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「やあ、君が僕のマスター君かい? って聞くんだよね~。知ってるぅ~!
 僕は『ツァトゥグァ』。クラスは……ルーラーって奴さ! 今後ともヨロシク~!!」






召喚されたサーヴァントは随分と可愛らしい容姿に、可愛いマスコット?を引き連れていた。

紫パーカーに短パンをはいた、薄紫ショートヘアの少女……?らしき存在。
短パンが短すぎて、一目間違えると下に何もはいてないように見えてしまう。

彼女の傍らには、口のついた球体状の使い魔が二匹。赤紫と青紫の個体がいた。
どちらも、クッション代わりに最適な弾力のようで、少女はその内の青紫の使い魔に座ってポヨンポヨンと跳ねている。


対するマスターの方は、月と雪が交わって生まれた様な白い青年だった。
非現実的な光景を目の当たりにしても、平然と、表情を一つ変わらないのは、彼にとってはこれが当たり前の光景と受け入れているまである。
青年は台本を読み上げるような口調で告げる。


「僕は『槙島聖護』だ」

「ふーん? マキシマ君って呼んだ方がいいかなぁ。それにしても……うーん、参ったね。色々と参ったよ」


少女・ツァトゥグァは使い魔から立ち上がり、外の景色を見渡す。
喧騒に包まれた東京二十三区の光景が広がっている。
物珍しそうに眺めながら、ツァトゥグァは槙島に語りかけた。


「唐突だけど、僕は君には協力しないよ。
 僕は人類は知ってはいるけど、こうして面と向かい合うのは……
 ワォ! 実は初めましてなのさぁ。君が僕にとっての第一人類発見! うぅ~る~る~やいや~い~よ~ぷうぇぇ~~」

「図鑑や標本で目にしたことはあるが実物と接した事がない、という訳か」

「そゆことー。君たち人類だって未知の生物相手に迂闊に近づくかい? 流石にそこまで知能は低くないだろう??」

「最もな意見だが……なら君はどうすると」

「協力はしない――は現時点での話さ。場合によっては君に協力するとも。僕に人類の価値を見出せば、ね」


サーヴァントから協力を得られない時点で、聖杯戦争においてこれほどマイナスな展開はない。
だけど、不思議にも槙島には焦りはなかった。
実のところ、彼は半ば上の空で、別の事を脳裏に思案していた。
聖杯への願いではなく。
己自身の行く末である。
露知らず、ツァトゥグァが槙島に尋ねた。


「云わば『人類問答』だよ。早速だけどマキシマ君に聞こうかな。君は聖杯に何を願う?」

「………」


瞼を伏せて槙島は息を吐く感覚で言う。


「僕は一度死んだ」

「へえ?」

「狡噛慎也に殺された」

「ふうん。という事は?」

「『槙島聖護』は『狡噛慎也』に殺される。この光景以外は、やはりどう想像を尽くした所で思い浮かばないんだ」

「……うん?」


つまりは、槙島は瞼を持ち上げるように開いた。


「『狡噛慎也』がここにいないのならば、僕はただ生き残る。最もゲームはゲームで楽しませて貰うよ」


あんまりで突拍子もない返事に、ツァトゥグァは困惑を隠せなかった。


「うーん……? 君の回答は参考にしていいのかなぁ」

「僕はごく普通のありきたりな人間だよ。……君は人類に接するのが初めてなんだろう? 価値観の相違に混乱するのは無理もない」

「いやぁ。そーじゃなくてぇ……まぁ、いっかー」






東京の二十三区自体は大都会と呼ぶべきで、所狭しと近代的な建築でひしめき合っているが、決して全土がそうではない。
歴史的な寺院などは残されており、緑豊かな公園もある。
大通りの横道逸れて、入り組んだ住宅密集地には年季の入った建造物が、割とある。
色褪せた老舗もチラホラ見受けられた。

そうした店の一つに、古本屋がある。
木製の住宅を改装した年季の入っているうえ、こんな入り組んだ場所に果たして客は足を運ぶのか怪しい。
しかし、アンティークな雰囲気は逆にお洒落な印象で、浮世離れの体験をする為、訪れる物好きはいるかもしれない。

