『童磨』の立ち位置は中々面倒だった。
優位な状況ではあった。『万世極楽教』の人脈を使い、ある程度の情報収集に
自身とランサー『マンティコア』の食糧という名の人材確保。それらを隠蔽工作する程度は造作もなかった。

それでも、慎重でなければならない理由。即ち、童磨の弱点――『太陽』。
車で移動するなり、昔と比較すれば行動範囲が広くなったとはいえ結局、弱点は健在なのだ。
そこを突かれれば彼が不利になるのは当然。

本戦開始とはいえ……それでも踏み込んだ行動に出るのは迂闊。
何より、聖杯を獲得するべく全ての主従を相手するのも困難を極める。
見境ない暴力者であれば、ただ一人残さず蹂躙し尽くすだろうが、童磨にはそういう感性を持ち合わせていなかった。


童磨が打った手は『情報収集』である。
既にサーヴァントの主従らしき情報を幾つか取得しているが、所詮はNPCが現実に準じた表面上に公表した情報。
どういう趣旨で行動しているか、童磨のように能力がデメリットとなって制限されているか。
何も分からない。


「ランサーには『切り裂き魔』を探して欲しいんだ。俺の想像通りなら今晩も誰か殺すと思うから」


童磨の目を付けた標的は――深夜、女性を対象に行われる連続殺人事件。
犯行手口から十九世紀にイギリス・ロンドンを恐怖に落とし込んだ未解決殺人事件『切り裂きジャック』の模倣犯と称されているが。
まさか、そのまんま『切り裂きジャック』の英霊が起こした犯行なのか? 否、英霊となれば『切り裂きジャック』が召喚されてもおかしくはない。
ないのだが……あからさまに過ぎでは? 逆張りな疑念を抱く事だろう。
マンティコアは眉をひそめて率直な意見を出す。


「あのさぁ。こう、何度も同じ場所でヤらねぇだろ。人間(メシ)食うのも敵(ジャマ)始末するのも、派手にカマせば目ぇつくんだからよ」

「うんうん。普通はそうだよねぇ」


同じ手口の犯行を、ワザとやって他の主従を炙るか、誘導し罠を張り巡らされているか。
そうじゃなければ馬鹿の一つ覚えで、連続殺人なんて意図して起こさない訳で。
だけど、童磨はある見解を持っていた。
申し訳なさそうに、それでいて躊躇なく彼は言い放つ。


「でも多分、これやってる子――頭が悪い子だと思うんだよね。特徴的過ぎる。真名を隠そうとしてない。
 表では報道されてないけど、犯行の手口の……『子宮』が取られたり、傷つけられてるのも、やるにしてもそのまんま過ぎるよ」


ドストレートな批判である。
一方で、こうも言う。


「俺とランサーみたいに苦労はしてないのは『どうにかできる』能力を持っているからだろうね」


生前、何か失敗を犯して死に至り、英霊となったのならば多少の反省がみられる筈。
反省や改善は愚か、生前の手口まんまを馬鹿の一つ覚えで繰り返すのは、失敗がなかったという事。
『切り裂きジャック』は結局、最後まで正体は明らかにならず。
スコットランドヤードの目を搔い潜ったのだ。
故に、絶対の自信がある。『切り裂きジャック』の能力が優れているが為の慢心。
マンティコアが聞き返した。


「……で。探すって、ぶっ殺すんじゃねえのかよ」

「俺も色々考えたんだよ。序盤から中盤までに必要なのは協力者、つまり同盟相手さ」

「は? オレたちに同盟とか冗談だろ、童磨」


主従どちらも人食い主軸の社会的には終わっている事は、童磨もマンティコアでさえも分かっている。
普通、彼らと同盟を結びたいと試みる相手などいないだろう。
ただ相手が『普通』であればの話。
童磨は言う。


「俺達でも同盟を組んでくれそうな相手を探す。その有力な候補が『切り裂き魔』なんだ。
 この子も、この子のマスターも同盟相手に困っているだろうし、
 彼らが同盟を考慮してなくても話を持ち掛ければ、少しは聞いてくれるんじゃないかな」


『頭の悪い者を救う』という、案外、彼らしい提案に納得する反面、コイツらしいなとマンティコアは呆れた。
まあ、彼の話は間違いではない。
マンティコアも流石に全員相手にして戦い抜く魂胆はない。
彼女の性能は彼女自身が最も理解している。敵が複数相手なら厳しい部分があった。
マンティコアは渋々了解する。


