遊佐「おはよう」
ましろ「おはよう」

週明けの教室。
割りと早めに登校してみたのだが、教室の生徒はまばらだった。

遊佐「中島と杏はともかく、聖が居ないのが意外だな」
ましろ「ああ、聖ちゃんなら今日は部活に出てるよ?」
遊佐「ほうほう」

そういえば一応あいつ部活やってたんだったなぁ。
まあ、どうでもいいけど。

ましろ「あ、そうだ」
遊佐「何?」
ましろ「実はね」

ちょいちょいと手招きされて、ましろちゃんに耳を寄せる。

ましろ「わたしの計画も挫折した事だし、聖ちゃんを回収しようかと思ってるんだけど」
遊佐「とりあえず突っ込みいれておくけど、回収って妙な言い回しだね」
ましろ「まあ、それはおいといて、このまま聖ちゃんだけ除け者にしておくのはかわいそうだし」
遊佐「まあ、確かに」
ましろ「で、そうすると自然に問題が発生しちゃうわけだけど……」
遊佐「問題?」

はて?

ましろ「うん。それを解消するのに手伝ってもらえるかな?」
遊佐「まあ、構わないけど?」

問題って何だろう?

ましろ「じゃあ、一限目が終わったら、西校舎2回の通用門方向にある端っこの教室に連れてきてね」
遊佐「凄く具体的な場所だけど、屋上とかじゃダメなの?」
ましろ「うん。ここじゃないとダメ」
遊佐「分かった」
ましろ「呼び出す内容は……うーん。わたしが仲直りの話したがってる辺りで」
遊佐「りょーか~い」
ましろ「後、お手洗いとか全部済ませるように言っておいてね」
遊佐「らじゃー」
ましろ「それじゃ準備とかしてくるよ」
遊佐「いってらっしゃい」

ましろちゃんがとてとてと出て行くと、入れ替わりで聖が入ってきた。

遊佐「おはよう」
聖「あ。おはようって、遊佐?」

出て行ったましろちゃんに気を取られて俺に気づいてなかったらしい。
薄情な奴め。

聖「珍しいな。お前がこんな早くに」
遊佐「まあ、そう言う事もたまにはある。褒めて良いぞ」
聖「はいはい」

肩をすくめて席につこうとする聖。

遊佐「あ、そうだ」
聖「なんだ?」
遊佐「昨日はありがとな」
聖「ん?」
遊佐「ほら、デートの時のことだ」

闇討ちを防いでくれたのは多分聖だろう。

聖「ああ、気にするな。本当はお前を監視してたんだから」
遊佐「俺かよ!」
聖「当たり前だ。思ったより健全な交際でほっとしたが」
遊佐「俺のイメージどうなってんだよ」
聖「聞きたいか?」

…………。

遊佐「いや。良い。聞いたら多分泣きたくなるだろうから」
聖「そうか」
遊佐「ともかく、ありがとうな。音は聞こえたんだが、動けなかった」
聖「問題ない。しかし、今度からあの程度の球は防げよ」
遊佐「いやぁ。不意打ちだったし」

そこまで俺は武術の心得なんかないぜ!
威張れる事でもないが。

遊佐「あれってやっぱり、ましろちゃんのファンの群れ?」
聖「ああ、鳥山の、えーっと……ましろを何とかの会だな」
遊佐「ああ、あの人もしつこいな」
聖「しかし、意外と今回の目的はお茶目な物だったようだ」
遊佐「というと?」
聖「暴力じゃなくて、寝込んでるお前に落書きするつもりだったらしい」
遊佐「急に子供の悪戯レベルまで下がってるな」
聖「まあな。それくらいならやらせてもよかったかな? とか思っている」
遊佐「でも、弁解がそれで本当は違う可能性もあるんじゃね?」
聖「いや、私が止めに入った時、全員油性のサインペン持ってたが?」

