ゼロの奇妙な使い魔 まとめ内検索 / 「故郷! 魂の眠る場所 その①」で検索した結果

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  • 故郷! 魂の眠る場所 その①
    故郷! 魂の眠る場所 その① もしも運命というものがあるのなら……まさにこれは運命だった。 承太郎がなぜ、何のために、どんな理由で、ハルケギニアに召喚されたのか? それはまだ誰にも解らない、しかし――。 決まっていたのかもしれない。 承太郎がこの世界に来た瞬間から、それはめぐり合う運命だった。 承太郎が元の世界の情報を求めていたから。 コルベールが伝説や歴史を研究していたから。 シエスタがただの平民でありながら引き継いでいる他とは違う血統が。 彼等が出会ったのは偶然なのか? 彼等が引かれ合ったのは必然なのか? 偶然にしろ必然にしろ、それらはめぐり合った。めぐり合ったのだ。 重要なのはその一点。 運命に導かれた証かもしれない。 何の変哲もない一日のように思えた。 ルイズは詔を考え、キュルケはタバコの銘柄を考え、タバサはタバ茶...
  • 故郷! 魂の眠る場所 その③
    故郷! 魂の眠る場所 その③ 広々とした緑の草原を、沈む夕陽が紅く彩る。 爽やかな風が流れると長い草が揺れてかすれあい、サワサワと音を立てた。 「これをジョータローさんに見せたかったんです」 茶色のスカートに木の靴、草色の木綿のシャツという私服姿のシエスタが、風でなびく髪を押さえながら承太郎に寄り添っていた。 「ね、綺麗でしょう? 田舎ですけど」 「……ああ」 承太郎は待っていた。シエスタが自分をここに案内した本当の理由を。 それを察してか、シエスタはさっきから落ち着かない様子で視線を泳がせている。 けれど意を決してシエスタは訊ねた。 「元の世界……って、何ですか? 東方から来たというのは否定してましたよね。  ジョータローさんとお爺ちゃん、どこから来たんですか?」 「…………ここ以外の、ハルケギニアじゃない、別の世界だ。  そこは地球と呼ばれていて、メイジは存...
  • 故郷! 魂の眠る場所 その②
    故郷! 魂の眠る場所 その② 「竜の羽衣っていうんです」 空の旅にようやく慣れてきたシエスタが、承太郎に支えながら説明を開始する。 無関心そうに見えるタバサも、前を見ながら耳をすませていた。 コルベールは現地の住人の情報という事で興味津々という風に瞳を輝かせている。 「羽衣と呼ばれているのは、それをまとった者が空を飛べるから……なんですけど、実際にそれが空を飛んでる姿を見た人は一人もいないんです。  持ち主は私のお爺ちゃんだったんですけど、ある日ふらりとタルブの村に竜の羽衣で現れたらしいんです。  東の地からやって来た……と言っていました。  でも誰も信じなかった。お爺ちゃんは頭がおかしかったって言われてます」 「何と。それでは竜の羽衣というのはデタラメなのかね?」 残念そうにコルベールが言い、シエスタは苦笑を浮かべる。 「お爺ちゃんは、竜の羽衣で空を飛んで見せろっ...
  • スターダストファミリアー
    ... 故郷! 魂の眠る場所 その①故郷! 魂の眠る場所 その② ├ 故郷! 魂の眠る場所 その③ ├ 衝撃! その名は『ヨシェナヴェ』 ...
  • S.H.I.Tな使い魔-26
    前ページ次ページS.H.I.Tな使い魔 「ごめんなさい。学院長は不在なんです。」  3度目になる学院長室の前でミス・ロングビルは申し訳なさそうに教えてくれた。  ルイズを授業に送り出した後、学院長を訪ねて来た康一だった。  それもそうだよなぁー。学院長っていうからには相当急がしいんだろうし。 「それじゃあ、しょうがないですね。また今度来ます。」 「待ってくださいな。」  退出しようとする康一を、ミス・ロングビルが引きとどめる。 「なにか相談したいことがあったのでは?たとえば・・・『スタンド』・・・のことですとか。」  なんでこの人が『スタンド』のことを知ってるんだァー!? 「ななな、なんでそのことを!?」  正直動揺した。やはり『スタンド』のことが広まってしまうのはまずい気がする。 「隠さなくても結構ですわ。実はこっそり聞き耳を立ててましたの。」  口...
  • 2 スヴェルの夜 前編
     “女神の杵”亭の二階。ギーシュとの相部屋の窓際に座り込んだ才人は、何もしないでずっと夜空を見上げていた。  普段は離れている赤と青の月が重なり、白い光を映している。  明日の朝、暫く出航を見合わせていた船の運行が再開されるらしい。なんでも、月が重なるスヴェルの後は、アルビオンがラ・ロシェールに一番近づく日なのだとかなんとか。  目的地が近づいてくるというのは、どういうことなのか。良く分からないまま、才人はそんな説明を淡々と受け入れていた。  見上げた空に浮かんでいる月の姿は、自分の記憶にある一つだけの月に良く似ている。  何時にも増して夜の世界が明るく照らされているように見えるのは、恐らく錯覚なのだろう。重なった月が放つ光の量は、二つの時の半分程度しかないはずなのだから。 「ああ、そうか」  そう呟いて、才人は町が明るく見える理由に気が付いた。  月の光に隠れていた星空が...
  • 使い魔は手に入れたい-21
    ルイズの部屋へ戻ると、ルイズがベッドの上で本を広げていた。 やけに古ぼけた大きな本だ。 ルイズはそれを見ながらなにやらぶつぶつと呟いており私が部屋に入ってきたことにも気づいていないようだ。 いったいどんな本を見ているのだろうか? ルイズの後ろに回って本を覗いてみる。私が部屋に入ったことすら気がつかないのだからこれも気がつかないだろう。 ルイズが見ている本にはなにも書かれていなかった。 真っ白いページを見ながらルイズはぶつぶつと小声で呟いている。小声なので何を言っているかはわからない。 もしかしたら魔法の本なのだろうか?読んでいる奴にしか見えないとかそんなやつだ。 だから私には見えない。もしそうでなかったらルイズの気でも違ったのかもしれない。気が違う理由が無いので違うと思うが。 とにかく私には関係ないことだな。 そのままルイズを放っておき椅子に座る。 ...
