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都内某所、深夜――。
まるで体育館か何かを思わせるような広い部屋の中。
明かりもつけずに闇の中、ピチャピチャ、ボリボリ、と音を立てるふたつの影があった。

「いやほんと、この時代の連中はイイもん食ってんだなぁ! 肉も脂も大違いだ!」
「そうだねぇ。病気もほとんどないしねぇ。ほんの百年ほどでこんなことになるんだなぁ」

陽気に喋りながら咀嚼を続けるのは、どちらも比較的大柄な男女。
男の方は、長身に似合わぬ童顔の、白い髪の男。頭頂部だけが血をぶちまけたかのように赤い。
女の方は、獅子のたてがみを思わせる乱れた髪の女。
何故か『BUSTER』と胸元に書かれたダサい真っ赤なシャツを着こみ、下半身には穴だらけのジーンズ。
靴は履いておらず素足で、長い爪が剣呑な雰囲気を醸し出している。

「しかし『マスター』、おめぇ女ばっかり食うのな」
「女はいいよぉ。『ランサー』も喰いなよ」
「言われなくても喰うけどな。こっちは特に拘りもねぇし」

和気藹々と、二人が譲り合いつつ食べているのは……五本の指が残ったままの腕。
長々と伸びた腸。
恐怖の表情を浮かべたままの生首。

食人鬼二人の間には、人間二人分ほどの身体のパーツがバラバラになって散らばっている。

「しかし有難てぇなァ。こんなに『理解』のあるマスターに恵まれるたぁ」
「あー、やっぱ苦労するんだ。つらかったよねぇ」
「そりゃあな。他所で召喚ばれた時の記憶は曖昧にしかねぇけど、だいたい初手から殺しあいだな」
「それで『マンティコア』は最初っからケンカ腰だったんだね」
「こっちも驚いたぜ。首を嚙み千切られても平然としているどころか、一緒に『食事』の誘いとは。
 たぶんオレとしてもこんなマスターと巡り合ったのは初めてじゃねぇか?」

乱れ髪の女はニッと歯を剥く。それは全ての歯が鋭く尖った猛獣のような歯だ。
男もニッコリと笑う。片方の瞳には『上弦』、片方の瞳には『弐』と刻まれた目は、しかし全く笑っていない。

「んで、『教団』だっけ? 『教祖様』だっけ? 便利な身分をもってやがるなぁ。
 いつの時代だって落ち着いてメシ食う場所の確保が大変なんだ」
「俺も驚いたね。時代が違うとはいえ、いつの間にか便利になったものだよ。
 拠点は都内にいくつもあるし、昼間でも信者の自動車を使えば行き来できる。
 なによりこんなに便利になっても、『万世極楽教』の教えを必要とする可哀想な人たちはいっぱいいる」
「よく言うぜ、『童磨』。
 どうせ何も信じてやがらねぇくせに」
「頭の悪い人たちは大変なんだ。優しい俺はそれを助けてあげているだけさ」

会話をしながらも、ボリボリと死体の骨まで咀嚼していく。
それぞれ大柄とはいえいったいどこにそんな質量が入るのやら、みるみるうちに死体が消えていく。
彼らにとって、食事とは楽しみであり、必要な行為であり、そして完璧な証拠隠滅でもある。

「ところで英霊として呼ばれたってことは、ランサーにも願いがあるんだろう?
 なんならこのとっても優しい俺が聞いてやってもいいんだぜ」
「んぁ? 願い……願いって言ってもな……オレはメシさえあれば満足っつーか……
 ああそうだ、知ってるかマスター、サーヴァントって『美味い』んだよ。
 流石は英雄っつーか、人間の中の人間っつーか。
 たま~に妙に不味いのもいるけど、機会があったらマスターにも食わせてやりたいくらいだぜ」
「ふーん」
「そういうマスターは何か願いってあるのかよ」
「そうだなぁ……俺は……」

