日本に嫁いでいった娘が病気で倒れたと聞いて、男はすぐに娘の家に転がり込んだ。病気は命に関わる重いものだったが五十日間の闘病生活の末完治。
このままこの家に居座ってはかえって病み上がりの娘に負担をかける。そう思ったが死にかけた娘を置いて地球の裏側へと帰るのはまだ不安が残った。
そこで男は日本の地方都市『見滝原』にある別荘に行き、そこでしばらくの間過ごすことにした。それが男の近況。そう思い込んでいた。今日までは。
記憶は偽物だったのだ。
娘が五十日間苦しみぬいた末に回復したのは本当だが、単なる病気などではなかったし、男もただ手をこまねいていたわけでもない。まして『見滝原の別荘』なんてものも持っていない。
全てはこの聖杯戦争を仕組んだ何かによって植え付けられた記憶だったのだ。
男は今マスターとして自分のサーヴァントと対面している。
二メートル近い巨体は全身の隅々に至るまで鍛え抜かれている。衣服は今どき南米の原住民がなにかでしか見ないような面積の少ないものだ。その姿はまさしく太古の時代を生きた戦士。だが男は生前のサーヴァントと出会ったことがあった。
「まさかわしのサーヴァントがお前とはのう」
男が顎に手を当てる。サーヴァントは堂々と男を見据え、口を開いた。
「その目、その立ち振舞い。老いて姿は変わったようだが俺にはおまえが何者なのかはっきりとわかるぞ」
そしてサーヴァントは静かな笑みを浮かべた。
「まさかお前が俺のマスターになるとはな。JOJO」
「久し振りじゃのう、ワムウ」
ジョセフ・ジョースターは懐かしむようにその名を口にした。
五十年ほど前、長き二千年の眠りより目覚めた『柱の男』と呼ばれる者たちとジョセフは戦った。ワムウはその中の一人だった。
人を人とも思わぬワムウの姿に最初は怒りを覚えたジョセフだったか、戦いの中で互いを戦士として認め合った。敵同士である立場こそ最後まで変わらなかったが、個人としてはワムウの死の直前、彼に友情を感じるまでになっていたのだ。
そのワムウがサーヴァントとなり味方としてこの場にいる。そのことにジョセフは奇妙な感慨深さのようなものさえ感じていた。
しかし再開を喜んでばかりもいられない。友情を感じても敵だったことには変わりないのだ。共に聖杯戦争に挑む前に確認しておかなくてはならないことがある。
「ワムウ、一つ訊かせてくれ。お前はなにを願ってサーヴァントになった」
ワムウには彼よりも凶悪な性格の仲間がふたりいた。誇り高き戦士であるワムウは、敗北という結末を覆し聖杯の力で現世に舞い戻ろうなどとはしないだろう。だが仲間に対しての考えがそうかはわからない。
もしふたりを生き返らせることが願いならやはりワムウとは敵対することになる。
ワムウは質問の意図を察したようだった。
「安心しろJOJO。このワムウが求めるのは戦士たちとの純粋なる闘争それのみよ。それさえ叶うならサーヴァントとしておまえの方針に従うこともやぶさかではない。カーズ様とエシディシ様が目的を達せられずに亡くなられたことは無念でならんが……それもまた定めであり、摂理だ。聖杯によって捻じ曲げようなどとは思わん」
その言葉を聞いて脳裏に浮かんだのは戦いで亡くしていった仲間たちのことだった。彼らの消えた喪失感はジョセフにとって地球にも匹敵するほど重い。だが聖杯の力で彼らを生き返らせるかと聞かれたら、答えはノーだった。
「……そうじゃな、生きる者は皆いずれ死ぬ。それが自然の摂理じゃ。聖杯などというもので捻じ曲げることは許されん」
ジョセフは噛みしめるように言う。ワムウは頷き、それから何かを思案するように少しの間だけ目を閉じ、開いて言った。
「JOJO、俺には聖杯にかける願いはない。だが聖杯戦争決着の後に叶えたい願いが一つできた」
「なんじゃ?」
「もう一度お前と決闘を行いたい」
ワムウは言葉を続ける。
「一度はお前に敗北して死した身だ。再び挑むのはあるいは戦士として恥ずべきことかもしれん。それでもこの身から溢れ出る闘争心を抑えられんのだ。JOJO、もう一度俺と決闘してくれ」
正直にいって今のジョセフは好んで戦いをするタイプではない。若い頃は喧嘩っ早いところもあったが、今は穏便に済ませられることは穏便に済ませるし、戦うにしてもできるだけ楽に、安全に勝つ方が好きだ。
ワムウの決闘に応じればそれは命がけのものになる。彼の力は恐るべきものだ。一度は勝ったが、あれは自分だけの力ではないと思っている。身体機能も衰えている。あの時には無かった力も得たが、今一度戦って勝てるという保証はどこにもない。