  • 帰還! 魂の還る場所
    帰還! 魂の還る場所 日食が終わり――太陽がその姿を現す。 アルビオン艦隊の沈んだ空は、まさに青一色。どこまでもどこまでも晴れ渡っていた。 その青い空の中を、彼等は、彼女等は探す。 あの竜は何処。竜の羽衣は何処。承太郎とルイズは何処。 そして――すでにこの空にはいない事を知る。 「とりあえずトリステイン軍が勝ったけど、これから本格的に戦争が始まるわね。  トリステインにいると危ないかもしれないけど……どうする?  よかったら私と一緒にゲルマニアに来ない? 疎開ってやつよ」 「いい」 「あら、そう? どうして?」 「しばらく学院で待ってみたい」 「……そう、そうね。それも悪くないわ。私もつき合う、文句は無いわよね?」 「うん」 「どうしたんだい? なぜそんなに泣いているんだい?」 「ごめんなさい。今は、泣きたいんです。泣かせてください」 「…...
  • 純愛! 大和撫子のお持ち帰りぃ!
    純愛! 大和撫子のお持ち帰りぃ! ※このSSはスターダストファミリアーのIFであり、本編とは多少関係があります。 タルブの村の草原――夕焼けの中で――彼女は告白をした。 「私も一緒に連れてってください!!」 瞳いっぱいに涙を浮かべたシエスタが、真っ直ぐに承太郎を見つめて叫んだ。 頬は紅潮し、手も唇も震えている。 けれど、とても綺麗だった。 「……解っているのか? 俺と一緒に行くって事は、もう二度と、この世界に……故郷に……家族の元に、帰ってこられないかもしれない」 「解ってます! そんなの、解ってます! それでも私、私は……」 ポロポロとこぼれた涙を、シエスタは承太郎の胸に押しつけた。 承太郎のシャツをギュッと握りしめ、すがるようにして言う。 「ジョータローさんが……好きなんです……」 「……故郷を……家族を……捨てるつもりか? シエスタ。  おめーが今まで出...
  • ゼロいぬっ!-77
    彼は走っていた。 息を切らせて淡い期待に胸を膨らませながら、 その先に絶望がある事さえ知らずに走り続けた。 そして、彼はいつも終焉の地へと辿り着く。 眼前には行く手を遮る巨大な隔壁。背後からは迫り来る炎。 あの日の光景はルイズに助けられた日から今も夢に見続ける。 悪夢から覚める度に、彼はルイズの姿を探し求めていた。 そうする事で、今という時間がただの夢ではないと実感できた。 不意に世界に亀裂が走った。 そのヒビは例外なく隔壁も炎も廊下や天井にも伝わっていく。 まるで卵を落としたような乾いた音と共に、彼の目の前の光景は砕け散った。 そして彼は目覚めた。 ゆっくりと身を起こして、いつものように背筋を伸ばす。 しかし振るった身体から零れ落ちたのは藁ではなく水滴。 見渡せば、いるべきルイズの姿はなく、愕然とした表情のコルベール先生が自分を見つめて...
  • DIOが使い魔!?-49
    ベッドの上で、ルイズ・フランソワーズは夢を見ていた。 舞台は、生まれ故郷であるラ・ヴァリエールの領地にある屋敷。 夢の中の幼い自分は、屋敷の庭を逃げ回っていた。 それは二つの月の片一方、赤の月の満ちる夜のことだった。 真っ赤な真っ赤な…… 血のように真っ赤なお月様が見下ろす夜。 「ルイズ、ルイズ、どこに行ったの!? まだお説教は終わっていませんよ!!」 出来のイイ姉たちと比べて落ちこぼれな自分を、 母は、いつも叱ってきた。 母だけではない。 自分の世話をする召使い達も、影で自分のことを哀れんでいることを、 ルイズは知っていた。 その事が、ますますルイズの自尊心に傷を付ける。 その日もまた母親に叱られた。 それが悔しくて、悲しくて、 思わずルイズは屋敷を飛び出したのだ。 使用人達の目を掻いくぐり、いつもそうしていたよう...
  • 使い魔は手に入れたい-43
    空は段々と茜色が増し、それに比例し木々の陰は大きく、そして長く伸びる。 その黒い影は茜色の空と対比してとても綺麗な模様を大地に描いていた。 しかし、黒い影は模様を描くだけではない。 何かを飲み込むような、そして何かが潜んでいるような、そんな何か悪いものがそこに佇んでいるような感じがする。 実際、この時間帯のことを『逢魔が時』という。 『逢魔が時』とは大禍時が転じたと言われている。 何故ならこの時間帯が一日のうちのもっとも禍々しい時間帯と言われているからだ。 忌まわしく、不吉な感じの漂う時間帯、物陰に潜む魔物のような何かの気配、禍々しいと言われても仕方ないだろう。 そう言われている理由は恐らく日が沈み、それまで明らかだったものの輪郭がぼやけて見えなくなっていく、その覚束なさから生まれる不安なのだ。 少なくとも一般的にはそう考えられている。 だが実際、稀...
  • 黄金の使い魔-02
    「魔法…って!ジョ、ジョルノさん、いえジョルノ様って貴族の方だったんですか!?   そうとは知らず無礼な真似をして申し訳ございませんっ。」  「いや、貴族であるかないかと聞かれたら僕は貴族ではありません。   説明しにくいのですがこれは魔法ではなく……」 どう理解できるように説明すればいいか考えているとさらなる訪問者が。  「朝から騒がしいわよ、あなた達。」 部屋を覗き込んだトカゲの風貌をしたモンスターを従えるその女はキュルケという名。どうやら彼女にも僕のG・Eは見えていないようだ。 ではこの生物はどう説明できる?スタンドでは無いとすると…しかし大柄なトカゲと言い切るには尻尾の先に灯る炎が余計だ。 絵本や漫画で見るようなファンタジックなモンスターが目の前にいる。 G・Eで確認すると確かに生物としての器官や骨格を持っていることが分かる。 どうにもスタンド...