……それはそれで怖い光景だな。

聖「多分だが、甲賀先輩と先生方の圧力があるんだろう」
遊佐「なるほど」
聖「だから、悪戯レベルはあるだろうが、暴力系統はもう無いと思うぞ」
遊佐「それはそれでたちが悪いと思うんだが」
聖「まあ、冗談で済むレベルだとは思う。鳥山は3年で内申とかもあるし」
遊佐「そういうの気にするなら、真面目に勉強しろと言いたいところだが」
聖「鳥山は意外だが成績良いから大丈夫なんじゃないか?」
遊佐「そうなのか?」
聖「有象無象のましろファンを纏め、闇売買とかも制圧してるから、意外とあいつは凄いみたいだ」
遊佐「闇売買って何だ?」
聖「ましろ隠し撮り生写真とかの売買ルートだな」
遊佐「そんなもんあったのか」
聖「ああ、わたしも良く利用してたんだが、鳥山に潰されてな」
遊佐「利用するなよ!?」
聖「何故だ?」
遊佐「不思議そうに聞くな!」

つーかまさか……

遊佐「妙に詳しいと思ったら、それが原因で調べたのか?」
聖「うむ、そうだ」

自信満々に答えるなよ……。

遊佐「お前も鳥山も、その能力をもっと他に活かせばいいのに……」

凄い人間になれたかもしれないのに……。

聖「ことわざにもあるだろう? 好きこそ物の上手なれ。と」
遊佐「微妙に何か違う気がするけど、もういい……」

ましろちゃん関連に関しての情熱は凄いな。
無駄なくらい。

遊佐「あ、そうそう」
聖「何だ?」
遊佐「ましろちゃんが仲直りの話をしたいらしいぞ」
聖「本当か!?」

近い! 顔が近い!

遊佐「で、場所指定されたから後で連れて来る様に言われた」

ずりずり後ろに下がる俺。

聖「ああ、私ならいつでもましろを歓迎すると言うのに……」

何かうっとりしながら言うなよ。
キモイぞ?

聖「キモイ言うな」

心読むな。

聖「というか、私とましろの仲直りに、何でお前が必要なんだ?」
遊佐「知らん」
聖「場所を教えてくれれば一人で行くぞ」
遊佐「連れてこいと言われてるんだから仕方ないだろ」
聖「ちっ、気のきかん奴め」

俺の責任かよ。

遊佐「で、次の休憩時間らしい」
聖「場所は?」
遊佐「お前、教えたら一人で行くつもりだろ」
聖「ちっ」

何か問題解決に必要らしいから、一人で行かせるわけにも行かないな。

遊佐「あー。そういえば」
聖「まだ何かあるのか?」
遊佐「何か、事前にトイレとか済ませておくようにって言ってたぞ?」
聖「トイレ?」
遊佐「うん」
聖「……といれ?」

何か考え込んでる。
まあ、俺にも意図は良く分からないわけだが。
聖の顔が赤くなった。
……なんで?
何か視線がはるか彼方に飛んでいった。
うーん。空は雲くらいしかないぞ?
聖がにへらって笑った。
何なんだ? 結構長いぞ?
よだれまで垂らし出した。
怖くなってきたんだが……。
…………。
ひょっとして考え事から妄想に切り替わってる?

聖「はっ!」
遊佐「おかえり」

やっと現実に戻ってきたか。

聖「今のは中々良かった。マイメモリーに保存だ」
遊佐「まだ、現実に戻りきってないのな」
聖「はっはっはっ。仲直りか。うんうん」
遊佐「何かテンションおかしいぞ?」
聖「そうかそうか、ちゃんと準備しとかないとな♪」
遊佐「おーい……?」

るんるんと席に戻っていく聖。
俺の声聞こえてねぇな。

遊佐「ま、いいか」

とりあえず聖の妄想が実現する事はないし。
授業もうすぐだし。

…………
……

授業終了っと。

聖「遊佐!」
遊佐「ん?」
聖「さあ! 案内しろ!」
遊佐「テンションたけーなオイ」

前にましろちゃん怖いとか言ってた癖に。

遊佐「そういえば、トイレとか済んだのか?」
聖「むっ」

忘れてたのか。

聖「待ってろ。すぐ戻るからな!」
遊佐「何なら女子便所の前で待ってても良いが」
聖「殺すぞ♪」
遊佐「すんません」

笑顔でドス効いた声出すなよ。

聖「じゃ、いってくる!!!!!!111」
遊佐「おう、いってらっしゃい」

まあ、その間に次の授業の準備でも。
んーっと、教科書は~っと。

聖「いってきた!!!1!!」
遊佐「はやっ!?」

30秒経ってない気がするんだが。

聖「さあ、行こうじゃないか」
遊佐「ノリノリっすね」
聖「良いから案内しろよ。このタコスが♪」
遊佐「すんません」

聖のキャラが激しく変わってる。
どうしよう?
…………正直怖いです。

遊佐「という訳でついたわけだが」
聖「ここは使われていない西校舎ヒミツの教室だな」
遊佐「ヒミツなのか?」
聖「ヒミツなんだ」
遊佐「どの辺が?」
聖「ヒミツだ」

