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奇妙なルイズ-21」(2007/08/18 (土) 14:37:53) の最新版変更点

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静かに風を受けて飛ぶ輸送船の上で、ルイズは星空を見上げていた。 ロングビルの助けを借りて輸送船に乗り込んだルイズは、船を宙に浮かす『風石』が足りないと言っていたが、 足りない分をワルドの魔法で補う条件で出航した。 「ルイズ、どうしたんだい?」 ワルドがルイズの側に寄り、肩に手を置く。 「ロングビルが心配なのか?」 ルイズは、無言で頷いた。 傭兵の一団を壊滅に追い込んだキュルケ、タバサ、ギーシュの三人は、桟橋へと急いだ。 ギーシュは、周囲を警戒しながらも走る速度をゆるめないキュルケとタバサを、息を切らせながら追いかけていた。 長い階段を駆け上がると、桟橋のある丘の上に出る。 そこにはロングビルが倒れていた。 キュルケが駆け寄ろうとしたが、それをギーシュが制止する。 「ツェルプストー!待て!」 「何よ!」 「ロングビルに触れちゃ駄目だ!」 ロングビルの両手首からは、血が流れ続けていた。 水たまりになる程ではないが、かなりの出血がある。 ここにいる三人は強力な治癒の魔法は使えない、怪我を治す秘薬も所持していない。 町に戻っても秘薬があるとは限らないので、早く止血しなければ失血死の危険がある。 キュルケが焦るのも無理はなかったが、タバサまでもが杖でキュルケを制止したので、キュルケは別の意味で驚いた。 「罠」 タバサの言葉に、キュルケは焦りが冷めていくのを感じた、タバサとギーシュの意図に気づき、背中に冷たいものが走った。 タバサがディティクトマジックで罠を調査する、すると、ロングビルの体に何かが仕掛けられているのが分かった。 いつも無表情なタバサだが、このときはギーシュでさえタバサの口元に力が入るのが認識できた。 「ちょっと、タバサ、何があるのよ」 「小さい…箱のようなもの?」 小さな箱のようなものがある、それは分かったが、タバサにはその罠がどんな罠なのかまでは分からなかった。 「ツェルプストー、硫黄の臭いだ、火の秘薬と…油のような何かの臭いがする」 キュルケがギーシュの言葉に驚く。 「ギーシュ、あんた、分かるの?」 「いや、僕じゃない」 そう言ってギーシュが足下を指さす、するとギーシュの隣にボコリと穴が開き、そこからギーシュの使い魔であるジャイアントモール『ヴェルダンデ』が顔を見せた。 「ヴェルダンデが言うには、人間の作った洞窟…つまり、宝物を隠したダンジョンにある罠と、臭いが一緒らしい」 「威力は?」 タバサが短く質問すると、ギーシュはテレパシーのようなものでヴェルダンデに話しかける。 「…具体的には分からない、でも、ヴェルダンデは怖がっている。少なくとも半径30メイル(m)以内には近寄りたくはないらしい」 タバサが風の魔法で冷気を作り、細心の注意を払いながらロングビルの両手首に当つつ、呟く。 「爆発か、火の海」 キュルケは頭を悩ませた。 「それなりの威力の奴ね…あたしならともかく、ミス・ロングビルじゃ…」 火の使い手であるキュルケなら、自分の炎を使って、他者の炎から身を守ることも出来る。 しかしロングビルに同じ事をやれば、致命傷となる火傷を負わせてしまうだろう。 タバサも悩んでいた、レビテーションで体を浮かせ、風の魔法で炎から身を守ることは可能だ。 爆発と火炎の両方が仕掛けられていたら、体を浮かせている間に爆発してしまう。 