いつものように病院に行って犬に会う。大分調子もよくなったようだ。
先生「あともう少ししたらこの子を君の家に渡すから」
先生はそう言った。
病院の
帰り道に再び出くわしてしまった。
大地「おう! 遊佐君!」
あのごつい親父さんだ。最近神契さんといるとそのご家族との遭遇率が異常に高いのは
気のせいだろうか?
大地「元気だったか!」
そりゃ昨日あったばかりだから元気でしょう。
遊佐「えぇ、まぁ」
姉「お父さん?」
今度は姉登場。どうなってるんだ!?
大地「おう、楓」
楓「あら、晶子と例の彼氏じゃないの」
神契「お姉ちゃんってば!」
遊佐「ははは、まぁ彼氏とかじゃないんですけどね··」
この家族に巻き込まれるとなぜこの問答は繰り返されるんだろうか。
楓「そうかしら? 二人で並んで歩くなんて傍から見ればそうにしか見えないわよ~?」
う、確かに俺もそれは気にしていたが。
遊佐「ま、まあそうかもしれないですけど」
楓「ふーん。ちょっとそこの彼氏! 来なさい」
腕をつかまれ引っ張られ連れて行かれる。な、なんだ?
楓「ねぇ、あんた。晶子のことどう思ってんの?」
いたずらっぽい笑み。
遊佐「は、はい?」
楓「正直にいいなさいよ? 私のかわいいかわいい妹の事なんだからね」
遊佐「あ、いや、まだ何とも……」
楓「まだ、ね。まだってことは脈あり?」
遊佐「う、なんていうかほら、言葉のあやで……」
楓「男らしくないわねー。ほらほら」
遊佐「そ、そりゃ気になってますけど」
楓「やっぱり脈ありねー。うーっし!」
何故かよろこぶ神契さんの姉。
大地「楓、今日は家で飯食べるのか?」
や、やばい。ご飯の話題も出てきた。
楓「うん、今日は何も予定入ってないからー」
大地「そうか、今日は全員揃ってることだし遊佐君!」
この流れはまさか。
大地「今日はどうだね! うちでご飯を食べていっては」
予感的中。一体全体どうなったらそうなるんだ!? 神契さんも驚いて何もいえないでいる。
楓「あ、それいいそれいい。ほら、晶子もそう思うでしょ?」
お姉さんが同意する。
神契「え、でも、遊佐君に迷惑じゃないかな……」
非常に迷惑ではあるが、断る理由もないし……。どうすればいい。
1やっぱり拒否
2流れに身を任せる
遊佐「あ、いやでも今日は何も無いですし。もしよければですが……」
俺は流れに身を任せることにしておずおず了承してみる。
大地「そうかそうか! よし、お母さんに頼まないとな!」
すごい張り切ってる親父さん。
楓「晶子。よかったわねー」
神契「お、お姉ちゃんー」
もう神契さんも半分どうしていいかわからずこの家族の渦に巻き込まれている。
何ていうか、神契さんだけちっこくて家族全員に巻き込まれてあたふたしてるような
そんな立場なんだろうな……。
というわけで、只今神契さん宅。
涼子「今日は賑やかね」
雷太「何でこの小童もおるんじゃ?」
大地「親父、そういうな。俺が呼んだんだから」
楓「そうよ、おじいちゃん。いいじゃない別に」
雷太「楓! お前も珍しく家にいると思えば!」
楓「あーもううるさいうるさい」
涼子「まぁまぁお父さん。賑やかでいいじゃないですか」
雷太「別に賑やかなのは構わん」
大地「お母さんおかわりをくれ」
涼子「はいはい。どのくらいですか」
楓「あ、私も私もー」
雷太「それで小童」
遊佐「え、あ。はい?」
雷太「晶子とは仲が良いのか?」
憮然とした態度でご飯を食べながら聞いてくる。
遊佐「あ、仲良くしてもらってます」
楓「おじいちゃん。野暮なこと聞かない方がいいんじゃない」
雷太「楓はだまっとれ。それで、前も聞いたが晶子の何なんじゃ?」
一気にこの場が冷めた気がした。
神契「お、おじいちゃん!」
遊佐「今は、友達ですよ」
俺は言った。
その今は、は過去のクラスメートを否定したのかこれからの未来を踏まえてなのか
自分にもわからなかった。
涼子「お父さん? いきなりどうしたんです?」
雷太「ふん、何でもないわ」
楓「おじいちゃんも気になってるんだよお母さん」
涼子「あらまぁ」
雷太「ふん、何をバカなことを」
大地「はっはっは!」
神契「あう···」
神契さんはかわいらしい茶碗をもったままうつむいていた。
俺はもうわけもわからずこの場にいる。居心地がいいわけではないが、
別に悪い気はしない。なんというか、ただ慣れないとかそんな感じだった。
カー君とフェンリル君もテーブルの横でご飯を食べている。
楓「ごちそうさまー」
最初にテーブルを立ち上がったのはお姉さんだった。
楓「晶子、ちょーっときなさい?」
神契「え? 何?」
楓「いーからいーから」
明らかに嫌な予感がする。
神契「?」
そして部屋から神契さんとお姉さんがいなくなる。
大地「いやー、本当
ありがとう遊佐君」
いきなり親父から礼を言われておれはぼーっとしてしまう。
遊佐「え?」
大地「晶子と仲良くしてやってくれて、だよ」
遊佐「ま、まぁそれは当たり前のことですよ」
涼子「あの子人見知りというか、人と接するのが苦手だから」
大地「これからも仲良くしてやってくれるとありがたい」
遊佐「ええ。こちらこそ、です」
涼子「うふふ」
そしてじいさんから思わぬ一言。
雷太「ところで小童。剣道はやったことあるのか?」
剣道……はやったことない。授業は柔道を選択していた。
遊佐「いえ、まったくありません」
雷太「そうか。わしが教えてやるからやってみんか」
遊佐「え?」
雷太「ちょっと着いて来い」
問答無用といった口調。
遊佐「わ、わかりました」
最終更新:2007年02月19日 23:42