き~んこ~んか~ん。
終業のチャイムが鳴り響く。
次の授業が終わったら昼飯だな。
よし。体力温存のため寝よう。

中島「よう」
遊佐「誰?」
中島「ひでぇっ!」
遊佐「冗談だ。どうした?」
中島「最近出番が無かったから本気で忘れたのかと思ったぞ」
遊佐「安心しろ。俺もお前の存在自体忘れてた」
中島「友達甲斐ねー奴だなオイ」
遊佐「で、何か用か? 俺は寝る予定だが」
中島「あぁ、何か聖が大人しいから、何かあったのかなと思って」
遊佐「聖が大人しいのと俺に何の関係があるんだよ」
中島「お前がましろちゃんと話してて、割り込まなかったから聞いてるんだ」
遊佐「へ? ああ、そういえば」

この前のアレが効いたか。

中島「何か思い当たる事でもあんの?」
遊佐「俺とましろちゃんの仲は聖公認になったと言う事じゃないか?」
中島「おま……」

クラスの半分くらいから冷たい殺気を感じる。
もう半分はいつもの冗談だと流したのだろう。

遊佐「信じられないならましろちゃんに聞いてみるといいんじゃね」
中島「……お前、勇気あるな」
遊佐「は?」

中島がぐっと顔を近づけてくる。

遊佐「顔が近いぞ」
中島「近づけたんだ。っとそうじゃなくてだな」
遊佐「なんだ?」
中島「お前クラスでハブられても知らんぞ?」

小声で警告してくれるのはありがたいんだが、顔が近すぎる。
息がかかって気持ち悪いじゃねーか。

遊佐「別に独占するわけじゃないし、そんな大事か?」
中島「クラス中で牽制しあってるから、男子でましろちゃんのお友達になれるやつは今まで居なかったんだよ」
遊佐「聖のディフェンスのせいだけじゃなかったのか?」
中島「まあ、正直それが一番でかいのは否定しない」
中島「だが、それは置いといてお前は他を出し抜いたって図になるわけだ」
遊佐「なんか嫌な話だな」
中島「このままだとお前は孤立無援でフルボッコだ。ここまでは良いな?」
遊佐「あ、ああ」
中島「そこで、だ」
遊佐「なんだ?」
中島「俺もましろちゃんのお友達にすれば万事解決だ!」
遊佐「あー。言いたい事は分かったが」

結局のところ、自分がましろちゃんと仲良くしたいだけなのな。

遊佐「そういうのは自分で何とかしろよ」
中島「聖のディフェンスが怖くて近づけないんだよ!」
遊佐「胸を張って言うなよ」

後、もう内緒話になってないぞ。

中島「という訳で、俺をましろちゃんの友達の友達から、正式な友達にランクアップさせろ!」
遊佐「えー……めんどくさい」
中島「泣くぞコラ」

本気で涙目で言うなよ……。

遊佐「分かった。分かったよ」
中島「おお。ありがとう心の友よ」

その手のセリフは大抵信じられない奴が言うもんだが……。
まあ、いいか。

遊佐「ましろちゃ~ん」
ましろ「どうかした?」

きょとんとした表情のましろちゃん。
丁度どこかに出かけていたらしい。
良かったな。中島。
今の情けない会話聞かれてなくて。

遊佐「中島がましろちゃんと友達になりたいそうだ」
ましろ「え?」
遊佐「嫌なら嫌とはっきり言って良いぞ」
ましろ「え? いや、別に嫌なわけじゃないけど……」
遊佐「無理をしなくても良い。自分に正直にな」
中島「お前は俺をましろちゃんの友達にする気ないのか?」
遊佐「何事も無理強いは良くないだろ」
中島「お前は逆に無理強いしてるように見えるんだが」
遊佐「まあまあ」
中島「まあまあ、じゃねえよ」

あ、いじけだした。

遊佐「というわけなんだけどどうする?」
ましろ「別に構わないけど……」
遊佐「だってよ。良かったな」
中島「ほんとに!?」
ましろ「う、うん」

あんまり詰め寄るなよ。ましろちゃんひいてるぞ。

中島「よっしゃぁ!」

威勢よくガッツポーズを取る中島。
そのポーズのまま、横に吹っ飛んでいった。

ましろ「ひ、聖ちゃん?」
聖「私は認めん!」
遊佐「今回はちょっと登場遅めだったな。トイレか?」
聖「やかましいっ」

すぱーんっ。
俺も殴られた。

遊佐「俺はてっきり中島が相談を持ちかけた辺りで割り込んでくると思ってたぞ?」
聖「私が守る対象はましろであって、お前の周りの行動なんぞいちいち見てないぞ」
遊佐「それはそれで何と言うか潔いな」
聖「大体お前の事自体私は認めていないんだからな!」
遊佐「それはどうでも良いとして」
聖「どうでも良くない!」
遊佐「じゃあ、お前の大事なましろちゃんの方を良く見てみる事だ」

