……凄く気まずいです。
お互いに自己紹介した後、龍帝さんが怪我をした経緯を教えてもらおうと思ったのですが、
『この殺し合いの世界で他人と馴れ合う気はない』と言われました。
でも、殺し合いに乗る気はないと教えてくれました、怖がらせてしまったお侘びだそうです。
因みに今、剣龍帝さんは自分が持っていた荷物の確認をしています。


     ◆     ◆     ◆


取りあえず当初の目的である治療できる場所(メイド付きで)を確保した剣龍帝は、支給品の中身を改めて確認した。
そして見つかったものは武器ではなく、一冊の本だった。

(本……だと? これが何の役に立つ)

ハズレを引いてしまったかと残念に思う剣龍帝。
その本を中から取ろうとするが、その本の間に挟んである紙に目が行き、それを引き抜く。
引き抜いた紙に何か書いてあるのを見た剣龍帝は、その文字を読んだ瞬間思わず声に出してしまう。

「アステリア……?」
「はい?」

呼ばれたのかと思い、返事をするアステリア。
それを聞いた彼は黙って本が入っている支給品一式を彼女に向けて突き出す。
行き成りそれを突き出されて困惑するアステリアだが、バッグの中身を見た瞬間に驚きの表情を見せる。

「龍帝さん、これって……」

アステリアの相棒グラビィの操作書「ケフェウス」。
まさか目の前にいる男が持っていたとは思わなかった彼女は、ただただ驚くだけであった。
その反応を見た剣龍帝は確信する。

「やはりお前のものか。俺に渡された支給品一式と一緒に入っていたようだ。全く……、偶然とは恐ろしいものだ」
「でも……、受取っても良いのですか?」
「構わん、元々の所持していたのなら返すのが道理。悪いと思うのならお前が持っている支給品一式と交換でも良い」

持っていても使いこなせないのでな、と付け足して言う剣龍帝。
アステリアはバックの中からケフェウスを取り出し、二度と離さないようにギュっと抱きしめる。
同時に、ケフェウスの使用に関する情報……この場合記憶が頭に流れ込む。
忘れはしない、これの使い方を。

「ありがとうございます、龍帝さん」
「礼を言うほどでもない。それでどうする? お前はその本を使って殺し合いに参加するのか?」
「…………私はそんなことはしません。いいえ、したくありません。私の友達や知り合い、貴方の友達や知り合いを誰1人傷付けたくない、この殺し合いのゲームにそんな優しさは無意味かもしれませんが、それでも! 私は……人殺しをしたくありません」

真っ直ぐに、真剣な眼差しで剣龍帝を見据えて断言した。
その答えに、彼は少しだけ間を置き、もう1つ質問をする。

「……お前の意思は良く分かった。だが、お前を殺そうとする者もいるだろう。それでもお前は人殺しをしたくないと言いきれるか?」
「はい」
「それがお前の友や知り合いであってもか?」
「はいッ!」
「今ここで俺がお前を殺そうとしてもか?」
「愚問ですッ! だって貴方は目覚めてから私を殺そうとしなかったじゃないですか!?」

若干ヒートアップした質問と回答ラリーを終え、静寂が病室を支配する。
最初に静寂を破ったのは剣龍帝だった。

「なら、その覚悟と信念を曲げるな」
「はい。あ、私の支給品と交換でしたね。少し待っていてください」
「その前に言っておくことがある」
「何ですか?」
「もし、お前の支給品の中に黄色いリボンがあったら、俺に渡してくれ。無かったらそれで良い」
「? 分かりました」

何故黄色いリボンなのかと疑問に思うアステリアだが、支給品の交換だから然程考えなかった。
それを知るのはずっと先のことである。


     ◆     ◆     ◆


やれやれ、馴れ合わないと決めていたにも関わらず、喋りこんでしまったか。
アステリアという少女にアレの確認をしてもらい、あたりならさっさとこの鬱陶しい首輪を粉砕し、ハズレなら解除方法を探そう。
……いや、その前に傷を癒すのが先決だな。


【西 川―病院 付近/1日目/深夜】

【剣龍帝@理由の無い日記】
[状態]:治療中
[装備]:不明
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
(基本):終盤まで傍観しつつ黄色いリボンを探す。隙あらば主催側を壊滅する。
1:アステリアが持っていた本を返す。
2:アステリアの支給品一式と交換、その中に黄色いリボンがあるかどうか確認してもらう。
3:傷を癒すのを最優先。

【アステリア@T.C UnionRiver】
[状態]:健康
[装備]:グラビィの操作書「ケフェウス」
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
(基本):殺し合いに乗らない、誰かが殺しに来ても殺さない。不殺。
1:剣龍帝からケフェウスを返してもらい、自分の支給品一式と交換する。
2:自分の支給品一式に黄色いリボンがあるかどうかの確認。




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最終更新:2009年11月14日 04:42