ルカ・フェルネット

西欧のとある国、その一都市を牛耳るマフィア、フェルネット・ファミリーのボス。
エステル・フェルネットの養父。ピエトロ・ベルッチが神と崇める主人。
深い夜の色をした鋭い双眸と整った顔貌を持ち、黒髪をオールバックにした長身の男性。年齢は四十代半ば。
アレッサンドロ・パオリーニ曰く『そこに立っているだけで王者の風格』『ボス以外はカボチャにしか見えなくなった』とのこと。

遡ること十数年前、多数のマフィアが割拠し無法地帯と化していた街へ小勢を率いて乗り込み、
強大なカリスマ性と他の追随を許さない圧倒的な戦闘力によって無数の敵を瞬く間に排除し一大勢力を築いた、稀代の傑物。
最終的に街をガウディ―ノ・モレッティ率いるモレッティ・ファミリーと二分し、モンフェラート・カンパニ―の戦いでガウディーノを殺害すると、
街の支配権を獲得しフェルネットの王国を築いた。
寡黙で多くを語らず、感情を表に出すことが少ないため中々他人に思考を読み取らせない。
こと個人の戦闘力に関してはずば抜けており、複数の敵から銃口を向けられてもまったく怯まない。射撃精度、徒手空拳、武器格闘(ナイフなど)、
どれを取っても軍隊格闘術経験者顔負けであり、並のマフィアなど足許にも及ばない。
実際、街の支配権獲得のための勢力争いではボスであるルカが自ら先陣を切り、部下たちより遥かに多くの敵を直接屠っていた。
相方のジャンマリオ・ブッフォン曰く「危なっかしくて見ちゃいられん」とのこと。
いつ、どこで戦闘を身に着けたのかは不明だが、ピエトロは悪魔に魅入られた天与の才であり余人には真似できないものと分析している。

上記のように戦闘能力についてはほとんど常人離れしているが、といって戦闘一辺倒の猪武者という訳でもなく、
血統主義で代々部下を継承する他のファミリーと違い新興の組織である自身のファミリーを増強するため街に腐るほどいるストリート・チルドレンに着目し、
孤児を積極的に引き取って教育を施し、後進の育成に務めるといった従来のマフィアにはない柔軟な発想もしている。
こうしてフェルネット・ファミリーに拾い上げられ、食事と教育を与えられた孤児たちのルカに対する忠誠心は極めて高く、
誰もがルカを神と崇め、その命令ならばいつでも笑って死ぬという覚悟を決めている。
王国樹立後に厳粛な血の掟を定め、『領域を荒らそうとする者には凄惨な制裁を、一度懐に入れた者には深い慈悲と確かな居場所を』をモットーとして、
無法地帯であった街に秩序と平穏を齎した。

表向きはコングロマリット(他業種企業)であるフェルネット・コネクションの総帥という肩書を持っており、
支配領域の王国のみならず、首都ばかりか世界的にも有力な資産家・富豪として知られている有名人。
また、マフィアのゴッドファーザーという本当の顔は公然の秘密となっており、誰もが知ってはいるものの口に出す者はいないという状態。
そんな人物のため恐れられ、畏怖の対象となっているが、街の繁栄には精力的であり当局への寄付を惜しまず、
土地開発計画や造成などにも積極的で、特に公園や動物園、水族館、劇場といった市民の豊かな生活を保証する施設に関しては多大な資金提供を行っている。
フェルネット・コネクションの不動産部門、運輸部門は政府関係と強く結びついており、たびたびマスコミに談合の謗りを受けることもあるが関係はおおむね良好。
このように権力者であるため、ルカとのパイプを構築しようとする財界・政界のパーティーやセレモニーなど各種行事に招待されることも多く、
ダヌンツィオ・ファミリーが仕切るマフィア間のコミッションなどもあるため、頻繁に屋敷を空け仕事に各地を飛び回っている。
その際にピエトロをお供として連れていくため、エステルからは『お父さんがまたピエトロを独り占めしてる』と不興を買うこともしばしば。

