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ゼロのパーティ-18」(2007/08/15 (水) 19:21:05) の最新版変更点

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「インテリジェンスソード?」 「そうでさぁ、若奥様。全く。いったい、何処の魔術師が始めたんでしょうかねぇ、剣を喋らせるなんて」 ルイズはその答えを聞いて、暫くジロジロと剣を眺め、店主との商談に戻った。 余り変なものを買われてはたまらないと、僕は一時的に剣から意識を外して、店主に目を向ける。 店主の手元には、過度の装飾の為されたハルバートと、これまた過度の装飾の為されたレイピアが一つずつ。 「昨今は宮廷の貴族の中で、下僕に剣を持たせるのが流行っておりましてね。何でも『土くれ』のフーケとか言うメイジの盗賊が、貴族の宝を盗みまくっているとの噂で」 そういいながら、店主はよいしょと、手に持っていたハルバートと、レイピアをカウンターに置く。 そうして全身像が露わとなったハルバートは、2m半強もあるような代物だった。 どう軽く見積もっても、3kgはある。 「その際に選ばれるのがこのレイピアでさぁ。また長ものではこういう、ハルバートも人気で」 ルイズはそれをちらちらと見ながら、う~んと唸って、何かを考え込んでいる。 正直、あんな大きなものを買われても困る。槍なんて扱えないし、邪魔なだけだ。 どうせ格好をつけるだけなのだから、振り回しやすい短槍か、重さのほとんど無い、見せかけだけの槍で十分だ。 才人が使う剣にしたって、この間ギーシュと戦った時の様な、青銅製のゴーレムなどを相手にするのにレイピアでは、心許ない。 それは、とてつもない身体能力でもあれば話は別だが、決闘の時の才人でさえ、記憶のシルバーチャリオッツより大分、スローだったしな。 僕は、間違ってもあんな、役に立ちそうにないもの買ってくれるなと、心の中でつぶやいた。 暫くそのハルバートとレイピアを眺めていたルイズは、どうやらお気に召さなかったようで、別のを持ってくるように店主に言う。 「槍はもっと、そうね、もっと変わったものを、剣はもっと大きくて太いのを持ってきて頂戴」 「へぇ、槍の方は解りました。しかし若奥様。お言葉ですがあの御仁には、この程度のサイズが無難なようで…」 「聞こえなかったの? もっと 大きくて太い のが良いといったのよ」 ……わざわざ、大きくて太いを強調しなくても良いだろう。 ルイズは大きくて太いのを頂いていきました。 非常に卑猥な響きだな…… それはともかく、店主は暫く粘ったものの、結局ルイズに言われた通り、渋々と別の商品を取りに、店の奥へと戻っていった。 しかしそのとき、僕のスタンドが店主の「素人が! せいぜい高く売りつけてやるか」という呟きを捕らえた。 コレは、場合によっては助け船を出すか、自分で決めた方がいいかもしれない。 とりあえず僕は、表に出ている槍から、自分に合いそうなものを見繕うことにした。 とりあえず、壁にかけてある槍を一本ずつ手に取ってみる。 これは重すぎるな。こいつは長すぎる。これは持ちにくい。これは……ダメだ、短すぎる。これなら良いか? ……いやダメだな、格好がよくない。これは……良さそうな気もするが。少し計りかねるな。 ……矢張り、素人である僕にこういうものを見るのは無理か。 TRPG等でさんざん鍛えたのだが。 僕はとりあえず、最後に手に取った槍を確保の意味で別の場所に立てかけておき、壁の槍から興味を外す。 そういえば、先程から才人は一体何をしているんだ? 僕は店内をざーっと見回し、才人の姿を探す。 「お前、デル公って言うのか?」 「ちがわ! デルフリンガーさまだ!」 「へぇ、俺は平賀才人だ。で、あっちが花京院典明。宜しくな」 いた。先程の剣とずっと戯れていたのか。 まぁ、変なものが大好きな才人には、仕方ないことなんだろうな。 