  • 十一話 虚無の曜日
    十一話 虚無の曜日  花京院は夢を見ていた。  エジプトのカイロで、DIOと対峙する夢だ。  張り巡らせたハイエロファントの結界、降り注ぐエメラルドスプラッシュ。逃げ場はない。全方位の攻撃を防ぐ手段もないはずだ。  一瞬の間もなく、吹っ飛ばされる。  建物に叩きつけられ、DIOを見上げる。  吸血鬼、最強のスタンド、悪の化身……DIO。  DIOは花京院から視線を外し、ジョセフの方へと向けた。  そこで、視界が一瞬途切れた。  次に見えたのは、惨劇の後だった。  血を吸われ、干からびたジョセフが倒れている。  血を流し、ポルナレフが苦しそうにうめく。  全身をナイフで串刺しにされ、ピクリとも動かない承太郎。  これ異常ないほど、絶体絶命の状況だった。  今すぐ助けに行きたかった。勝てなくても、相手にならなくて...
  • 7 平穏な村の最後の朝 前編
    7 平穏な村の最後の朝  太陽という面倒な存在が疎ましく感じたのは幾度となくあったが、今日ほどその存在を憎く思ったことはない。  弱弱しい光りですら自分の白い肌は過剰に反応して赤く染まり、ピリピリと焼けるような痛みを伝えてくるのだ。いっそ、世界が永遠に夜だったら良いのにと思う。  まだ寝床に入ってばかりのような気がする霞みかかった頭を振って体を起こしたのは、ティファニアの腕に抱かれて眠っていたエルザだった。  まだ眠り足りない。だというのに、薄いカーテンの向こうから射し込む光りは容赦なくエルザの肌を焼く。太陽の光りを直接受けたわけではないから火傷するほどではないのだが、それでも痛いものは痛いのだ。  世界で最も嫌いなものの上位に食い込む存在から逃れるように、ベッドの下に放置していた布の塊を広げ、それで全身を覆う。実のところ、こんな布では十分に日の光を遮れ切れていないのだが、それを...
  • アンリエッタ+康一-32
    何とか三人の追っ手から逃れた康一とマザリーニは、一時近くの部屋の中に逃げ込んでいた。 薄暗くて部屋の中はよく見えないが、机と椅子に幾つかの本が納められた書棚があるだけのようだ。 当然ながら人は居ない。窓があるとはいえ、明かりもつけずにこんな場所にいる人間は怪しすぎる。 そして二人は追っ手に気付かれぬように明かりはつけられないので、充分怪しい人間であると言えた。 「あっぐァ…!」 「マザリーニさんッ、大丈夫…じゃあないですよね」 ピチャリ、と水滴の滴る音がした。そしてその水は赤黒い。 先ほどの氷の矢を、康一は致命傷になる分は防御できたが全てを防げた訳ではなかった。 康一も所々で学ランが引き裂かれ、地肌までも切り裂かれている。 しかしマザリーニはもっと酷い。ザックリと足が裂けて、傷口を押さえても血が止まらないでいるのだ。 これがこの部屋へ逃げ込んだ理由。足がこの...
  • 5 策謀の代償 中編
     太陽が少しずつ赤く染まり始めた時間。  窓を完全に閉め切り、ランプの明かりで照らされた部屋のベッドで、ホル・ホースとエルザは一通の手紙を眺め見ていた。  ハルケギニアに明確な住所は存在しない。手紙の送り方は、実際に届け先を知っている人間に任せるか、この世界特有の高い知能を持つ調教された鳥に預けるかだろう。  ホル・ホースたちが見ている手紙は、どうやら前者のようである。  小さな箱に数枚の羊皮紙と金貨の入った袋が添えられている。重さを考えると、鳥にはとても運べそうに無い。  手紙は、遠い故郷に居る妹と養っている子供達に宛てた物らしい。  内容は手紙を受け取った人間への気遣いを感じさせるものだった。何度も相手の状況を知ろうとする言葉が綴られて、文の終わりには相談事があるならいつでも言うようにと書かれている。 「そんなに心配なら、一緒に居ればいいじゃねえか」  まったく理解でき...
  • 第十五章 この醜くも美しい世界
    第十五章 この醜くも美しい世界 リゾットがアルビオンから戻り、シエスタをモット伯の手から助け出して、数日が過ぎた。 たった数日であるが、ハルケギニアの政治には大きな変化が起きていた。 正式にトリステイン王国と帝政ゲルマニアの軍事同盟が締結されたのである。 同時に一ヶ月後に控えたリステイン王国王女アンリエッタと帝政ゲルマニア皇帝アルブレヒト三世の婚姻が発表された。 誰が見ても新たに立ち上がったアルビオン新政府への対抗手段であり、事実、アルビオン新政府はトリステイン、ゲルマニア両国に不可侵条約を持ちかけた。 かくて、アルビオンの内乱によって緊張状態にあったハルケギニアは、一時的な平和を迎えたのである。 その間、リゾットを取り巻く環境に、また多少の変化があった。 一つには、ルイズからの待遇が改善されたことがある。 朝の洗顔や着替えをルイズが自らする...
  • 白銀と亀の使い魔-18
    夢を見ていた。 故郷ラ・ヴァリエール家の領地内にある屋敷の、誰も寄り付かない中庭の池にある『秘密の場所』。そこはルイズが唯一安心出来る場所。 幼い頃、叱られるとよくここに来て、たった一艘浮かべられている小舟の中に隠れた。 夢の中の幼い私もその小舟の中に隠れていた。 しばらくするとマントを羽織り、つばの広い帽子を被った『彼』がやってきた。 「ルイズ、泣いているのかい?」 『彼』は夢の中の自分に優しく声をかけた。 「可哀相に…また怒られたんだね…。」 『彼』とは領地が近くにあったことから晩餐会を共にしたこともあり、また父と彼の交わした約束もあって、会う度によく会話したものだ。 幼い頃も、そして会わなくなった今も紳士的だった『彼』は私の憧れだ。 「僕の可愛いルイズ。ほら、僕の手をおとり。もうじき晩餐会が始まるよ。 ……安心して。お父上には、僕から取り直してあげる。」 …...
