「シュコー」
掠れた音が暗闇に響く。マスクから出入りする空気の音が不気味さを際立てている。
血が足りない。
「シュコー」
人を見つけることができたならば即、血祭りにあげる。
だがしかし、1つ歩けど人は見つからず、2つ歩けど血は見つからず。
「シュコー」
理性と知識を武器に己の組織と欲を満たしてきた彼にとって、それを失ったことは大きな痛手になった。
ただの殺人マシーンとして会場を闊歩。
「シュコー」
彼がこのデスマスクを装着しなければ、考察に徹していればこの先の未来は大きく変わったかもしれない。
なぜなら彼は人生のすべてを、この殺し合いゲームの創始者であり立案者であり企画者である、姉を超えることに費やしてきたのだから。
「シュコー」
彼はゆっくりと北上する。
獲物はどこだ。
◆ ◆ ◆
会場の北西に位置するホテルはどうやら一流のものらしい。
展望台には及ばずとも、高さは高層ビルレベルで、会場の3割程度ならば一望できる。
近くに山と海があるのはリゾート地として栄えてきた結果なのだろうか、しかしてこのような立地条件でこの部屋数は経営的に無理があるのではないだろうかと疑ってしまう程である。
そんなホテルの最上階にヨミはいた。
遠くで何かが崩れるような音が聞こえ、そちらの方向に目をやっていたが夜だったことが災いし詳細は分からなかった。望遠鏡か何かがあれば"正体不明の巨大ロボット"が展望台を破壊したことが分かっただろうが、これもまた無い物ねだり。
幼い体に対して分不相応な剣を持て余しながら、小一時間休憩した彼女はエレベータで1階まで下りて行った。
チン、と電子レンジを彷彿させる音が鳴り響き1Fと表示されたパネルが点滅する。
電気は問題なく通っているので、重い荷物(ヴァルグラウズ)を持っているヨミでも容易に最上階に上がることができた。最も、彼女がそれを不思議と思うことは無かったのだが。
「最上階からは特に何も見えなかったな・・・それじゃあ迷子のヒメルを捜すとするか」
何度も言うようだが、どちらかというと迷子はヨミ自身なのだが。
ホテルのロビーを横切り、フロントの前にある自動ドアをくぐろうとしたときに、目の前に人影が見えた。
このゲーム始まって、ヨミにとっての最初の遭遇者は。
「おお、ベルト頭か」
「・・・なんだこのガキんちょは。こんなのも巻き込まれてやがんのか」
ヘッドベルトに黒いコート、走馬闘志だった。
◆ ◆ ◆
「なんだ私のことを忘れたのか、ならばお仕置きだな!」
「オイオイ、俺はこんなケツの青いガキは知らんぞ。一方的に知り合いだとか言われても困るだろ常識的に考えて・・・」
「む、どうやら馬鹿にされているようだ。なおさらお仕置きを・・・と、デンダインが没収されてたのだった」
「・・・チッ、参加者全員が手だれだと思ってたんだがな。全員をぶっ飛ばせばゴールって結末から遠のいちまったようだぜ。こんな子供がいるようじゃそうトントン拍子にいかねえな」
「・・おいベルト。本当に私が分からないのか?」
「あ?」
闘志はヨミのことを見る。ぶすっとした表情から、彼女が闘志のことを知っているのは本当だろう。
だが知らないものは知らない。知っていても一方通行な知り合いというわけか。
「知らんわ・・・って、なんだアイツ」
「ん? どうした」
「いや、今外に人影が・・・ちっ、下がってろ!」
ガラスで出来た自動ドアが粉々に割れる。次いで入ってきたのはまたしても子供。
暗くて見えなかった姿が、ホテルのロビーにある照明で照らされる。その姿にヨミと闘志はわずかながら驚く。
目が血走っている。口元には鉄でできた趣味の悪いマスク。そこから漏れる空気が音を奏でる。
「シュコー・・・」
「・・・この格好と、この姿・・・!」
「ああ。私も同じことを思ったぞ。第一印象は大事だな」
「このゲームの主催者、灰楼の総帥と瓜二つだ・・・・!」
当たり前だ。彼はその総帥の双子であり、弟なのだから。
そして最悪なことに彼は理性を持たぬ殺人マシーン以外の何物でも無くなっていた。
話し合いは不可能。戦闘は不可避。血を求め、少年は獲物に襲い掛かった。
「シュコー」
【北西 ホテル1Fロビー/1日目/深夜】
【ヨミ@Vulneris draco equitis・basii virginis】
[状態]:健康
[装備]:ヴァルグラウズ @ヒメル
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
基本:殺し合いに乗らず、仲間を集める
1:目の前に現れた少年に対処
2:ヒメルのヴァルグラウズを返す
3:夢はでっかく世界征服!
4:闘志との面識について、食い違いに疑問
【走馬闘志@吼えろ走馬堂】
[状態]:健康
[装備]:式神・皇帝と書かれた紙 @皇帝(理由のない日記)
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
基本:危険人物のみ排除
1:能力を自分の物へと昇華させる
2:会場を探索
3:灰楼ブッコロ
4:目の前のガキを無力化するために対処
(備考)
参戦時期はクレイジーソプラノがクレイジーソリッドに変わった後のいつか。
極無の魔眼+『時の力』をどうやって使ったかは不明。
彼なりの能力へのアレンジが加わった物。
ヨミとの面識が無いのはなぜだろう。参戦時期?灰楼の処置?不明。
【総帥弟@誰かの館】
[状態]:極度の興奮状態・体力消費(小)
[装備]:デスマスク @カノン(紫色の月光)
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
基本:サーチ&ジェノサイド
1:オレノ拳ガ血ヲ求メテイル
2:目の前の2人を標的として認識
最終更新:2010年02月08日 16:23