• #シーン『作戦』
  • 登場キャラ『遊佐、中島、井草、武僧、霞、(田中学園長)』
  • BGM『高揚感のある曲、戦闘曲』
  • 背景『グラウンド、黒一色』

(背景→グラウンド。BGM→高揚感のある曲)

遊佐「ん?」
 ふっと、何かが頭をよぎる。
 こいつ――中島のヤル気を逆手に使えないだろうか。
 逆手っつたら言い方が悪いか。
 良い言い方をすれば……有効利用……か?
 あれ? むしろ余計に悪くなってるか?
 まぁどっちでもいい。
 ――良いこと思いついたぞ。
 単独行動が禁止だということは、逆に言ってしまえば、うまく立ち回ることで相手の裏をかける戦法になりうるんじゃないか?
 よし、イケるぞ。
この作戦に賛同してくれるような奴と言えば……
 アイツしかいない。

(暗転)

遊佐「杏!」
 この作戦に乗ってくれるは、コイツしかいない。
杏「な、何? 遊佐。そんな大声出さなくても聞こえてるわよ」
 杏は突然呼ばれたのが恥ずかしかったのか、会話の輪を抜けて真っ赤な顔ですっ飛んできた。
遊佐「ん、おう。丁度いい。お前らも来てくれ」
 杏と会話をしていたましろちゃん、聖、早乙女、中島も呼び寄せる。
中島「ん、なんだよ」
遊佐「頼みがある。聞いてくれ」
五秒ほど無言の時間が過ぎ、
遊佐「この俺に、お前らの力を貸してくれ!」
 力を込めて言った。
聖・ましろ・杏・早乙女・中島「は?」
聖「……お前、何を突然言い出すんだ?」
早乙女「何か、良い策でもあるのか?」
杏「……」
 一同の怪訝な顔が返ってくるが、
聖「……話だけなら聞いてやる」
 俺は小さくガッツポーズをした。

(暗転。背景→黒一色)
 ――五分後。
(暗転。背景→グラウンド)

田中学園長「九、八、七、六――」
まるで年末のカウントダウンイベントみたいに、学園長の数えるカウントに大歓声が同調していた。
 聖の無言の口あわせにうなずくと、俺はホルスターから二丁のデザートイーグルを抜く。
 聖はましろちゃんを守るように片手剣と盾を構え、ましろちゃん本人は片手持ちの槌をしっかりと握り締めた。
 遠くに見える早乙女は、反りのない直刀『天の群雲』が納まっている鞘の鯉口を軽く切り、居合いの構えに移行。
杏は、体にアンバランスなほど長い黒塗りの両手剣を背中から重たそうに抜き放つ。
試合開始「レッセ・アレ」の合図までは一分間のインターバルが与えられる。
 バリスタはサッカーやバスケのように、試合開始まで選手がポジションから動かないのではなく、一分間のインターバルを経てから、そのまま試合開始というローリング・スタート形式になっている。
つまり、インターバルの間は自由に動き回ることが可能なのだ。
俺たちは奇襲攻撃を狙っている。
 だから、それに合わせた配置を目指した。
 俺、聖、ましろちゃんのグループ。
 早乙女、杏のグループ。
 そして……単独で中島。
 真ん中に中島、それを追いかけるような形で右翼に俺たち、そして左翼に早乙女たちと三叉に分かれた。
 中島を中心としたトライデント・フォーメーションである。
 敵陣のルークがよく見渡せる大岩の影。
 彼女たちが俺に目配せをしてきた。
 無言で俺はうなずく。
(ああ、もちろんわかってるさ)
今回の作戦の一番のキーパーソンの背中……それををじっと見つめた。
遊佐「頼んだぜ、中島。お前がこの作戦の要なんだからな……」
 俺は、静かに応援する。
これから英雄になるだろう男の背中を。
 決して本人には聞こえないように、だけど。
田中学園長「誰もが望みながらも決して実現されることのなかった夢の対戦カード。それが『ヴァナ学オールスター戦』です」
田中学園長「二年生VS一年VS三年という、史上類を見ない掟破りの決勝戦が行われようとしています」
田中学園長「さぁ、試合開始まで秒読み段階となりました」
田中学園長「あと、五、四、三――」
 俺は五分前に中島に執りつけた作戦を、もう一度確認していた。
遊佐『いいか中島。お前はまず、試合開始の合図までに与えられる一分間のインターバルの間に単独で敵軍のルークを目指せ』
遊佐『万が一のために、俺たちが後ろからしっかり見ててやるから、試合開始までは見つかるんじゃないぞ』
遊佐『だが、試合が始まったら、そこで一気にビッグ・サプライズだ』
遊佐『勇み声をあげて、一気にルークへ突撃するんだ。それでもうルークを守っていた敵はびっくり! 出鼻をくじかれて大慌てさ』
遊佐『俺たちが絶対にあとから続く。いいか、絶対に続くから、とにかく大声をあげて特攻するんだ』
遊佐『絶対に大声だけは忘れるなよ! 目立てよ!?』
遊佐『あと、俺とお前はずっと友達だからな!』
 そう。
この作戦は……名付けて『神風中島特攻大作戦』(当人未許可)なのだ!
田中学園長「ニ、一 ――」
田中学園長「レッセ・アレェェェい!」