  • 9 皇帝崩御下 前編
    9 皇帝崩御 下 「勘弁してくれよ、ヴァニラの旦那ぁ!」  そんな悲鳴を上げて目を覚ました、森の入り口に放置されたままフーケたちに忘れ去られていたホル・ホースだった。  悲鳴の理由は、夢に出てきたかつての同僚が原因だ。  雇い主に熱を上げていた脳みそが少々アレな男は、スタンドの強力さにおいて仲間内でも頭一つ飛び抜けている人物でもあった。ただ、厄介なことに、彼は忠誠を誓った相手以外の人間の言葉に耳を傾けようとせず、性格も固過ぎてお遊びすら許してくれない、そんな人間だったのだ。  正直、ホル・ホースにとっては苦手な相手である。  そんな男が唐突に自分の夢に現れ、怒りのままに自分を殺しに来るのだ。夢の中で相手を本当に殺すことの出来るスタンド使いを知っているだけに、笑ってもいられない。  夢の中なのにはっきりと感じられる殺気に逃げ出したものの、逃げ切るどころか数歩走った時点で殺...
  • 愚者(ゼロ)の使い魔-20
    宝探しでギーシュが買ってきた地図は五つ。 いちいち細かく言うのも面倒なのでダイジェストで行こうと思う。 まず一つ目。竜の金貨だ。 これは五つ集めると自分が一人増えるらしい。 どういうことなのかは分からない、偏在みたいなもんか? 竜の金貨があるのはダイナソー陸地と呼ばれる場所だ。 陸地ってのは土地名に使うには正しくない気もするが細かい事は気にしないでおく。 そのダイナソー陸地に着き、地元住民から情報を集めていたらとんでもない事が分かった。 竜の金貨はもう無いのだ! 地元住民のYさん(仮名)が言うには突如現れた赤い帽子のひげ男が『便利だから』と全部とって行ってしまったらしい。 もう無い物を手に入れる事ができるわけも無く、だが次に行くには時間がないのでその日はダイナソー陸地に泊まった。 一日目終了。 二日目。 二つ目は青眼の...
  • 愚者(ゼロ)の使い魔-16
    「ってな事があったんだよー、どうすればいいと思う?」 「うーん、謝るしかないんじゃあないですか?」 おれは昼食を取りながら授業中の事をどう誤魔化そうか考えていた。 あの後ルイズはオスマンに呼び出されたらしい。それはつまり相当ヤバイ事をしでかした、という事だ。 おれとしては今この学院を離れるのは惜しい。ここなら部下も集められるし、ルイズを通して国の動きもわかるからな。 だから謝ろうと思った。 方法としては砂人形で何とかなりそうではあるのだが、ワンパターンすぎるのが問題だ。 後の事を考えると他の方法も持っておいた方が良い。 だがあの怒りはちょっとやそっとでおさまりはしないだろう。 考えても分からない。 だから人に聞いてみた。具体的に言うとシエスタに。 「悪い事をしたのなら謝らなくちゃ駄目ですよ」 「うん」 「ちゃんと悪い事を...
  • ゼロと奇妙な隠者-55
     タルブを後にし、『燃える水』がある村へ向かうシルフィードの背に、ルイズは乗っていなかった。 「体調が悪いからゼロ戦を運ぶ竜騎士に連れて帰ってもらう」と言ったルイズの言葉にジョセフは嘘を感じ取ったが、あえてそれに深く突っ込もうとはしない。前日の草原でコルベールから告げられた言葉は、彼女に少なからぬショックを与えていたことを知っているからだ。 「……あんまり無理しちゃいかんぞ」  そう言って頭を撫でるジョセフから、ルイズは黙って俯くことで自分の表情を隠す。  結局ルイズは一足先に学院へ帰り、ジョセフ達はゲルマニアへ向かうこととなった。  目的地の村では『燃える水』は実に豊富な湧出量を誇っていた。しかし燃料としては少々燃え過ぎるのが難点の為、あまり需要はないと村人は言っていた。  その為、樽十本分もの『燃える水』を驚くほどの安価で買えたのは僥倖だった。  ロープで繋いだ樽をレビテ...
  • サンドマン-1
    視界が際限なく明るくなっていく、オレは死ぬのだろう。 悔いも恨みも、砂粒一つほども無い、ただ姉を故郷にひとり残してきたのが気がかりだった。 ただ姉に幸せになってほしい、この祈りを最後に自分は祖先の元に行くだろう。 それとも、部族の土地を奪った白人達の言うように天国か地獄に行くのか? もう時間なのか、光以外に何も見えない…… 音を奏でる者の名で呼ばれた男が光に衝突して消え去る瞬間を見た者は、誰一人としていなかった。 そうして人知れず男は消えた、レース中に出た行方不明者の一人としてこの世からいなくなった。 「宇宙の果てのどこかにいるわたしのシモベよ!  神聖で美しく、そして、強力な使い魔よ!  わたしは心より求め、訴えるわ……我が導きに、答えなさい!!」 トリステイン魔法学校の一室、この快晴ともいえる天候の中行われている行事、それはサ...
  • アヌビス神・妖刀流舞-14
     ルイズは夢を見ていた。  生まれ故郷のラ・ヴァリエールの領地にある屋敷での幼き日の夢を。  デキのいい姉たちとの魔法の成績を比べられ、物覚えが悪いと叱られたあの日。  その事を召使たちにまで噂され悔しい思いをしたあの日。  それが悔しくて悔しくて、夢の中の幼いルイズは『秘密の場所』へと逃げるように駆けていく。  そこは唯一安心できる場所。あまり人が寄り付かないうらぶれた中庭。  池の周りには季節の花々が咲き乱れ、小鳥が集う石のアーチとベンチがある。池の真ん中には小さな島があり、そこには白い石で造られた東屋が建っている。  島のほとりに小船が一艘浮いていた。舟遊びを楽しむためのその小船、今はもう使われていない、幼き今の日よりもずっと前に置き忘れられた、その小船。  その忘れさられた中庭の池と小船が、幼いルイズの『秘密の場所』  叱られると、決まって小船の中へ逃げ込む、そこ...
