遊佐「あれ? 聖と杏は?」
ましろ「何か呼び出されたみたいだけど……」
遊佐「何か悪いことでもしたのかな」
ましろ「うーん。そんなことは無いと思うけど……」
遊佐「いやいや、きっと陰で、ん?」
何か丸いものが降ってきた。
と、思ったら視界が白く染まった。
遊佐「な、何だ!? げほっ」
ましろ「けふっけふっ」
視界は白いし鼻痛いし。
煙幕か何かか?
遊佐「げほっ何のいたずらだ!」
視界が晴れると、周囲に大量の男子生徒が集まっていた。
全員、目が血走っている……。
遊佐「な、なんだ?」
男子「うおおおお!」
一気に男子生徒たちが襲い掛かってくる……!
ましろ「な、なにこれ!?」
遊佐「とりあえず逃げよう!」
ましろちゃんの手をつかんで走り出す俺。
後ろのほうから、ずるい! とか、殺す! とか聞こえてくる。
遊佐「ま、まさか……鳥山が言っていた連中か!?」
ましろ「みたい、だね……」
まさか忠告のあったその日に来るとは……。
生徒「こっちだ! 走れ!」
前のほうから『見守る会』と書かれた腕章をつけた生徒が叫んでいる。
遊佐「すまん!」
生徒「かまうな! ここは我ら布教部隊が引き受ける!」
遊佐「よくわからんが
ありがとう!」
生徒「造反者め、見えるか? 我が神速のアンゴンが!」
布教部隊の人たちは、何かノリノリで襲い掛かってきた男子たちに攻撃を仕掛けだした。
遊佐「とりあえず逃げよう」
ましろ「異議なし!」
…………
どれくらい走り回っただろうか?
遊佐「どこか隠れられそうなところない?」
ましろ「うーん」
遊佐「あの教室は? 秘密の」
ましろ「あ、鍵まだ持ってるからいけるかも」
遊佐「じゃ、決まり」
ましろ「うん!」
…………
廊下の方からはどかどかと足音が響き渡っている。
扉はバットと黒板消しで開かないようにしておいた。
ましろちゃんと俺は、外から見えない位置に二人で隠れている。
遊佐「連中しつこいね」
ましろ「そうだねぇ」
ずーっと沈黙してたけど、さすがに疲れてきた。
ましろ「数も多いし、ちょっとどうにも出来ないね」
遊佐「バリスタの時みたいな事もできないしねぇ」
この教室には全く何もないから、プチバリケードとかも作れそうにない。
このままじゃジリ貧だな。
どうにかしないとなぁ……。
遊佐「ねえ」
ましろ「ん?」
遊佐「聖の家行った事ある?」
ましろ「あるけど、どうしたの?」
遊佐「んじゃ、良いこと考えた」
ましろ「というと?」
遊佐「まず、俺が逃げ出す」
ましろ「捕まるんじゃないかな?」
遊佐「多分ね。けど、それは問題ない」
ましろ「っていうと?」
遊佐「まあ、おそらく学校内部で捕まっちゃうだろう」
ましろ「うん」
遊佐「で、連中は俺に聞くよね」
ましろ「ああ、そっか」
全部を理解してくれたみたいだけど、一応続けよう。
遊佐「で、散々抵抗してから、俺はましろちゃんは聖の家に言った。と答える」
遊佐「連中は頭に血が上ってるから、聖の家の人が居ないといっても信じない」
遊佐「連中の人数も全部とは行かなくても、結構な数が聖の家に向かうだろうから、その間にましろちゃんは逃げる」
俺としては完璧な作戦だ。
遊佐「どうかな?」
ましろ「ん……」
ましろちゃんが考え込んでいる。
まあ、希望的観測な部分も多いから、確実とは言い切れないだろうけど。
このままだといずれ捕まるのも間違いないはずだ。
遊佐「ダメかな? 俺に他の手段は思いつかないけど」
ましろ「うー……ん」
はっきりしないな。
ましろちゃんらしくない。
遊佐「ましろちゃん?」
ましろ「確かに、遊佐君の読みどおりにはなると思う……」
遊佐「じゃあ決定だね」
ましろ「でも」
遊佐「ん?」
ましろ「捕まった遊佐君はどうなるの?」
遊佐「あー……。まあ、命は助かるんじゃない?」
軽くどころじゃなくボコボコにされそうな気はするけど。
ましろ「うー……」
遊佐「どうしたの?」