だが――
「望むところじゃよ。ワムウ」
ジョセフはニヤリと笑う。彼もまた感じていたのだ。このサーヴァントと相対したときからずっと。自分の内から湧き上がる闘争心を。この男ともう一度戦いたいという想いを。
「誓おう。聖杯戦争に片がついたらおまえともう一度決闘を行う」
「その誓い、忘れるなよ、JOJO」
言ってふたりは視線を交わす。それで十分だった。互いを認めあった戦士が決闘を約束するのに、妙な儀式や保証などなにも必要なかった。
◆
ワムウは言った「聖杯で仲間を生き返らせるつもりはない」と。だがサーヴァントとして生きてこの町に存在する仲間と出会った時ワムウは、そしてジョセフは、いったいどういう行動に出るのか。それはこの時にはまだふたり自身にもわからないことだった。
【真名】ワムウ@ジョジョの奇妙な冒険
【クラス】セイバー
【属性】混沌・善
【パラメーター】
筋力:A+ 耐久:A++ 敏捷:B 魔力:D 幸運:D 宝具:B
対魔力:A
A以下の魔術は全てキャンセル。
事実上、現代の魔術師ではセイバーに傷をつけられない。
騎乗:B
騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせる。
魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなせい。
【保有スキル】
闇の一族:A
人類とは異なる進化を遂げた種族。
全身が消化器官となっており、手に触れた部分だけを削り食す事も可能。
ワムウと対峙した吸血鬼は、彼が『捕食者』であることを本能的に察知する。
吸血鬼とは異なり、紫外線をあびると死にはしないが石化してしまう。
文明理解:B++
高度な知能を有することを示すスキル。
言語等を把握する速度は人を優に超えたもの。銃などの機器の構造を理解し、分解するのも容易。
相手のスキルや宝具の効果を冷静に分析・判断する。戦闘時には『直感』の代用にもなる。
ワムウは戦闘時において特に強い力を発揮する。
戦闘技法(風):A
風の流法と呼ばれる、ワムウが編み出した戦闘法。
ワムウは風や空気を利用した戦いに長けており、肉体もそれに合わせて進化している。
無窮の武練:A
ひとつの時代で無双を誇るまでに到達した武芸の手練。
心技体の完全に近い合一により、いかなる地形・戦術状況下にあっても十全の戦闘能力を発揮できる。
【宝具】
『風の流法・神砂嵐』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1~3 最大捕捉:1~2人
左腕を関節ごと右回転・右腕を関節ごと左回転させ、その二つの拳の間に生じる真空状態の圧倒的破壊空間は正に歯車的砂嵐の小宇宙。
『風の最終流法・渾楔颯』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1~5 最大捕捉:1~5人
身体から生えた管より膨大な量の風を取り込み肺の中で超圧縮、それを極限に狭い隙間から超高圧で好き出す。いわば「烈風のメス」
しかし風の圧縮にともなう摩擦や熱によってワムウ自身の肉体も崩れていく。
【人物背景】
2000年周期で眠りにつく謎の生物「闇の一族」のひとり。
自分が認めるに足る敵と戦うことを名誉とする誇り高き男。
【サーヴァントとしての願い】
戦士との闘争。
【マスター】
ジョセフ・ジョースター@ジョジョの奇妙な冒険
【能力・技能】
『波紋』
東洋の仙道に伝わる秘術の1つ。独特の「呼吸法」により血液中のエネルギーを蓄積し、生命エネルギーを活性化させる。呼吸法により練り上げた生命エネルギーは特有の振動を持ち、水面に奇妙な「波紋」を起こすことからそう呼ばれる。「波紋の呼吸」で作り出されるエネルギーは「太陽光と同じ波動」であり、強い波紋エネルギーは太陽光に弱い吸血鬼を死滅させることができる。
若い頃は波紋を使った様々な技が仕えたが今どの程度使えるかは不明。
『ハーミット・パープル』
棘の生えた茨の形のスタンド。
カメラや砂などを媒体に任意の対象の情報を念写できる。
また茨に波紋を流すこともできる。
【人物背景】
かつて波紋の戦士とて「柱の男」と戦い、年老いて再びスタンド使いとしてDIOと戦った。
【マスターとしての願い】
聖杯戦争の打倒。
【参戦時期】
三部終了後間もない時期。
最終更新:2018年05月01日 10:12