強力な風でロングビル後と吹き飛ばしても、ロングビルの体からは箱が離れなければ、ロングビルを巻き込んで爆発してしまう。 キュルケとタバサは、罠ごと破壊することは出来ても、ロングビルを傷つけずに解除する方法が思いつかなかった。 二人が悩んでいると、ギーシュはヴェルダンデに何かを命令し、地面を掘らせた。 「ミス・タバサ、頼みがあるんだが…これから言う場所に、竜巻を作ってくれないか」 「ちょっとギーシュ、何のつもりよ」 「ロングビルを傷つけずに助けるのさ」 ギーシュの顔はヘラヘラしただらしのない笑顔でもなく、情けない軟弱者の顔でもなかった。 「ギーシュ、覚悟を決めるのはいいわ、でも貴方なら回りくどいことをしなくても練金で罠を解除できるのではなくって?」 「いや…聞いたことがあるんだ、持ち運びの出来る罠があるってね…仮にトライアングル以上のメイジが練金したものなら、僕には手出しできない」 そう言って杖を握りしめるギーシュに、タバサが質問する。 「規模は?」 「中心が真空になるぐらい…それと、僕たちを巻き込まないように範囲は狭く、高さは高くいほどいい」 タバサはこくりと頷き、普段よりもゆっくりと、真剣に魔法の詠唱を始めた。 しばらくすると、40メイル程離れた地面からヴェルダンデが顔を出した。 「良し!僕のかわいいヴェルダンデ、ちゃんと離れているんだよ!」 ギーシュが叫ぶ、するとヴェルダンデは地面をぴょこぴょこと歩き、離れた場所に穴を掘って待避した。 「ヴェルダンデが出てきた穴の空気を、できるだけ引きずり出してくれ!」 「……」 タバサは頷き、魔法を完成させた。 次の瞬間、ごうごうと音を立てて竜巻が現れる、ギーシュの望み通り天高くまで竜巻が伸びているのが視認できるほどだ。 「よし!『練金』!」 ギーシュは薔薇を模した杖を振って、練金を放った。 練金によってロングビルの上着が土になる、それと同時にロングビルの体の下から強い光が漏れた。 「爆発!?」 キュルケが光を見て身の危険を感じる、しかし次の瞬間にはズボボボという音と共に、光が地面の中に消えていった。 驚いてロングビルを見ると、ロングビルの倒れている地面が鉄格子に練金されており、その隙間には勢いよく風が流れ込んでいる。 「ギーシュ!何よこれ!」 「これでいい!これがイイんだ!」 ギーシュが叫ぶと、タバサの作り出した竜巻が爆発音と共に炎の竜巻に変わる。 キュルケが驚いて竜巻の方を見ると、竜巻の中心にある小さな『何か』が、すさまじい勢いで炎を噴出しているのが見えた。 タバサの氷塊混じりの竜巻に巻かれても、火勢は衰えない。 小さい罠ではあったが、その威力はかなり強いものだと理解できた。 しばらくすると、小箱から噴出する炎も止み、箱自体も燃え尽きて消えてしまった。 それを確認したキュルケは、倒れているロングビルを抱き起こす。 上半身は裸になっており、胸元に小さく火傷の痕がついていたが、ごくごく軽いものだと分かる。 タバサのシルフィードに乗せて学院まで急げば、命は助かるだろう。 「ギーシュ、やるじゃない」 「まあね…ば、薔薇の棘は、女性を守るためにあるのさ」 カッコつけようとしたギーシュだったが、鼻の下をものすごーく伸ばして、ロングビルの胸を見ている。 「ミス・ツェルプストー、ミス・ロングビルはこの僕が連れて行こう」 精一杯格好良くしているつもりだが、どう見てもロングビルの胸に視線が向いている。 それどころか薔薇を持っていない左手がワキワキと何かを掴むような動きをしていた。 そんなギーシュの真上に、タバサの使い魔シルフィードが突如現れた。 しなやかな尻尾がギーシュを叩くと、ギーシュは「オゲッ」っとうめき声を上げて10メイルほど吹っ飛んだ。 「女の敵」 タバサの言葉に、キュルケはうんうんと頷くのだった。