レアものと聞いたら、殆ど使わないようなものでも、つい買ってしまうような男ですし。 それどころか、買ってから用法を考えることも、割とよくあったほどだ。 そんなことだから、いつまで経っても周りの人間に『抜けている』と評されるのだが。 まぁ、喋る剣というのは興味がある。 僕もその剣…デルフリンガーという、名前は大層な剣に近づいてみる。 「てめ、さっきはよくもこのデルフリンガーさまに対して、いってたじゃねぇか。『侮辱する』っていう行為に対しては、殺人も許される! つーわけで顔出せ、こら」 「悪かったよ。謝るから、そういう怖いことは言わないでくれ」 「……てめ、何か拍子抜けすんな」 どうやら僕が近づいていることに、気がついてないようだな。 僕はそのまま、後ろから黙ってデルフリンガーを手に持ってみる。 「失礼します」 「お?」 「うおっ、何時の間に後ろに」 僕は剣を様々に、手で弄んでみる 両手剣なので、もう少し重い物かと思ったが、以外と軽い。 やや長いので、振るのには少し訓練が入りそうだが、持っていくのに、邪魔にはならなさそうだな。 「ほう、やっぱおめえさんは見かけ通り、それなりの力はあるみてえだな」 「一応は鍛えていますからね。ところで……」 「なんでえ?」 ある程度、意志を持って喋れる剣と言う時点で、僕は錆びていても問題ない、ある利用方法を思いついた。 常識的に考えれば、それを果たす器官を持ち合わせていない剣には無理なことだろうが、ここはファンタジーだ。 出来るかもしれないという一縷の望みを掛け、僕はデルフリンガーにそれが出来るかどうかを問うた。 「文字、読めますか?」 「は?」 文字が読めない。 僕と才人がこちらで情報を集めようとするにあたって、最初にぶち当たった関門であった。 簡単な文章すら解らないのだ。 直接的な会話でしか、コミニケーションを取れないというのは、かなりの痛手である。 文字を覚えればいいのだが、単語も知らないような僕らには、単文を読むにも時間がかかりすぎる。 かといって協力を頼めるような人間はいない。 幸い、何故かは知らないが、言葉が解るので、読み上げてさえもらえれば意味は分かる。 ならばせめて、当座をしのげる手段が欲しい。 というわけで、訪ねてみたのだが…… 「そりゃまぁ、おめえ。読むことは出来るが」 「では、決まりですね」 「花京院? 話が全く読めねえんだが…」 決めた。コレを買おう。 単文が読めるようになるというのは、極めて大きなアドバンテージだ。 それに比べれば、剣としての出来がどうとか、見栄えが悪いとか、そんなことはクラッカーの歯くそほどの値打ちもない。 「では、才人。ちょっと持っていてください。ルイズに買ってもらえるよう、交渉しなくてはならないので」 「あ、ああ。……って買うのか?」 「ええ。普通の剣より、何倍も役に立ちますから」 いくら錆びているとはいえ、刀身がむき出しなのだ。 ポンと渡すわけにもいかず、僕は才人にデルフリンガーを握らせることにした。 すると、またいつぞやのように、左腕の文様が光を放ちだした。 そういえばギーシュとの決闘以降、一度も光り出してはいなかったため、よくよく観察する機会が無かったな。 僕はまだ、店長がカウンターから出てきていないのを横目で確認して、まじまじと才人の左腕の文様を眺める。 「またか。なんかこのルーンてのが光り出すと、体が軽くなるんだよなぁ」 「成る程。以前の決闘の時の、あの異常な身体能力は、これが原因ということですか」 この文様はルイズと才人がキスした時に出た物だ。 どうやらコレが光ると、才人の身体能力は上昇するらしい。 が、その条件が解らない。 とりあえず僕は、この文様について解ることをまとめてみた。 1、コレは「使い魔のルーン」と呼ばれる物である。 1、コレが光り出すと、才人の身体能力が上昇する。(他にも効果がある可能性アリ) 1、持つということが、条件の一つである以外、発動条件は不明。(槍とこのボロ剣で発動。スコップなどでは発動しない) ……結論が出せるほど、まだ解ってはいないな。 