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荷物をまとめて病室にもどってきた。
遊佐「おーい。もどって……」
寝てる。
過労……だしな。寝てて正解だろう。
俺は荷物を置く。
遊佐「拓也、俺はバイトいくから」
拓也「はい、ありがとうございました」
俺は霞の寝ている姿をもう一度見つめる。
遊佐「……」
心の中で霞に語りかける。
これ以上無茶しないでくれよ。心配だから。
そして部屋を後にした。

今日の空は曇っていた。
だけど西の空は晴れていた。
遊佐「夕方は晴れるな」
じめじめした空気を感じながら歩く。
携帯を取り出す。
遊佐「あ、遊佐です。実は、えっと」
ここは詳しく説明したほうがいいんじゃないだろうか。
遊佐「霞が、風邪と過労で倒れて入院して」
店長『ええっ!?』
簡潔すぎたか……。
遊佐「えーっと、説明しづらいんですが」
今日朝からあった出来事を一通り話す。
店長『そうか……、それは私にも早く連絡をくれたら手伝ったんだけど』
遊佐「そうでした、ね。すいません」
店長『いや、遊佐君がちゃんとやってくれたようだし』
遊佐「そう、ですかね」
俺は頭を掻く。
店長『ああ』
松下さんにそう言って貰えると何だかうれしかった。
店長『それにしても明日は私も行ってみないと』
しばらく松下さんと話す。
遊佐「それじゃあ、今からそっち行くのでまた後で」
店長『うん、わかった。気をつけてね』
電話を切る。
遊佐「さて」
病院を出てからの道はいまいち把握しきれてない。
遊佐「一旦霞の家まで向かって行けば迷わないけど」
遠回りになるんだよな。
というわけで俺の方向感覚を頼って勘でしらない道を行く。
多分こっちだ。あっちに行けば霞の家の方角で……。
遊佐「方角的にあっちだろう」
………………。
遊佐「おし」
見事に迷った。
遊佐「おしじゃねぇよ」
自分に突っ込む。落ち着いて考えるんだ。
高い建物を探して見上げる。
遊佐「んー」
周りを見渡してみる。
遊佐「お?」
目についたのは山。そして中腹にある神社。
遊佐「あれ、学校から見えた神社だ」
授業中に見えた神社だ。
遊佐「時間ちょっとは余裕あるし、行ってみるかな」
それに高い所から見たほうがわかりやすいだろう。
その前に松下さんに連絡したほうがいいか。
……………………。
遊佐「ここか」
階段を見上げる。
遊佐「……」
あれ? なんだか既視感が。
遊佐「こんな風景よく見るしな」
テレビとか、他の神社でも大体こんな感じだしな。
階段を上りだす。
周りの木がざわめいている。
遊佐「……」
最後の一段を登り切る。
遊佐「これが、学校から見えた……」
ざっと見渡す。すでにぼろぼろになった建物の風貌。
まわりは木々で囲まれており手を加えられていないように思えた。
遊佐「っと」
俺は振り返る。
遊佐「こっから見て学校があそこだから」
手で道を沿ってゆく。
俺ははっとなって振り向く。
遊佐「まさか」
再び町の方を見る。
遊佐「どこかで見た」
気がするんだよな。
しかも最近。
遊佐「うー、思い出せない」
いや、それより早く喫茶店行かないとまずいよな。
遊佐「えーっと、とりあえずあっちに行けばいつもの道に出れるはず」
俺は階段を駆け下りた。
遊佐「おっし!」
一番下に二段目から飛び降りる。
さっき見た方向へ向かう。
遊佐「にしても」
もう一度少し遠くなった神社を見つめる。
遊佐「ぼろかったなぁ」

急いでとりあえず何とか時間内に到着した。
遊佐「すいません」
俺は店に入るなり謝った。
店長「やぁ、来たね。しょうがないさ。まだ道わからないんだろう?」
遊佐「まぁ、分かる道を通ればよかったんですが……」
店長「分からない道を行くのもまた楽しいもんだよね」
遊佐「確かに、そうですね」
本当にそう思う。
店長「で、霞ちゃんの様子は?」
遊佐「電話で話したとおり、今は寝ていると思います」
店長「そうか……。無理が祟ったんだなぁ」
店長が少し考え込む。
店長「気を取り直して……。じゃ、頼むよ」
遊佐「はい、お願いします」
今は、気にしない……ってことも出来ないけどバイトに集中しないと。
よし、やらないと!
俺は気合を入れて服を着替えた。
遊佐「いや、気合を入れて着替える意味あるのかな」
まぁ、要は気の持ちようだ。

店長「それにしても」
遊佐「今日も忙しかったですね……」
最近ずっと二人でやってるからな……。
遊佐「でも段々慣れてきました」
店長「ははは、それは助かるよ」
助かるように力にならないといけないんだよな。
今度は俺が過労で……。
遊佐「無いな」
こんだけ毎日気楽に暮らしてるんだ。
俺と霞は……多分違う。
店長「ん?」
遊佐「いや、何でも無いです」
俺は立ち上がる。
遊佐「掃除しますね」
店長「そうしようか」
店長も立ち上がる。
店長「明日は私も見舞いに行くよ。一緒に行くかい?」
遊佐「あー、朝ですか?」
店長「いや、朝は用事があるから昼かな」
店長が天井を見ながら何かを思い出す仕草をする。
遊佐「うーん、それじゃあ一緒に行きます」
少し俺も考えて答える。別に問題はない。
店長「わかった、それじゃあここに十二時半ってところかな」
遊佐「わかりました」

店長「それじゃあ、また明日」
遊佐「はい」
店の前でいつものやりとり。
また明日は今回はちょっと違うけど。
俺はまたいつもの道を通る。
遊佐「……」
物寂しい帰り道になってしまった。
遊佐「楽しみにしてるからな……」
今日はゆっくり歩いて帰った。
最終更新:2007年03月21日 01:33