大帝を召喚してレイチェルがエヴァを殺害した頃。
展望台を震源地としてどれくらいの者たちが、その振動に気づいたのだろうか。
その原因を見た者たちがどのくらいいるのだろうか。

【ビル内】

大帝が現れる数分前――。
レイと共に支給された武器を探していた皇妃は確認した名簿に載っている参加者の名を上げていた。
因みに自分の支給品一式と武器は把握している。

「でまぁ、お前のところの参加者はアグニさん、美咲さん、シュヴァルツ、レミエル、お前。そして俺のところは皇帝と俺だけだ」
「アグニ達もいたのか……」
「あぁ、さっきパソコンで見たんだけどよ……。レミエルは殺された、メシアって奴によってな」
「……そうか」

表情には出ていないが雰囲気からしてレイはレミエルの死に悲しみを表している。
皇妃もまた彼と同じく悲しむが、同時に彼女を殺したメシアに怒りを募らせた。
支給品一式からホルスターに収まっている二丁一対の拳銃を取り出す。
銃の名前はREX。ディアナが所持していた銃である。
一応皇妃も銃の類は扱えるが、彼女の仲間や銃のスペシャリストよりか実力は下。
いざとなればトンファー代わりに使うかと思った瞬間、突然の揺れに尻餅をついた。
隣にいたレイは微動だにしていないのか平然と立っている。

「痛ぅ~、何なんだよ行き成り……」

まだ痛い尻を擦りながらREXを仕舞い、皇妃は愚痴を言いながら立ち上がる。
立ち上がってレイは大丈夫なのか確認して見ると窓の外へ視線を向けていた。

「おい、どうしたんだレイ?」
「…………」

皇妃が声をかけても彼は視線を彼女に向けない。
返事ぐらいしてくれよ、と心の内に文句を言いながらレイの視線が向いている方角に目をやる。
そして驚愕する。

「何だ……ありゃ」

皇妃が見たものは巨大なロボット――大帝だった。
その巨体を存分に生かして、足元にいるであろう参加者にその拳を振り上げて叩き潰そうと現在進行形でしている。
いろいろと突っ込みたいところもあるのだが、それよりも驚きの方が大きかった。

「……何が見える?」

レイの一言にハッと我に返り、皇妃は自分が見たものを正直に話す。

「デカい機械人形。比べるなら……龍形態のシュヴァルツよりもデカい」
「……そうか」

それだけ返事をして、興味を失ったのかそのままレイは遠くの外にいる大帝を無視して前に進んだ。
その行動を見て皇妃は慌ててレイを言い止める。

「ちょっと待て! あれがこっちに来たらどうするんだ!? って、無視するなぁぁぁぁぁッ!」

ビルの廊下で皇妃の叫びが木霊する。
因みにこの後に大帝は音もなく消えたのだが、彼女が再び外を見ることはなかった。

     ◆     ◆     ◆

【西側の橋】

和輝にオラオラをしてから1時間後にアーニャは遠くの展望台辺りに突然現れて地震紛いなのを起こした大帝を見て腰を抜かしていた。
そして1時間前に用を足していなければ完全にアウトだったとこの時ばかり自分の運に感謝する。
しかし、流石に幸運の連続は来ないだろうと悟る。
今は遠くにいるが、もしこっちに気づいて向かって来たら確実に自分は死ぬだろうと。

「あ。そ、そうだ。あの子が……」

ほんの少し自分と行動を共にしていたクロードを思い出し、アーニャは立ちあがって彼女がいる橋に向かおうとする。
ちょうどその時だった、アーニャの背後に上空を飛んでいた剣龍帝とアステリアが到着したのは。

「アーニャちゃん!」
「え……? あ、アステリア!!」

後ろから声をかけられ、アーニャは振り向き歓喜の声を上げる。
が、直ぐに訝しげな表情になる。

「……何やってんのさ」

アーニャが見たのは剣龍帝にお姫様抱っこされたアステリアだった。
突っ込まれたアステリアは急に涙目になり、邪眼を発動した剣龍帝によってジェットコースター以上の速度で飛んで来たと答える。
一方、お姫様抱っこをしている剣龍帝はバツが悪そうに表情を険しくし、アステリアとアーニャから視線を逸らしていた。
どうやらかなりの速さで飛んだことを反省しているようだ。