中も意外と整理整頓どころか、古本屋にしては綺麗に清掃されているのは店主のお陰だろう。
店主は若い青年である。
元々、ここを経営していた祖父が亡くなった為、代わりに引き継いだとか。
近所の住人も、なかなか変わった青年と思っていた。若いからこそ、こんな辺鄙な所の本屋を引き取らないだろうと高を括っていた。
だが、青年は礼儀正しいし、優し気で、穏やかな装いをしていた為、段々と周りは彼に偏見を抱かなくなった。

その青年――槙島聖護が店内に客がいないのをいい事に、一種の講義を開いている。


「宮沢賢治の自己犠牲の物語で有名なのは『よだかの星』か銀河鉄道の夜に登場する『蠍の火』だろう」

「命を食らって作られた肉体。臓物に敷き詰められた罪から解放されるには、我が身を燃やし、その光で世界を照らす事」

「他者に尽くす事こそ、自身にとって『本当の幸』になる」


耳を傾けているツァトゥグァは「え~」と呆れていた。


「周りの連中はどうとも思わないだろうよ、それ。結局は自己満足って奴? 燃えて光ろうが、他人から見れば
 なんかよく分かんないけど、明るくていいなぁ~ぐらいしか思わないじゃん。
 明かりがなくとも、自分達で確保できちゃうんだし。その程度で済まされる事が本当に『幸』なのかい?」

「芸術家ならば、自身の作品を評価される事、描き続ける事に存在意義を見出し。
 スポーツ選手ならば、己の限界に挑戦し。政治家ならば、祖国に。警察ならば、治安維持に。
 ……何等かの為に産まれてきた、己の人生に何等かの意味合いがあると信じている」

「ミ=ゴでもそんな風に考える個体はいないよ。聞いてる限り傲慢が過ぎないか? 君たち」

「最も……過程は重要だ。人生に転機がなければ答えに行き着く事も叶わない。果たして、過程に恵まれる人類はどれ程いるだろうか」

「あー、『縁』って奴だね。それは分かるよ。君にとっては『オウリョウ君』とか『グソン君』がソレかな?」


槙島が止まる。
サラッとツァトゥグァが口にした名に反応したのは、決してその二人に対する感情によるものではなく。
その二人の情報は、ツァトゥグァが知る事はない筈だからだ。

ふと。
唐突に、覚束ない足取りで店内に入った女性が、震える声で槙島に尋ねた。


「す、すみません……は、『白痴の夢』ってどこにありますか……」

「左から三番目の棚、一番奥の上段です」


礼も告げずに女性は店内を小走りに移動すると、目当ての商品を取り、槙島のところへ持ってくる。
それの値段を槙島は「一万円です」と異例な数字で言ったが、女性は躊躇なく一万円札を震える手で差し出すのだった。
女性が去ったあと、ツァトゥグァが棚の方へ移動する。
迷う事なく一冊の本を手に取って、ペラペラとめくり「あー」っと声を上げた。

ページの間に栞……ではなく『回数券』の束が挟んである。
「なんだい、これ」とツァトゥグァが尋ねれば、槙島は涼しい声で「紙麻薬(ペーパードラッグ)だよ」と答えた。
つまりは、表面上、洒落た古本屋が薬物取引の現場になっていた訳だ。
己の罪を誤魔化さないどころか、槙島は興味深く言う。


「この時代に、回数券は珍しいよ。是非、それを考案した人物に会いたくてね」

「やっぱり君変わりものだろ。ふーむ? どれどれ……」


そしたら、ツァトゥグァが大口を開けて、回数券を丸ごと飲み込んでしまう。
麻薬としての味を味わないで、ゴクリと腹に入れてしまったのだ。
ただ、ツァトゥグァは別の意味で吟味しているようで、一人で「成程成程」と納得している。


「これ作ったの。僕の親戚だね~」

「君の?」

「ん? こういう場合って親戚って呼ぶべきかな?? 家系図的に、なんて呼ぶんだろ? まーいっか。
 でも、考案したのは僕の遠い親戚のマスターだね。名前はえ~~と、キワミ?」