ましろ「分かってるんだよ? うん」
遊佐「ん? 何が?」
ましろ「それが一番効率的なんだろうなぁって」
遊佐「じゃ、問題ないじゃない?」
ましろ「うーん。そうなんだけど……」
遊佐「ん?」
ましろ「あー。今やっと映画のヒロインの気分に共感できたよ」
遊佐「へ?」
脈絡を感じられないセリフに、思わず間の抜けた声を出してしまう。
ましろ「ほら、アクション映画とかで良くあるじゃない? ここで待ってろ! みたいな」
遊佐「あー、あるね。主人公以外が言うと死亡フラグなやつ」
ましろ「ああいうので、いつも待ってなくて外に出ちゃうダメヒロインいるじゃない?」
遊佐「あるね。それで主人公余計ピンチになったりするやつ」
ましろ「あれの気分」
遊佐「何でまた?」
ましろ「だってほら、今そんな感じの状況じゃないかな?」
遊佐「そういえばそうか」
ましろ「ああいうヒロインとか嫌いだったから、映画苦手だったんだよね」
遊佐「そうなんだ?」
ましろ「だから、この前のデートでも料理の選んだんだよ」
遊佐「あー、なるほどね」
そうだったんだ~。
遊佐「って、ちょっとまった」
ましろ「ん?」
遊佐「こんな世間話してる場合じゃないってば」
ましろ「うーん。そうなんだけどねぇ」
遊佐「煮え切らないなぁ。どうしたの?」
ましろ「えー? 遊佐君自分で気づいてないの?」
遊佐「へ?」
ましろ「遊佐君の作戦は、遊佐君を切り捨てて現状を打開する物だよ?」
ああ、そういえばそうだったな。
ましろ「で、簡単に遊佐君を切り捨てられないで困ってるわたしに、それを選択させようとしてる訳」
遊佐「ごめん。普通に忘れてたよ」
ましろ「まあ、わたしが選べない事が分かってもらえたなら良いけど」
そうだったな。
でも、俺の事を気にかけてくれているのがちょっと嬉しい。
遊佐「じゃ、この前のルール適用させようか」
ましろ「ルール?」
遊佐「つまり、俺が決めるって事さ」
そう、俺が前にましろちゃんに言ったルールだ。
俺が言い出した作戦なんだし、俺がノーというわけも無いが。
遊佐「俺内部議会で、決議、反対0賛成100で可決。作戦を承認。と」
ましろ「だ、だめだよっ」
遊佐「ん? 何が?」
ましろ「ダメダメっ、わたしが認めないよ」
遊佐「うーん。心配してくれるのは嬉しいんだけどねぇ」
必死に止めてくれるのは想像してなかったので大変嬉しく思うぞ。
遊佐「でも、前のルールでましろちゃんの意見は参考程度だから、今回は却下します」
ましろ「ダメだってばっ」
遊佐「じゃあ、他に手段ある?」
ましろ「うっ、それは……」
遊佐「じゃ、しょうがないよね」
立ち上がろうとする俺の腰に、ましろちゃんが抱きついて止める。
危うく転ぶところだった。
ましろ「わ、わたしは認めないんだからっ」
遊佐「うーん。困ったなぁ」
ましろ「もし実行しようとしたら、大声あげるからね」
遊佐「うわ、それはダメだ」
ましろ「じゃあ、座って座って」
ぐいぐいと引っ張られてましろちゃんの横に座らせられる。
遊佐「でも、どうするの?」
ましろ「うっ」
やっぱり他に手段は無い気がするんだけどなぁ。
遊佐「ここまで引き止めてくれるなんて思ってなかったなぁ」
ましろ「うっ」
ましろちゃんが真っ赤になった。
ましろ「わたしだって、今の状態になるまで思ってなかったよ……」
遊佐「うーん。二人とも無事に脱出する手段かぁ」
何人いるのかわからないけど、何も思いつかないなぁ。
二人同時に駆け出したとしても、どちらかが捕まりそうだし。
捕まったら、ただじゃすまなそうな雰囲気がバリバリしてるし。
さすがに命までは取られない……と思いたいが……。
遊佐「ファーストキスくらいしてから死にたいなぁ」
ましろ「ふえ!?」
俺の独り言にましろちゃんが真っ赤になった。
遊佐「どしたの?」
ましろ「え? あ、いや……なんでもないよ?」
遊佐「ん?」
ましろ「なんでもないってば」
遊佐「そっか。残念」
