「ハッ・・・ハッ・・・!!」
青年は一人、息を切らせながら走っていた。
日も沈み、真っ暗になった森。その中を、ただひたすらに走っていた。
目的地などあるわけもない。どこに向かているかも分からない。
だが走る。理由はひとつ。
その青年、【如月 和輝】は誰かに狙われている。
時は少し遡る。
青年、和輝は気が付いたらその場所にいた。
木で出来た古ぼけたログハウス。山小屋と呼ぶに相応しい。
「・・・また・・・殺し合いか・・・!」
和輝は、ここに連れられて来る前にも、知った顔との殺し合いを強制されていた。いや、そういう運命だったという方が相応しい。
しかし、その殺し合いは和輝が最も嫌う所。
無論、今回のこの殺し合いにも乗り気ではない。
目を閉じれば浮かぶ、ここに来る直前に見たあの光景。
知らない女性とはいえ、人があんな風に殺されるのを見て、黙っていられるような人間ではない。
しかし、状況はかなり悪い。
自分の首にも付いているこの爆弾の起爆条件は
1.禁止エリアに侵入する
2.1日、死者が出ない
この2つ。つまり、確実に1日に1人以上誰かが死ぬ事になる。
「くそっ・・・ふざけやがって・・・!」
自分のとるべき行動の選択肢の少なさに、怒りを隠せない。
結局は誰かが死ななくちゃいけない。じゃあ俺はどうすればいい。
誰かを殺して生き残るのか、それとも、殺されるのか。
いくら考えたところで答えは出ない。
いや、出したくない。
そんな身勝手な理由で、人の命など奪いたくはない。
「・・・取り合えず、ここを出るか・・・」
支給品と思われるバッグを持ち、小屋の外に出る。
次の瞬間だった。
左腕に激痛が走った。
そして次の瞬間、和輝は傷の状況など全く確認せず、ただダッシュした。
誰にやられた?何にやられた?投擲?重火器?それとも何かの能力?
そんなものは分からない。
だがひとつだけわかる。
これは殺し合い。俺は敵に襲われた。逃げるにしても、戦うにしても、行動をとらなければ・・・死ぬ。
どれくらい走っただろう。かなりの距離を走ったはずだ。
木の陰に座って休息をとる。同時に、支給品の入ったバッグの中身を確認する。
入っていたのは地図にコンパス、
参加者名簿など・・・
名簿には知った名前もいくつか見受けられる。
そして肝心の武器は、どこかで見たことのある、少し大型の拳銃だった。リボルバー式となっていて、すでに弾が数発装填されている。
ご丁寧に、予備の銃弾まで入れてある。
最後に、左腕の傷を確認する。大したことはなさそうだが、銃を撃った反動でかなり痛むだろう。
「この銃は・・・皇帝さんの・・・」
和輝は、この銃に見覚えがあった。以前会ったことのある、皇帝という名の男が持っていた二つの拳銃の一つ。確か、名は「ティアマット」。
センライとか言っていた女性の話では、持ち主の特殊能力は武器に張り付けられるとか。
ということは、この武器にも元々の持ち主である皇帝の特殊能力が張り付けられている可能性が高い。
和輝は記憶を探り、皇帝の持つ能力を思い出そうとしていた。だがその時
ガサッっと葉が揺れる音がした。同時に感じた人の気配。
もう考察に耽っている余裕はなさそうだ。
幸い、こちらの武器も遠距離からの攻撃が可能な武器。間合いは同じ。
和輝はティアマットを右手に握りしめ、姿も見えぬ敵に言い放った。
「まだ、やりたいことがいくつかあってな・・・今回はお引き取り願おうか・・・!!」
殺し合いなど、興味もない。だが、すべては自分が生き残るために。彼は戦うことを決めた。
【北 山小屋西側の森/1日目/深夜】
【如月 和輝@希望と絶望の協奏曲】
[状態]:左腕負傷
[装備]:ティアマット@理由のない日記(皇帝)
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
(基本):生き残るため、最低限の戦闘は行う。
1:現在戦闘中の正体不明の敵の撃退
2:知り合いとの合流
3:極度の方向音痴のため迷わないか不安
(備考)
参戦時期はキボゼツSS「再世」終了後
最終更新:2009年08月21日 23:49