黒井先輩と愉快なオカルト研究部


Meet


放課後)何らかの選択肢を経て
    ↓

HRが終わる。
放課後、そうだな入部したんだし、オカルト研究部……に、行くか
「あれー○○君、特別棟にいくのー?」←ましろ
「あーうん、ちょっと用事でな」
部活動とはいえない、部名を聞かれたくないもの!
「ふーん……補修?○○君、あっちの教室の授業得意そうなのになぁ」
「いや、ある女教師から個人レッスンを持ち掛けられちゃってな……ふ」
「?そうなの?」
「ましろ、馬鹿が移る。早く帰ろう」
でたな暴力ガードマン
「聖ちゃん、○○君は馬鹿じゃないよぅ」
「そーだぞ。ま、凡人は天才を目の前にすると
余りのレベル差に理解の許容限界を突破しちゃうからな
お前のその反応はある意味正しい、うんうん」
「ほう、実のない遺言だったな」
「落ち着け。話せばわかるよな、俺達」
女の子が音鳴るほど拳を握るもんじゃありませんよ?聖さん
「まあぶっちゃけると補修みたいなもんだ、そんじゃ二人ともまた明日な」
じゃなっと手を上げる
「うん、また明日ねー、バイバイ○○君!」
「やっぱり補修じゃないか、じゃあな馬鹿」
いーもんね、この道の先には俺を必要としてる人が待ってるんだい

と、特別棟の階段を上りつつ改めて考える
そういえば俺、部活動の内容も知らないまま入部決めたんだよな
…………なるほど、俺馬鹿かもしれない。というか馬鹿だな
でも、何だか
   「私は、貴方しかいないと思っているわ」
こんなこと言われたらなあ、悪い気はしない
まあもしかしたら、物凄く不吉な意味合いかもしれないけど
俺、生贄の道具にされたりしないよな?
そんな事を考えていたら階段を上りきっていた
「ま、ここまで来たら行くしかないよな」
廊下隅の空き教室に向かう
と、その時、その空き教室から人が出てきた
青島さんでも黒井先輩でもない、肩を怒らせてこっちへ歩いてくる金髪の女子
彼女は確か──────マグリフォン……
「茜…さん?」
そうだ、彼女は同じクラスの、俺と同じ転校生、マグリフォン=茜だ
マグリフォンさん、とは呼びにくいので、
たぶん茜さんが正しい声の掛け方だと思う。
にしても不機嫌そうだな今日は
「──────っ!」
茜さんはこちらに気付くと、ぎょっと俺を凝視してくる
そして今でてきた空き教室を振り返り、また視線を俺に戻す
女優の様な端正な顔が全力で俺を凝視する、迫力満点だ
「……ここに何しにきたの?」
その顔が、聞きたくない事実を探る様に俺に問う
「あーえっと……まあちょっと用事で、その、そこの教室に……」
たははっと奥を指差して笑う俺、情けねええーー
「…………っ」
茜さんの顔に再び怒りが灯る
いや、心なしか空き教室を出てきた時より険しくなってる様な……?
「そんな、有り得ない、だって貴方は何も…………
 認めない……!私はこんなの、貴方なんて、認めない……!!」
「え?な、な……なにが??」
俺何かした????
茜さんは力の限り俺を睨むと、階段を早足で降りていった
「な、何なんだ……?」
視線を茜さんから隅の教室に移す
何があったのか、知りたい様な……いややっぱ知るの怖ぇーー
おそるおそる教室へ向かう
ああ、でももしかしたら茜さんも俺みたいに
オカルト研究部に出入りしたとこ見られたのが恥ずかしかったのかな?
そんな次元の顔じゃなかった気がするけど、そうだといいな……