ましろ「……残念?」
遊佐「考えてたこと一緒とかそういうの期待したから」
ましろ「多分わたしは死ぬことはないよ?」
遊佐「それもそうか」
ましろ「まあ、あまり安全は感じられないけどね」
遊佐「確かに」
ましろ「どうしてもっていうなら……してあげてもいいよ?」
遊佐「え? マジデ?」
ましろ「えっと、その……」
ましろちゃんが目を閉じる。
俺はその両肩に震える手を添えて、そっと顔を近づけ……。
甲賀「やあ、お取り込み中すまないね」
遊佐「ぶふぅっ!?」
ましろ「ここここここ甲賀先輩!?」
いつの間にか教室のど真ん中に甲賀先輩が立っていた。
遊佐「どど、どこから?」
甲賀「窓からだが」
ましろ「な、なんで?」
甲賀「今回はどうやら『話は聞かせてもらった』キャラと言う事らしい」
先輩はえっへんと胸を張りながら、わけの分からないことを言い出した。
遊佐「何でこんな所にいるんですか?」
甲賀「それは私が忍者だからだよ」
遊佐「訳が分かりません」
甲賀「まあ、それは置いといて」
ジェスチャーでわざわざ『置いといて』を強調する。
甲賀「どうやら不埒者達がかなり接近してきたようだね」
遊佐「え?」
あ、遠くで爆走する足音が聞こえてきた。
甲賀「ここが見つかるのも時間の問題だ」
遊佐「そうですね」
ましろ「甲賀先輩が助けてくれるんですか?」
ましろちゃんが期待の眼差しで先輩を見る。
甲賀「いや、私は隠れている」
遊佐「なんでやねん!」
思わず突っ込みを入れてしまった。
甲賀「うむ。良い裏拳だ。私には当たらないが」
ましろ「えっと、じゃあ、何で出てきたんですか?」
甲賀「本当はもう少し影で見てたかっ、コホン、まあ、連絡とかに手間取ってね」
出歯亀っすか……。
甲賀「一応女の子としては色々出てくる準備があるじゃないか?」
ましろ「はあ……」
遊佐「あの、危なくなったら助けてくれるんですか?」
甲賀「いや、私はほぼ最後まで隠れているが?」
ダメだこの人。早く何とかしないと……。
ましろ「じゃあ、どうすれば?」
甲賀「まあ、安心するといい。援軍は来る」
ましろ「そうなんですか?」
甲賀「と、言うわけで大船に乗ったつもりで連中を迎え撃つといいぞ」
全く安心できないんだが……。
甲賀「おっと、もう近所の教室まで来ているようだな」
確かに、爆音はだんだん近くなってきている。
甲賀「遊佐君には特別にこれを貸しておこう」
遊佐「これは……」
一度だけさわったことのある感触。
甲賀「懐かしいかな? デラックスカービンだ」
遊佐「確かに威圧には使えるかもしれませんけど……」
甲賀「では、隠れているから後は頑張るといい」
しゅたっと甲賀先輩は窓から外に出て行った。
遊佐「隠れるって、窓の外ですか……」
甲賀「武器をちゃんと装備するのを忘れないようにね」
遊佐「何のRPGですか……」
ため息を吐く俺の肩をましろちゃんがぽんぽんと叩く。
ましろ「とりあえず、窓側で急に距離がつまらないようにしておこうよ」
遊佐「あ、ああ。そうだね」
ましろちゃんもいつの間にかバットを装備していた。
バットに『であぐらちあ』と書かれていた。
これはスルーしておこう。
ましろ「来たよ」
遊佐「うん」
生徒A「居たぞ!」
生徒B「くそっ、鍵がかかってる!」
生徒A「かまうな! ぶち破れ!」
遊佐「なんて物騒な連中だ」
ましろ「ほんとにね……」
遊佐「こんなファンを持った心境は?」
ましろ「残念でならないね」
遊佐「だろうねぇ」
って、のんきに話してたら、とうとう蹴破られた。
生徒A「さあ、観念しろ」
遊佐「お前らなんでそんなに必死なんだよ」
生徒B「抜け駆けしたくせに何いってやがる!」
ましろ「わたしのために争うのはやめて!」
遊佐「ぶふぅっ」
この状況で冗談を飛ばす余裕があるのか……。
生徒A「遊佐、ましろたんを差し出せば半殺しで勘弁してやる」
スルーするのかよ。
今のは突っ込もうぜ?