謎の多い学校だな。

遊佐「まあ、入るか」

扉を開けようと手を伸ばした瞬間。

ガラっ! どんっ! どがっしゃぁぁぁ!

遊佐「痛い……」

突然扉が開いて何かが飛び出してきた。

聖「大丈夫か? って、杏?」

若干チカチカする視界には、俺に馬乗りになって頭を押さえている杏が居た。

ぱしゃっ。

なんか今度はフラッシュが飛んで来た。

ましろ「聖ちゃん。杏ちゃんを捕まえてね」
聖「へ? あ、うん?」

きょとんとしながら杏の腕を掴む聖。

ましろ「じゃあ、みんな教室はいってね~」

杏を立ち上がらせて教室に押し込むましろちゃん。
展開の早さにみんなきょとんとしている気がする。

ましろ「遊佐君も、こっちこっち」
遊佐「あ、うん」

教室の中には何も無かった。
机も椅子もない。
けど、それだけで普通の教室だなぁ。

ましろ「うん。これで揃ったね」

満足げに頷くましろちゃん。
何故かその手には、写真部とテープの張られたカメラがあった。
教室の向かって奥の方に聖と杏、少し離れて俺とましろちゃん。
何となく意図的なものを感じる俺。

ましろ「という訳で今日の議題を改めて説明するね」

何となく楽しそうに言うましろちゃん。
だけど、いやな予感しかしないのは何でなんだろう?

ましろ「えー。今回、聖ちゃんと遊佐君によって、わたしの計画は頓挫してしまいました」
ましろ「大変残念な事です」

うんうんと頷きながら、でもやっぱり嬉しそうに言う。

ましろ「という訳で計画を諦め、新たな計画に乗り出すわけです」
遊佐「せんせー質問」
ましろ「はい。遊佐君」
遊佐「何でその喋り方なんですか?」
ましろ「何となく」
遊佐「さいですか……」
ましろ「で、計画ですが、この計画を行なう理由を先に説明しておきます」
遊佐「ふむふむ」
ましろ「頓挫した計画と現状から、聖ちゃんをまっしーと愉快な仲間達に再編する事になります」

自分でまっしーって言っちゃったよ。

ましろ「しかし、そうすると一つ問題が発生するわけですよ」
聖「問題?」

あ、やっと聖が喋った。

ましろ「うん。大きな問題だよ」
聖「私は何があろうとましろと仲直りするのに躊躇ったりしないぞ?」
ましろ「うん。聖ちゃんはそう言ってくれると分かってたよ」
聖「じゃあ、何が問題なんだ?」

うむ。俺も疑問なんだが。

杏「この状況見て気づかない?」
聖「この状況?」

うーんと。
この部屋に居るのは、俺とましろちゃんと聖と杏。
ん?
そういえば何で杏いるんだ?

聖「……まさか」
遊佐「ん? 何か分かったのか?」

まだ分かってない俺に、杏がため息はいてる。

ましろ「うん。聖ちゃんも分かったみたいだね」
遊佐「分かってないの俺だけ?」
ましろ「と、言うわけで」

え? スルー?

ましろ「杏ちゃんに先に言っておくけど、また逃げようとしたら、さっき撮った写真にタイトルつけてばら撒くよ」
杏「さっき?」



ましろ「タイトル『遊佐を襲う不良少女』」
杏「!?」

そういえば、さっきのフラッシュ。

ましろ「念のために用意しておいたけど、ばっちり役に立ったね」
遊佐「さっきってひょっとして扉で衝突した時のあれ?」
ましろ「そうだよ。絵柄だけ抜き出したら、まさしくタイトル通り!」

ばーんと自信満々に答えるましろちゃん。

ましろ「と、言うわけで」
遊佐「ふむふむ」
ましろ「これから杏ちゃんと聖ちゃんに胸のうちを全て話してもらいます」
遊佐「へ?」

杏と聖?