ドアを開ける
「ちわーす、○○来ましたー」
「こんにちは、よく来てくれました。どうぞお掛けになって」
「はい……あ、青島さん先にきてたのか、って何してるの?」
青島さんは学生鞄程度のガラス箱を両手で挟んで
中のモノをじっと見つめたり、目を閉じたりしていた
ガラス箱の中にはミニチュアの海岸の様な、砂や石ころや水が配置されている
そしてその海岸をカニがせかせか歩いている
「研究中です」
目を閉じたまま答える青島さん
「まりなちゃんの研究は、私とは少し方向性が違うの。
生物に眠る力を引き出す感じかしら」
「そうなんですか……」
そういうのって何か別の部の分野な気がするけど……
まあ生き物に眠る神秘の力、ならオカルトの部類なのか……?
オカルト、っていうのが、どうも捉えづらいな
「あ、そうだ。さっきそこの廊下でクラスメイトに会ったんですけど……
 ええと、この教室から出てきたみたいで、何かあったんですか?」
聞きたくない気もしたけど、まあ知っておいた方がいいよな
「ああ……ええ、彼女ね」
ああ、と頷く黒井先輩
「彼女は入部希望者だったのですけど……
 定員になってしまったので、お断りしたのです」
え、ええええぇえええ?
あの茜さんがオカルト研究部に入部希望したことと
それを断った理由の二つに驚いた
「こ、この部ってそんなに部員多いんですかっ?」
「私と、まりなちゃんと、貴方です」
にっこりと笑う先輩
「定員3名!?」
すくな!!
「いいえ、まりなちゃんは私とは方向性が違いますから、
 私にはアドバイス程度の事しか出来ません。本来は2名ですね」
う……?
つまり青島さんは例外で、部員には含まれないはずのメンバーということか?
でも定員2名って、そんな少なくていいのか!?
部として成り立つには確か5人以上のメンバーがどうこうって聞いた様な……
「あの、なんでそんな少ないんですか?
 部員は多ければ多いほど……いいとは言えないですけど、3人は少ない気が……」
「それは、この部の活動内容があまり人の目に触れてはいけないから、ですね」
「それにしても少なすぎません?、5,6人くらいならこそこそ活動する分には…」
そりゃ俺だってこの部の活動中に、ましろや聖に目撃されるのは避けたいけど
「ふふふ……人の目に触れる、という意味合いが少し食い違っていますね」
言葉を楽しむ様に、黒井先輩は自分の唇に指を這わす
「う……」
その仕草にドキッとしてしまう
「遊佐君、私達が研究しているオカルトというのは……魔法なの」
「へ?あ、はい」
まほう?というとあの魔法だろうか、なるほど確かにオカルトだ
元々そういう部なのはわかってたから違和感はない
むしろ、どうしてそれが2名という超少数定員に結びつくのかがわからない
「それは、まあわかりました、けど……
それならもっと知恵を集める為に定員増やした方がよくないですか?」
「ふふふ……そうですね。オカルト研究部なら、それが正しいのね」
「へ……?」
と、ここでじっとカニを見つめていた青島さんが顔を上げた
「黒井先輩は、探しているだけ」
む?どういうことだ?さっぱりわからん
「まりなちゃん、何か掴めたかしら」
黒井先輩が青島さんに声をかける
「わかりません……やってみます」
やってみるって、何を?魔法?カニ見つめてただけに見えたんだけど
「青島さん、何を始めるの……?」
「カニに……同調することで……」
青島さんは目を閉じて、聞き取れない声で何か呟いている
「…………」(ゴクッ)
思わず唾を飲みこむ
心なしか、青島さんの体の周りに
目では確認できない何かがある様なきがして、きて────
青島さんが目を見開く
「…………メタルボディ……!」
……………………………いや、気のせいかな
「まりなちゃん、どうかしら?」
「……」(グッ)
黒井先輩の問いかけに、親指を立てて返す青島さん
「えーーと、何がどうなったの?」
一応聞いてみる
「今、私の周りには、物理的な衝撃をカットする膜が張られて、います」
言われてじっと青島さんを観察する、どう見ても何もない
「あー……いや、そういう風には……あー、うん