と、そうこう考えている内に、店主がカウンターの方へと出てきた。 手にはやたらときらびやかな剣と、今度はまた豪勢な矛、しかし穂先に月牙の付いた物を持っている。 悪いが、どちらも欲しいとは思わない。まだ先程の方がマシな気さえする。 僕は店主とルイズの間だけでかわされようとしている商談に、待ったをかけるため、先程立てかけた槍を片手に、ルイズの方へと向かった。 「この剣は、かの高名なゲルマニアの錬金術師シュぺー卿が鍛えた物で、魔法がかかっているから鉄だって一刀両断でさ。 そしてこちらの槍も、東方より伝わった槍で、矛っていうらしいんですが、これがどんな盾でも貫くという一品で。まぁ、どちらもおやすくは御座いませんがね」 「私は貴族よ。それで一体いく「ルイズ」ら…… 何よ?」 「できればあの剣と、この槍が欲しいのですが」 そういって僕は先程の剣、デルフリンガーを左手で指さし、右手に持った槍をルイズの前にズイッと出した。 どちらもカウンターに出ている物より、安そうな代物だ。 ルイズはそれを見て、解りやすいくらい嫌そうな顔をした。 「え~~~~~~。そんなのが良いの? もっと喋らないのとか、綺麗なのにしなさいよ」 「どうしてもコレが良いんです」 「私はいやよ。そんなんじゃ格好が付かないじゃない」 「ですが、こんなきらびやかな剣が、才人に似合うと思いますか? それにこんな長物、怪しいと思いませんか」 「……それでも、こんな気色悪いのはいやよ」 「こういう物は、当人に似合うというのが重要なんですよ」 「……」 特に感情以外で粘る理由もないルイズは、いささか不満そうな顔をして考え込んだ。 彼女は腕を組み、じーっと僕と才人の方へと視線を向ける。そしてはまたうつむいて、唸って、また僕と才人の方を見るという行動を繰り返す。 その間、店主は僕の方へ、余計な事しやがってと言いたげな視線を浴びせてきていた。 流石に無理に進めてくるつもりは無いようだ。 「仕方ないわね。あんたの方からお願いって事も珍しいし、ここはご主人様の寛大さを見せてあげるわ。 これ、おいくら?」 「へぇ、二つ併せて500ってとこでさ」 「ちょっと、高くない!?」 「まともな大剣なら相場は200。槍だって150はしますから、この槍もちょっとしたものでしてね。まぁ、妥当な所でさ」 「仕方ないわね……」 そういって財布の中身を確認するルイズ。その表情が見る見るうちに不満そうな顔になっていく。どうやらギリギリだったようだ。 しかし店主がしてやったりと目を細めたのを見逃すほど、僕は抜けていない。 相場は解らないが、この店主の反応を見る限り、本当はもっと安いだろう。 しかしこういう場所では、カモる事は悪いことではない。騙されて買ってしまった奴がマヌケなのだ。 ならばここはアレを試してみるッ! 僕はお見通しだよと、堂々とした態度で、大声で笑い出した。 「500エキュー? ノォホホノォホ! バカにしてはいけませんよ、君ィー。高いィ高いィーッ」 「ノ、ノリアキ? 突然どうしたのよ」 「花京院、どうした! 前から変な奴だと思ってたけど、ついに気でも狂ったのか!」 僕が突然大声で笑い出したことにより、ルイズと才人が若干引いた様子でこちらを見る。 ルイズは貴族らしいからこういう場所で買い物はしないだろうし、才人だって外国にいったことはないという。 だからこういう先進国には無いノリというのは、ついていけないものがあるのだろう。 しかし才人、それはどういう意味だ? とりあえず才人への復讐は、返ってから追加するとして、僕は店主の反応を見る。 「へぇ…… なら、いくらなら買いまさあ?」 店主は食らいついてきた。どうやらこのノリは、万国のみならず、異世界でも通用するらしい。 では、まず第一段階。こんなに安くて良いのだろうかという値段を提示する。 「二つで100エキューにしろッ!」 この言葉を聞いて、店長は何にも解っちゃいないといった様子で、首をカッ切る真似をする。 「そんな値段じゃ、店の経営が成り立たなくなりまさ」 良しッ! 計画通り! では第二段階。帰るフリをする。 