「血の匂いならすぐ鼻につくからな。近くまでいけりゃ掴めるだろうぜ」

「うん。よろしく頼むよ。ああ、もしこっちにサーヴァントが来たら念話で知らせるからね」


例の宗教関係襲撃者。
彼らが『万世極楽教』へ来る可能性は十分あるが、警察に目がついたからといって必ずしも襲撃される保証もない。
童磨もある程度、サーヴァントを引き留める能力を備えている。
いざとなれば、マンティコアを令呪で呼び寄せる事も。


ただ、想定外の事態は起きてしまうのだ。






「前から思ってたんだけどよぉ。んな形の入れ物に沢山入る訳ねえだろ」


ジャック・ザ・リッパー』こと『鎌鼬』が突っ込んだのは、ランドセルについてである。
久世しずか』が食糧を詰め込もうとしたランドセル。
小学生が持つ鞄の象徴ではあるものの、これを普通の鞄代わりにしようというのは相当不釣り合いであった。
しずかが困っていると、鎌鼬は勝手に家の中を探しまくった。


しずかの住む家は、聖杯戦争の舞台より前に暮らしていた彼女の自宅と同じ、全体的に一般家庭からすると物が放置され。
衣服もクローゼットにしまわれていない。
でも、生活感ある要所要所が片付いているのは、時折帰って来る母親が最低限の家事をするからだ。
母親は滅多に帰って来ない。
だけど、しずかが生活できる為の最低限のこと――食糧の提供などしてくれる。

実は先程まで、母親が帰って来ていた。
ゴールデンウイーク中だから、仕事が休みなのかと思えば、ゴールデンウイークだからこそ自宅には戻らず仕事で帰らない事を伝えにきたのだ。
ある男と旅行を楽しむ為、とはしずかに説明せずに。
学校が休みなので、多めに食糧を用意してくれた。
あとは、面倒くさそうに家事を済ませて、そそくさと家から退出する。


そして、二人が考えたのは(厳密には鎌鼬が考え、しずかは賛同しただけ)『他の主従を探しに行く』だった。
拠点であり一安心できる自宅に固執せず。
というか、じっとしてサーヴァントが向こうからやって来るのを待つより。探した方が早いだろう、という奴。

殺人事件を起こしておいて、注目されているだろと他の誰かがいれば突っ込む場面だが。
残念ながら突っ込む者は誰もいなかった。
第一、鎌鼬本人が何度も事件を起こしても、他サーヴァントが現れなかった事から、自分は注目されてないと勘違いしたのである。

これも様々な要因――派手に暴れる他主従の存在で、鎌鼬の脅威が二の次にされたのが一番だろう。
ある意味、彼らは幸運かもしれない。


鎌鼬が、母親が使っていたらしい手提げバッグを見つけて、そこに母親が用意したおにぎりとかパンを詰め込みまくる。
ボーっと光景を眺めるしずかだったが、突然、外が明るくなる。
何やら騒がしい声が無数と、騒音が聞こえると――彼らの家に火種となる火炎物が投げ込まれたのだ。


サーヴァントの襲撃ではない。
無法の荒くれもの共――『殺島飛露鬼』が率いる集団、所謂『新生・聖華団』の仕業だった。


これは『聖華団』の常套手段。
近隣住宅に火災を引き起こし、そこへ警察の眼を逸らし、主要の暴走行為を行うというもの……
決して、しずか達を狙った犯行ではないのだが。
それを知らぬ者からすれば、自分達を狙ったものと警戒するのだ。





「オイオイ! こりゃ他の奴らに先越されたのかぁ?」


遅れて現場に到着したマンティコアも当然、これがサーヴァントの犯行かと疑った。
ある意味、間接的にはそうなのだが。
辺り一面の火の海を見れば、ここで暴れていた『切り裂きジャック』を炙り出す手段でこうしたと勘違いされても仕方ない。
愉快そうに駆けまわる単車を幾つか捕捉したマンティコアが、サーヴァントの身体能力で追い抜き。
腰から生えた蠍の尾で車を突き刺して、持ち上げて無理矢理車内を確認する。
運転席、助手席にいる人間は非現実(ありえない)状況に戦々恐々だが、マンティコアは「ふーん?」と首を傾げた。


