上げる段階になってようやく結婚式をやっているという事に気付いた。 
相手は、幼い頃からこの時をぼんやりと想像し憧れていた頼もしいワルド。 その想像が今、現実のものとなろうとしている。 
ワルドのことは嫌いじゃない。おそらく、好いてもいるだろう。 
でも、それならばどうして、こんなに心に迷いがあるのだろう。 
そう思い、宿屋でワルドに結婚を申し込まれた事をプロシュートに相談した事を思い出した。 
どうして自分は、プロシュートにそれを相談したのだろうかと思う。 
(自分で決められずに他人に決めて欲しかったからだ) 
なぜ決められなかったか。その答えはスデに自分が知っている。 
(肝心な時に『覚悟』ができていなかったからだ) 
プロシュートがよく言っている言葉を借りれば自分は『マンモーニ』だという事だ。 
そして、その覚悟の意味を知っているであろうプロシュートは自分から離れていった。 



「兄貴ィィィ起きてくれよォーーー」 
壁に打ち付けられ体中に傷を作り血に塗れたプロシュートのが辛うじて握っていたデルフリンガーが己の主の名…もとい敬称を呼ぶが返事は無い。 
「『ガンダールヴ』の事を思い出せそうなのに兄貴が死んだら意味がねぇだろうがよォーーー」 
だが、それに答えるべき主は沈黙したままだった。

……… 
……………… 
……………………………… 
気が付くとさっきまでとは別の場所を歩いていた。 
見覚えが無い場所ではない。いや…見覚えが無いどころかよく知っている場所 
一定のリズムで規則正しく流れる音。自分が召喚される前居た『ヴェネツィア超特急』の中だ。 
無意識の内に車両を進むと、一人の男が釣竿を持ってそこに居た。列車に釣竿、ミスマッチもいいとこな組み合わせだがそいつの事はよく知っている。 
「ペッシかッ!」 
しかし、ペッシはそれに答えずに何かを叫んでいる。 
「まさかッ!この糸から墜落した一人分の『体重』っていうのはッ!うっ嘘だッ! 
  う…嘘だ!嘘だッ!あ…兄貴がッ!ま…まさかッ!オ…オレのプロシュート兄貴がッ!う…嘘だ!」 
ペッシが床に蹲りパニクって泣き始める 
「どうしよう~どうしよう~あ…兄貴がう…嘘だ!!オ…オレどうすれば……? 
  う…ううう…うう~~~そんなぁああああ…亀の中のヤツらも、でっ出てくる!ど…どうしよう~オ…オレ」 
『マンモーニ』、その言葉に相応しいうろたえ様だ。当然そんな弟分にする事はただ一つ。 
「オレがさっき言った事がまだ分かんねーのかッ!?ママっ子野郎のペッシ!!」 
その言葉と同時にペッシの顔面に思いっきり蹴りをブチ込む。それを受けたペッシは吹っ飛びいつもの説教に突入するはずだった。 
だが、それは虚空を蹴る。 
「なん…だと…!?」 
もう一度同じようにして蹴り上げる。だが同じだ。 
さっきと同じように空を蹴るだけだ。いや、ペッシには当たっている。当たっているが、何事もなかったかのように『通り抜けて』いる。 
「も…もうダメだあああああ」 
「なんだパニクってらあ~~~こいつマンモーニだな~ちェッ!」 
誰かにまでマンモーニと言われるペッシだがその声の主は老化が解けた乗客だった。 
そこでプロシュートが理解をする。自分が居なくなった事により老化が解除された列車だという事を。

そこで全ての光景が途絶え闇になり自分がどこで、何をしていたかを思い出す。 
「あの野郎にやられてくたばってるってわけか…」 
こうして、考えることができるという事は恐らくまだ生きてるのだろうとそう検討を付ける。 
断崖に置かれた樽と同じ状況だ。少しでも押せば谷底に、引き戻せば手元に戻る。 
そして、出した結論は一つだった。 
「ったく…情けねーなぁおい?何が『腑抜け野郎』だ?誰が『マンモーニ』だ? 
   オレがここで覚悟見せねーと…この先オレがペッシにマンモーニって言われちまうじゃあねーか!!」 
その言葉と同時にどこからか 
「兄貴ィィィィィィィイイイイイイイ」 
と聞こえたような気がし意識が光に包まれた。 