輝村極道

「なんだい。知ってたのかよ~。つまんねぇ~」

「足取りが中々掴めなくてね」

「近所に通りかかったら教えてあげよーか?」

「それはつまり……僕への協力かな」


槙島の問いに、ツァトゥグァは難しい表情を浮かべ、こう答えた。


「うーん。取り合えずさ、君が死ななければいい訳よ。で。君はじっとする性格じゃないだろ? 割とアウトドアタイプ。
 ま、このキワミ君に会うだけなら、今の所セーフだからヨシ! って事。オーケー?」

「随分と甘い対応だね。君の目的にさほど苦労しない故の寛大な措置なのかな」

「おっとぉ? 聞き捨てならない台詞だ。僕の目的? そんなものナイヨー」


ツァトゥグァはわざとらしく棒読みで言うが、槙島の方は最初から気づいていた。




この神が嘘をついている事を








【真名】
ツァトゥグァ@クトゥルフ神話

【クラス】
ルーラー

【属性】
中立・中庸

【パラメーター】
筋力:C 耐久:A 敏捷:D 魔力:C+++ 幸運:EX 宝具:C


【クラススキル】
対魔力:A
 Aランク以下の魔術を完全に無効化する。
 事実上、現代の魔術師では、魔術で傷をつけることは出来ない。



【保有スキル】
■■の神核:EX

  大したものじゃないさ、ちょっとした神性スキルって奴だよ



過食の恩寵:C
 ツァトゥグァが与える加護。
 相応の対価をツァトゥグァに支払う事で、人々は望みを叶える。
 対価は資金や食料、功績や知識なども差し出せるが、ツァトゥグァは暴食の為、膨大な対価を要求される。
 また、要求する望みが難しいほど対価も高くつくので、ちょっとした願い程度に留めておくべき。


さかしまの加護:C
 彼女(?)の叔父にあたるフジウルクォイグムンズハーが保持する能力。
 文字通り、自身が願うものとは逆のものを起こす能力。
 グムンズハーはこの能力を無意識に発動させ、苦労している。
 ツァトゥグァの場合は任意で発動できるが、グムンズハーほど強大な効果を発揮しない。
 水を冷たくと願えば熱く、物を柔らかくと願えば硬くなる。その程度である。


■■■■:A+++

  おおっと、これはまだトップシークレットなんだ!



【宝具】
『無形の落し子(フォームレス・スポーン)』
ランク:C++ 種別:対人宝具 レンジ:1~30 最大補足:1
 ツァトゥグァと傍らでクッションになってる口のある球体状の使い魔(デフォルメ済)。
 基本的に赤紫、青紫の二匹が現れる。
 本来は不定形で、ねばねばしてて、ヒキガエルだったり様々な目撃談があるが、、
 ツァトゥグァ曰く「改造すれば可愛くもグロにもできる」との事。SAN値的に可愛い状態で良かったかもしれない。

 デフォルメ化しているが変幻自在っぷりは健在で、形を変えて隙間に潜り込んだり
 液状化した状態まま、対象を飲み込む事もできる。
 個体ごとで役割が異なり、赤紫の個体は非生命を、青紫の個体は生命を主に食べる。


『■■■■■■■■』
ランク:EX 種別:対■■宝具 レンジ:■■ 最大補足:■■


               <UNLOCK>





【人物背景】



               <UNLOCK>






【外見】
紫パーカーに短パンをはいた薄紫ショートヘアの少女?
短パンが短すぎる為、何かはいてないように見える。

【サーヴァントとしての願い】
???



【マスター】
槙島聖護@PSYCHO-PASS


【聖杯にかける願い】
狡噛慎也に殺される
彼がここにいないならば、生き残り、彼がいる世界へ往く


【能力・技能】
外見に似合わず身体能力は高い。
剃刀を愛用し、摘むように命を狩る。


【人物背景】
彼曰く、ごく普通の人間
普通に読書を嗜み、普通に会話し、普通に人を裏切り、普通に人を殺し、そして殺される。


【捕捉】
アニメ1期 死亡後の参戦















                   ―― 真名隠蔽中 ――




           詐称者(プリテンダー)    ツァトゥグァ=■■■■■■■■
最終更新:2022年04月23日 18:04