「普通の人間だけど、なーんか『匂い』が違げぇなぁ」


すると人間側から声が聞こえる。


「て、てめぇっ。『暴走族神』が言ってたサーヴァント!?」

「んん? サーヴァントの事、知ってんのかぁ。じゃあ――」


マンティコアが疑問を解消する為、蠍の尾を振り上げ車体を真っ二つに、車内の男二人の急所たる首を狙って噛みついた。
十八番芸の如く吹き飛ぶ首二つと共に。
喉元を食らったマンティコアは「おお!」と確信を得た。


「やっぱりだ! コイツら『サーヴァント』っぽくなってやがるッ!! こいつはぁいいぜ!」


これはアルターエゴ『アイホート』のスキル、ブギーマンの加護により人間を疑似サーヴァント化したもの。
ある種、驚異的である能力だが。
マンティコアにとっては、普通の牛肉が最高ランクAへ昇格するような裏技である。
つまり彼女の糧になる獲物を量産されまくっているのだ。
最も、アイホート側はそんなの知りもしないのだが。

そうと分かれば、食えるものは食っておこうとマンティコアは獲物を探した。
と言いつつ。
例の『切り裂き魔』を捕捉しなければならない。

炎の海と化した住宅街を駆けていくと血の香りが漂う。
マンティコアがそれを追っていくと、ある一軒家の前で複数の人間がバックリと肉体を『切り裂かれて』いた。
暴徒『新生・聖華団』の最前線にいる者の多くは男。
肉体のあちこちをバックリ裂かれるか、車体を切られ炎上している車内に取り残された者など、死因は様々。
彼女も『切り裂き魔』が童磨のように女ばかり狙う輩なのは知っていたので、これが意外な光景である。
普通に男も殺すのだと。


勿体無いとマンティコアは炎で焼かれていない死骸から食っていく。
この辺りは好みの問題だが、彼女的に肉は生(ナマ)に限る、らしい。
だが、これでは『切り裂き魔』はここから離れてしまったかも分からなかった。
ムチャムシャと肉を頬張りつつ、マンティコアが周囲の気配を探るがやはり、それらしいものはない。
……代わりに風の音が聞こえる。

多少の風の音であれば自然現象だとスルーするところ、異常なまでに吹き抜けようとする突風特有の高い音色。
流石にマンティコアも素早く後退し『攻撃』を回避した。

やはり、童磨が指摘する通り、相手は馬鹿のようだ。
折角気配を消して不意打ちを狙えたものを、風の音のせいで攻撃が来ると知らせている。
マンティコアもケッと侮蔑を吐こうとしたが――魔力の荒波で構成された暴風はマンティコアが回避したギリギリにやって来た。
ただの風ではなく、マンティコアが食い残した死骸や炎上中の車体をみじん切りにするかの如く、鋭利な刃と化した旋風。

想像以上に攻撃速度は速い!
『切り裂き魔』と称されているのだから、てっきり接近型の相手と予想しただけに。
まさか、風で相手を切り裂く、遠距離型なのはマンティコアも目を見開いた。


(マジかよ! 面倒くせぇ――)


刹那。
暴風の中から、突如、大鎌を持った男が実体化し、風に乗ったままマンティコアへ突撃した。






初見殺し。
皮肉にもマンティコアと鎌鼬の戦法は似ていた。

マンティコアは腰から生えた蠍の尾(スティンガー)から射出される『棘』。
一種の飛び道具であり、上手く使えば相手を射止め、命中すれば毒の効果を与えられる。

鎌鼬は直前までの気配遮断。
魔力放出の風に同化することで実体を隠し、そこから最速の不意打ち。

ただし――やはり、真名による情報戦は重要である。
事前にマンティコアは童磨から一つ、アドバイスを貰っていた。
最初、聞いた時はふざけてんのかと若干キレたマンティコアだったが、驚くほどに的確ではあった。


――もし向こうが攻撃したら、ランサーは『女の子』だから『下腹部』狙ってくるよ。


蠍の尾(スティンガー)は大きさを変化させる事ができ、初撃を盾のように大きくした先端部で防ぐ。
ガキン!と大鎌が見事に嵌まって、鎌鼬は血塗れの口で「あぁ!?」とドス吐く。