静かに風を受けて飛ぶ輸送船の上で、ルイズは星空を見上げていた。 ロングビルの助けを借りて輸送船に乗り込んだルイズは、船を宙に浮かす『風石』が足りないと言っていたが、 足りない分をワルドの魔法で補う条件で出航した。 「ルイズ、どうしたんだい?」 ワルドがルイズの側に寄り、肩に手を置く。 「ロングビルが心配なのか?」 ルイズは、無言で頷いた。 傭兵の一団を壊滅に追い込んだキュルケ、タバサ、ギーシュの三人は、桟橋へと急いだ。 ギーシュは、周囲を警戒しながらも走る速度をゆるめないキュルケとタバサを、息を切らせながら追いかけていた。 長い階段を駆け上がると、桟橋のある丘の上に出る。 そこにはロングビルが倒れていた。 キュルケが駆け寄ろうとしたが、それをギーシュが制止する。 「ツェルプストー!待て!」 「何よ!」 「ロングビルに触れちゃ駄目だ!」 ロングビルの両手首からは、血が流れ続けていた。 水たまりになる程ではないが、かなりの出血がある。 ここにいる三人は強力な治癒の魔法は使えない、怪我を治す秘薬も所持していない。 町に戻っても秘薬があるとは限らないので、早く止血しなければ失血死の危険がある。 キュルケが焦るのも無理はなかったが、タバサまでもが杖でキュルケを制止したので、キュルケは別の意味で驚いた。 「罠」 タバサの言葉に、キュルケは焦りが冷めていくのを感じた、タバサとギーシュの意図に気づき、背中に冷たいものが走った。 タバサがディティクトマジックで罠を調査する、すると、ロングビルの体に何かが仕掛けられているのが分かった。 いつも無表情なタバサだが、このときはギーシュでさえタバサの口元に力が入るのが認識できた。 「ちょっと、タバサ、何があるのよ」 「小さい…箱のようなもの?」 小さな箱のようなものがある、それは分かったが、タバサにはその罠がどんな罠なのかまでは分からなかった。 「ツェルプストー、硫黄の臭いだ、火の秘薬と…油のような何かの臭いがする」 キュルケがギーシュの言葉に驚く。 「ギーシュ、あんた、分かるの?」 「いや、僕じゃない」 そう言ってギーシュが足下を指さす、するとギーシュの隣にボコリと穴が開き、そこからギーシュの使い魔であるジャイアントモール『ヴェルダンデ』が顔を見せた。 「ヴェルダンデが言うには、人間の作った洞窟…つまり、宝物を隠したダンジョンにある罠と、臭いが一緒らしい」 「威力は?」 タバサが短く質問すると、ギーシュはテレパシーのようなものでヴェルダンデに話しかける。 「…具体的には分からない、でも、ヴェルダンデは怖がっている。少なくとも半径30メイル(m)以内には近寄りたくはないらしい」 タバサが風の魔法で冷気を作り、細心の注意を払いながらロングビルの両手首に当つつ、呟く。 「爆発か、火の海」 キュルケは頭を悩ませた。 「それなりの威力の奴ね…あたしならともかく、ミス・ロングビルじゃ…」 火の使い手であるキュルケなら、自分の炎を使って、他者の炎から身を守ることも出来る。 しかしロングビルに同じ事をやれば、致命傷となる火傷を負わせてしまうだろう。 タバサも悩んでいた、レビテーションで体を浮かせ、風の魔法で炎から身を守ることは可能だ。 爆発と火炎の両方が仕掛けられていたら、体を浮かせている間に爆発してしまう。 強力な風でロングビル後と吹き飛ばしても、ロングビルの体からは箱が離れなければ、ロングビルを巻き込んで爆発してしまう。 キュルケとタバサは、罠ごと破壊することは出来ても、ロングビルを傷つけずに解除する方法が思いつかなかった。 二人が悩んでいると、ギーシュはヴェルダンデに何かを命令し、地面を掘らせた。 