その頃のましろちゃんは、吹っ飛ばされてボロボロになった中島を心配そうに見ていた。

ましろ「な、中島君。大丈夫?」
中島「い、いてて……。遊佐はこれを耐えてたのか……」
ましろ「遊佐君は急所狙われてたと思うけど……」

俺、急所狙われてたんだ。
今まで良く生きてたなぁ。
あ、ましろちゃんが中島に手を差し伸べてる。

中島「ありがと。ましろちゃ」
聖「ましろに触るなぁぁぁぁ!」
中島「ぷぎゅるぁ!?」

聖に蹴っ飛ばされてゴム鞠のように飛んでいく中島。

遊佐「相変わらず手加減無しだな」
聖「当たり前だ」
ましろ「大変、聖ちゃん。中島君息してないよ」
聖「この程度で情けない男だな」

ため息一つ吐いて、聖は中島の背中を勢い良く踏んだ。

中島「ぐふぅっ」
遊佐「あ、生き返った」
中島「お花畑で知らないじーちゃんが手を振ってたぜ」
ましろ「あ、あはは……」
聖「まったく、遊佐は何でこう面倒な事を増やしてくれるんだ?」
遊佐「いやぁ。それほどでも」
聖「褒めてないわぁぁぁぁぁ!」

すくい上げるようなハイキック。
おお、俺浮いてる。

遊佐「痛いだろうが」
ましろ「全然痛そうじゃないけど……」
遊佐「まあ、慣れたし」

実際ちょっとクラクラしてるけど。

中島「意外とすごい奴だったんだな。お前」
遊佐「変な感心するな」
聖「くっ、いつか息の根を止めてやる……」

物騒な事言ってる聖は置いとこう。

遊佐「とりあえず、お前も慣れたらましろちゃんと普通に会話できると思うぞ」
中島「道のりは険しいな」
遊佐「がんばれ」
ましろ「えと、話が良く見えないんだけど……」
遊佐「今回ましろちゃんは置いてけぼりだな。かわいそうだからなでなでしてあげよう」
ましろ「えええ?」

驚き戸惑っているましろちゃんの頭に手を伸ばす。

聖「させるかぁぁぁっ!」

キュピーン!

遊佐「見える!」

再び飛んできたハイキックを思いっきり後ろに跳んで避ける。

聖「ばかなっ!?」
遊佐「いや、このパターン繰り返しすぎだろ。普通避けれるようにもなるって」

まあ、今回は避けるためにわざわざ行動を取ったのだが。

中島「あの聖の攻撃がかわされる光景を見れるとはっ」

中島、お前もノリいいな。

ましろ「わたしもはじめて見たよ」
遊佐「え? まじで?」
ましろ「うん。不意打ちハイキックを避けられるのは、甲賀先輩くらいって言われてるよ」
遊佐「そ、そうなのか」
聖「ふ、ふふふ。遊佐、お前は私を怒らせた」
遊佐「え?」

妖しく笑いながら、どこからか竹刀を取り出した。

遊佐「お前、そんなもんどこから……」
聖「いくぞ……ボーパルブレード!」

お? おおお?

ましろ「聖ちゃんが必殺技を……」
中島「認めたのか……『強敵』と書いて『とも』と」
聖「つまらぬものを斬ってしまった」
中島「おーい。遊佐。生きてるか~?」
ましろ「完全に白目むいてるね……息はしてるけど」
中島「じゃあ、ほっといても大丈夫か」
ましろ「保健室とかに運んだほうが……」
中島「つっても人一人運ぶのは結構しんどいし」
ましろ「わたしも手伝うよ」
中島「あー。いや。そうなったら今度こそ遊佐が死ぬと思う」
聖「放っておけ。どうせ腹が減ったら目を覚ますだろう」
中島「昼休みに起きなかったらメシ終わってから起こすか」
聖「む、それは良い考えだ」
ましろ「二人とも、ちょっとひどい……」
中島「大丈夫。一食くらい抜いても死なないって」
聖「遊佐は頑丈だしな」
ましろ「でも……」
教師「おい。お前ら席につけ授業始めるぞ」
中島「あ、やばっ」
教師「お? 遊佐どうした?」
遊佐「…………」
教師「まあ、いいか」

結局、俺は昼休み半ば頃に目を覚ました。
最終更新:2008年04月01日 02:00