  • 脱出! アルビオンは風と共に……
    脱出! アルビオンは風と共に…… 「ジョータロー!」 疲労困憊で動けそうにない承太郎に、ルイズが声をかけた。 承太郎は少々疲れたらしく、わずかに息が乱れている。 「すまねえ。奴を逃がしちまった……」 「いいの。ジョータローが無事だったから、それで……」 「…………」 ルイズはしばし、承太郎の腕にしがみついて、泣いた。 ウェールズの切断された腕、ワルドの裏切り、承太郎への気持ち。 すべてがこもった涙をポロポロとこぼす。 そして、遠くから地響きのような声と音が聞こえてきた。 最後の戦が始まったのだ。 「このまま、のんびりもしていられないな。  君達は何としても手紙を持ってトリステインへ帰らねば……」 「で、でも敵の数は五万です。艦はもう出てしまいました……」 どうしようもない、という表情のルイズ。しかし承太郎はあきらめない。 「ウェールズ皇太子。アルビオン大陸...
  • 仮面のルイズ-23
    朝早くシエスタは目を覚ます。 使用人として働いていた時の癖が抜けないのか、彼女は魔法学院の生徒で一番早起きだった。 掃除洗濯をして身支度をしよう…と思ったところで、ここが魔法学院の寮ではないことに気づく。 来客用に作られた木組みのベッドは、この近くで採れる蔓草を編んで作ったクッションが敷かれており、寝心地は悪くない。 使用人の部屋にあったベッドより、ずっと柔らかく弾力もあるこの素材をこれから採取しに行くのだ。 シエスタは部屋を出ると、すでに起きていた村長の奥さんに井戸の場所を聞き、顔を洗いに外へ出た。 洗面用の桶を準備すると言ってくれたが、貴族の『立場』に慣れないシエスタは、それを断った。 森の奥にある村だけあって、早朝の空気はとてもよく澄んでおり、シエスタの故郷タルブ村とは違った心地よさを感じていた。 しばらくしてギトーも目を覚ます、どうやらあのベッドは...
  • ジョルノ+ポルナレフ-10
    い、今起こったことをありのまま話すぜ! 私を召喚したルイズが石を錬金しらた爆発が起きた…な、何を言ってるか分からないと思うが私にも何が起こったのかわからなかった。 錬金なんてちゃちなもんじゃねーもっと戦闘向きな魔法を味わったぜ! 出したままのスタンドで私は周囲の惨状を見る。 爆発で壊れた教室の備品! 砕けた石の破片が食い込んだ壁! マジシャンズレッドがスタンドでなかったらと思うとゾッとするぜ… ルイズが使い魔は外と言うんでおとなしくマジシャンズレッドで授業を盗み見してたんだが、私が生身なら同席を希望して爆発の影響下にいたはずだ。 ジョルノが見つけてくれるまで、無駄なストレスとダメージは回避すべきだからな。ラッキーだったぜ。 ルイズが魔法を使うときは離れておくのがベストだな。 周りの連中が言っていることを盗み聞きした感じでは、絶対に失敗して爆発を起こすらしい。...
  • 事件! 王女と盗賊……そして青銅 その②
    事件! 王女と盗賊……そして青銅 その② 品評会当日ッ! トリステインに咲いた美しき白百合、アンリエッタ姫殿下は最前列の席に着いていた。 使い魔の品評会を素直に楽しむ気持ちもあったが、彼女はそれ以上にルイズとその使い魔の活躍を期待している。 あの使い魔は人だった。 でも使い魔でもある。 いったいどんな特技や能力を持っているのだろうと思うと胸がワクワクした。 そして品評会が始まる。その裏で静かに進行する計画に誰も気づく事なく。 魔法学院任二年生のみんなは、各々個性豊かな使い魔に様々な芸をさせて観客を沸かせる。 観客は王女の他に学院の教師と、学年の異なる生徒達だ。 王女の周囲には常に複数の護衛がついている。 王女が連れてきた護衛と、学院を守る衛兵、双方が協力し合っている。 当然の事だ。それだけ王女の身の安全が重要なのだから、学院の警備よりも……。 ルイズはクラス...
  • ゼロいぬっ!-33
    「結論を出すのは早急過ぎるのでは?」 「いや、しかし『アンドバリの指輪』が盗み出されたとなれば…」 「そもそもクロムウェルという名だけでアルビオンの司教と断定するのは短絡的かと。 それに偽名を用いた可能性も否定できまい」 「アルビオンが我が国に侵攻してくると? バカらしい! あの国とは長きに渡って友好関係を保ち続けている。 下らぬ疑惑は関係を悪化させるだけと心得よ!」 モット伯からもたらされた情報によって開かれた臨時会議は沸くに沸いた。 しかし、そのほとんどは否定的な意見が多く具体的な案を出す者はいない。 特に高等法院長のリッシュモンが中心に疑問の声は強まっていく。 一向に会議は進まず“今後の動向を窺ってからでも遅くないだろう”という結論で締め括られた。 次々と退室していく重臣の数々を見送りながらモットは席に着いたまま動かない。 「しか...
  • 第三話 使い魔サーレーと黒髪メイド
    サーレーの母の病気の原因は肺ガン。 治療にはSPW財団のガンの発育を抑える薬が要る。 それには莫大な金とSPWに顔利きが出来るぐらいの地位が無ければ買えなかった。 その薬が手に入るまで、サーレーの固定化で症状の悪化を防いでいた。 しかし、現在サーレーと母親との距離は遠い。 固定化の効果が切れるまで後大体3日。 この間に帰る必要が有った。 第三話 「使い魔サーレーと黒髪メイド」 ルイズ日記 ●月▼日 あ、有りのままに起こったことを書くわ! 今日私の召喚した使い魔なんだけど、最初逃げたり、生徒たちの総攻撃を止めまくったり すごいと思わせるようなことをやりまくったのに故郷に帰れないと知ってイキナリ取り乱したりとんでもなく凄かった! 何を言っているかわからないと思うけど、先住魔法や家庭の危機とかチャチな物では断じてないわ!!もっと凄い物の片鱗を味あったわ。 な...
  • ゼロの来訪者-22
     モット伯の屋敷に向かう馬車の中、窓の外に目を向けるシエスタの顔は沈んでいた。  自分がどのような『仕事』を申しつけられるかはわかっている……  自分の胸を凝視するモット伯の顔を思い出し、嫌悪に震える身体を抱きしめる。  だが同時に、自分にはどうにも出来ないのだと、彼女は諦めていた。  自分は平民であり、貴族の要求を拒む事など出来はしない。  そう考えていると、先日の食堂での出来事を思い出した。あの時自分は貴族という絶対的な存在を前に震えていた。そして恐怖に震えながらも、どこかで諦めていた。  ただの平民である自分を、誰が助けてくれるというのか?  貴族にとって平民など家畜に等しい。  そして、貴族に歯向かってまで自分を助けるような平民などいはしない。  その事に腹が立つという事も無い。  それは当然の事であり、仕方が無い事なのだ。  だからあの時、自分を助けてくれた...