「人間じゃねぇ! 折角、食おうと思ったのに。虫食ったことあるけど糞マジィんだよ」

「オレのどこが虫だ! むしろコッチの台詞だ!! 殺人鬼かと思ったら全然違げーし、ってか虫食った事あんのかよ!?」

「これ虫の尻尾だろ! こんなん生えてて虫じゃねえとか馬鹿にしてんのか!?」

「虫はこんな牙生えてねーだろが! 後先考えねえで殺しまくってる癖して、馬鹿はそっちだぜ!!」

「後先考えてねぇのはお前だ、バカスカ食ってると鬼みてぇにデブるぞ」

「はぁあぁぁあっ!? サーヴァントがデブになるかよ!」

「なるに決まってんだろ! 腹周りに脂肪だけついでダブダブになんだよ」

「だったら手前はどーなんだ! そっちだってデブになるだろ!!」

「俺は美味い部分しか食わねぇんだよ! 取り合えず沢山食べれればいい馬鹿と一緒にすんなぁ」

「オレだって美味いモン狙ってるぞ! 美味いサーヴァントな!!」

「サーヴァントになっただけで美味さ変わる訳ねーだろ、何言ってんだ」

「変わんだよ! にわか野郎!!」



……そんな痴話喧嘩染みた、しょうもない小競り合いを外野は何事かと見物していた。
外野とは、住宅火災により避難した周辺住民や、現場に駆け付けた警察・消防、様子をSNSで撮影しようとしていた野次馬など。
周辺に惨殺死体や、双方が血塗れじゃなきゃ、まだ若いカップルの喧騒で済まされたものの。
一体どう割り込めばいいのか、外野側が困惑している。
ギャアギャアと喚き合って漸く、鎌鼬の方が気づく。


「コイツら、お前が差し向けた刺客じゃねえのか」


そう。
鎌鼬としずかの拠点であった自宅に火を放り込んだ襲撃者たち。
彼らを食っていたマンティコアは、つまり彼らの仲間ではないのだと。
常識的な状況に彼女は呆れた。


「今更気づくの遅せぇよ」

「じゃあ何でしずかの家燃やしに来たんだ、コイツら。俺狙ってるにしても遅すぎるだろ。俺が『殺し』やり始めて数日経ってるだろーが」


素直な感想と指摘をしでかす鎌鼬に、彼が変に馬鹿で変に理屈がある事に突っ込みきれないマンティコア。
鎌鼬を狙ってやったのか。
それとも別の狙いがあったのか。
二人には、どちらか判別できる根拠を持ち合わせていない。
ただ、元より襲撃犯狙いの待ち構えだった鎌鼬にとっては大鎌と『蠍の尾』の先端部を弾いて、構えるのを止めた。


「とっとコイツら片付けてぇ。大人数でワラワラ来られて相手すんの面倒くせぇし、男ばっかだしよぉ」


元より出ていくつもりだったので拠点が燃やされたのは、大して痛手ではなかった。
問題は、襲撃者を指揮する主従がどこにいるか不明な点である。
鎌鼬自体の性能は複数相手に優位で立ち回れるのだが、不釣り合いな事に、本人はその気が皆無だった。
仕方ないと鎌鼬が魔力放出の風を纏って、マンティコアに捨て台詞吐く。


「手前(テメェ)は後回しだ。先にコイツら操ってる奴、ぶっ殺すからよ」

「はっ、オイ! ちょっと待て!!」

「誰が待つかよ、デブ」


鎌鼬の暴言に沸点上昇したマンティコアが毒針を刺しこんでやろうと思ったが、相手は風に同化し、
暴風そのものとなって二十三区の空へ溶け去った。







しずかは、一旦火災現場から食糧の入ったバッグと一緒に避難させられていた。
鎌鼬が火をぶち込んだ連中と、指示した奴をぶち殺すと宣言していたが。
残念な事に戦果なしの結果であった。
彼の報告に、しずかは素直な疑問をぶつける。


