精子凍結

マウス精子の凍結保存

  • マウス精子の凍結保存技術は、遺伝子改変マウスの大学間授受や系統維持のバックアップなどに用いられるほか、実験動物の計画生産を可能にし、実験動物の無駄な繁殖を削減することにも役立つ。
  • 以前は、「C57BL/6系統や129系統を原系統にもつ遺伝子改変マウスは精子凍結が不可能である」と国内外の教科書に記載されていたが、われわれの研究成果により、現在ではほとんどの近交系統および遺伝子改変マウス系統の精子凍結が可能となった
  1. 精子凍結に用いる精子は、少なくとも8週齢以上の雄マウスから採取する(1歳6ヶ月齢の遺伝子改変マウスでも問題なく精子凍結可能なので、上限は気にしなくてよい)
  2. 雄マウスを安楽死させ、2つの精巣上体尾部を切り出す。
  3. 精巣上体尾部2つを200~400μLの精子凍結保存液(R18S3溶液;18%ラフィノース、3%スキムミルク、あるいはFERTIUP溶液)に浸漬させる。
  4. 精巣上体尾部を精子凍結保存液中で細切し、精子が溶液中に遊走してくるのを待つ(1~5分間程度)
  5. 遊走してきた精子を攪拌し、溶液中の精子濃度をある程度均一化する※
  6. 上記の精子懸濁液10~20μLを0.25mLプラスチックストローに充填する※※
  7. すべてのストローに精子懸濁液を充填するまで、6を繰り返す※※※
  8. フロートなどに精子充填ストローを入れ、液体窒素気相で5分間静置する※※※※
  9. 精子充填ストローを液体窒素中で保管する
C57BL/6Jマウス凍結精子(動画、左)     凍結精子から個体作製したC57BL/6Jマウス(右)

※精子は自走しているので、完全には濃度を均一化することはできない。精子への物理的なダメージを気にしてマイクロピペットを使わない研究者もいるようだが、精子自体に比べてマイクロピペットの内径ははるかに大きいので、通常のピペット操作ぐらいではマウス精子は死なない。攪拌についても、vortexや30分以上振とう器で振とうすると死滅するが、それ以外であれば特に気にしなくてよい。
※※ストローと精子懸濁液だけでは、液体窒素中に沈まないので、HTF培地などの「錘」を一緒に充填する。その際に、絶対に精子懸濁液と混ざらないように充填すること。凍結前に培地と混ざると、まず失敗する。
※※※以前はここまでのステップを可能な限り素早くすることがコツとされてきたが、30分程度であれば、特に気にする必要はない
※※※※1分以上静置すればよい。1分未満だと精子が死滅することがあるので、注意

↓下記の広告は、当研究室とは関係ありません。

最終更新:2010年12月31日 00:37
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。