遊佐「それは出来ない相談だな」
生徒B「そうか、じゃ死ね」
くっ、数が多い……。
生徒A「やっちまえ!」
がすっ
生徒B「げふっ」
??「そこまでだ!」
生徒Bが倒れたと同時に、教室に聞きなれた声が響き渡った。
遊佐「聖!? と、杏?」
聖「こら杏! 私がかっこよく登場しようとしてたのに何をする!」
杏「先手必勝」
聖「不意をつくなぞという姑息な手を使わなくても、こんな連中私一人で倒せるぞ!」
杏「卑怯万歳」
二人がそんな掛け合いをしてる間にいつの間にか包囲網が出来ていく。
鳥山「我々も居るぞ」
遊佐「鳥山! と、ましろちゃんを以下略の会!」
鳥山「略すな!」
遊佐「すまん。立ち絵がないから分からなかった」
鳥山「なくぞ?」
教室に入り込んでいた造反生徒の数、およそ20人くらい。
それより若干少ない数の生徒が、造反組を包囲するようにいつの間にか入り込んでいた。
生徒C「と、鳥山さんと無敵の貧乳だ!?」
生徒A「鳥山だと!? まさか……」
鳥山「我が武装親衛隊の事は知っているだろう。投降しろ」
生徒A「番犬部隊だと!? なんてことだ……」
何かシリアスなのかギャグなのかよく分からない空気だ。
遊佐「ねえねえ、番犬部隊ってなに?」
ましろ「さあ? 聖ちゃん知ってる?」
聖「鳥山の武装親衛隊の事だ。主に会の治安維持を行っているから番犬と呼ばれている」
遊佐「強いのか?」
聖「運動部所属とかではなく、空手やらの格闘系の部活に所属してるものばかりだ、一般生徒の数倍は強いだろうな」
遊佐「それはすごい」
遊佐「で、無敵の貧乳って何だ?」
聖「知らん」
ましろ「多分聖ちゃんの事じゃないかな?」
杏「インビンシブルノー乳、裏での通称ね」
聖「……よし、殺そう」
生徒A「ええいっ、こうなれば徹底抗戦あるのみだ!」
やけを起こして突撃する生徒たち。
聖「ましろに不埒な行いをしようとした報い、その身に受けて」
杏「死ね」
ごすっ
生徒C「げふっ」
杏の先制攻撃!