校章がちょっとメタルっぽくなってるかな……」
青島さんは無言でカナヅチを取り出す
「え?青島さん、何する気?そのカナヅチって一体どう……」
「つまり、このカナヅチの一撃も、カット出来るのです」
「ちょ、ちょっと、だめだよ!危ないから!カナヅチ置いて!」
あわてて取り上げようとするが、青島さんは威嚇する様にカナヅチを振り上げる
あぶなっ!、これじゃ無理に取り上げられない
「まりなちゃん、一応、頭はやめておきなさい」
にこにこ笑いながら黒井先輩がアドバイスする
そうじゃないだろーーーー!?
コクン、と頷き、青島さんはカナヅチを
テーブルに置いた自分の左手の小指に振り下ろした
ガツッという音が部屋に響く
「──────っ!」
ぅおああああーーー、見てるだけでイテーーー!
おそるおそるその顔を覗く
青島さんは、カナヅチを振り上げる前と同じ、平然とした顔でいる
が、その額からは滝の様に汗が流れでている
結果は聞くまでもない
「………………………………………………………………
 ………………………………この様に、バリアによって外的」
「いや顔見ればわかるから!早く冷やすとかしないと!」
「まりなちゃん、私の目にも、バリアは見えなかったわ」
困ったものね、と苦笑する黒井先輩
結果わかってて止めなかったってことだよね?つまり
その言葉で青島さんは早送りの様にガラス箱の蓋を開けて
ミニチュアの海岸に指を浸す
一時の安堵。
しかし、ああそうだ、このミニチュアには魔物がいて────
彼女の小指をその手で挟んだ
「──────────────っっっっ!!」
眉一つ動かさないまま、青島さんが悲鳴らしき声を飲み込む
うへえ、見てられねえ
顔を背けた先には、心配そうに眉を寄せて
何かを堪える様に頬をヒクヒクさせている黒井先輩がいた
その何かを堪えているのは、この人の優しさ故なのだろう
そうだと思いたい、じゃなきゃとんでもないぞこの人!
「まりなちゃん、保健室へいった方がいいわ。次も頑張りましょう」
ね?となだめる様に微笑む先輩
青島さんは彫刻の様に、まったく同じ顔のまま教室を出ていった
「…………」
あれが魔法の研究……?てことはあんなのを俺もやらされるのか?
さっき青島さんは、「黒井先輩は探しているだけ」といった
それはつまり、目の前で悶える誰かを探しているだけで
もしかしてこの部は「体を張って黒井真名を楽しませる部」じゃないのだろうか
……………………うへ、ネーミングセンス最低だな俺
「さ、では私達の話に戻りましょうか」
堪能した、といった感じの先輩
「あのー……、ああいうの、俺もやるんですか?
 はっきりいってそんな内容なら」
辞めていいですか?と言いかける俺を、先輩はいいえと遮る
「最初に言った様に、まりなちゃんと私達の魔法は違うの」
それはつまり、より先輩の趣向に沿ったお笑いプランという事だろうか?
しかし説明の腰を折るのも何なので黙っておく
「私の魔法は、まりなちゃんの様なおもしろ……特異性の物ではないの
 私が貴方に教えられる魔法は───────」
すっと先輩が蓋の開いたガラス箱に手をかざす
途端、ミニチュアの海岸が波立ち、噴き上がる
「なっ────」
何が起こったのかわからない。
必死に状況を理解しようとするが、出来ない。

─────ひどく場違い─────

水は意志を持った様に螺旋を描き、ガラス箱から飛び出る

─────ここは教室のど真ん中で─────

噴水は先輩の手を濡らし、俺の頭上も越えてなお舞い続ける

─────机を向かい合わせて並べただけのステージ─────

「これ、どんな仕掛けで……」
いや、トリックなんかじゃない。この机のどこにもホースはない
にも関わらず噴き出た水は最初にあった水量を遥かに超えている!

─────そこに、夕日色に染まる透明な華が咲いている─────

「……私の魔法は、大気に満ちる6つの元素。
 これが、貴方に託す私の奇跡────」
呆然と立ち尽くす俺の目の前で、もう一つの華が微笑んでいた

最終更新:2007年03月13日 11:57