「兄貴ィーーーー!」 
「ペッ…いやオメーか」 
デルフリンガーを杖代わりにして立ち上がる。 
状態は最悪に近い。左脚にヒビが入り、全身打撲。おまけに頭も打っていてまだ視界がボヤけている。 
「チッ…左目が妙だな…」 
「そりゃああれだけ、やられればな」 
デルフリンガーは頭を打ったせいだと言うが、それが右目と左目で微妙に違っている。だが、まだその違いに気付けないでいた。 

「新婦?」 
妙な様子に気付いたウェールズがルイズを見ている。思考の渦からそれに気付いたルイズは慌てて顔を上げた。 
「緊張しているのかい?初めての時は事がなんであれ緊張するものだからね」 
緊張…などではない。自分は一人では何も決められない『マンモーニ』だ。 
だからこそ、今ワルド…いや誰かと結婚する事などできない 

そう思い、深く深呼吸をし生涯初めての『真の覚悟』を決めウェールズの言葉の途中首を横に振った。 
「新婦?」 
「ルイズ?」 
二人が怪訝な顔でルイズの顔を覗き込んむ。ルイズはワルドに向き直り、悲しくも何かを決意した顔で再び首を振る。 
「どうしたね、ルイズ。気分でも悪いのかい?」 
ワルドがルイズの目を見るが、その視線は反らさない。 
「日が悪いなら、改めて……」 
「そうじゃない、そうじゃないの。ワルド、わたし、あなたとは結婚できない」 
声そのものは小さいが、その言葉には確かに『決意』と『覚悟』が込められていた。 
その言葉にウェールズが首を捻る。 
「新婦は、この結婚を望まぬのか?」 
「そのとおりでございます。お二人には大変失礼を致すことになりますが…わたくしはこの結婚を望みません!」 
その瞬間、ワルドの顔に朱が差し、ウェールズは残念そうにワルドに告げた。 
「子爵。誠にお気の毒だが、花嫁が望まぬ式をこれ以上続ける訳にはいかぬ」 
だが、ワルドはウェールズを無視しルイズに詰め寄りその手を取る。 
「……緊張しているんだ。そうだろルイズ。君が、僕との結婚を拒む訳がないッ!」 
「ごめんなさいワルド。確かに憧れてた、恋もしてたかもしれない。でも…わたし自身がまだ結婚なんてできる段階じゃない」 
ワルドがルイズの両肩を掴み熱っぽい口調で語りだし、目が爬虫類を思わせるような冷たい目に変わった。 
「世界だルイズ。僕は世界を手に入れる! そのために君が必要なんだ!」 
人格が入れ替わった…そう思えるほどに豹変したワルドに脅えながら何とか首を振る。 
「僕には君が必要なんだ! 君の『能力』が! 君の『力』がッ!」 
プロシュートが怒っている所を見て怖いと思うことはあったが恐ろしいと思うことは無かった。 
あいつが人に対して本気で怒る時は必ず相手に何らかの原因があったからだ。 
だけど、このワルドは違う…! 
「ルイズ!宿屋で話した事を忘れたか!君は始祖ブリミルに劣らぬ優秀なメイジに成長するだろう!君がまだ自分で気付いていないだけだ!その才能に!」 
この感情は…恐怖そのものだ。目の前のワルドはルイズが知っているワルドではない。 
それだけに、今のワルドが無性に恐ろしかった。