ましろ「言ったよ? 私は『仲直りについて話がしたい』って」
遊佐「あー。じゃあ、そこの主語って」
ましろ「杏ちゃんと聖ちゃん」
遊佐「なるほど……」

綺麗にだまされた。
いや、ましろちゃんは嘘ついてないけど。

ましろ「そしたら杏ちゃんに感づかれて、危うく逃げられるところだったよ」
杏「…………」

杏はぶすっとした様子だ。
まあ、だろうな。
聖もぽかんとしている。

ましろ「んじゃ、これからしばらくこの部屋で二人で話しててね」

ましろちゃんに押し出されるように教室から出て行く俺。

ましろ「お昼休みには迎えに来るからね」
聖「ちょっ。ましろっ!?」

ばたんっ がちゃり

丁寧にカギまでかけるましろちゃん。

聖「ましろ! 待ってくれ!」

聖が中で騒いでるけど、ましろちゃんは気にせず教室の中に向けて声をかける。

ましろ「話し合いが終わって姉妹愛を見せてくれるまでは出さないからね~」
遊佐「ひどっ!?」
ましろ「先生方への根回しも終わってるから、騒いでも誰も出してくれないからね~」
遊佐「マジデ!?」
ましろ「マジだよ♪」

ましろちゃん。恐るべし……。

ましろ「一限目前に東奔西走したからね」
遊佐「なるほど」
ましろ「先生の朝礼に割り込んで事情を説明したり大変だったよ」

えっへん。と胸を張る。

遊佐「ところで、昼休みには迎えにって言ってたけど、3時間近くあのまま?」
ましろ「そうだよ。だからお手洗いとか先に済ませておいて貰ったんだ」
遊佐「な、なるほど……」

本気のましろちゃんは……やはり怖いかもしれない。

遊佐「でも、3時間も閉じ込める必要あるの?」
ましろ「うーん。3時間で足りるかも不安なんだけどね」
遊佐「へ?」
ましろ「ダメだったらお昼ご飯差し入れしてさらに続行になるよ」
遊佐「そんなに?」
ましろ「だって、簡単に仲良しになれるなら、もうとっくになってると思うし」
遊佐「まあ、そうだけど……」
ましろ「二人きりで閉じ込めておけば、ずっと黙ってもいられないから、その内なんとかなると思う」
遊佐「ましろちゃんにしては弱気だね」
ましろ「まあ、こればっかりは当人達次第だしねぇ」

まあ、確かにそうだ。
聖、杏。意地張らずに打ち解けないと今日一日出れないぞ……。

鳥山「遊佐。ここに居たか」
遊佐「あ、いつぞやの」
鳥山「おお、ましろさまも一緒とは」

鳥山がましろちゃんの前に跪く。

鳥山「お目にかかれて光栄です。私鳥山と申します」
ましろ「あはは……」

ましろちゃんが困っている。
そりゃそうだろうなぁ。

遊佐「ところで何か用でも?」
鳥山「おっといかん。そうだった」

意外と普通の人かもしれない。

鳥山「遊佐、気をつけろ」
遊佐「な、なにを?」
鳥山「うちの会から造反者が出ている」
遊佐「会っつーと……」
鳥山「ましろちゃんを遠くから見守って我慢しようの会だ」
遊佐「ましろちゃんの前で話して良いことなのか?」
鳥山「ましろ様にも危険が迫るやもしれんのだ」
ましろ「へ?」
鳥山「うちから出て行った者達だが、少々たちが悪い」
遊佐「良くそんなのまとめてれたな」
鳥山「受験勉強にかまけていたらこのざまさ」
遊佐「で?」
鳥山「そいつらが集まって、近々なにやら計画を立てているらしい」
遊佐「ほうほう」
鳥山「主な趣旨としては『遊佐許すまじ』『もう遠くからは嫌だ』といったところだ」
遊佐「それはまた何と分かりやすい」
鳥山「というわけで忠告はした、ましろ様の護衛もいくつかつけておく、遠くから」
遊佐「やっぱ遠いのか」
鳥山「お前にはつけてないから、がんばれ」
遊佐「やっぱり?」
鳥山「当たり前だ。じゃあな」