「まぁ、とりあえずアステリア降ろしたら?」
「そうしたいのは山々だが……」
「こ、腰を抜かしてしまいまして」

気恥ずかしい顔をしながらアステリアが消え入りそうな声で答えた。
その理由にアーニャは少し納得するのだった。
が、大帝による2度目の揺れで一気に空気が変わる。

「そ、そうだアレが……!」
「ええ、さっき上空で見ましたお義姉様の大帝です。でもどうして……」
「主催者側にとって本来の所持者がいなかろうが関係ないのだろう。それよりも、あと1人いる筈だが、どこにいる?」

3人の中でいち早く冷静になった剣龍帝がクロードの存在をアーニャに尋ねる。
尋ねられたアーニャは直ぐに橋の方にいると告げ、やっと腰が抜けた状態から戻ったアステリアを降ろして3人は橋の方へと走って行った。


因みに、その頃のクロードは――

「すっげぇー! あれドリルとかドリルとかドリルとか装備されてるのかな?」

男のロマンに燃えていた。

     ◆     ◆     ◆

【西――川原】

和輝とレミエルを逃がしてしまったメシアはクロードがいる少し近くの橋にいた。
彼女もまた展望台近辺で大帝が現れたのを目撃している。

「流石にあれと対峙するのは無理ですね」

大帝を遠くで見つめながらメシアは断言した。
参加者があれに乗って戦っているのであれば、真正面から戦うことは無謀だと判断したのである。
尤も、大帝に人は乗っていないのだが……。

「ま、潰し合いをしてくれているところを襲撃すればいい話ですし、それまでは……」

視線を大帝からクロードがいる橋の方へ向ける。
クロードはこちらの存在に気づかず、遠くにいる大帝に意識を向いていた。
そして剣龍帝とアステリア、アーニャがクロードと合流をしている。
そこでメシアは若干ながらも見えてしまった。
剣龍帝が手にカイトのダークネイルブレードを嵌めているのを。

「あれは、マスターの武器じゃないですか。あの人が持っているのなら――殺してでも返してもらわないと」

メシアは剣龍帝に殺意を抱きながら、橋の方へと歩を進める。
と、同時に大帝が音もなく消えた。
そんなことを気に留めず、メシアの思考はどうやって剣龍帝を殺してやろうか、周りにいる参加者をどうやって巻き込んで殺そうかと考えていた。

     ◆     ◆     ◆

【灯台付近】

「き、消えた……!?」

あれだけの巨体が突如消えたことに和輝は驚いた。
大地が揺れ終えた後に和輝は辺りを見回して視線を上に向けると大帝がいた。
あんなものまで支給品と一緒に渡されているのか、と驚いたのは言うまでもない。
同時に、あれを1人で戦うのは絶対に無理だと。
超火力の武器持ちや肉体強化の能力持ちの参加者たちだったらどうにかなるかもしれない。
それが一瞬のうちに消えたのだ。

「と、とりあえずチャンスだな」

チャンスとばかりに走りだし、ビル方面へと走り出す。
が、その途中で和輝は立ち止った。
前方に、川辺に倒れている人影が見えたのだ。
警戒しながら和輝は近づくとそこにいたのは――、

「れ、レミエル……!?」

和輝を庇い、メシアの攻撃から命を落としたレミエルの亡骸が横たわっていた。
頭部に刺さっているナイフ以外は綺麗な状態で、死に顔はどこか穏やかだった。
死体だが、2度目の再会をした和輝は、あの時のことを思い出して自分の無力さを再び思い知らされる。
しかし、後悔してもレミエルは帰って来ない、生き返りもしない。
それでも、和輝は彼女に謝りたい。自分が無力であったことを。

