結局のところ、地面に落ちてあった六本の剣を回収しないまま、トーイ達はエリアの中心部へと向かっていた。
もしものことを考えて、正面で鉢合わせしないのを想定し、迂回するような形で目指している。

「…………」
「どうしたあるか?」
「あ、ごめん。カノンがさっき見せたリボンのことでね」
『あのリボンがどうかしたのですか?』
「ちょっとあのリボンに見覚えがあるのよ……」

美咲が言う。数十分前に支給品一式が入っているカノンの中にあったリボン。
そのリボンを歩きながら思い出し、さらにそれが見覚えのあるものだと、やっと冷静になって理解した。

『自分のものだという線はありますか?』
「ううん。今はないけど私のはピンクのリボンよ。黄色いリボンを普段は髪に結ぶ習慣はないわ」
「となると参加者の誰かの物と言った方が妥当あるね。知り合いにそれを使う人物はいるあるか?」
「ちょっと待って、今思い出すから……」

トーイに言われて美咲は最初に自分の仲間を思い出す。
アリス・メイザール、レミエル、宮瀬 渚、シュヴァルツの4人、この中にリボンで髪を結ぶ者はいない。
自分と同じ髪型の渚は別の物を使って髪を結んでいる。
よって自分の仲間の持ちものじゃないのは確か。
次に思い出したのは知り合い。特に交流のある者――『異世界・インペリアル』という自分たちは違う世界に住む友人。
和輝と同じ『如月』(関連はない)という名字の如月 十六夜と自分と同じリボンでポニーテールの髪型にしている天妃

(……同じリボン?)

1人だけ自分と同じようにリボンで髪を結ぶ友人がいた。
今ここに参加している皇帝の恋人で片割れ、剣龍帝が殺してしまった嘗て愛していた者。

「思い出したわ……」
「誰のものであったか分かったあるね」
「ええ、天妃さんのリボンだったわ」
『天妃ってあの和服の上とスカートを着た女の人ですよね?』
「そうよ。もしかすれば、そのリボンは当たりかもしれない……」

美咲の中で微かな期待が膨らむ。
しかし、その期待は直ぐに打ち砕かれた。

「いや、このゲームに『天妃』という参加者の名前はワタシのCPUになかったある」
「え……!?」

トーイの無慈悲な一言に美咲の思考が止まった。
彼女の友人が参加していない事の安堵と不安が混じって複雑な気持ちになったのだ。
流石に情緒不安定にさせるのはまずいと判断したトーイは他の可能性もあるとの発言をする。

「が、その娘に関係しそうな者はいるにはいるある」
「……ッ、ほんと? 誰なの?」
「単純であるが、カノンが書いた紙に“天妃”の“妃”に名前で関連がありそうなのが3人いるある」
「3……人?」

3人という人数に美咲は少し疑問を抱いた。
天妃に関係がある人物と言えば恋人の皇帝か、彼とそっくりな霊帝という人物。
この2人ならまだ分かるが、あとの1人は誰なのか見当もつかない。

『それで、その3人は誰ですか?』
「1人目は皇帝という男ある」
「あー、あの人ね……」『あー、あの人か……』

皇帝のことを知っている美咲とカノンは何となくだが、あの黄色いリボンの持ち主でないと断定した。
能力の縁として扱われるとしたら彼の武器であるティアマットかシャドウストーク、または何時も掛けている眼鏡ぐらいだろう。

「どうしたあるか?」
「あー、気にしないで頂戴。2人目は?」
「2人目は皇妃という娘あるね。皇帝の“皇”と天妃の“妃”を一緒にした名前ある」
『案外皇帝さんが女体化した姿だったりして』

紙に書いて冗談をいうカノン。
強ち嘘ではないけど……、と美咲は心の中で呟いたのは言うまでもない。

「凶暴じゃなくて発育の良い娘だったら理想ある」

残念、凶暴じゃなくて狂暴だけど、と美咲は心の中でトーイに突っ込みを入れる。

「最後は剣龍帝いう男ある」
『何か中国の王様みたいな名前ですね……』
「実際に“乾隆帝”という名の皇帝が昔の中国にいたけど漢字違いある。こいつは剣と龍と帝と書いて“剣龍帝”ある」
「(剣龍帝か……まるで皇帝さんの本名を合わせたような名前ね)……だとすれば黄色いリボンは皇妃という女の人か剣龍帝という男の物だと考えれば妥当ね」
「……一応聞くある、皇帝という男の線は?」
「全くないね」『全くないですね』

トーイの発言に美咲とカノンは真っ向から否定した。
だって似合わないし……、と思うのは2人の考え。
それより問題なのは残る皇妃と剣龍帝だ。
この2人のどちらかが黄色いリボンの持ち主かもしれないのだから。

「現状だと皇妃という娘が持ち主だと思うあるね、一般論を言ってしまえば」
『まぁ、証拠がなければそう思うしかありませんよね』
「証拠……? ッ、そう言えばカノン、あなたのバックの中に配布された武器と一緒に紙がなかった?」
『え? あー、それらしきものがありましたけど、どうかしました?』

美咲は武器と一緒にバックの中に入っている紙を思い出して、それがカノンにもあるのか尋ねた。
尤も、彼女の場合はサイズが大きすぎるものだったため、紙はバックの中だったが。

