「・・・・・・・・・・あ゛?」
少年が目を覚ましたその場所は、天地が逆転した世界だった。
「・・・・って、なんでこんなところに引っ掛かってんだよ、俺・・・・」
なんてことはない、ただ単に木の枝に仰向けに乗っているだけであった。
その少年はその体勢をなんとかしようと試みたが、無様に木から落下した。
「痛ぇー・・・・・ったく、何なんだよ、いったい・・・・・」
少年――アージェントは銀の髪を掻き揚げながら、不満そうに呟いた。
木から落ちた痛みを我慢しつつ、起き上がろうとした時、自分の横の口の開いたバッグに気づいた。
よく見ると周りに物が恐らくバッグの中身だったであろう物が散乱しており、一つ一つ確認した。
「地図に、コンパス、時計に・・・・・
参加者名簿・・・・・・・?」
そこまで確認したところで、彼はようやく思い出した。
あの『会場』で一方的に突きつけられた説明。そして、その後に起こった出来事を。
「殺し合いをしてもらう、か・・・・・何考えてんだ・・・・『殺してもいい世界』でも創り出したつもりか?」
彼は元々、異世界の住人であり、その世界ではほんのつい最近まで戦争をしていた。
彼の姉もその戦争で少しは名をあげた人物であったが、彼自身はほとんど関与していなかった。
無関心な訳ではない。ただ、『戦う力』が姉に劣っていた事が彼の戦う気持ちに歯止めを掛けていた。
そんな事を毒づきながら、アージェントは参加者名簿を流し見し始めた。
中には見知った名前もいくつかあり、中には一人では戦えそうもなさそうな人物の名前もあった。
しかし、彼はもっと別のところに目が行った。
「・・・・・・読めねぇ。」
彼と同様、木に引っ掛かっていたと思われるバッグは、初めから既に口が開いていたらしく、
落ちた時に名簿の下の部分が破損したようで、既に周囲にそれらしきものは発見できなかった。
「まぁ、唐突に殺し合いなんて言われて乗るやつもそうそういないだろうけどな・・・・」
そんな事を思いつつ、もう一度、こんどはじっくりと名簿を眺めていると、ふと、とある少女の顔が思い浮かんだ。
到底、『一人では戦えそうもなさそうな』少女の顔が。
彼が確認できる範囲に名前は無い。が、破損した方の名簿には名前があるかもしれない。
そんな疑問が彼の頭を一瞬よぎった。
「まさか・・・・・な。」
人間と言うのは、自分の中に一瞬浮かんだ疑問でも、否定すればするほどさも真実であるかのように錯覚してしまう。
それは、どのような世界の人間もそうであり、彼もまた、自分の疑問を否定しきることができなかった。
名簿が完全であれば発生しなかった、偶然の生み出した問題は、真実か杞憂であるか、彼には断言する事ができなかった
。
「・・・・・なにはともあれ、まずは完全な名簿の確認から、だな。」
アージェントはぐらついている自分の気持ちを抑えるように、冷静を装いながら改めて名簿を見直した。
中には同居人の名前を見ることもできたが、それよりも一人、気にせざるを得ない男の名前を見つけた。
「一応信用はできる・・・・・か、この名簿の中なら・・・・・な。」
アージェントは、自分の同居人よりも、とある男とコンタクトを取ることを決めた。
無論、コンタクトをとる手段など思いつくはずもなく、彼は暗い森の中を歩き出した。
まずは、木の上から見えた建物を目指して。
【北西 病院付近の森/1日目/深夜】
【アージェンナイト・クロノクル@INACTIVE OF SAFEHOSE】
[状態]:健康
[装備]:不明
[道具]:現状不所持
[思考・状況]
基本・『殺し合い』と言う催し自体に参加する気持ちは現状無し。
1 ・完全な状態の参加者名簿の確認
2 ・とある男との合流(一方的)
3 ・売られた喧嘩はひとまず買う、最期まで乗るかはまた別の話
4 ・問題解決後の事はまだ何も考えていない
(備考)
参戦時期は灰楼杯終了数ヵ月後。
縁のあるアイテムは銀色のガントレット。能力は『風を起こす、操る』。
最終更新:2009年08月27日 20:34