「ごめんな、レミエル……。出来るかどうか分かんねぇけど、俺、灰楼潰すよ。美咲とシュヴァルツ探してさ、それからレイも。ビックリだろ? あいつも参加してたんだぜ?」

短い会話の途中で少し涙が出てくるのを和輝は感じ、乱暴に涙を拭う。
それからレミエルの頭に刺さっているナイフを引き抜く。
いやな感触が手に残り、背中に嫌な震えが全身を駆け巡る。
その感覚を忘れようと川に向けて思い切りぶん投げて気を紛らわせる。
ある程度すっきりさせ、レミエルの亡骸をそっと川に流した。
墓は作れないが、せめて弔わせて欲しい。
和輝は川に流れるレミエルに背を向けて一言言う。

「行ってきます」

返事はないが、「いってらっしゃい」と言われた気がした。
そして和輝が進む方向は、レイと皇妃がいるビルだった。


【南西 ビル/1日目/深夜】

【皇妃@理由の無い日記】
[状態]:健康
[装備]:REX@ディアナ(吼えろ走馬堂)
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
(基本):この世界の情報収集。
1:レイ・アスカの行動サポート。
2:大帝を目撃。
3:こいつの武器どこいったよ。
4:こいつもうちょっと喋れよ。

【レイ・アスカ@希望と絶望の協奏曲】
[状態]:視力の喪失
[装備]:ドラゴントゥース@シュヴァルツ(希望と絶望の協奏曲)(未装備でどこにあるか知らない)
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
(基本):不明
1:皇妃行動を共にする。
2:俺の武器どこいったよ・・・
3:大帝がいた。


【西 病院対岸付近の橋付近/1日目/深夜】

【アーニャ@T.C UnionRiver】
[状態]:健康・興奮状態
[装備]:無し
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
基本:殺し合いには乗らない
1: 大帝の出現にビビる
2:アステリア、剣龍帝と合流
3:クロードと再び合流へ

【剣龍帝@理由の無い日記】
[状態]:良好
[装備]:ダークネイルブレード@カイト(紫色の月光)
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
(基本):終盤まで傍観しつつ黄色いリボンを探す。隙あらば主催側を壊滅する。
1:アーニャと合流
2:アステリアを泣かせたことに深く反省中
3:大帝を警戒
4:クロードと合流するため橋へ

【アステリア@T.C UnionRiver】
[状態]:健康
[装備]:グラビィの操作書「ケフェウス」 @アステリア(T.C UnionRiver)
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
(基本):殺し合いに乗らない、誰かが殺しに来ても殺さない。不殺。
1:アーニャと合流 。(お姫様抱っこをされている姿勢で)
2:大帝を目撃。
3: 剣龍帝の飛行で腰を抜かすが復活。
4:クロードと合流するため橋へ


【西 病院対岸付近の橋/1日目/深夜】

【クロード@T.C UnionRiver】
[状態]:ちょっと興奮状態
[装備]:真凰・炎魔@如月和輝(希望と絶望の協奏曲)
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
基本:騒ぎを見つけて首を突っ込む
1:大帝の出現に興奮している。
2:( ゚∀゚)o彡°ドリル!ドリル!


【南西 灯台の反対側の川付近/1日目/深夜】

【メシア@紫色の月光】
[状態]:健康
[装備]:天津風吹雪・瀧波時雨@レニー(T.C UnionRiver)
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
基本:殺し合いに乗る。マスター以外を皆殺し
1:カイトの武器を持っている剣龍帝を殺す。
2:橋へ移動開始。
3:大帝を目撃、さほど気にしせず。


【南西 灯台の反対側の川付近/1日目/深夜】

【如月 和輝@希望と絶望の協奏曲】
[状態]:心身ともに疲労
[装備]:ティアマット@皇帝(理由のない日記)
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
基本:ゲームを何とかして終わらせる
1:レミエルを供養する
2:知り合いと合流 (ビル方向へ)
3:メシアと大帝を警戒


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最終更新:2009年12月23日 00:55