「子爵…君はフラれたのだ。ここはいさぎよく……」 
「黙っていろッ!!」 
そう叫ぶと再びルイズの手をヘビが獲物に絡みつくがの如く両の手で握る。 
「君の才能が僕には必要なんだ!」 
「わたしは『ゼロ』よ!そんな才能のあるメイジなんかじゃあないわ」 
「何度も言っている!自分で気付いていないだけだ!」 
「あなたが愛しているのは、あなたがわたしにあるという在りもしない魔法の才能だけ… 
   そんな理由で結婚しようだなんてこんな侮辱はないわ!そんな結婚…たとえ死んでも嫌よ」 
ルイズがワルドの手を振りほどこうと暴れるが離れない、尋常ならざる力で握られていた。 
見かねたウェールズがワルドの肩に手を置き、二人を引き離そうとするが突き飛ばされる。 
ウェールズが立ち上がると同時に杖を引き抜く。 
「なんたる無礼!なんたる侮辱!子爵、今すぐラ・ヴァリエール嬢から手を離したまえ!さもなくば我が魔法の刃が君を切り裂くぞ!」 
その段階になってようやくルイズから手を離すが、その顔はどこまでも優しい、『偽善』で固められた顔だった。 
「こうまで僕が言ってもダメかい? ルイズ。僕のルイズ」 
「嫌よ…誰があなたと結婚なんかするもんですか…!」 
「ふぅ…この旅で君の気持ちを掴むため随分と努力をしたんだが…仕方あるまい。目的の一つは諦めよう。」 
「目…的…?」 
頭に『理解不能!理解不能!理解不能!理解不能!』という幻聴が聞こえる。 
「まず一つは君だ。ルイズ、君を手に入れる事。しかし、これは果たせないようだ」 
「…当然よ!」 
「二つ目は…君が受け取ったアンリエッタの手紙」 
「ワルド、あなた……」 
「そして三つ目…」 
アンリエッタの手紙という言葉で全てを理解し杖をワルドに向け詠唱を始めるが 
それよりも、ワルドの方が閃光の如く杖を引き抜きウェールズの心臓を青白く光る杖で的確に貫いた。

「き…貴様…『レコン…キスタ』…」 
ウェールズの口から血が溢れる。誰がどう見ても致命傷だった。 
「三つ目…貴様の命だ」 
「貴族派…!アルビオンの貴族派だったのねワルド!」 
「Exactly。いかにも僕はアルビオンの貴族派『レコン・キスタ』の一員さ」 
「トリステインの貴族のあたながどうして!」 
「答える必要は無いな…これから君はウェールズや…プロシュートだったか?彼らの下に逝くのだから」 
その言葉にプロシュートの名が入っている事に衝撃を受ける。 
ウェールズと同時に言われたという事はスデにプロシュートもワルドに殺されたという事だ…! 
杖を握ろうとしたがそれをあえなくワルドに弾き飛ばされる。 
「助けて…」 
蒼白になり後ずさる。立って逃げようとしても腰が抜けて立てないでいるが、その様子をみてワルドが首を振り『ウィンド・ブレイク』で吹き飛ばす。 
「もう遅い…だから共に世界を手に入れようと言ったではないか…鳴かぬなら殺してしまえと言うだろう?なぁ…ルイズ…」 
壁に叩き付けられ床に転がる。呻き声をあげ泣き、もうこの世にいないであろう使い魔に助けを求めた。 
「助けて……お願い……」 
そう繰り返し助けを求めるが、ワルドは愉しそうに呪文を唱え始めたが扉の外から足音と声が聞こえてきた。 
「『殺す』…そんな言葉は使う必要はねーんだ…」 
声と足音が大きくなる。そしてその声はルイズにとって聞きなれたものだ。 
「なぜならオレやオレ達の仲間が…その言葉を頭の中に思い浮かべた時には…」 
次の瞬間ドアがブチ破られ、ドアの破片が飛びそれをワルドが回避する。 
「実際に相手を殺っちまってもうスデに終わっちまってるからだ…!」 
慌てるわけでもなく、怒りをもっているわけでもなく、いつもの調子で危険極まりない言葉を吐き出し歩くのは全身傷だらけになったプロシュートだ。 
「…貴様!」 
「プロシュート…!」