「途中で会ったサーヴァントを倒さなかったのはどうして? ライダー」

「ああいうのより、家に火ぃ投げ込んだ連中操ってる奴を放っておく方が面倒だろ。
 どこかに隠れて楽しようとしてんだぞ。先に片付けた方が、後々邪魔にならねぇからよ」

「……そうなのかな」

「しずかには、わからねーだろうが。操られてる人間共が斬りにくかったんだよ。なんか強化されてやがる。俺よりすっとろいがよ」

「……じゃあ倒した方が良さそう」

「だろ? 取り合えず、この辺りにはいねぇみてぇから、さっさと行くぞ」


二人はアイホートの強化を受けている人々が、決して洗脳されておらず自主的に行動している事や。
マンティコアが彼らに同盟を試みようとしていた事など知る由もなく。
二十三区の戦場へ突き進むのだった。




【大田区 住宅街/1日目・未明】

【久世しずか@タコピーの原罪】
[状態]無傷
[令呪]残り3画
[装備]
[道具]食糧が入ったバッグ
[所持金]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯獲得
1.人を操ってるサーヴァントを先に倒す
2.紙は食べないよ
[備考]
※紙(『地獄への回数券』)を食べる人間がいるのを把握しています
※ランサー(マンティコア)の存在を把握しました
※アイホートの強化を受けている人間の存在と、彼らが強化を受けているのを理解しましたが
 操られているものと思っています。


【ライダー(ジャック・ザ・リッパー)@史実、民間伝承】
[状態]:魔力消費(小)
[装備]:
[道具]:
[所持金]:
[思考・状況]
基本方針:美味いものを食う
0.サーヴァントって美味いのか?
1.人を操ってるサーヴァントを先に倒す
2.紙食ってる人間は食わない
[備考]
※『地獄への回数券』の存在を把握してますが効力は知りません
※ランサー(マンティコア)の存在を把握しました
※アイホートの強化を受けている人間の存在と、彼らが強化を受けているのを理解しましたが
 操られているものと思っています。








「へ~、散々だったねぇ」

「全くだぜ。話きかねえわ。オレらを目撃してた人間片付けねえわ。厄介だから、オレが喰っておいたけどな!」


万世極楽教本部にて。
ぶつくさ文句を吐いているマンティコアから、切り裂き魔の情報を聞かされ童磨は色々と興味深く感じていた。
切り裂き魔の正体やサーヴァント化している人間の集団。
件の集団については、童磨も存在を把握していた。

元暴走族の組長『暴走族神』と称えられる彼は、ある意味、童磨と似通っている立ち位置だった。
社会の荒波に疲れ果て、暴走(ユメ)へ導く神。それ即ち『人々の救済』。
哀れな人間を認め救済する意味では、成程、多少の関心はあった。

――価値観や意見が合うかは、ともかく。

とは言え、十分な収穫はあった。童磨は前向きに笑顔をつくって言う。


「ランサーの情報通りなら、切り裂き魔は『鎌鼬』だったってことかぁ」

「カマイタチィ?」

「日本にいる妖怪だよ。しかも人を食う妖怪なら、尚更、同盟相手には最適だね」

「……本気でアイツと組むのかよ。だったら人間をサーヴァントにしてくれる奴にしねぇか?」

「どうしてだい? 同じ人喰い同士仲良くなれそうじゃないか」

「アイツ、オレの事。デブ呼ばわりしやがるんだぜ。一緒にいたくねえ」


マンティコアの嫌々しい反応を見て、意外そうに童磨が「そんな事、気にするなんて。ランサーも女の子かぁ」と口にしたら。
彼女が逆上したのは言うまでもなかった。




【品川区 万世極楽教本部/1日目・未明】

【童磨@鬼滅の刃】
[状態]無傷
[令呪]残り3画
[装備]
[道具]
[所持金]教祖としての資金
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯獲得
0.ランサーも女の子かぁ~
1.ライダー(鎌鼬)とは同盟相手になれそうと確信
2.『暴走族神』ね…
[備考]
※ライダー(鎌鼬)の存在を把握しました
※アイホートの強化を受けている人間の存在を把握しました



【ランサー(マンティコア)@古代の博物誌・伝説】
[状態]:腹八分目、苛立ち
[装備]:
[道具]:
[所持金]:
[思考・状況]
基本方針:肉を食う、英霊を食う
0.アイツ(鎌鼬)と同盟は嫌
1.サーヴァントを捕食する
2.人間をサーヴァントにしてくれる奴と同盟組まねえか?
[備考]
※ライダー(鎌鼬)の存在を把握しました
※アイホートの強化を受けている人間の存在を把握しました
※大田区の火災現場での目撃者を捕食しました
最終更新:2022年06月19日 22:48