  • 第二話 サーレーの受難と魔法少女
    『第二話 サーレーの受難と魔法少女。』 「いった――い!!」 「っつ・・・・」 サーレーとルイズはサンドイッチのように折り重なっていた。 「!!お前!!」 サーレーが自分の上にいるルイズに気が付いた。 サーレーが逃げようと立ち上がる。おお!?ずっこけた!! 「何してんのよ・・・。」 「死にたくない!死にたくない!死にたく・・・」 「誰もあんたを取って喰ったりしないわよ・・・。」 サーレーがピクッと止まった。 「ここはパッショーネのスタンド使いの養成機関じゃないのか?」 「スタンド?パッショーネ?」 ルイズがハァ?と呆れた顔をした。 「何それ。頭イカレてるの?この状況で。」 そう言っているとサーレーとルイズの周りを生徒達やコルベール先生が取り囲む。 「!なんだァ!まだヤンのか!」 コルベールがサーレーの目の前に来た。 「ミス・ヴァリエール。彼と契約し...
  • ゼロと奇妙な隠者-52
     ジョセフを追い出してから、太陽がまた同じ位置にやってきた頃。ルイズはあれから部屋に閉じこもったまま、泣きじゃくるか泣き疲れて寝るかの繰り返しを続けていた。  睡眠の時間こそは普段より多いくらいだが、眠り自体が浅く断続的に寝たり起きたりを繰り返す睡眠が良質なものであるはずもなく、ルイズは目覚めていても薄ぼんやりとした靄が頭に掛かったままになっていた。  そんなろくすっぽ機能しない頭でも、丸一日考える時間があれば、なんとつまらないことで使い魔を追い出してしまったのだろうという後悔に至るのは容易いことだった。  客観的に見れば、自分がいない間に、部屋でメイドと一緒に食事してただけである。  別にベッドの上でいかがわしいことをしてたわけでもなく、メイドにパイを食べさせたフォークで自分もパイを食べただけでしかない。  だがそれがどうしても許せない。理由は判らないが、どうしても許せないのだ...
  • 外伝-8 コロネのお茶会
    ポルジョル外伝-8 コロネのお茶会 ジョルノはその日、テファ達と離れ一人、ポルナレフが編み出した亀投げによる移動により学園からそう離れていない場所にある一軒の小屋へ向かっていた。 魔法学院は、国からある程度の予算を貰っているが、同時に貴族達と同じく領地も持っている。 過去に行われていた実戦的な授業に、はある程度自然に近く、それに広い敷地が必要だったし、授業で使う教材や簡単な材料、ヴァリエール公爵家などの大貴族の子息も通う為新鮮な食材を生産できる土地も、必要だった。 だが正当な理由から与えられた領地の殆どは、使われていない森ばかりであり…ジョルノが訪れようとしているのは、その森の中にある小屋の一つだった。 その小屋は街道からは少し離れた場所に建てられていた、実質、犯罪者達が使う小屋であった。 勿論、そこへ向かうジョルノも、犯罪組織絡みでの用向きだった。 テファ達より...
  • 味も見ておく使い魔 第三章-01
    トリステイン王宮と同じ月の光がトリステイン魔法学院を照らしているころ。 学院の図書室では、露伴がマンガを製作していた。 図書室は吹き抜けのある二階建ての本棚がある巨大な部屋で、まさにトリステインの未来の頭脳を養うにふさわしい威容を示している。 本の収蔵量は、トリスタニアにある王立アカデミー図書館に次いで国内第二の収蔵量を誇る。 その奥の一角、個人勉強部屋。 本来なら貴族しか入室が許されないのだが、岸辺露伴にとって、そのような規則を守る必要性などまったく感じ合わせてはいない。 そうしてすっかり個室の常連となった岸辺露伴とタバサが、同じ机で顔を突き合わせて、なにか真剣な会話を交わしていた。 その机には、白地に黒い線が縦横に丹精に描かれている紙が置かれている。 露伴の生原稿だ。 よく見ると、軍服を着た男性が四コマ枠ぶち抜きで、大げさに帽子をかぶりなおしている姿...
  • 衝撃! その名は『ヨシェナヴェ』
    衝撃! その名は『ヨシェナヴェ』 翌朝になって、コルベールはさっそく竜の羽衣を学院へ移送するため、竜騎士隊に大金を払う約束をして運び出してもらった。 ついでにコルベールも竜騎士隊に付き添って一緒に学院へ帰るらしい。 曰く、シルフィードの背中を軽くして上げようと思ったらしい。 承太郎達は、お昼にシエスタ特製のヨシェナヴェを食べてから帰る予定だ。 コルベールもヨシェナヴェを食べたがっていたが、今は一刻も早く竜の羽衣を持ち帰って研究したい事と、シエスタが休暇を終えて学院に帰ってくればいつでも作れるという事で納得した。 こうしてコルベールは竜騎士隊と一緒に竜の羽衣を持ってタルブの村を去る。 残ったルイズ達は、授業をサボって得た休息を満喫していた。 タバサは承太郎をピクニックに誘って怪しまれ断られ部屋で読書をしている。 キュルケは承太郎をデートに誘って...
  • 第四話 『決闘と血統』完結編
    「才人、さん……?」  モット伯にシエスタが待機させられていた部屋――吐き気のすることに、モット伯の寝室だった――に才人が入った時、シエスタは最初、その姿を信じられないものでも見るかのように呆然と見つめていた。一緒についてきたギーシュは、気を利かせて扉の陰に隠れていた。  その脳裏に、どれ程の絶望がよぎったのだろう。どれ程の悲しみが去来したのだろう。  それを考えると、才人はいたたまれない。 「もう大丈夫だシエスタ……モット伯とは、話をつけてきたから。  帰ろう」 「――!」  現実は物語のようにはいかない。  シエスタは才人の名前を大声で叫んだりはしなかった。ただ、無言で才人の胸の中に飛び込んできて、そのまま泣いた。  恐怖と諦めから解き放たれた喜びを涙でのみ表すかのように、泣いた。  才人はそんなシエスタの肩を、赤子をあやすようにさすっている……内心では、女の子に抱きつかれて...
