この空間に集められた者の
ルールを簡単に纏めると、『生き残るまで殺しあえ』である。
生き残る方法は自由。自分から他者を消すのもありだし、他者が潰し合うのを眺めるというのも生き残る為の手段ではある。
そんな中、自分はどうするのかと問われれば現時点では何ともいえない。
ゴミ箱の中に身体がすっぽりと収まっているという奇妙な現象の中、神鷹・カイトはあくまで冷静に現状をどうするべきか考えていた。
行動すること事態は簡単だ。
例えばゴミ箱の近くに放置されているパイプ椅子。
これを持ち出して思いっきり相手に振り下ろせば、高確率で致命傷を負わせることは出来る。
だが、こんなでかいパイプ椅子を持ち出したところで気付かれればそれでDEDENDの可能性は高くなる。
(かと言って、本来の武器は使えない)
やはりゴミ箱の中に収まりつつも、彼は考える。
自分が今まで装着していた黒の絶縁手袋は今はない。
あの手袋には俗に言う『爪』が装着されており、殺傷力は高いのだが手袋が無いという事は当然その爪も今は無い訳で。
(本来の体術でどうにかできるか……?)
殺し合いに乗るか、乗らないかと言う選択肢は最初から彼の頭の中には無かった。
彼の目的は変わらず一つ。『家に帰ること』だ。
そしてこの場は家ではない。これだけ判っているのなら自分のやるべきことは決まったも同然だ。
もしもその為に障害があるというのなら、殺すことに躊躇いはない。
だが、生き残る為には恐らくではあるが戦いは避けられないだろう。その為には何かしらの武器や準備が要る。
各々の特殊能力や専用武器はその一つだろう。
かく言う自分にもソレはあると言えばあるが、下手に使用したくは無い。
もし使用すると『後処理』が大変だからだ。
そしてそれが他人に渡った場合も、だ。
(確か、センライは『支給品に能力を貼り付けた』とか言ってたな。そうなると俺の能力も、身内の能力も没収されているわけか)
参加名簿を見て自分の身内が参加していることは知っている。
トリガー・マークレイド。
そしてガレッド・バスタードの二人だ。
しかし彼らは自分の知る限りでは平気な顔して銃の引き金は引けない。
自分とは違って、だ。
(自分個人の能力が無い以上、あの二人は主に自分の元々持つ力に大きく頼ることになるな。マインドライブラリもテレポートも使えないんじゃあの二人は死ぬ)
恐らくだが、彼らは自分を頼ってくるはずだ。
そういう時は自分が率先してやってみせたから。
しかし、そうであったとしてもどうする?
今は彼らが何処にいるのかすら判らない。
もしかすると尻からすっぽりとゴミ箱にはまっているこんな現状の中、既に殺されてしまったのかもしれない。
(……どうする?)
自分は生身でもそれなりに戦える部類に入ると自負している。
そうしないと生き残れなかったからだ。
少なくとも零距離で頭をぶち抜かれない限りは簡単に死ぬつもりはない。
だが、そんな自分と『同じ奴』が襲ってきたとすれば……?
