Macbeth ◆DdYPP2qvSs






Sleep no more!
眠ってなんかいられない!


Magical-daisy does muddier sleep!
マジカルデイジーは目を覚ました!


Sleep no more!
もう眠ってなんかいられないよ!


Underdog murdered sleep!
普通の女の子の居眠りはもう終わりだ!


Magical-daisy shall sleep no more!
マジカルデイジーは眠ってなんかいられない!






◆◆◆◆





ミラクルロジカルシニカルマジカルデイジー!
花の国からやってきた戦うお姫様!
風を切り裂くデイジーパンチ!
岩をも砕くよデイジーキック!


月夜の路地裏にて。
気が付けば、懐かしい歌を口ずさんでいた。
魔法少女マジカルデイジー。
あのアニメの放映からもう何年も経つ。
こうして戦っていると、まるで現役時代に戻ったかのような気持ちになる。
こんな戦いは何時ぶりだろう。
まだまだ現役バリバリだったあの頃を思い出す。
昔はこうやってヤクザとか相手取ってたなあ。
デイジーパンチやデイジーキックで悪い人達をやっつけたなあ。
刹那の間に、マジカルデイジーは思い出に浸る。

鉄拳を振るい、剛脚を振るい、黒い怪物を薙ぎ払う。
怪物達は壁に叩き付けられる、地面を転がるなどして吹き飛ばされ、そのまま消滅していく。
恐らく彼らはサーヴァントやマスターの使い魔だろうとマジカルデイジーは見当をつける。
悪――――あるいは■■■■――――と戦う為に身体を虐め抜いて鍛え上げてきたのだ。
この程度の雑魚に遅れを取る道理は無い。

マジカルデイジーは既に聖杯戦争のことを認知している。
聖杯という奇跡の願望器を巡る戦い。
白紙のトランプのカードを手にした者が参加資格を得る。
参加者はサーヴァントと呼ばれる従者を従え、互いに争う。
それが聖杯戦争だ。当然、命懸けの戦いだ。
聖杯戦争を許容するつもりはない。
それは詰まる所、殺し合いなのだから。
正義の魔法少女として活動していたマジカルデイジーには到底看過できるものではない。
それ故に彼女は人助けや悪人退治にのみ力を使っている。
未だにサーヴァントの姿は見えないが、じきに現れてくれるのだろうと信じている。
むしろ来てくれなかったら困るのだが。
ともあれ、正義の活動の中で存在を察知されたのか。
マジカルデイジーはこうして、敵の使い魔に襲撃されている。
命を懸けた殺し合い。
マフィアや犯罪者のような人間相手とは違う。
本当に殺されるかもしれない、真の闘争だ。




だというのに。
何故だか、清々しい気持ちになる。
懐かしい感覚を覚える。




思えば、寂しい毎日だった。
かつては華々しい活躍を見せていたマジカルデイジーだったが、それはもう昔の話。
アニメの放映は終わり、大きな犯罪組織も粗方片付け、相棒であったマスコットキャラクターとも別れた。
魔法少女としての青春を終えた彼女を待っていたのは、寂しい日常。
友情。恋愛。お洒落。社会経験。
普通の少女なら当たり前のように送るであろう青春の大半を犠牲にし、魔法少女として活動してきた。
そんなマジカルデイジーが魔法少女としての峠を越えた。
超えてしまったのだ。
その結果が、今だ。

今の彼女はボロアパート暮らしの大学生でしかない。
平々凡々な大学に通い、さしたる友人もおらず、将来に役立つ資格や免許等も持っている訳ではない。
マジカルデイジーとしての活動を優先してしまったことでバイトもしていない。
誰から感謝される訳でもなく、常に無償の愛で活動することしか出来ない。
魔法少女なのだからそれでいいと思っていた。思い込もうとしていた。
しかし、本当にこれでいいのか。
目の前の現実から目を逸らしていいのか。
魔法少女なんかより、普通の大学生『八雲 菊』として頑張るべきではないのか。
そんな思いが幾度と無く彼女の心中に渦巻き続けた。
理想を超えた果ての現実に、彼女は苦しみ続けてきた。

だけど、今は違う。
敵がいる。
戦いがある。
魔法少女マジカルデイジーとして戦える――――――――――敵がいる。

次々と現れる黒い怪物を、薙ぎ払い続ける。
正面から迫る怪物は拳骨を振り下ろして叩き潰し。
背後から襲い来る怪物は勢いよく放った回し蹴りによって壁へと叩き付け。
横から飛び掛かってくる怪物は肘鉄を叩き付けて側面へと吹き飛ばす。
圧倒的な暴力によって、次々と怪物を撃破していく。
今のマジカルデイジーはまさに主役。
悪と戦う変身ヒロイン。
気が付けば、口元に仄かな微笑が浮かび上がっていた。
彼女自身、そのことに気が付いていた。

