オネイロイ

『この薬を摂取すれば、夢が叶う。とびきりの悪夢と引き換えに』という触れ込みで最近フェルネットの王国のみならず、
近隣の都市や首都にまで流通している正体不明の新型ドラッグ。
摂取すると普通では有り得ないほど身体能力が向上し、頭が冴え、とんでもない多幸感、万能感に浸れるという。
ドラッグ売買をシノギとしているボンドーネ・ファミリーなどのマフィアにとっては市場シェアを侵食される死活問題となっており、
緊急でコミッションが招集された。

その正体はウェイロン・リー率いるコーザ・ノストラフェルネット王国攻略のために投入した切り札。
元々は今から十数年前、エンリコ・デ・ムーロが妻リタの要請によって終末期医療と尊厳死のために開発した新薬。
安楽死ではなく、あくまで尊厳死用の薬であり、末期癌や不治の病を抱えた患者から激烈な痛みだけを取り除き、
夢見るような安らぎを与える――という効能から、ギリシャ神話の夢の神々『オネイロイ』の名が付けられた。
モルヒネなど数種の覚醒剤、幻覚剤、鎮痛剤に特殊な処理を施し、患者の病気や症状に合わせた適切な配合と処方をすることで、
ありとあらゆる病に対応して安らかな眠りを齎すことが出来るという画期的な新薬であったが、
重度の依存性があり処方を僅かでも間違えると安らかな夢がたちまち悪夢に変わるという重大な欠陥があり、
エンリコ以外には扱えない不完全な代物であった。
おまけにどこから存在を嗅ぎ付けてきたのか、当時街に割拠していたマフィアのひとつがオネイロイを渡さなければリタを殺すと脅迫してくる。
絶対に薬を渡してはならないとのリタの希望を尊重し、マフィアに抗った結果リタは死亡。
あわやマフィアの手にオネイロイのデータが渡る瀬戸際、ルカ率いるフェルネット・ファミリーが抗争に参入。
エンリコを脅していたファミリーを駆逐し、オネイロイが外部に流出する危機は去ったかに見えた。
しかし、フェルネット・ファミリーの庇護下に入り安全になったかと思われたオネイロイのデータは、
父の行動に不信感を抱いた息子のドナテロによって持ち出されてしまった。

ドナテロはその後コーザ・ノストラにオネイロイのデータを譲渡。
コーザ・ノストラの医療班に改良を施され、死を待つばかりの末期症状患者に福音を齎すはずだった『夢の神』は、
悪夢と引き換えに人体から恐るべき力を無理矢理引き出す魔薬に変貌してしまった。
人間とは思えない馬鹿力を引き出したという話もあり、五感が冴え万能感、全能感に加えセックスの感度も通常とは比較にならないほど向上するが、
その反面ヘロインやコカインなど問題にならない重度の中毒・依存性を伴い、肉体・精神への負担も激しい。
オネイロイ中毒者が欠乏状態に陥ると理性を失い白昼夢を見ているような錯乱状態となり、凶暴性や性欲が剥き出しになり、
薬を求めて恐るべき怪力を発揮するようになり、更に欠乏が続けば精神が薄弱な者は発狂するか、あるいは死亡する。
一度でもオネイロイを打ってしまった者が重篤な中毒性から逃れ、健常者として社会に復帰するには、想像を超えた強い精神力が必要になるだろう。

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最終更新:2022年08月11日 00:24