(トリガーとガレッドの二人と上手く合流できたとしても、切り込めるのは俺だけ。支給品も『外れ』の可能性は捨てきれない)
自分の支給品は恐らく『外れ』の部類になると思う。
長さからして大凡1~2M程のケーブル。
触れた瞬間に使い方や能力は理解したが、いかんせん成人男子並の体格を持つ彼とは相性がいいとは言い切れない。
(簡単に纏めると、ケーブルを繋げた相手に乗り移れるってことだろ? ……俺の身体がその間無防備になるけど)
一種の幽体離脱現状だと思う。
だが肝心のケーブルの長さは大体自分の身長程しかない。これでは相手が何かしてくると同時に何も出来ないという事になる。
(後は首の爆弾か……)
次の問題点として挙げたのは、自分達の首に装着された爆弾だった。
見せしめとして少女がこの爆弾で殺されたが、果たしてこれの解除は可能なのだろうか、というのが現在の疑問である。
(もしも解除できるのなら、同じようにして二人を解除してそのまま逃げたいところだが……厄介だな。せめて自分の首輪をマトモに見ることが出来れば多少はマシなんだが)
爆弾についての知識は元々兵隊だった過去もあり、その辺の素人よりは知っている。
だが解除方法となると話は別だ。
(何分、首にくっついている以上はどうしようもねぇ。詳しい事を知るためにも首輪自体がどうなってるのかよーく見ておきたいんだが)
首輪は下手に外そうとすれば爆発の危険がある。
流石にこんな至近距離で爆発されたら頭は吹っ飛んでお陀仏だろう。あの赤毛の少女がそうだったように、だ。
(待てよ)
そこまで考えたそのときだった。
確か、自分に支給されたケーブルは生物の生態を支配するだけではなく、機械にも可能という事だったはずだ。
それならば
(爆弾、解除できるんじゃねーの?)
だがそう上手く行く物だろうか。
元々他人の能力だった上に一度は没収された力。下手をすると首輪限定で制限がかけられている可能性もある。
(……試してみるしか、ないか)
さて、そうなるとこの場所以外の所がいい。
地図で確認してみたが、この場所は殺し合いの行われる土地の中央に位置する映画館だった。
そうなると東西南北から次々と参加者達がやって来る可能性が高い。
当然戦闘の可能性も高くなってくる。
(出来れば今は解除方法がわかるまで無駄な戦闘は避けたいところだな……何処かまともに集中できそうなところに移動しないと)
さて、そうなると東西南北のどこに移動する?
道中でガレッドとトリガーの二人を見つけることが出来るなら良し。
しかし彼ら二人がそう都合よく見つかるとは思わないほうがいい。
(周りに注意を配らないとな……空気を読み、気配を読み、血の臭いを読まなければならない)
兎に角今は移動だ。
他の参加者と鉢合わせする前に、どこか都合の良さそうな場所に移動するのが吉だろう。
血の臭いは、なるべく避けながら。
【中央 映画館@待合室からやや南のビルに移動開始/1日目/深夜】
【神鷹・カイト@紫色の月光】
[状態]:健康
[装備]:ケーブル@トーイ(誰かの館)
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
基本:兎に角移動
1:戦闘はなるべく避けて移動する
2:爆弾解除が出来るかどうかを考える
3:トリガーとガレッドが気になる
4:殺人に関しては割と無関心
5:無関心だが、必要ならば冷徹に殺すつもりでいる
6:主にケーブルではなく、自身の身体能力を駆使して戦うつもり
提供能力
名称:黒の手袋(ダークネイルブレード)@カイト
能力:邪眼・光眼
詳細:元々の能力は放電だが、今は能力発生源であるコアを入れ替えている状況なので放電能力は使えない。
邪眼は周囲の生き物から恨み、妬み、憎しみ、哀しみ、殺意と言ったマイナスの感情を取り込んでそれを力に変える物。
力に変えた後どういう方向に還元するかは能力者がイメージすることで具現化できるのだが、カイトは主に幻覚を見せたり武器を作ることで活用していた。
また、邪眼使用後は強烈な頭痛と目眩に侵されるために薬の服用が必須なのだが、その薬はカイトが持っている(カプセルで計4回分)
光眼は自分の感情を力に変える目玉であり、こちらは身体能力の一時的な強化に使われていた(使用後には肉体に疲労が一気に圧し掛かる為、慣れない内は気絶する可能性大)。
元々の武器部分であるダークネイルブレードの爪部分は何の変哲も無い鋭利な刃物なので、ただ振り回しているだけでも凶器になる。
ただし、手袋から生えるような形状で爪が装着されているので、それなりに体術を使える人間が使うのが好ましい。
最終更新:2009年10月04日 22:34