このように王国内で生きる住人の生活に便宜を図る一方、街の秩序を乱す輩については一切の容赦をせず、マフィアとしての力を惜しみなく行使する。
他のマフィアや犯罪者、ドラッグの売人などには断固とした措置を取り、たびたび死体が見せしめのように街の各地に晒される。
(ただ、最近は住民の精神的負担、街の価値や平和で住みよい街というブランドの低下を懸念して敵を殺害した後は死体を撮影してすぐに処分し、
画像データをマスコミ等各メディアへ警告文と共に送信し報道させるというスタイルを取っている。)

このように苛烈な遣り方から冷酷で無道な人物と思われがちだが、ごく一部の気を許した人物に対しては限りなく甘い。
養女のエステルのことは(あまり表には出さないが)目に入れても痛くないほど可愛がっており、エステルのしたいと言うこと、願うことは何でも叶えてきた。
街の水族館や劇場などの施設も元々はエステルを楽しませるために作ったものである。
孤児として拾い上げたピエトロに対しては、14歳の少年が単身で策謀を巡らせ自分の命を狙ってきたということでその度胸や機転といった才能を大変に気に入っており、
エステル同様に可愛がり望むものは何でも与えてきた。最終的に自身の後継者と決め『この子の兄になってやれ』と大切な一人娘のエステルを託し、
エステルが表の世界に馴染まないようならふたりを結婚させようとさえ思っていた。
相棒とも言うべきブッフォンは自分が少年のころから付き合ってきた古馴染みということもあり、唯一気兼ねなく話ができる関係。
ブッフォンに対しては何でも頼り、無茶振りをしてしまう。ブッフォンが屋敷を訪れるとどれだけ忙しくとも自ら接待し、自室でふたりきりで酒を呑む。

戦闘能力に優れ、革新的で柔軟な発想が出来、愛情深く一見して完璧な人物のように思えるが、欠点も存在している。
第一に、感情を表に出すことが不得手のため人々にあらぬ誤解をされがちである。
前述したように寡黙であり絶大なカリスマ性を持つがゆえ、一般人はその圧に耐えられず不興を買ったのかと恐れ戦いてしまう。
それはエステルなどに対しても同様で、愛情を素直に伝えるのが致命的に下手なため、愛情表現というとただただ甘やかす・欲しいものを買ってやる、
言うことを聞いてやる――といった即物的な手段ばかりで、却って反撥を生むことがままある。
エステルには自分が思う『娘に似つかわしい可愛いもの』としてぬいぐるみなどを多数プレゼントし、ピエトロには望まれるままに多数の書籍、
勉強に使うためのパソコンなどネット環境、果ては屋敷内にトレーニングジムまで作った。
ただ一度、エステルが『ファミリーの二代目になりたい』と言ったときには激怒し、本気で娘と喧嘩をするに至った。
第二に、生活能力が皆無である。炊事洗濯などの家事は勿論できず、身の回りのものにも頓着しないので服なども替えを与えられなければずっと着回している。
ピエトロがルカの執事を務めるようになるまでは私生活の大半をブッフォンに依存しており、スーツなどすべてブッフォンが用意していた。
今でもそれは変わらず、ルカのサイズを把握しているピエトロが部下に命じて誂えている。
第三に、スケジュール管理が壊滅的である。ルカは著名人のため各種の催し物や会合等に緻密なスケジュール管理が必要とされるが、
そういったことがまったく出来ず、腕時計を見ることさえろくにしない。そのため以前はブッフォンが、現在はピエトロがスケジュール管理を行い、
秘書として会議やパーティーに同伴している。

現在の著名人ぶりに反して謎の多い人物でもあり、その前半生を知る者は少ない。
分かっていることは、エステルの母親と親交があった(らしい)こと、兄弟がいたこと、くらいである。
現在はウェイロン・リーの策に嵌り、マネーロンダリング容疑で当局に逮捕され、拘留されている。
ピエトロが金に糸目をつけず担当者に付け届けをしたため、超高級ホテルの一室を借り切って生活しているらしい。

最も偉大で、最も恐ろしく、最も悪魔に愛された人物。
この人物にエステルが二代目を襲名することを認めさせるのが、この物語の最終目的である。

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最終更新:2023年07月03日 17:30