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ゼロの来訪者-12」(2007/07/18 (水) 21:56:06) の最新版変更点

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「…………」 「…………」 学院長室にて、オスマン氏とコルベールが遠見の鏡を呆然としながら眺めている。 「…………」 「………み、ミスタ・ココペリ」 「…………」 「…ミスタ・コエムシ、聞いとるのかね?」 再度オスマン氏がコルベールに呼びかけるが、まったく反応が無い。 「……おい、毛根全滅男」 「誰の毛根が全滅しているんですか!まだサイドは生き残ってます!」 「もういっその事、そっちも剃った方がすっきりするような気もするが…」 「私は諦めません!諦めは何も生まないという事を、私は知っています!」 「まあ、それは良いとして。見たの?」 「ええ見ましたとも!彼は…彼はやはり『ガンダールヴ』なんでしょうか?」 「どうじゃろうな…」 オスマン氏が口髭をいじりながら答える。 「それにしては……『ガンダールヴ』は始祖ブリミルが、呪文詠唱中の  無防備な状態を守るために用いたと言われておる」 「はい…姿形は記述がありませんが、その力は千人の軍隊を一人で壊滅させ、  並みのメイジではまったく歯が立たなかったと!」 「そして伝承にはこうもある。  『ガンダールヴ』はあらゆる『武器』を使いこなし、敵と対峙したと…」 「はい」 「『武器』……使っとらんかったの」 「あっ!」 「というか、あれで『武器』なんかいるのかのう?」 「そ、そうですね………」 感じる!今どこかで、俺の存在意義が否定された! このデルフリンガー様の存在意義が…ッ! 「ま、それはそうとして…彼は本当にただの平民だったんじゃな?」 「はい、どこからどう見ても。念のためにディティクト・マジックで確かめたのですが  反応は無く、正真正銘ただの平民の少年でした」 その言葉を聞いて、オスマン氏は頷く。 「うむ、ではあの少年はどうやってあの姿になったんじゃ?  魔法も使わず、どうやってゴーレムを溶かしたのじゃ?あの雷は?  そして…あのグラモンの息子をどうやって治したと言うんじゃ?」 「それはその…先住魔法でしょうか?」 口ごもりながらコルベールが答える。 「では何故君のディティクトマジックに反応がなかったのかのう?  先住魔法も魔法の力、まったく反応がないという事は無かろう」 「………わ、わかりません」 その言葉にため息をつくオスマン氏。 「うむ、ではあの少年を召喚した生徒は誰なんじゃ?優秀なメイジなのかね?」 「いえ、召喚したのはミス・ヴァリエールで…真面目な生徒ですが、メイジとしては…」 「謎がまた一つというわけじゃ…」 「と、とにかく彼が『ガンダールヴ』であろうと無かろうと、これは一大事件です!  王室に報告して、指示を仰がない事には」 「それはならん!」 オスマン氏が厳しい声でコルベールの提案を否定する。 「し、しかし…」 「ミスタ・コルベール!宮廷で暇をもてあましとる連中に、あの少年とその主人を  引き渡したらどうなると思う!?」 ハッとなってオスマン氏を見るコルベール。 「彼奴らはあの『力』を手に入れようと躍起になるじゃろう!  二人の命を彼奴らが考慮に入れると思うかね?…君ならわからんでもあるまい」 「………はい」 オスマン氏の言葉にコルベールは過去を思い出していた。 かって自分が隊長を務めていた、魔法研究所実験小隊での最後の任務を。 ダングルテールで自分が犯した、消す事のできない罪の記憶を… 「ありがとうございます、オールド・オスマン。私は危うくまた…」 「よいよい………  言っても無駄じゃと思うが、あまり自分を責めてはいかんぞ。  君は上から命令に従っただけじゃ、悪いのは、腐った宮廷の連中じゃよ」 「すいません、学院長…」 重苦しい空気が流れる中、オスマン氏が口を開く。 「とにかく、このまま放っておくわけにいかんじゃろう。  まずはあの少年から直接話を聞かねばな」 「では私が彼を連れてきます!」 「いや、その必要は無い」 外に飛び出そうとするコルベールを、オスマン氏が引き止める。 「おー、相棒。災難だったな…」 呆然とするルイズの手から放たれたデルフリンガーの声に、育郎がルイズたちに気付く。 「デルフ!それにルイズも…」 「ひでーぜ相棒!俺を放っておくなんて。  