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タバサの安心・キュルケの不安-4 - (2007/06/08 (金) 17:32:02) のソース
そうだとしたら、タバサのあの異変の説明が付かなかった。 流言飛語で煙に巻くつもりだ--キュルケは腹に力を込め、DIOの甘言に惑わされまいとした。DIOが何もしなくても、DIOの方が正しいのではないかと自分の方から心が揺らいでしまう所が、DIOの恐ろしいところだった。 ---絶対のカリスマ。 キュルケは、これ以上奴に喋らせれば、自分の善悪の観念が根底からひっくり返されるかもしれないと感じた。 頭ではない、本能の警告に従うままに、キュルケはDIOの胸倉を掴み、本棚にドンとに叩きつけた。 衝撃で本が何冊かバサバサと落下した。 「ホザきなさいよ…!」 ギリギリと胸倉を締め上げる。 キュルケはDIOの目を真正面から睨みつけた。艶やかで優しい目が、キュルケを見返した。 「苦しいよ……キュルケ。暴力はいけない。無抵抗の怪我人に…手を挙げるのが、君たちのいう貴族の流儀なのかい…?」 その目に安心を感じ、怒りの炎が沈静化してしまう心に、無理やり油を流し込んだ。 「黙りなさい…!!今度タバサに手を出してみなさい……ッ!!そのときは…」 「そのときは………どうするのかね…?」 感情の一切こもらないDIOの促しだった。 「そのときは……この『微熱』のキュルケが、アンタを焼き尽くすわ……」 再びDIOを本棚に叩きつけて、キュルケは胸倉から手を放した。 DIOは芝居掛かった仕草で胸元を払い、服装を正しす。 そして大仰に溜め息をついた。 「それはコワい……。…肝に銘じておくよ。」 DIOはそれだけ言うと、話は終わりとばかりにキュルケの脇を通り、机に座って読書を再開した。 先ほどの言葉とは全く裏腹なDIOの態度に、キュルケは堪忍袋の緒が切れた。 (---ッバカにして!!) 単なる脅しだとでも思ってるのだろうか? だとしたら随分と舐められたものだと、キュルケは思った。 一度痛い目を見ないと、コイツにはわからないようだ。 キュルケは静かに杖を取り出した。 相も変わらずDIOは背を向けて読書に集中しているようで、いくらか場数を踏んでいるキュルケには、隙だらけに見えた。 ゆっくりとDIOに歩み寄る。 すぐ真後ろまで迫っても、DIOは本に目を落としたままだ。 肩越しに見えた小児用の本の中に描かれている子供の挿し絵が、無責任な笑顔を振りまいている。キュルケは、その子供の笑顔がDIOの嘲笑に重なって見え、無性に癪に障った。 不意にDIOが低い声で言った。 「…どうした?まだ何かあるのか…?」 どうでもいいといった口調がこれまた癪に障り、キュルケは無言で杖をDIOに向けた。 ピタリと狙いを定める。 ---数瞬の沈黙があった。 「---本当にやるのか?」 すべてを見透かしたようなDIOの突然のセリフに、一瞬硬直したキュルケだったが、すでに自分が必殺の間合いに入っていることを思い直し、感情を殺して冷徹に杖を振りかざした。 次の瞬間--- "ドォォォオオン!!" キュルケの目の前から、DIOが姿を消した。 自分の理解を越えた出来事に、杖を振りかざした姿勢のまま呆然とするキュルケ。 読みかけだったDIOの本が、床にバサリと落ちた。 挿し絵の子供が、自分をバカにしている気がした。 ---ポンッと、肩を叩かれた。 それが誰によるものかようやく思考が追い付いた瞬間、キュルケは自分の体がダラダラと嫌な汗をかくのを感じた。 一体いつの間に…… キュルケは自分の心臓が氷でできた手のひらで鷲掴みにされた気持ちだった。 DIOの吐息が耳にはあっと掛かった。 ---- [[5へ>http://www22.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/80.html]] ----