《小槌の悪漢/Gaveleer bandit》
バンディット・ウルフの中でも比較的大柄な個体は、なんらかの武器を持ち"武装"する傾向が強い。
その多くは、小型の(あくまで"彼らの体格に比して"ではあるが)槌を得物としており、
そこから『ガベラー(=槌で打つもの)』という通称が生まれることとなった。
(但し、これは"種族"としての正式な区分けではなく、一部の『武装したバンディット・ウルフ』を指す俗称にすぎない)
幸い、人里の近くには降りてこず、普段は廃墟となった場所や森林など、
むしろ他の
魔人を狩ることの出来るような場所に潜んでいることが多い。
成長に合わせて毛皮は退化しているが、犬歯は(画像では叩き折られてしまっているものの)未だに健在である。
少火力の武器では歯がたたない程の角質層を持ち、腕力も強くなっている。
魔人としては中級に属し、
協会および
教会では、討伐の際にはCランク以上の戦闘員を派遣するようにしている。
Bランク以上の戦闘員にとってはさしたる脅威でもないが、
Cランクまでの戦闘員にとってはかなり強力な敵であり、一部には仲間を大量に殺されたものもいる。
「こういうのは……《教会/Church》の奴らがやってくれよっ!」
俺は一歩距離を取った。Cランクが三人。正直言ってかなりきつい。
けれど、勝たなければ死ぬ。シンプルな話だ。
"肉を切れ、さもなくば切られん"
どこかで聞いたような格言だが、今はシャレにもならない。
骨を切らせば肉までも、剛良く柔を断つ。
ただの廃墟だと思って、少人数で潜ったのが失敗だったか。
ハンドルが一人でもいれば――否、今更泣き言を言っても始まらない。
リヴァニエは、相手からすれば多少尖った針くらいの細い剣で戦っている。
槌がか細い剣を阻み、火花が散る。もう一人の魔術師は青い顔をして屈んでいる。
彼女の額から大粒の汗が落ちる。
『過唱え―
通常種が無理矢理に
魔術を使う時によく起こる現象―』を引き起こしているのは明らかだった。
彼女の手に握られた短剣も、もはや魔術の底上げが切れかかっている。
「ジリ貧だ! 下がれ!」
俺は叫ぶ。
「死にたくない、死にたくない、どうにかしてよ!」
リヴァニエは俺の声を無視して細身の剣を振り続ける。恐慌。バンディットが哄笑する。
俺は目を一瞬つぶる。やるしか無い。
魔術礼装の封を解除する。
大気中に散らばっていた
マナが突如可視化する。鎧に青白い光が収束する。
腕、太もも、背中、腹、全ての箇所に焼けるような痛みが走る。マナが体を駆け巡り時の痛みだ。
エルフなら、
魔術回路とやらのおかげでこの痛みを感じないらしいが、そんなもの俺にはない。
だからどうした!?
俺は歯を食いしばる。夜の帳が、降りるのを一瞬躊躇する。
「――どけよ!」
剣が軽い。踏みしめる地面は異様にしっかりと感じる。
俺は体勢を低くする――リヴァニエ、死なせやしない!
最終更新:2015年02月12日 04:07