無駄にかっこよく鳥山は去っていった。

ましろ「遊佐君も大変だね」
遊佐「ましろちゃんも危ないみたいだよ?」
ましろ「うーん。どうしようか?」
遊佐「とりあえず一人にならないように気をつけよう」
ましろ「そうだねぇ」
遊佐「さて、それじゃ授業を受けに戻ろうか?」
ましろ「うん。そうしよ」

…………
……

今日は色々忙しいなぁ。
と、昼休み、二人を閉じ込めてある教室の前に立って思う。
ちなみに扉には『聖&杏仲良し計画ちう! 邪魔しちゃダメ』と、ハートマーク付きで張り紙が張ってあった。

ましろ「じゃあ、あけるね」
遊佐「うん」

ましろちゃんがこそこそと、音が立たないように鍵を開ける。

ましろ「静かにね?」
遊佐「らじゃ」

そーっと、扉を少し開ける。
スキマから二人並んで中を覗き込む。
これ、誰かに見られたら間違いなく通報されるな。
それはともかく、中の様子は、と。
静かだ。
逃げたかな?
あ、聖居た。
杏もちょっと遠いけどいる。
うーん。しんみりというか何と言うか。
まあ、険悪な雰囲気というわけではないから、良いのか?

聖「もう昼休みだな」
杏「……うん」
聖「ましろ達遅いな」
杏「……そうね」

うーん。普通の会話だ。
作戦成功かどうなのか良く分からないなぁ。

がらっ

ましろ「じゃーん!」
遊佐「あ」

急にあけられて前のめりに倒れる俺。

聖「ましろぉぉぉぉ!」
遊佐「ぐぇっ」

そんな俺を踏みつけてましろちゃんに近づく聖。
何とか上を見ると聖のパンツ見えてるんですが……。
こいつ、素で気づいてねぇな……。

杏「…………」
聖「何だ? 杏?」

ちょいちょいと聖をつつく杏。

杏「踏んでる」
聖「何を?」

言われて足元を見る聖。

遊佐「やぁ」
聖「遊佐? そんなところで何をしている?」
遊佐「とりあえず、どいてくれないか?」
聖「ああ、すまない」
遊佐「後、かにぱん柄の下着なんかどこで売ってたんだ?」
聖「死ね」
遊佐「ああああああああっ、体重かけるなっ、捻りくわえるなっ、そこはらめぇぇぇぇぇぇっ」
聖「死ねっ死ねっ!」

がすがすとケリというか踏み付けを繰り返す聖。
悲鳴をあげる俺をよそに、ましろちゃんは杏の手を取って喜んでいた。

ましろ「どうやらわたしの計画は上手くいったみたいだね!」
杏「ましろには敵わない。諦めてるから」

誰か止めろよ!

ましろ「あ、聖ちゃん。その辺にしとかないと遊佐君死んじゃうよ?」
聖「ましろ。こんな奴は死んでも良いんだ。いや、むしろ死ぬべき」
ましろ「あはは。目が笑ってないよ? 聖ちゃん」
遊佐「杏。たすけ……」
杏「いや」

ここには鬼しか居ないのか!?

聖「死ね! 死ね! いっぺん死んでもう一回死ね!」
遊佐「いやぁぁぁぁぁっ! おかあさぁぁぁぁぁんっ!」

再び激しく踏みつけられる俺。

ましろ「やっぱり聖ちゃんと遊佐君は仲良しだねぇ」
杏「そうね」
聖&遊佐「どこが!?」
ましろ「息もぴったりだし、やはり遊佐君と聖ちゃんをくっつけるべきだったか」
杏「そうね」
聖「勘弁してくれ。私はましろ一筋だぞ」

ぐっとましろちゃんににじり寄って、捨てられた子犬のような視線を向ける聖。
ましろちゃんは冗談半分で言ってるみたいだけど、おかげで開放された。

遊佐「死ぬかと思った」
杏「そうね」

杏。お前さっきからそれしか言ってないぞ。

遊佐「とりあえずは大団円って事でいいんかなぁ」
杏「そうね」

……杏。もう良いよ……。
最終更新:2009年02月04日 20:49