胚移植

胚移植

 ルーチンワークで行う生殖工学技術の中で最も習得が難しいのが、胚移植である。難しくしている原因としては、(1)ドナー胚の状態に左右される、(2)遺伝子操作したターゲット遺伝子の影響を受ける、(3)胚を移植する仮親(recipient)の卵管・子宮の状態にも左右される、など複数の要因が関わるためである。

胚移植を実施する前に

 数年前まで、著者はヘビースモーカーであったが、タバコをやめた途端に産子率(新生児数/移植胚数×100)が向上した。また、マウスの胚移植の場合、マウスピースとガラスキャピラリーを使って移植するため、食事の前後に関わらず、胚移植の前には歯を再度磨くようにしている。理由はよくわからないが、実感として”胚に良い”と感じている。
 また、手技的に最も気をつけるところは、ガラスキャピラリーの太さと先端の形状(するどく尖っていると胚や卵管にダメージを与える)である。太さは、30Gの注射針よりも細くすることを目指せば良い。

仮親の準備

  • 暗期に入る30分~1時間前程度に、発情前期の雌マウスを精管結さつ雄と同居させる(mate)
  • 翌日朝に、膣栓(plug)を確した雌マウスを仮親とする(交配後0.5日,0.5 dpc)
  • 子宮移植する際は、2.5 dpcの仮親を用いる

胚移植(卵管移植の場合)

  • 適切な麻酔薬を用い、仮親を麻酔する
  • 背中の皮膚を1カ所切開し、その後、左側の卵巣周囲脂肪組織の付近で腹膜を切開する
  • 脂肪組織をピンセットでつまみ、卵巣~子宮角を体外に露出させる
  • ブルクリップで脂肪組織を固定し、オペ中に卵巣~子宮角がブレないようにする
  • 出血があると卵管切開部分を見失いやすいので、滅菌したキムタオルなどを卵管の下に敷いておく
  • 卵巣を確認し、排卵を確認する。卵管膨大部を確認する
  • 卵巣~卵管膨大部までの卵管に1カ所切り込みを入れる※
  • ガラスキャピラリー内にマーカー用の空気を2~3入れ、そのあとに培地と一緒に胚を入れる※※
  • 切開部分にキャピラリーを静かに入れ、卵管の中で何度かやさしく動かし、手に感覚を馴染ませる
  • キャピラリーの先端が卵管壁に接触しすぎないように注意し、ゆっくりと息を吹く
  • 卵管膨大部にマーカーの泡が入ったら、キャピラリーを卵管から離す
  • 卵巣~子宮角を元の位置に戻し、腹膜を縫う
  • 表皮を手術用クリップで縫合する
  • 右側の卵管にも同様に移植する

※ノエス(マイクロせん刀)で切ってもいいし、30Gの針で穴を開けてもいい。卵巣~卵管膨大部までの卵管が短い時は(交尾直後)、卵巣嚢を注意深く切開して卵管を引き出すか、卵巣付近の卵管を30Gの針で穿刺するとよい。
※※特にミネラルオイルを取り除く必要はないが、培地のpHがアルカリに偏っていないことは培地の色などで確認しておく(大気中に放置しているとどんどんアルカリになっていくので注意)






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最終更新:2011年01月08日 14:53
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