  • ドロの使い魔-9
    その深夜、セッコは彼にしては珍しく悩んでいた。 ルイズは“フリッグの舞踏会”の疲れか、完全に眠りこけていた。 学院長室でのやりとりを思い出す。 「でも?」 「何も分からんでも、恨まんでくれよ。記憶を~」 あのヒゲジジイ、分かっても教える気がねえんじゃねえだろうな。 だが調べようにもここの図書館へは、使い魔や平民は入れんらしい。 そもそも入ったところで字が読めねえ。 元々読めなかったのか、それともここの字がダメなのかは分からねえ。 この時点で自力という選択は却下だ。 誰かに、ヒゲではない誰かに調べてもらうしかねえ。 第一案。 目の前で寝ているルイズを見る。左手の印も見る。 怖いし却下だ。 第二案としてギーシュの顔が浮かんだ。あいつなら何でも聞いてくれるだろ。 だがなあ。 「やっぱし、馬鹿もダメだあ。」 つい...
  • ゼロいぬっ!-26
    「……それで今、三人は?」 「はい。ミス・ツェルプストー、ミスタ・グラモンの両名は捕獲され、以後は別室で軟禁する予定です」 「ミス・タバサは?」 「彼女は薬の効きが弱かったのか、比較的平常を保っていますので大丈夫かと…」 ミス・ロングビルの説明を聞きながらオスマンは溜息を零した。 どうも最近になってから溜息ばかりついている気がする。 しかも、その面子はいつも同じ。 モット伯の一件が平穏無事に済んで安心していた矢先にこれだ。 もう何か悪いものに取り憑かれてるんじゃなかろうかと思いたくもなる。 「まさか、こんな事に秘宝である『眠りの鐘』を使う事になるとは……」 正直、始祖ブリミルが知ったらさぞ嘆くであろう。 といっても相手はトライアングルを含む三人のメイジ。 戦いになればどれだけの損害が出るか知れた物ではない。 ましてや怪我をさせずに捕...
  • ゼロいぬっ!-35
    シルフィードが空の色に溶け込むように大空を舞う。 その背にはタバサのみならずキュルケも同乗していた。 「んー、やっぱり風が気持ちいいわね。ねえタバサもそう思わない?」 「……………」 いつもならタバサも頷いて同意してくれるのだが今日は違う。 彼女の視線はじぃーと私の顔を見続けている。 分かっている、素直になれと彼女は言いたいのだ。 でも、それを口にしたら私が意固地になると分かってて彼女は言わない。 ったく、気心の知れた友達というのも楽じゃないわね。 こっちの考え、全部筒抜けじゃない。 この遠乗りには私がタバサに頼んだ物だ。 学院に居辛かったので気分転換を兼ねて空の旅を満喫している。 目的地も決めずにいたのでタバサにはすぐ勘付かれたようだ。 「分かってるわよ。でも恥ずかしいものは仕方ないでしょ」 フーケのゴーレムとの戦い、それに今...
  • 味も見ておく使い魔 第八章-02
    「大丈夫? タバサ」ルイズが改めてタバサに問いかけた。タバサの周りには、かつてイザベラであった塵が舞っている。  いまさっきまで敵対していたとはいえ、実の従兄弟が死んだのだ。普通の精神ならば、いくらか精神に変調をきたしてもおかしくないはずだった。  だが、タバサは、 「大事無い。それよりもあなたたちの傷の治療をしなければ」  そういいきり、淡々と杖を振った。が、ルイズにかけられた治療の速度がいつもと段違いに遅い。それは、 「タバサ。それはイザベラの杖よ」  タバサが振った杖はイザベラの杖であった。あわてた風に取り替えるタバサ。  ようやくルイズの治癒が終わるころ、気絶したはずのキュルケから苦痛の吐息が発せられた。どうやら彼女の意識が回復したようであった。 「大丈夫、キュルケ?」  立てる? と問いかけたルイズだったが、キュルケは目を開き、気丈に微笑んで見せる。 「ええ、...
  • 仮面のルイズ-33
    アルビオンの街の一つ、街ロサイスは、首都ロンディニウムの郊外に位置している。 ここはアルビオンの、特に空軍にとって重要な街であり、そこかしこに無骨で巨大な煙突が建ち並んでいた。 ハルケギニアで工業技術の秀でた国と言えばゲルマニアだが、空の上に浮かぶアルビオンも造船技術では引けを取らない。 煙を吐き出している煙突は、巨大な工場らしき建造物から伸びており、工場の中では真っ赤に溶けた鉄が鋳型に流し込まれているところだった。 アルビオンの皇帝となったオリヴァー・クロムウェルは、お供の者達を引き連れて、工場の建ち並ぶロサイスの街を視察していた。 その中にはワルドの姿もあり、視線だけを動かして周囲を観察していた。 トリステインには無かった巨大な造船工場は、アルビオン国王のおふれに始まる。 百年以上昔、首都ロンディニウムでは大火事が発生し、木で出来た家々は消し止める間も...
  • Epilogue ひとときの幸せ 後編
     青い影が一つ、遠くから近づいてくる。  タルブの村から少し離れた森の入り口に立てられたボロボロの小屋の窓辺で、日の当たらない位置に体を置いたエルザは、その姿を見つけて大きく手を振った。  小屋の中にはベッドが三つ、隙間無く並べられている。  そのうちの二つを占拠する男二人に視線を向けて、エルザは屈託の無い笑顔を浮かべた。 「ほら、お兄ちゃん!おねえちゃんが来たよ!まったくもう、トリスタニアなんてそう遠くないんだから、なんで遅くなったのかしら?……あ、そうそう。知ってる?フーケもテファちゃんも、子供たちを連れてタルブの村に住むんだって。許可、貰えたみたい。ペルスランとカステルモールが村長と交渉してくれたの。事情が事情だから領主には内緒だけど、暫くはこれでなんとかなりそうよ」  ニコニコと笑い、ベッドに横たわる男の胸に転がったエルザは、目の前の頬を手の平で軽く叩いて口を...