「仕方ありません、ルイズ、才人。途中で中古の武器を売っている店がありましたね。あちらで買いましょう」 「え!? そ、そうね。そんな店もあったわね!」 もちろんながら、そんな事実はない。 確かに武器を売り物にうたっていた露天商はいたが、小型の刃物をいくつか売っていた程度だ。 しかしルイズ的には、僕が知っていて、自分が知らないというのが許せないらしく、知ったかぶりをして見せた。 計画通りだ。僕の言葉より、ルイズの言葉の方が信用があるからな。 「へぇ、だがそんな店より、うちはまっとうな商売してますんでね。まぁ厄介払いもかねて、450でどうでさ?」 よし、食らいついてきた。 値段交渉開始ィーッ! 「150にしてください」 「400!」 「200!」 「375!」 「225!」 「350!」 「250!」 「325!」 「275!」 「「300!」」 「よし、売ったッ!」 「買ったァー!」 「「……」」 どうやらルイズと才人は、この流れについてこれなかったようだ。唖然として、僕の方を見ている。 その全くついていけないといった表情で、ボーっとこちらを見ているルイズに、僕は早くお金を出すように催促する。 「ルイズ、交渉は終わりましたよ。早くお会計をすましてください」 「あ、うん」 「毎度。剣の方は、煩いと思うんでしたら、鞘に入れれば大人しくなりまさあ」 結局、ルイズと才人は店を出るまで、終始着いていけないといった表情をしていた。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――― 「何よ、あの店主! 貴族の私に吹っ掛けようとしてたわけ!?」 「ええ、そうですね」 「全く、これだから平民は……」 帰り道。 ルイズが今更ながら、店主に対する愚痴を並べだした。 もっとも既に馬に乗って大分経つので、きびすを返して街に戻ろうものなら、一体何時間かかることか。 そういう訳で、自然とルイズの愚痴は僕の方へと向いてくる事になった。 僕はその愚痴に適当に相づちを打ちながら、馬を走らせる。 ちなみに何故才人の方に向かないのかというと、股ズレの為に、馬上でノックアウトしているからだ。 デルフリンガーを背負っている御陰で、行きよりかなり疲れているのだろう。 「情けねぇなぁ、相棒」 「うるせぇ……」 そういえば何時の間にやら、才人はデルフリンガーと仲良くなっていたらしく、相棒などと呼び合っていた。 全く、うらやましいな。マイペースで…… ―――――――――――――――――――――――――――――――――― 「ああ、もう。どうしてやろうかしら!」 その後、ほぼずっとルイズの愚痴は続いていた。 実際、最初の言い値より安く買えたので、わざわざ文句を言いに行ったり、無礼打ちにする為だけに戻る気はさらさら無いようだ。 その分、愚痴として僕にしわ寄せが来ているが。 ……とにかく、今日は疲れた。 僕は手綱をハイエロファント・グリーンに預け、身体の力を抜いて、空を眺める。もう日も傾き始めていた。 とりあえず戻ったら、作ったばかりのお風呂に入ろう。 ふぅ。っと一回、大きくため息をつき、僕は視線を前へと戻す。 そこにはめろんおっぱいを持った、赤い髪の女性が馬に乗ったシルエット。 確か6股で二つ名が『微熱』とかいう…… 「キュルケ!」 「YES! I am!」 最悪だ。この疲れている時に。 あのめろんおっぱいと赤髪が、今は非常に腹立たしい。 僕はこれから起こるであろう、ルイズとキュルケの延々とした口喧嘩から逃れるため、馬の手綱をより、強く握るのだった。 「全く、あなた達何処行ってたのよ。部屋に行っても誰もいないし、追いかけようにもタバサも留守だし」 「あんたには関係のないことでしょ。それより、私の下僕に色目を使わないで」 「あ~ら、ルイズ。ひょっとして焼き餅?」 「違うわよ!」 もう、遅かったかもしれないが。 To be contenued……

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