霞?「ありがとうね」
遊佐「ん?」
振り向くとそこには人がいた。
遊佐「霞?」
霞?「うーん、今はそう、かな?」
遊佐「どういうことだ?」
霞?「それよりも、助けてくれたね」
遊佐「助けたってそりゃ、当たり前だろ?」
霞?「それを当たり前にできること、すごいと私は思うな」
中島にも同じこと言われたきがする。
何だか霞が大人っぽく見える。
霞?「がんばってね」
遊佐「おい?」
霞の体が光りだす。前も、こんなことが……!

遊佐「…………」
気付くとそこはベットの上。
遊佐「うーん」
霞の夢を見てしまうとは。
遊佐「重症?」
でもあれは
遊佐「霞なのかな……」
どことなく違和感を感じている。
遊佐「夢だしそんなもんだよな」
大体少し覚えている内容が曖昧なのだ。
遊佐「……ま、いいか」
今日から夏休み。
遊佐「熱、引いたかな」
今日も暑い。
遊佐「お見舞い、行くのか?」
道はまだ覚えているはずだ。いきなり行っては迷惑なんじゃないだろうか。
ベットに座り込む。
遊佐「バイト前に行ってみるかな」
霞は携帯持って無いし、何より家の電話番号も知らない。
遊佐「……駄目人間にならないために宿題でもやってるか」
とりあえず数学から。
遊佐「……ふむ……」
これくらいなら、何とか分かる。
遊佐「ベクトルは苦手なんだよ」
好きな方向に向かいやがって。
…………。
遊佐「にしても多すぎだろ」
俺は一息をつく。
誰しもが答えを写すと思うんだが。真面目にやる奴いんのか。
答えが無い教科優先でやっていこう。
遊佐「いざとなれば最終手段」

勇み足で部屋を出たのはよかった。
遊佐「が……」
どっちだ?
遊佐「困ったな」
昨日霞と通った道なのだけど、忘れてしまった。
遊佐「ここは見た記憶がある」
遊佐「…………」
じりじり照らす太陽が俺の気力と体力を奪っていく。
遊佐「お?」
右方向から来るのは。
遊佐「拓也?」
拓也「ん? あ、昨日の」
昨日霞の家の前で知り合った弟の拓也だった。
遊佐「おっす」
拓也「どうも」
お互い挨拶を交わす。
遊佐「あのさ、悪い! 霞のお見舞いに行こうとして迷ったんだ。案内してくれないか」
拓也「あ、いいですよ。ちょっと買い物しに行くんですが」
遊佐「それじゃあ付き合うよ」
流石に先に案内してもらうのは悪いしな。
拓也「すいません」
遊佐「いやいや、俺が無理言ってるんだ。悪いな」
拓也「そんな事はないですよ」
それにしても会話をしていると拓也は礼儀正しい。
俺は買い物についていくことにする。
遊佐「姉ちゃんの様子はどう?」
一番気になっていることだ。
拓也「まだ熱がひいてないです」
遊佐「うーん、病院は?」
やっぱり行くべきだとは思う。
拓也「まだ、なんです。姉ちゃん嫌がって」
遊佐「うーん」
本人が嫌がってるのか……。
遊佐「まー、本当に辛そうだったら行った方がいいな」
拓也「そうですね」
何で嫌がるのか……。昨日も拒んでいたし。
遊佐「お前の姉ちゃん病院とか嫌いなのか?」
拓也「あんまり、……好きじゃないと思いますよ」
少し拓也が考えてそう言う。
遊佐「……好きな奴はいないわな」
買い物を済ましていく。
どうやら霞のために買い物をしているようだ。
遊佐「おかゆも買っておくか……」
俺のおごりでな。
拓也「あの、悪いですよ」
遊佐「俺も心配してる一人だからできることあったらさせてくれよな。俺だってバイトしてるんだぜ?」
申し訳なさそうにする拓也だが、これくらいはしてやりたいんだ。
拓也「そう、ですね。それなら……」
遊佐「それじゃあ、案内頼むな」
拓也「はい、行きましょう」
店を出ると再び熱気に煽られる。
遊佐「……」
歩いていると汗がでる。
体が冷えると風邪をひく。霞のことだから夜……。
遊佐「むむむ」
拓也「どうしました?」
俺の唸りに拓也が尋ねる。
遊佐「いや。何でもない」
絶対はだけてるんだろうな……。
色々困るな。
遊佐「お前の姉ちゃん、寝相悪そうだな」
拓也「え、わかります?」
遊佐「大体な……」
そういうところ無頓着すぎるからな。

拓也「ここです」
遊佐「いやー、助かった」
よかった。案内してもらったおかげでたどり着いた。予定より少し遅くなっちゃったけど。
遊佐「お見舞いしに上がっても大丈夫かな」
拓也「大丈夫ですよ」
ここで上がらせてもらえなかったら何しにきたのって話だが。
遊佐「それじゃあお邪魔します」
拓也「姉ちゃんの部屋はこっちです」
家に入って案内される。
拓也「姉ちゃん、遊佐先輩が来てくれたよ」
拓也がドアをノックする。
拓也「もしかしたら寝ているのかも」
遊佐「……みたいだな」
拓也「うーん」
流石に入って待つのは大いにまずいよな。
拓也がドアを開けると。
遊佐「…………」
……うぁ。予想通り寝ていた。
だが予想通りだったのはそれだけではない。
見えそうです。大いにはだけて見えそうなんですよ!
遊佐「とりあえず、閉めるんだ」
俺は後ろを向く。
拓也「え?」
いや、お前もかい! いつものことなのだろうか。
遊佐「流石に入って待つわけにはいかないから」
ドアが閉められる。
遊佐「どうしようか」
拓也「そうですね」
そのときドアが開けられる。
霞「ぁー、遊佐君だぁ」
霞が起きてきた様だ。前が少し直っていて助かった。
拓也「あ、姉ちゃん寝てないと」
遊佐「俺だぞぉ。とりあえず霞は寝てて」
霞「うん……。きてくれたんだ」
遊佐「気になってな」
霞「悪いけどころがるね」
霞が布団に寝転がる。
遊佐「ああ、そうしてくれ」
拓也「それじゃあ、姉ちゃん。おかゆ作ってくるよ」
霞「ごめんね」
拓也「うん」
拓也が出て行った。
遊佐「調子はどう?」
霞「あんまし……」
調子が悪いと霞が自分から言うとは相当来てる気がする。
遊佐「かなり、熱いな」
手をおでこに当ててやる。
霞「あ、手冷たい……」
遊佐「そうか?」
霞「うん、気持ちいい……」
すぐ暖まっちゃうだろうけど。
遊佐「それなら置いといてやるよ」
霞「うん……」
霞が寝息を立て始める。
遊佐「寝た、か」
部屋にあった時計を見ると。
遊佐「う、そろそろまずいな」
その時拓也は部屋に入ってきた。
拓也「あ、また寝ちゃいましたか」
遊佐「ああ。俺そろそろバイト行かないとまずいから行くわ」
俺は立ち上がる。
拓也「今日はありがとうざいました」
遊佐「いやいや、助かったよ。それじゃあ、霞のこと頼むな」
拓也「はい」
霞の顔を見る。
遊佐「ゆっくりしろよ霞」
俺は拓也と一緒に玄関まで行く。
遊佐「じゃ、お大事に」
拓也に見送られて外へ出る。
遊佐「急がないとな」
どんどん暑くなっていく気がする外を俺は急ぎ足で喫茶店へ向かった。
最終更新:2007年03月07日 01:39