「ミス・タバサ、頼みがあるんだが…これから言う場所に、竜巻を作ってくれないか」 「ちょっとギーシュ、何のつもりよ」 「ロングビルを傷つけずに助けるのさ」 ギーシュの顔はヘラヘラしただらしのない笑顔でもなく、情けない軟弱者の顔でもなかった。 「ギーシュ、覚悟を決めるのはいいわ、でも貴方なら回りくどいことをしなくても練金で罠を解除できるのではなくって?」 「いや…聞いたことがあるんだ、持ち運びの出来る罠があるってね…仮にトライアングル以上のメイジが練金したものなら、僕には手出しできない」 そう言って杖を握りしめるギーシュに、タバサが質問する。 「規模は?」 「中心が真空になるぐらい…それと、僕たちを巻き込まないように範囲は狭く、高さは高くいほどいい」 タバサはこくりと頷き、普段よりもゆっくりと、真剣に魔法の詠唱を始めた。 しばらくすると、40メイル程離れた地面からヴェルダンデが顔を出した。 「良し!僕のかわいいヴェルダンデ、ちゃんと離れているんだよ!」 ギーシュが叫ぶ、するとヴェルダンデは地面をぴょこぴょこと歩き、離れた場所に穴を掘って待避した。 「ヴェルダンデが出てきた穴の空気を、できるだけ引きずり出してくれ!」 「……」 タバサは頷き、魔法を完成させた。 次の瞬間、ごうごうと音を立てて竜巻が現れる、ギーシュの望み通り天高くまで竜巻が伸びているのが視認できるほどだ。 「よし!『練金』!」 ギーシュは薔薇を模した杖を振って、練金を放った。 練金によってロングビルの上着が土になる、それと同時にロングビルの体の下から強い光が漏れた。 「爆発!?」 キュルケが光を見て身の危険を感じる、しかし次の瞬間にはズボボボという音と共に、光が地面の中に消えていった。 驚いてロングビルを見ると、ロングビルの倒れている地面が鉄格子に練金されており、その隙間には勢いよく風が流れ込んでいる。 「ギーシュ!何よこれ!」 「これでいい!これがイイんだ!」 ギーシュが叫ぶと、タバサの作り出した竜巻が爆発音と共に炎の竜巻に変わる。 キュルケが驚いて竜巻の方を見ると、竜巻の中心にある小さな『何か』が、すさまじい勢いで炎を噴出しているのが見えた。 タバサの氷塊混じりの竜巻に巻かれても、火勢は衰えない。 小さい罠ではあったが、その威力はかなり強いものだと理解できた。 しばらくすると、小箱から噴出する炎も止み、箱自体も燃え尽きて消えてしまった。 それを確認したキュルケは、倒れているロングビルを抱き起こす。 上半身は裸になっており、胸元に小さく火傷の痕がついていたが、ごくごく軽いものだと分かる。 タバサのシルフィードに乗せて学院まで急げば、命は助かるだろう。 「ギーシュ、やるじゃない」 「まあね…ば、薔薇の棘は、女性を守るためにあるのさ」 カッコつけようとしたギーシュだったが、鼻の下をものすごーく伸ばして、ロングビルの胸を見ている。 「ミス・ツェルプストー、ミス・ロングビルはこの僕が連れて行こう」 精一杯格好良くしているつもりだが、どう見てもロングビルの胸に視線が向いている。 それどころか薔薇を持っていない左手がワキワキと何かを掴むような動きをしていた。 そんなギーシュの真上に、タバサの使い魔シルフィードが突如現れた。 しなやかな尻尾がギーシュを叩くと、ギーシュは「オゲッ」っとうめき声を上げて10メイルほど吹っ飛んだ。 「女の敵」 タバサの言葉に、キュルケはうんうんと頷くのだった。 ---- //第六部,スタープラチナ #center{[[前へ>奇妙なルイズ-20]]       [[目次>奇妙なルイズ]]       [[次へ>奇妙なルイズ-22]]}

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