約束通りに生徒会室へ。
遊佐「こんにちはーっす」
おりょ?
生徒A「はい?」
遊佐「会長さんは?」
生徒A「今はいませんね」
生徒B「あ、もしかしたらあそこじゃない?」
生徒A「あー、そうかも」
遊佐「あそこって?」
尋ねると一瞬二人は困った顔をする。
生徒A「えっと……」
甲賀「おやー?」
生徒B「あ、会長」
甲賀「やーやー遊佐君」
遊佐「どうも」
弓削「こんにちは」
後ろに二人の姿。
遊佐「手伝いにきましたよ」
甲賀「本当!?」
遊佐「本当です」
甲賀「やった!」
となりでは弓削さんが頭を下げていた。
遊佐「で?」
甲賀「ん?」
遊佐「何を手伝えばいいんですか?」
甲賀「梨香、あれを」
弓削「はい」
弓削さんから冊子を手渡される。そして表紙を開くと地図がでる。
弓削「ここの、この倉庫から色々運び出して欲しい物があるんです」
指さされた場所はグランドの隣の校舎。
遊佐「うんうん」
弓削「入って左手に【バリスタ】って書いてある箱がいくつも置いてあるんです」
甲賀「簡単に言えばそれをここに運び出してほしいんだ」
甲賀先輩がとんっと地図に指さす。
遊佐「俺一人ですか?」
甲賀「うん」
遊佐「あっさり!?」
弓削「すいません、今日は会議があって生徒会のメンバーは全員出席なんです」
遊佐「はー、行けばわかりますか?」
甲賀「わかるわかる」
遊佐「そうですか……」
………………。
本当に来てみたものの、ごちゃごちゃしてんなぁ。
しかも例の【バリスタ】って書いてある箱がめちゃくちゃあるんですが。
遊佐「これか」
確かに来ればわかったものの。
遊佐「……多すぎだろ」
とりあえず一番手前のを持ち上げて……。
遊佐「……おっおも」
中なにが入ってんだ……?
と、とにかく運んでしまおう。
遊佐「はぁ……はぁ」
がちゃん!!
ふぅ、1つ目終了。
遊佐「さて、次いくか」
ふと、何かを感じで校舎を見上げる。
遊佐「あ」
甲賀先輩が昨日のあの部屋の窓から手を振っていた。
遊佐「……」
軽く手を上げて返事をした。
さて、次々やるか。
…………。
遊佐「次はこいつを運ぶか」
がさっ。
遊佐「へ?」
何か奥から物音が。
遊佐「……」
とりあえず、気にしないことにして箱を持ち上げた。
遊佐「……」
2つ目も終了。
さら倉庫へ戻ってきた……が!
遊佐「うぉおお?」
謎の生物襲来かっ!?
運ぶべき箱の上に何かいる!
遊佐「爬虫類!?」
遊佐「いや、あれだぜ? イモリとかってレベルじゃねえぜ?」
結構でかい。体長は50cmくらいか?(推測)
??「君は誰に話しかけているんだ? しかもイモリは爬虫類じゃない」
遊佐「じゃあ何類なんですか」
??「イモリは両生類だ」
遊佐「なるほど……って誰?」
振り返るとそこには体操服姿の女の子が立っていた。
??「まったく。ほらミカン」
そのミカンと呼ばれた生物が女の子に飛びついた。
??「勝手にどこかにいくなと言っているのに」
それを肩に乗せる。
??「すまなかった。迷惑をかけた」
遊佐「いえ……」
??「それじゃあ、私は部活があるのでこれで」
そのまま女の子は去っていってしまった。
遊佐「何だったんだろう……?」
大人っぽい子だったな……。そして爬虫類を肩に乗せて……。
遊佐「……それよりあれは何?」
……。
遊佐「……仕事するか」
思い出したように仕事を再開した。
遊佐「そういえば……」
ヤモリって何類なんだろう……?
そんな無駄なことに脳みその一部を使用しつつ箱を運んでいった。
遊佐「あちぃー」
汗をぬぐいながら運んでいく。
途中まで箱を数えてたけどやめた。疲れが増すだけに感じた。
空が赤くなり始めていた。
遊佐「そういえば……」
あの爬虫類と女の子を思い出した。
部活といっていた。そして体操服。グラウンドで部活でもしているんだろうか?
グラウンドを見渡した。
そしてぱっと目に入ったのは。
夕日を背に、空へ飛び出す……人の姿。
それから一本の長い影が地面伸びている。
どんどんと上っていき一本の長い影が離れた。
それと同時に人の姿が体を上に捻り、落ちていく……。
遊佐「すげぇ……」
それは、棒高飛びだった。
遠めだから自信ないけど、さっきのあの人だ。
遊佐「陸上だったのか」
マットから起きると棒を拾い上げこちらへ歩いていくる。
??「ん?」
遊佐「あ、ども」
なんとなく、頭を下げてしまった。
??「さっきの君か」
遊佐「棒高跳び、上手なんだね」
??「……ああ。まあな」
あんまり、その反応はうれしそうなものではなかった。
??「君はさっきから箱を運び出しているようだな。生徒会?」
遊佐「いえ、その手伝いなんだけど」
??「そうか。大方会長のやらせてることなんだろうけど」
遊佐「あはは……」
まぁ、半分は正解です。
??「君は二年だな」
遊佐「はい」
??「どうりで見覚えがないと思った。私は三年の村崎だ」
遊佐「あ! すいません。先輩」
村崎「気にしなくていい」
村崎先輩が微笑んでくれる。
遊佐「そうですか。俺の名前は遊佐って言います」
自己紹介で始まる。それは人間関係。
遊佐「先輩が見たことないのは、最近俺が転入してきたからですよきっと」
村崎「ほう、転入か。それは大変だな」
遊佐「そうですね。急なことでしたし」
村崎「ま、がんばれ。それじゃ私はこれで」
遊佐「はい、お疲れ様です」
なんという自然な会話であろうか……。こちらに引け目を感じさせないというか。
紳士的だ。
あ、さっきの爬虫類のこと聞けばよかった。
遊佐「……さて、俺もがんばろうか」
後もう少しで全部運びだせそうだからな。
………………。
遊佐「おっしゃー!」
全部運び出したぜ。数えてみるとすべてで32箱あった。
考えてみれば不思議なことがある。
これをもし二人で運び出せば俺は半分の16で済んだはずなのだ。
つまり一人で事をせねばならなかったから2倍の32になってしまったんだ。
いやでももとが32だから2倍っていう表現も変だな?
遊佐「別に不思議なことでもなんでもなかった」
どうやら、まだ無駄な思考に脳みその一部を使用してしまったようだ。
やるべき仕事は終わったが。さてどうしようか。
甲賀「いやぁ、おつかれー」
すると背後に甲賀先輩が。
遊佐「気配がないのは怖いんですが……」
ぜんぜん気づかなかった。
甲賀「よくこんなに運び出したねー」
遊佐「運べっていったのは先輩ですよ」
甲賀「あはは、そりゃそうか」
甲賀「ありがとうね」
……。
遊佐「どういたしまして」
つい顔が綻んでしまった。
遊佐「それで」
甲賀「ん?」
遊佐「明日も手伝ったほうでいいんですか?」
何かが清々しくって、そう言った。
甲賀「できれば手伝ってほしいな」
遊佐「わかりました、明日も顔だしますね」
甲賀「それじゃあ今日はお疲れ様!
遊佐「はい、お疲れ様でした」
最終更新:2007年09月07日 19:54