生徒Cは倒れた。
聖「私のセリフ……」
生徒A「ひるむな! 数は我々の方が多い!」
そこからは阿鼻叫喚の地獄絵図だった。
リアルスマッシュ○ラザーズと言った感じ。
甲賀「ふふふ、なかなか激しいバトルじゃないか」
遊佐「隠れてないでいい加減出てきてくださいよ」
甲賀「面倒だから嫌だ」
この先輩は……。
聖「死ねぇぇぇぇぇ!!! サベェッジ!」
鳥山「あはははは! 飛燕双脚!」
二人はピョンピョン飛びながらノリノリで技の名前とか叫んでる。
ましろ「何とかなりそうだね」
遊佐「ああ、そうだね」
何か急に室内の空気が変わって置いてけぼりな気分だけど。
ましろ「じゃあ、降りかかった火の粉、払いに行こうか?」
遊佐「え? ああ、良いかもね」
ましろ「じゃあ、行こう」
遊佐「おっけー」
俺たちも戦線に加わり、造反者達をボコボコにし始めた。
ましろ「へきさすとらいくっ!」
撲殺天使ましろちゃんの本領発揮だ。
デラックスカービンは仲間に当たりそうだから置いとこう。
甲賀「俺を使わないのかよ。寂しいじゃないか。byデラックスカービン」
遊佐「そんな事やってる暇があるなら手伝ってくださいよ」
甲賀「嫌だ」
もう良いや。
とりあえず逆襲してこよう。
…………
……
どのくらい戦ったか分からないけど、何とか終結した。
ダウンした生徒は片っ端から甲賀先輩が縄で縛っていた。
ましろ「終わった~」
遊佐「だねぇ」
甲賀「はっはっは。諸君ご苦労様」
くたくたになった俺たちの中で、一人だけ元気な人が居るけど、気にしないでおこう。
甲賀「親衛隊+αの諸君。こやつらを職員室前まで運んでくれたまえ」
鳥山「りょーかい」
聖「私はましろの傍に居たいのだが」
甲賀「異論は認めないぞ」
聖「生徒会長だからって横暴な! こらっ杏! 引っ張るな!」
何だかんだで一瞬にして、教室の中には俺とましろちゃんと甲賀先輩だけが取り残された。
甲賀「そういえば遊佐君」
遊佐「なんですか?」
甲賀「ここがヒミツの教室の理由を知っているかね?」
遊佐「いや、知らないですけど」
甲賀「じゃあ、あとは任せたぞ!」
遊佐「説明してくれるんじゃないのか!?」
ってもう窓から出て行ってるし!
ましろ「あ~」
遊佐「どうしたの?」
ましろ「ここがヒミツの教室の理由はね」
遊佐「ふむふむ」
ましろ「何が起ころうが物証が無い限り、何故か外では何事も無かった扱いになるからだよ」
遊佐「というと?」
ましろ「当人達は例外だけど、さっきの乱闘も、外ではなかった扱いになるの」
遊佐「治外法権みたいなもの?」
ましろ「まあ、そんなところ」
遊佐「極端な話、死人が出てもいいの?」
ましろ「それは死体っていう証拠が出るから……ん? どうだろう?」
遊佐「いや、否定して欲しいんだけど……」
ましろ「ともかく、ここで何が起きても外ではなかった事になるから、ヒミツなんだよ」
遊佐「へぇ。そうなんだ」
つまりここは、不思議空間なんだな。
遊佐「まあ、ともかく」
ましろ「ん?」
遊佐「疲れたね」
へたり込むように床に座る。
ましろ「今日一日でほんと疲れたね」
遊佐「正直。もう動きたくないや」
ましろ「同感」
遊佐「ましろちゃんも座ったら?」
ましろ「んー」
遊佐「どうかした?」
気になったのでましろちゃんに振り向く。
ましろ「……チュ」
…………。
……え?
ましろ「えへへ」
恥ずかしそうに視線をそらしながら、ましろちゃんが俺の横に座った。
俺は不覚にも、さっきの
不意打ちで完全に硬直していた。
えーっとその……。
さっきはましろちゃんの顔が目の前にあってだな。
んで唇になんかやわらかーい感触が。
遊佐「はっ」
今のはもしかして……。
遊佐「不意打ちはずるいってば」
ましろ「何のことかなぁ」
遊佐「良く分からなかったからもう一回」
ましろ「記憶にないなぁ」
くっ、どこまでもとぼけるかっ。
遊佐「じゃあ、俺から……」
甲賀「生徒の不順異性交遊は禁止されているぞ?」
遊佐「甲賀先輩!?」
あんたほんとにどっから出て来るんだよ。
甲賀「先生方が話を聞きたいらしい、行って来なさい」
そういうとまた窓から出て行った。
むやみに謎な人だ。
ましろ「とりあえず」
遊佐「行きますか?」
ましろちゃんと手を繋いで教室を出て行く。
今日は本当に長い一日だった。
最終更新:2009年02月04日 20:49