マジカルデイジーは花の国のお姫様。
世のため人のために戦う魔法少女。
必殺のデイジービームで悪人を退治する正義の味方。
わかってる。
うん、わかってるよ。
私がこういうこと考えちゃうのは駄目だってわかる。
道徳とか、ファンの夢とか、そういうの壊しちゃうんだろうなぁとは思ってる。


でも。
でもさ。
やっぱ楽しいじゃん、戦うってさ。
叩いたり蹴ったりして敵を蹴散らすのって、なんだかんだスカッとするじゃん。
悪いやつを退治して、反社会的団体に喧嘩売って、沢山のファンが応援してくれた。
あの頃は、今の退屈な毎日より、よっぽど楽しかったじゃん……。


何の為に生まれて、何をして喜ぶ。
解らないまま終わる、そんなのは嫌だ。
誰もが知ってるヒーローだってそんなことを言ってる。
マジカルデイジーには何も無かった。
魔法少女としての峠を越えた先は真っ暗闇だった。
将来何になるかなんてわからない。
どこで働くとか、どう生きるかとか、そんな未来のビジョンには霧が掛かっている。
才能や職歴なんてものもない。
青春や生活の大半は魔法少女としての使命に捧げてしまったのだから。
そんなマジカルデイジーが再び魔法少女として活躍できる場を設けられれば、当然昂揚する。
かつての栄光に思いを馳せ、嬉々として『正義の戦い』に身を投じるのだ。


そんな高揚感に身を任せていたからなのか。
背後からの殺意に、一瞬だけ反応が遅れた。
咄嗟に振り返って両腕をクロスさせる。
しかしその衝撃を受け止め切れず、マジカルデイジーの身体が吹き飛ぶ。




「ぐっ……あ………!」


地面をサッカーボールのようにごろごろと転がり、突き当たりの壁へと衝突。
俯せに倒れ、何度も咳き込みながら下手人の姿を確認した。
そこに立っていたのは、禍々しい気迫を放つ狂人。
その右手には棍棒らしきものを握り締めている。


「■■■■■■―――――――――――」


狂人は血走った目でマジカルデイジーを見据える。
まるで獣のような唸り声を上げ、地を蹴って掛け出す。
無論、目指す先は――――倒れ込んだマジカルデイジー。

バーサーカーのサーヴァント。理性を奪われた狂戦士の英霊。
マジカルデイジーは聖杯戦争の知識から即座にそう判断する。
先程までの黒い怪物達はあのバーサーカーのマスターが仕向けた使い魔か。
狂化込みでも然程ステータスは高くないことに加え、魔法少女としての身体能力によって何とか一度だけ攻撃を凌ぐことは出来た。
されど、それでも尚『奇跡的に防げた』と言っていい。
まともにやり合えばバーサーカーが圧倒的に有利。
数々の戦いの経験――――同じ■■■■とも殺り合った―――――を持つマジカルデイジーは、すぐにそう認識したのだ。
同時に、彼女の心の奥底から黒い感情が込み上げてくる。



「―――――――――あ」



身体が微かに震えている。
これは、恐怖だ。
何故だか懐かしく思える、怯えの感情だった。



「■■■■■■■■■■■―――――――ッッ!!!!!!」


目の前より迫り来る死――――バーサーカーに、彼女は恐れを抱いていたのだ。
何とか立ち上がろうとするも、先程の一撃のダメージが身に響いている。
起き上がるよりも先にバーサーカーが攻撃を成立させるだろう。
つまり、マジカルデイジーは殺される。



(終わり、なのかな)



不思議なものだった。
死を目前にして冷静に状況を判断できているのに、当たり前のように恐怖を抱いている。
これがある種の諦観なのか、ベテランとしての経験によるものなのか。
あるいは自分の中に込み上げた異常なのか、マジカルデイジーには判断できない。
永遠に等しい数秒間の中で、これまでの人生が脳裏を過る。
過去はキラキラと輝いていた。
今は煤けた色でくすんでいた。
そんな人生。それが八雲菊としての、マジカルデイジーとしての生き様。
かつての栄光から緩やかに滅びていった少女の末路。



ああ、でも。
『八雲 菊』として眠り続けるよりは、いいのかな。
せめて最後に、『マジカルデイジー』として戦えたんだから――――――――




 Voil?・!
「ご覧頂こう!」



空から、『漆黒』が降り立った。
現れたのは黒衣の怪人。
マジカルデイジーを庇うように立ちはだかり。
鋭い剣撃で、迫り来る狂戦士の首を吹き飛ばした。




怪人の足下に、狂戦士の屍が転がる。
そのまま死骸は魔力へと戻り、霧のように霧散していく。
それを見届けた怪人が、ゆっくりと振り返った。
笑い顔の仮面が、マジカルデイジーの瞳に映る。
黒いマントを翻しながら、怪人は彼女へと向き直る。
そして怪人は、両腕を広げ――――――――言葉を並べ立てる。