未練がましく、最後に残った爪をポリポリ齧りながら、『マンティコア』は『童磨』に尋ねる。
作り物めいた童磨の顔に、一瞬だけ感情の色が浮かぶ。
慕情、劣情、敗北の苦い記憶、そして渇望。
闇の中、ぽつりと漏らしたのは、戯言か、それとも本音か。

「俺は………………もう一度、会いたい子がいるんだ」




【クラス】
ランサー

【真名】
マンティコア@古代の博物誌・伝説

【属性】
混沌・中立

【パラメータ】
筋力:B 耐久:B 敏捷:A 魔力:E 幸運:D 宝具:C

【クラス別スキル】
対魔力:C
 魔術詠唱が二節以下のものを無効化する。
 マンティコアはかつて広く恐れられたが、マンティコア除けのまじないなどは伝えられていない。
 またこのスキルの存在のおかげで、童磨はマンティコアの巻き添えを恐れず『粉凍り』を使用できる。

【保有スキル】
人食いの本能:B
 人間を食らうことに特化した獣ゆえのスキル。
 相手が人間、あるいは歴史上実在した「人間」から転じたサーヴァントである場合、攻撃力が増加する。

 またこのスキルの副次的作用として、相手が「人間とは異質なモノ」である場合、直感で察知できる。
 いかに巧みにヒトの姿を取っていようとも、「どの程度ヒトから離れた存在か」まで大まかに把握可能。

心眼(偽):B
 直感・第六感による危険回避能力。

人外の魂:B
 人間らしさを喪失した「ひとでなし」ゆえの、ある種の精神攻撃耐性。
 いまさら狂うような理性はなく、いまさら失うような人間性はない。
 異星の神だろうと神話の神々だろうと、彼女の前には等しく「ヒトではない邪魔者」でしかない。
 出自や属性が問題となる場面では、その本来の由来を無視し、「人間」ではなく「猛獣」として扱われる。

【宝具】
蠍の尾(スティンガー)
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1-5 最大捕捉:1
 腰から生えた蠍の尾。大きさは可変であり、必要な時には大型化して敵を貫く。
 もちろん見た目通りに猛毒を有しており、傷つけた者に痛みと苦しみを与え、時に死をもたらす。
 また隠し技として、先端部を棒手裏剣のような「棘」として射出可能。
 射程距離はそう長くないが、初見殺しの飛び道具となる。射出時にも毒は効果を表す。
 射出した棘はすぐに生えてきて再使用可能。

上位捕食者(プレデター)
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1
 人を食らって糧とする。食物連鎖にて人の上に立つもの。
 口には鋭い牙がズラリと並んでおり、かつ、実はサメのように三列並んで生えている。折れても再生する。
 これは受け止めた剣すらへし折る威力を備えており、十分に致命傷を与えうる武器となる。
 また、牙で与えたダメージに比例して自分自身の負傷を回復させることができる。いわゆるHP吸収攻撃。
 ただし対象が人間、ないし人間から生じたサーヴァントではない場合、変換効率が著しく下がる。

【weapon】
蠍の尾。
牙の生えた口。
手足の鋭い爪。
ただの蹴りや拳ですらも、十分な殺傷力をもつ。

【人物背景】
古代の博物誌にその名をみる、人食いの獣。素早く襲い掛かってきて人を殺すもの。
『マンティコア』の名は、そのまま古語で『人食い』を意味する。

記述ごとにその姿は千差万別だが、人の顔と獅子の身体を持ち、毒針をもつ尾を備えるとされる。
広い時代、広い地域に渡って報告されており、まるで獣の一種であるかのように扱われることもある。
ハイエナや虎が誤認されたもの、という説も根強い。

その実態は、道を踏み外して人肉食に走った人間たちの成れの果て。
それぞれの事情で禁忌を犯した人間が、根付いた伝承の影響で変質し獣に堕ち、さらなる次の伝説を生み出す。
そんな無数の「マンティコア」の集合体、「マンティコアという概念」がこの反英雄の英霊の本質である。
「人食いという禁忌」そのものの擬人化と言ってもいい。