(BGM→戦闘曲)

 ついに試合が始まった!
中島「うおらああぁぁぁ――――――!」
 作戦通り、試合開始と共に中島が敵地のルークの目の前に躍り出る。
 その銀の刃は三メートル以上もある大岩の上から輝いた!
中島「ハ――ハッハッハッハ! 俺の名は中島蔵人! 通称なんとなくクラウドだ!」
それと一緒に中島が空中に飛び出す!
中島「者共、命惜しくなくばかかって来いやぁぁぁ――――!」
金髪を煌めかせた中島の体が空中で縦に一回転。
そして着地と同時にバスターソードで地面を思いっきり叩きつけた!
 ぐぁしい――ん!
 まるで漫画のパワー系キャラが登場する時みたいに、剣を叩きつけた衝撃で噴火みたいに五,六メートルくらいまで土が舞い上がった。
金髪と体操着は扇風機の強の風を間近で受けるがごとくバサバサとたなびき、おまけに片手で構えたバスターソードの刃は横に半分以上地面めり込み……
まぁ平たく言うと、とにかくド派手に中島が降り立ったのだった。
中島「へへ。ジャスティス&デストロイがオレ様の信条……それが同時に主人公たるものの条件なんだぜ、ボーイミーツガール?」
 砂塵が晴れたとこから爽やかな笑みがのぞき、白い歯から逆光が放たれる。
 どうでもいいが、あいつはボーイミーツガールをレディース&ジェントルマンかなんかと勘違いしているんだろうか。
セリフもよくわかるようでいて、何が言いたいのか全くわからん。
 突然たたたたーたーたーたったたーん、となんとかファンタジーⅦのようなゲームのサントラのきっと一一曲目あたりに収録されているBGMがグラウンド中に鳴り響く。
中島はバスターソードをくるくると回してから背中に納刀した。
中島「キマッた……うごっ!?」
 ひゅうと石つぶてが飛んできたかと思うと、中島の頭にメガヒットした。
 ……短い見せ場だったな。
聖「遊佐。そろそろか?」
遊佐「ああ。準備しておいてくれ。このまま中島に群がってきた敵を、俺たちで一網打尽するんだ」
ましろ「なんか中島君がかわいそうだね……」
遊佐「そうか?」
ましろ「うん」
 ましろちゃん……優しいんだな。
ましろ「わたしは、ただみんなに笑って楽しくバリスタをやってほしいだけなの。中島君を犠牲にするみたいな作戦で勝っても、心の底から喜ぶなんてできないんじゃないかな、って思う……」
遊佐「ましろちゃん……」
 ああ、ましろちゃん。とても心温まるコメントをありがとう
 でも、さっきから手馴れた様子でくるくる投げて遊んでるその鈍器はなんですか。
ましろ「ううん。でもこれはみんなで決めたこと。しょうがないことなのよ」
ましろ「中島君の犠牲は決して無駄にしないわ」
 なんだかホラー映画に出てくる妄信教の女みたいなことをおっしゃる。
遊佐「結局、別にやってもいいんだよね?」
ましろ「うん。勝つ為だもん。悪い?」
 とても良い性格反転っぷりでした。
遊佐「中島は……おーおー、まだ生き残ってやがる。ソロでも意外といけるんだな」
敵はルークキーパーと思われる六人。
全員が手に得物を持っている。
 俺は反翼にいる杏、早乙女に準備OKの合図を送る。
遊佐「さぁ、いくぜ」
遊佐「ビッグ・サプライズだ!」
 俺たちは一斉に大岩から躍り出た。
最終更新:2007年03月07日 05:13