「最初バックの中身確認した時にあったのよ。でも私の場合、紙はバックの中で武器は外にあったけど」
『分かりました、ちょっと待っててくださいね』

美咲に言われてカノンはリボンに触れないよう注意しながらバックの中を漁る。

「その紙に元の持ち主の名前が書いているあるか?」
「勿論、私が見た時は武器名と元所持者の名前が書かれてあったんですもん」

カノンの様子を見ながら会話する2人(1人と1体(1匹?))。
然程時間が掛からないうちにカノンは美咲が言っていた紙を見つけ出した。
そしてその内容をみて彼は口をガバッと開けて驚きの声を上げるような行動をとった。
声を付けるとしたら「えええええええええッ!?」だろう。

「ど、どうしたの?」
「持ち主が誰なのか分かったあるか?」
『ええ、まぁ……信じられないかもしれませんけど』

器用に紙に文字を書きながら、片方の手でさっき見た紙を2人に見せる。
見せられた美咲とトーイはそれに書かれている名前を見て絶叫を上げ。

「「はぁッ!?」」

意外ッ! 紙に書かれていた名前は“剣龍帝”だった。
そこから2人は剣龍帝という人物はもしかすると女装の趣味があるのではとか、性別を偽っているのではないか、などと本人が聞いたら全否定するようなことを考えてしまった。
そんなことを知る筈もない剣龍帝は遠くでくしゃみをしたのは言うまでもない。

『と、取りあえず落ち着きましょうよ。もしかすると能力の縁として使われたかもしれないじゃないですか』
「ッ!? そ、そうね。天妃さんのリボンじゃなくて剣龍帝って人のものだったけど」
「と、兎に角。持ち主は分かったとして、一体どんな能力が宿っているかあるね」
『あ、それならさっきの紙に書いてありましたよ。ちょっと危ない名前でしたけど、確か……“殺意の龍眼+人龍化”って』
「え、龍眼!?」

カノンが出した能力名に美咲は驚愕した。
龍眼が皇帝の能力であることを知っている彼女は驚きを隠せなかったのだ。

「知っているあるか?」
「ええ、さっきリボンの持ち主で否定した皇帝さんの能力よ」
『でも、この能力剣龍帝って人のものですよ? 名前は同じでも本質は違うかもしれませんし』
「カノンの言う通りある。この能力を調べるにも結局はカノンが触れなけらば分からないある」
『ええ!? 僕が触れるんですか!?』

他に誰がいる、と言いたそうな目でトーイと美咲はカノンを見る。
暫くの葛藤の後、カノンは黄色いリボンに触れ、能力の把握をした。
この時点で彼は和輝と同じく龍の力を手に入れたのだった。

「……どう?」
『今のところ何ともないんですけど、これ物凄く危ない能力ですよ。相手に殺意を持てば持つほど身体能力と肉体能力が上昇して、発動して30分以上したら死ぬか暴走するかって流れたんですけど』
「……当たりであって外れみたいな能力あるね」
「でも、これなら殺し合いに乗っている参加者が襲ってきても大丈夫ね」
『あの……、僕の話聞いてました? 30分以上だと危険だって言いましたが』
「あら、その間の30分は大丈夫なんでしょ? どこに問題があるというのかしら」

美咲はあっさりとカノンの不安を無視した。
もし敵が襲って来たら短期戦で決着をつければいいのだ。
うん、何も問題はない。

「確かに問題ないあるね。というか、戦闘能力考えればカノンの方が上ある」
『まぁ確かにそうですけど……』
「私達と同じくゲームを潰す仲間を見つければ負担が減るからそれまで頑張って、ね?」
『……僕、泣いていいですか?』

最悪な能力を手に入れて少しだけ灰楼に恨みを持ったカノンだった。


【南東 山中/1日目/深夜】


【神堂 美咲@希望と絶望の協奏曲】
[状態]:疲労(小)
[装備]:ナワノツメ@吼えろ走馬堂(リメイカー)
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
基本:仲間を集めてゲームを破壊、あるいは脱出する
1:この重いのをなんとかしたい
2:和輝との接触
3:トーイと共に他の参加者と接触する
4:危害が加わるようならば対抗して戦う意思あり
5:カノンをやや警戒 (殺し合いに乗った者が襲ってきたら生贄にする気満々)

【トーイ@誰かの館】
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:無し(地図と名簿はHDに書き込んであります)
[思考・状況]
基本:仲間を集めてゲームを破壊、あるいは脱出する
1:美咲とカノンと共に安全そうな参加者に接触 (殺し合いに乗った者が襲ってきたらカノンを生贄にする気満々)
2:首輪の解除をする
3:ケーブルを奪還。無ければ代用品を探す
4:エリア中心部へ向かう
5:アカルに対して警戒しながらも接触したい
6:リースという名に対して警戒

【カノン@紫色の月光】
[状態]:顔面に痣
[装備]:黄色いリボン@理由のない日記(剣龍帝)
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
基本:仲間を集めてゲームを破壊、あるいは脱出する
1:トーイと美咲と共に参加者への接触を図る
2:身内(カイト、ガレッド、トリガー、メシア)との接触
3:出来ればマスクを回収したい
4:半強制的に黄色いリボンを装備して能力把握。
5:嫌な能力を与えた灰楼にちょっと恨みを持った。

備考:殺意の龍眼発動した場合は普通に(CV若本(?))喋りますし、眼が若干見えます。



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最終更新:2010年01月17日 20:53