今回は女性が転じたマンティコアをベースとして現界し、比較的生前の姿を再現した方になる。
ただしどんな姿であれ、マンティコアの考えることはただひとつ。
人の肉を食らいたい。
お腹が空いた時に、好きなように好きなだけ食べたい。
それだけである。
生前の「女性」の人格や思い出なども残っていない。名前などカケラも残っていない。

宝具もスキルも特異性は乏しいが、単純なスペックと戦闘センスを頼りに暴れ回るタイプのサーヴァント。
蠍の尾だけでなく、噛みつきや引っ掻きなども駆使した、文字通り獣のような戦い方をする。

ただし一般論として、「人間ではないモノから転じたサーヴァント」の相手は苦手とする。
能力的にも分が悪いし、齧っても美味しくない。
(逆に、例えばFGOのバベッジなどは、外見とは裏腹に「人間であり」「食用に足る」相手である)

【外見】
ギザギザの歯と、ライオンのたてがみのように乱れた髪を持つ若い女。やや大柄。
獣のように地に両手をつけた姿勢をとる癖がある。

英霊本来の姿は全裸だが、特に拘りがある訳でもなく、与えられた服を素直に着ている。
とりあえずはダサいTシャツにダメージジーンズ、靴はなく素足のまま。

【サーヴァントとしての願い】
思う存分、人を食らう。
可能であれば、英霊も食らう。
ただし……それを妨げる者、横取りする者が居れば、獣の本能として激しい怒りを覚えるだろう。


【マスター】
童磨@鬼滅の刃

【マスターとしての願い】
もう一度『胡蝶しのぶ』と会う。
ただしそれだけに専念する気はなく、今の立場や時代を満喫するし、食人もやめる気はない。

【能力・技能】
鬼としての不死性と身体能力。
常人を遥かに超える体力をもつ他、常人なら致命傷になるような怪我からもすぐに回復する。
倒すには太陽の光に晒すか、太陽の力を持つ刀で首を刎ねるしかない。
代償として人を食う習性と、陽光に当たると死ぬ体質を得ている。

冷気を操る血鬼術。
多種多彩な冷気と氷を使った技を持つ。
特筆すべき技の一つとして、『粉凍り』という、微細な霧を発生させ周囲に散布するものがある。。
戦闘時には常時展開されており、吸い込んだ者の肺胞を破壊し、気づいた時には呼吸困難に至らせる。
なおサーヴァント相手には効果が弱く、特に「対魔力」の持ち主にはほぼ無効。

【人物背景】
鬼舞辻無惨に作られた人食いの鬼の一人。上弦の月の「弐」。
表の顔は万世極楽教の教祖。

原作での敗北後、死亡までの記憶を持った状態での参戦。

【役割(ロール)】
万世極楽教の教主。
この宗教は江戸期~大正期に一般に存在を知られるようになった、いわゆる新宗教のひとつ。
大正時代に「教祖の突然の失踪」という事件が起き、勢力が著しく衰えていたが、近年になって再興している。
熱心な信者は250人程度、不熱心な者も含めれば数千人程度の動員力があり、23区内に複数の支部の建物を持つ。
規模は比較的小さいながら、選挙協力などを通して政治へのコネクションも獲得している。
事実上、家庭内暴力の犠牲者などの駆け込み寺のような存在となっており、世間一般からの評判も悪くない。

現在の童磨は教団内で「教祖の生まれ変わり」「帰還した教祖」とされ、ただ「教祖さま」とだけ呼ばれている。
(なんのことはない、そのかつて「失踪」した教祖こそ、聖杯戦争参加前の童磨自身である)


【備考】
都内で散発的に人々の「失踪事件」が起きています。
マンティコアと童磨が骨も残さず食べていることと、万世極楽教による隠蔽で、証拠らしい証拠は残っていません。
都心の人の多さと、失踪者に特に決まった傾向がないことから、現時点では社会問題になっていません。
複数の失踪事件を繋げて考える者もいないくらいの段階です。
ただし今後、犠牲者が増えることで、状況が変わる可能性があります。
最終更新:2022年04月12日 22:13