闇焔の牙《Thanatos》五番機 エッセ・ノードニルブ
生まれつき視力が無いというハンディキャップを背負っていたにも関わらず、
相棒である龍との信頼関係と弛まぬ
魔術の研鑽によって、
ユグドラシル首都防空隊の分隊長を務めるまでになった女性
龍騎士。
性格は穏やかであるが、決して柔弱という訳では無く、根底には強い意思を持つ。
相手を問わず全くの平等に接することから部下からの信頼も厚く、
それは龍などの動物に対しても同様で、非常に懐かれ易い模様。
御蔭で、彼女の宿舎の部屋周辺は、紆余曲折あって結果的に手懐けられた多くの動物の溜まり場と化し、
猫と鳥が犬を枕に添い寝するという珍しい光景が見られる。
生まれは
ユグドラシル北部の寒村で、生後間も無く発覚した盲目という事実にも関わらず、
親や村の人々に暖かく見守られながら成長。
虐めや迫害とは無縁に育ち、十代前半で魔術の才に目覚めると、
村の守り人となって下位の
魔物や
悪魔を追い払う役目を担った。
彼女の才覚は、
マナ――特に風のマナの細やかな操作にあり、遠くの小さな音を増幅して聞き取るなど、
聴覚を基軸にした感覚鋭敏化の魔術を得意とする。
また、その器用さは他属性の魔術にも活かされ、殊に、水のマナによって具現化した多数の水流を氷結させ、
それ自身の運動エネルギーを利用して飛ばす『氷剣《Ice Sword》』については、
後々彼女の代名詞と言われる程のものであった。
ある時、付近で出現した中級悪魔を討伐に来た警邏隊に協力した際に、その力を見込まれ、軍へ入隊することとなる。
その際、彼女の技能から小規模の高機動部隊への編入が考えられたが、高空に於いて風を制御し、
聴覚による索敵と音声による高速指令伝達を行う管制機として空軍龍騎士隊への配属が決まった。
その後、訓練によってめきめきと力を付け、一年後まず警邏隊へ配属。
数々の討伐作戦に於いて、管制機として期待通りの働きをしつつ戦闘にも参加。
下級悪魔数十体、中級悪魔三体という功績を挙げ、ヒルデブランド帝崩御と前後して首都防空隊に引き抜かれた。
格闘戦を得意とし『紅纏の鋭刃《Blaze Blade》』と称された
ミレイアと並び、
『氷剣』を用いての一撃離脱戦法によって、確実に一つずつ敵を落としていく様から『蒼纏の大剣《Sky Sword》』との異名を持つ。
また、戦役後には二人纏めて『双龍姫』と呼ばれ、龍騎士を目指す女性達の憧れの的となっている。
戦役終結後、その功績を買われて
第一次文明戦争まで
黒騎士の龍騎士隊に所属していたが、
久平南部での撤退戦の最中、殿を務めていた際に撃墜され、落下の衝撃で両手足を複雑骨折。
幸いにも命には別条無く、治療を受けた後、翼を撃ち抜かれながらも生き延びた愛龍トースと共に前線から退き、
教官として新米龍騎士達を鍛える日々を送っている。
「やったわ! エッセ様とトース、両方描かれた絵画なんて……ヘレナ達にも自慢してやろっと!
……そういえば、この絵、エッセ様がちょっと透けてるわよね。しっかり描かれてるし、狙って透かしたのかな?
だとしたら、絵師は凄い技術持ってたのね。トースの綺麗な淡い色味を損ね過ぎないで、上にエッセ様を描き加えたんだから。
ん? 下の方に何か……これ、文字? でも、ユグドラシルの文字じゃないなぁ。
ソレグレイユのアルファベットと……前は、花のマークみたい。
もしかして、絵師のサインか何かかな? 一寸調べてみよう」
―――ユグドラシル、街の古びた美術品店にて。ある少女の独り言。
最終更新:2014年07月03日 07:57