なんか俺いらねー子になったんじゃねーかって、不安で不安で仕方が無かったぞ」 そう言いながらも、どこかデルフの声は嬉しそうだった。 「すまない、デルフ…」 「わ、わかってくれればいーんだよ。というか、これからどうすんだ相棒」 「…………」 その言葉に、途端に押し黙る育郎。 このままではルイズに迷惑をかけてしまうかも知れない… 姿を消そう!誰にも会わず、誰にも見られず……… 「相棒…行くんなら俺もついてくよ」 「デルフ…」 「おっと、気にする必要はねーぜ。俺は剣で、相棒だからな。  それに俺がいたほうが便利だって。だからさ、置いてかねーでくれよ…」 「さっきから何を言ってんのよ…置いてくって?」 それまで黙っていたルイズが、そのやり取りに不安を感じて会話に割り込む。 「ルイズ…すまない」 「な…何謝ってるの?その、あの事を黙ってたのは許してあげるから…」 そんな事を言っているのではないとわかっている。彼らが何を考えているのかは、 鈍いルイズでもうっすらとは分かってはいたが、それを口にするのは嫌だった。 「娘っ子…短い付き合いだったな」 「ごめんね、使い魔になるって約束したのに」 「ちょ、ちょっと待ってよ!」 育郎は、ルイズの手からデルフリンガーを受け取ろうとするが、ルイズはデルフを 離そうとしない。 「な、何なのよあんた!?あんな格好になれると思ったら、今度は…」 それを言うのは嫌だったが、口にしなければならない。 「どっか行っちゃうつもりだなんて!どういうつもりのなのよ!?」 「そう言うなよ、相棒も娘っ子の約束を破る事になってつれーんだ」 「だったらなんで!?」 「あのな、娘っ子。黙ってたのも、これから行くのもな……  みーんな娘っ子を心配しての事なんだよ。だからあんまり相棒をこまらせんな」 「………え?」 今のルイズには予想だにしなかった言葉だった。一瞬体から力が抜け、その隙に育郎は ルイズの手からデルフを奪い取る。 「さよならルイズ…」 立ち去ろうとする育郎を、ルイズはなんとか止めようとしがみついた。 「だ、だからちょっと待ちなさいって!」 「そうです、ちょっと待ってください!」 まだ呆然としている生徒達の中から、誰かが二人に声をかけた。 「貴方は、ロングビルさん!?」 しかして、群集を掻き分け現れたのは、オールド・オスマンの秘書、ミス・ロングビル その人だった。 「イクロー君。学院長がお呼びです、いっしょについて来てもらえますね?」  ここから去るのは、学院長の話を聞いてからでも遅くないですよ。  どこか…頼れるところがあるわけじゃないでしょ?」 「ですが…」 渋る育郎に、ミス・ロングビルは育郎の手をとり続ける。 「無理やりにでもついて来てもらいますからね。それが私の『仕事』なんですから。  来てもらわないと、私が叱られちゃいます…だから、ね?  イクロー君は私が叱られても良いなんて、冷たい事は言いませんよね?」 そう言って、少し悪戯っぽく微笑む。その顔に、さすがに育郎の表情も少し弛む。 「わかりましたロングビルさん」 「それじゃあ」 ミス・ロングビルの後について歩き出す育郎。 「って相棒、娘っ子はいいのか?」 「……ハッ!ちょ、ちょっと私も行くから待ちなさい!」 デルフリンガーの言葉に状況について行けなかったルイズが、二人の後を追いかける。 「ていうか何でミス・ロングビルと知り合いなの!?なんか仲良さそうだし!?」 なんだか良く分からないが、腹が立ってくるルイズであった。 「まさかこのような事態を見越して、ミス・ロングビルに使い魔をつけているとは…  学院長の深謀には恐れ入ります」 コルベールの賞賛の言葉に、ばつが悪そうにオスマン氏が首を振る。 「いや、二人の仲人を勤めるかもしれんのーとか思っての…ほら…なりそめとか…  それに盛り上がりようによっては、今日にでもおっぱじめるかなーとか、若いし」 「…………」 「……はっ!」 ルイズが去った後、決闘の観客の一人だったキュルケがようやく自分を取り戻す。 「た、タバサ、彼って一体…」 隣にいる親友、いつも本を読んでいて、大抵の事は知っている青髪の少女に話しかける。 「………」 しかしタバサからの返事は無かった。 「…タバサ?」 そしてキュルケは気付いた。 「た、立ったまま気絶している………ッ!?」     悪 魔 降 臨 !! 変身する育郎を見て、そんな風な言葉を連想したとかなんとか。 なんかこう、生っぽい変身は反則とか、心の準備が欲しかったとか。 ----

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