ベーリング海峡海戦
第二次文明戦争時、
久平領北部を奪還し、
ソレグレイユ領への侵攻を開始した
ユグドラシル・久平連合軍は、
ソレグレイユ本土たるエントロフィリア大陸(旧北アメリカ)への渡航を目的として
二つの大陸の間に横たわる「ベーリング海峡」での勢力圏を確保しようと、多数の海上戦力を同海域に進出させた。
対するソレグレイユは、これを阻止すべく同海域の哨戒艦の他に主力増援艦隊の派遣を決定。
両軍は2日間に亘って戦闘を行い、ソレグレイユ艦隊は撤退。
ユグドラシル連合艦隊が同海域の制空権を握った。
ユグドラシル最大の攻撃手段である
魔術は、魔術師の有視界内が射程圏内となる。
その為、ミサイル兵器や高い対空対潜能力を持つ旧文明の艦艇を再現し保有するソレグレイユは、
第二次文明戦争時であっても海戦における、その優位性を確固たるものとしていた。
第一次文明戦争以前のユグドラシルでも、これらのソレグレイユ艦艇の攻撃に対する
迎撃手段は持ち合わせていたが、その反面、敵艦を撃破しようにも有効射程範囲に入る事が
ほぼ不可能であった為、竜母艦載の
竜騎兵による地道な爆撃や魔術攻撃程度しか反撃の手段がなかった。
そこでユグドラシルは、自らの庇護下に置いた久平と、彼の国の技術に希望を見出した。
ソレグレイユが
魔法素技術を兵器へと転用したように、
ユグドラシルもまた、久平を通じて発展させた科学技術を従来の魔導に応用したのだ。
久平が重きを置く敵勢力の早期発見を目的とした哨戒網と、それに付随する迎撃システムの技術提供を受け、
ユグドラシルはソレグレイユと比較しても遜色ない程の艦隊防護能力を得るに至った。
そして、提供された技術の1つであるミサイル兵器に魔術という独自の改良を加えた結果、
ユグドラシルは、ソレグレイユの「
SH-6」に準ずる長距離兵器までも手に入れる。
魔術分野において一日の長を持ち、部分的にソレグレイユにも匹敵する技術を有する
久平の技術を組み合わせたことで、ユグドラシルは同様の試みを行っていたソレグレイユよりも早く、
本格的な他文明との技術融合を果たした兵器を実戦投入する事に成功したのである。
両軍は数百kmの距離で対峙し、互いに譲らぬミサイル攻撃と迎撃が繰り返された。
その間、双方の艦隊の中間地点付近では航空戦が発生していた。
ソレグレイユ側は空母艦載機およそ150機、ユグドラシル側は竜母艦載飛龍200騎と、
久平製空母艦載機約50機が出撃し、およそ2時間に亘る空中戦を行う。
第一次文明戦争での圧倒的勝利に慢心していたソレグレイユは、数の差を物ともせず戦闘に突入したが、
防弾能力が飛躍的に向上した飛龍に格闘戦を挑み、次々と空中で捕えられては撃墜されていった。
同海域での制空権を奪ったユグドラシル連合軍は、新たに考案した敵艦隊撃滅構想の実行に執りかかる。
それは、
『制空権を掌握した状態で魔術師を航空機に搭乗させ、空からの観測魔術攻撃を実施し、敵艦隊を撃滅する』
というものだ。
魔術師が飛龍に乗った状態で魔術を行使するには相応の訓練が必要な上、
大規模魔術の行使には環境が適さない事から、長らく実現不可能であったが
久平の技術を得て高性能な航空機の開発が可能となり、
ユグドラシルは試験的に、今回の艦隊戦でこの構想の実行を試みた。
作戦は次のように展開された。
まず、足の遅い航空艦を囮とし、ソレグレイユ艦隊目掛けて突撃を敢行。
敵がそちらに気を取られている隙に残存する飛龍隊を第二の囮とし、空からの波状攻撃を開始する。
それらに紛れ、別方向から本命の魔術師搭乗航空機と、
それを護衛する飛龍隊が射程圏内から大魔術を発動させ、敵艦隊を撃滅する。
そして、この作戦は見事成功した。
発動された火属性の魔術により急激に熱せられた海水が水蒸気爆発を引き起こし、
ソレグレイユ艦隊は艦艇の多数が転覆、または航行不能な損害を受け、一瞬にして壊滅した。
航空艦隊と遅れて到着した連合艦隊本隊により、
残存するソレグレイユ艦艇は追撃を受けつつ、同海域から撤退した。
この海戦でユグドラシルは、多数の飛龍と航空機、航空艦4隻を失ったものの、
同海域の確保という当初の目的を達成する。
対するソレグレイユは、出撃艦艇の80%以上を喪失し、
同海域と領土の一部を失陥するなど、その損害は大きかった。
この後、第二次文明戦争後期に竣工する魔法素機関を搭載した新艦船の登場まで、
ソレグレイユは海での優位を著しく欠く事となる。
最終更新:2016年09月13日 16:44