二人が驚愕の目で傷だらけのプロシュートを見るが、ワルドの目は怒りを含み、ルイズの目は動揺を含んでいる。 
「オレが昔やった事と同じ事をしたようだから忠告…しといてやる……敵の頭に銃弾をブチ込んだとしても…生死の確認ぐらいしておくんだったな…」 
列車内でミスタに直触りを仕掛け、拳銃を奪い頭に3発の銃弾をブチ込み死んだものと思い亀に向かったが 
どういうわけか脳天に弾をブチ込んだはずの『ミスタのスタンド』が『氷』を持って『ブチャラティ』の所に居た。 
生死さえキッチリ確認していれば今頃は、ブチャラティ達は全滅しボスの娘を奪っているはずだったのだ。 
「…ったく、どっちの世界もマンモーニだな…!なに泣いてやがる」 
ギャングであるペッシとそうでないルイズを比べるのもどうかと思うがまぁ似たようなものとして扱っているプロシュートには関係無い。 
「生きてるなら…早く来なさいよ…!」 
そう叫ぶが顔の方は泣き顔のそれだ。

「さっきのお前の魔法…本当にオシマイかと思ったよ…ワルド…今までお前の事『老け顔のヒゲ』だなんて思っていたが 
   撤回するよ…無礼な事だったな…お前は信頼を裏切れる男だ…『婚約者の信頼』を含めてな…いやマジにおそれいったよ」 
淡々とした口調だがその言葉にははっきりとした意思がある。そのままゆっくりとワルドに近付くが『ウィンド・ブレイク』が飛び吹き飛ばされ壁に激突する。 
だが、それでも何事も無かったかのように立ち上がり再びワルドに近付く。 
「オメーは『ゲス野郎』なんだよワルド…裏切ったんだ…組織のようにな…!分かるか?え?オレの言ってる事…」 
「信じるのはそちらの勝手だ。勝手に信じたものを利用して何が悪い?」 
また『ウィンド・ブレイク』が飛びまた吹き飛ばされそうになるが、今度はデルフリンガーを床に打ち込みスタンドパワー全開で支え飛ばされないようにする。 
「どうした『ガンダールヴ』!動きが鈍いぞ?今にも死にそうではないか。攻撃しないと僕を倒せないぞ?せいぜい僕を楽しませてくれるんだな」 
だが、その言葉にも動じずその目はワルドのみを見据え歩みを進める。その歩みには一片に迷いなど無い。 
「…分かったよ兄貴!兄貴がいつも言っている『覚悟』ってのが俺にも言葉でなく『心』で理解できたッ!!」 
三度『ウィンド・ブレイク』が飛ぶがデルフリンガーが自分を前に突き出すように叫びそれに応じるかのように手を前に突き出す。 
「無駄よ!無駄無駄ァァアアア!剣などでは風は受けることはできん!」 
風がプロシュートを飛ばそうとした時デルフリンガーの刀身が光だし風を全て吸い込んだ。 
「魔法を吸い込むと思ったなら兄貴…!スデに行動は終わっているんだな…!」 
「そんな事ができるなら最初からやりやがれ…!」

「六千年前も昔に『ガンダールヴ』に握られて以来だからてんで忘れてたんだよ 
  でも、これからは任せてくれていいぜ兄貴ィ!ちゃちは魔法は俺が全部『吸い込んだ』からよ!」 
「…なるほど。私の『ライトニング・クラウド』を受けて生きているのはおかしいと思っていたが… 
   その剣のおかげか。それならばこちらも本気を出そう。何故風が最強と呼ばれるのか、その由縁を教育してやる」 
プロシュートとルイズはそれを見据えたまま動かないでいる。前者はあえて動かないでいるが、後者は動けないでいる。 
「ユビキタス・デル・ウィンデ……」 
そうしてワルドが分裂するが、今度は1体だけではなく4体…計5体のワルドがプロシュートと相対した。 
「また同じか芸がねーな」 
分身が懐から仮面を取り出し顔に付ける。 
「『エア・ニードル』…杖自体が魔法の渦の中心だ。その剣で吸い込む事は不可能よッ!!」 