  • 使い魔は手に入れたい-20
    「お待たせしました」 猫を寝させないために鼻を塞いでいたところにシエスタがお盆を持って戻ってきた。 お盆の上にはティーポットとカップがのせられている。 「すまないな」 「いいえ。好きでやってますから」 シエスタは私の隣に座るとティーポットからカップにお茶を注ぐ。 そしてお茶が注がれたカップを私に差し出してくる。 「ありがとう」 猫から手を離しカップを受け取る。 お茶の色は少し緑色っぽい。もしかしたら緑茶かもしれない。 カップを口元に近づけ香りを嗅いでみる。 いい香りだ。なんとなく落ち着くような感じがする。 猫も鼻をヒクヒクさせティーポットの匂いを嗅いでいる。シエスタはそれを見て微笑んでいる。 香りを十分堪能し、今度はカップを口につけ、お茶を口に含む。 なんと言ったらいいだろうか。何というか独特の味だった。 しかしそれがいやなわけで...
  • ゼロと奇妙な隠者-15
     図書室と言うものは何処でも独特の黴臭さを僅かに漂わせている。  しかしジョセフが初めて足を踏み入れた其処は、ジョセフが利用したどんな図書館よりも巨大で、立ち並ぶ書架の群れに並べられた無尽蔵とも思える蔵書達。  宝物庫での騒動で、生徒達は勿論司書達も現場に行っている。この広大な空間に三人きりというのは、奇妙な高揚感が浮き上がってくるのだった。 「っはー……すげェモンじゃのォ~~~~」  もはや感嘆するしか出来ないジョセフの横で、何故かルイズが自慢げに腕を組んだ。 「当然よ、このトリステイン魔法学院の図書室はこの世界にある全ての書物を収蔵しているとも言われてるのよ」  ジョセフとタバサは『いやそこはお前が自慢するトコじゃない』オーラを色濃く漂わせていたが、ルイズはそれに気付く様子は皆無だった。 「それはさておいてじゃ、タバサ、ルイズ。この辺りの地図を手当たり次第用...
  • ゼロいぬっ!-24
    「さてと……これからどうするか?」 ずらりと部屋中に並べられた調度品を眺め、デルフが呟く。 狭い寮の室内を埋め尽くす高級品の数々。 だが、飾る場所を違えたそれは混沌となんら変わらない。 絵画がレンガのように並べ立てられ、入り口を塞ぐように鎧が並び、 置き場も無く足元に転がっているのは貴族でも入手困難な書物。 部屋の主は頭を抱え、張本人は頭に冠を乗せたまま丸めた赤絨毯を寝床にしてる。 正しく猫に小判、豚に真珠、犬に財宝である。 メイド達は御者達に多めにチップを渡し、一人一人故郷に送ってもらった。 “金もあるんだし、いっそ専属のメイドにしちまえば?”とデルフから言われたが、 『ブラシをお掛けいたします』 『爪のお手入れをさせてもらいます』 『はい、あーんしてください』等とたくさんのメイド達に囲まれる、 そんな煩わしい光景を思い浮かべて断...
  • 発明! コルベールエンジンとタバ茶三号
    発明! コルベールエンジンとタバ茶三号 長い円筒状の金属の筒に金属のパイプが延び、パイプはふいごのようなものに繋がり、円筒の頂上にはクランクがついていて、そしてクランクは円筒の脇に立てられた車輪に繋がっている。 という文を写していてよく解らない形状の物体を見て生徒達は首を傾げた。 何だこれ? と。 それはコルベールが持ってきたカラクリであった。 「これは私が発明した装置で、油と火の力を使い動力を得る装置です」 意味不明な説明を聞きまたもや首を傾げる生徒達。 油と火で動力って何よ? どういう理屈で何の役に立つものですか? つかこれ本当に魔法の授業? おもちゃ遊びするなら授業料返せ。 そんな冷たい視線を浴びてもコルベールはそしらぬ顔をしていた。 というか自分の発明品に酔い、生徒達の眼差しに気づかなかった。 自信満々に装置の説明を続ける。 「...
  • 4 土色の愛情 後編
     三度、月が空を横断した頃。  ホル・ホースとエルザの二人は、やっとのことで山道を抜けて開けた場所に出た。  一面の草原に細い小川、遠くにはまだ青い麦の畑も見える。  人が居る証だ。 「よ、よおおぉぉしっ!とうとうガリアを抜けたぞ!長い道のりだったが、シャルロットの嬢ちゃんから逃げ切ったぜええっ!」  両手を握り締めて高く吼えたホル・ホースの横で、エルザは白けた目を向けている。 「お兄ちゃんが途中で倒れなければ、もっと早く山から下りれたのに……」  誰のせいだと思っている。とは口にせず、ホル・ホースはエルザを抱き上げて人のいそうな方向へと足を向けた。  目の前を流れる川を越える頃には畑だけでなく、民家も見えるようになっていた。町というよりは村だろう。森に住む妖魔たちから身を守るように、家が密集して建っている。  特にこれといった名物も無さそうな、貧相な姿に上手い酒は期待で...
  • 仮面のルイズ-75
    ラ・ロシェールの街は、アルビオンとトリステインを繋ぐ港町として栄えているが、元々は戦争のために作られた砦であった。 現在は宿として使われているが、この街一番の宿『女神の杵』亭は砦を改装した店だと言われ有名である。 ふだんは旅行客と船乗りを相手にするラ・ロシェールの酒場も、神聖アルビオン帝国との戦いを目前に控えた現在、客層は兵士・傭兵・人夫・商隊がほとんどであった。 娼婦達も稼ぎ時だとばかりに馴染みの酒場へ出かけ、客をとっては宿へ行き、金のない者は倉庫で済ませ、あげく人気のなさそうな路地へと引き込むものもいる。 そんな娼婦達にも、近寄るべきではない場所というものがある。 たちの悪い盗賊や人攫いが、寂れていそうな酒場に集まると、すぐに女達の噂となり、ごく自然にその一角から姿を消していく。 彼女たちはお互いが商売敵ではあるが、互いの境遇から来る同情心と、身を守るための仲間...
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