それを見てプロシュートがルイズの方に向かい話し始める。ワルドx5は完全に余裕の態度でそれを見ている。 
「なに…ボケっとして…やがる。正念場だぜ…ルイズよォーー! 
フーケの時の覚悟見せやがれ…!オレが…突っ込むからよ…オメーは爆発を起こせ。自信を持て…いいなッ!」 
「無茶よ!そんな…!それに、そんな怪我してるのに巻き添え受けたらどうするのよ…!」 
それを聞かずに、ワルドの本体へと歩き出す。 
後ろ取られないようにワルドへ向かう。 
剣とグレイトフル・デッドで受け流すが、相手は五体。後ろを取られないようにしているとはいえ入れ替わるように分身と本体が攻撃を仕掛けてくる。 
腕に一撃を受ける。だが止まらない。 
脇腹を杖が掠め血が流れ出る。だが止まらない。 
大腿部に『エア・ニードル』が突き刺さる。だがそれでも止まらない。止まろうとしない。 
急所に受ける攻撃だけを受け流し、後は全て体で受け止めている。 
傍から見れば一方的に攻撃を受けているだけに見えるが、ジリジリと後退しているのはワルドと分身の方だ。 
「こ…こいつ!何故だ…?何故、貴様を使い魔として使役しているあの高慢なルイズのために命を捨てる!?」 
「『恩には恩を…仇には仇を…』それがオレ達チームのリーダーの流儀だ… 
  だから…オレもそれに従っている……オレの命を救ったという借りを返さねーってのは…オレがチームの流儀を裏切る…って事になるからな…!」 

「兄貴!それだ!心を振るわせられればなんでもいい!『ガンダルーヴ』もそうやって力を溜めていた!」 
それを聞いた瞬間ルイズに衝撃が走る。 
プロシュートは自分の魔法を信頼してくれているからあんな無謀な行為をしてくれている。 
ここで自分が何もしないという事はその信頼を裏切る…つまりワルドと同じ事をするという事だ…! 
「まだ『覚悟』っていうのはよく分からない…けど!わたしを信頼してくれているのは『心』で理解できたわ!」 
その声と共に杖を本体と分身に向け、詠唱の短いコモンマジックを連発する。 

狙いはプロシュート以外の全ての物だ。 
一発が分身に直撃し消し飛ばす。 
それでも爆発は止まらない。残りは命中はしていないが爆風がワルドと分身を容赦なく襲う。当然突っ込んでいるプロシュートにもそれは襲いかかる。 
「…くッ!邪魔だ!!」 
3体の分身がルイズに襲い掛かる。だがそれでもルイズは魔法を止めようとはしない。最後まで自分の使い魔を信頼すると決めたからだ。 
『エア・ニードル』がルイズを突き刺そうと飛び掛った瞬間…分身の動きが急激に鈍くなった。 
「グレイト…フル・デッド…」 
そう呟くように言う本体のワルドへと突き進む。 
「こ…これは…!?貴様…まさか…私や貴族達を…道連れに死ぬ気か…!?」 
「一瞬だ…一瞬老化させて掴めればそれでいい。爆風の熱で温まってる今なら…オメーだけよく老化するだろうよォーーーーーー!」 
それだけ言うとワルドに突き進む。速い、満身創痍な状態とは思えない速さだ。 
ワルドの左腕を右腕で掴むと老化を解除する。この程度の時間ならば城の連中に効果はあまり及んでいないはずだ。 
「てめーにも…覚悟してもらうぜ…」 
だが、そこに広域老化が解除され動きが元に戻った分身の杖が振り下ろされ… 
空中に『腕が舞った』 


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//第五部,プロシュート
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