 In view, a humble vaudevillian veteran, cast vicariously as both victim and villain by the vicissitudes of Fate.
「見ての通り、私の姿は道化師。時に弱き者を、また、時に悪しき者を演じることも」

 This visage, no mere veneer of vanity, is a vestige of the vox populi, now vacant, vanished!
「仮面はただの虚飾にあらず。もはや素顔をさらして歩ける世界ではないからだ!」

 However, this valorous visitation of a by-gone vexation,
 stands vivified and has vowed to vanquish these venal and virulent vermin vanguarding vice and vouchsafing the violently vicious and voracious violation of volition.
「されど、この厄介者が再び姿を現したのは、世の悪を正すため、この腐った世界にうごめくウジ虫を掃除する、そのために」



マジカルデイジーは、言葉を出せなかった。
目の前の仮面の怪人の口上を、ただ黙って聞くことしか出来なかった。
まるでオペラに出演する役者のように。
サーカスに登場する道化師のように。
目の前の男は意味のわからない言葉を次々と並べ立てる。

怖い、と思った。
理解には程遠い狂人に、寒気がした。
だというのに、どこかほっとしていたのは命を救われたからなのか。
あるいは。



 The only verdict is vengeance a vendetta!
「そう、これは『血の復讐(ヴェンデッタ)』だ!」

 Held as a votive, not in vain, for the value and veracity of such shall one day vindicate the vigilant and the virtuous.
「復讐の誓いは今も生きている。悪を断ち切り、自由をもたらすために」




戦いの臭いがしたから、なのか。
目の前の怪人から、『聖戦の臭い』を感じたからなのか。
怪人は、悪を絶つ為に戦うと宣言した。
彼は弱き者を演じ、時に悪しき者を演じ、されど正義の鉄槌を振るう存在なのだと、そう言っているのだ。
マジカルデイジーの心中に潜んでいた八雲 菊の姿が、次第にぼやけていく。
ただの腑抜けだった無様な負け犬としての日常が、徐々に消え失せていく。



 Verily, this vichyssoise of verbiage veers most verbose,
「長々とした自己紹介になってしまったようだ」


 so let me simply add that it's my very good honor to meet you and you may call me V.
「私の名は“V”、そう簡潔に呼んでいただければ結構だ」



あれは、眠るだけの毎日だった。
本当の生き甲斐を見失い、夢の中をぼんやりするだけの毎日だった。
それはそれで、安らぎの一時だったのかもしれない。
だけど。
こうして、『正義の味方』としての戦いを味わってしまったマジカルデイジーにとっては。
それは余りにも悲しく、余りにも退屈で。
そして、余りにも絶望的な時間だった。
あのまま腐り続けて、訳も解らず生きる日々はもう嫌だ。
その思いは、この怪人―――――Vと出会ったことである種の確信へと変わる。



「さあ、お嬢さん―――――――」



嗚呼、嗚呼。
マジカルデイジーの眠りは此処に死んだ。
マジカルデイジーはもう、眠っていられない――――――――。




「悪しき杯へ『正義の鉄拳』を下そう」




『復讐者』が、手を差し伸べた。
『魔法少女』は恐る恐る、その手を掴んだ。



【クラス】
アヴェンジャー

【真名】
V@Vフォー・ヴェンデッタ(映画版)

【属性】
混沌・悪

【ステータス】
筋力C 耐久D 敏捷C+ 魔力D 幸運A 宝具B

【クラススキル】
復讐者:A
「その者、数々の悪事を纏いし者なり。血糊の付いた太刀を持ち、高々と振りかぶる。
 殊勝な振る舞いで、己の悪魔を覆い隠すは人の常」
狂気的なテロリスト。あるいは血の復讐者。それがVである。
王族や為政者、組織の首領などの権力者に対して自身のステータスが上昇し、更に対象の判定にマイナス補正を与える。

【保有スキル】
心眼(真):D+
修行・鍛錬に酔って培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す。

精神汚染:A+
同ランク以下の精神干渉をシャットアウトする。
サーヴァントとして召還された彼は「強大な権力に立ち向かい、国家を転覆させた復讐者」としての側面が膨張されている。
それ故に聖杯をも『叛逆すべき対象』として認識し、生前と同じように復讐を遂行する。

反抗の使徒:A
圧政に苦しむ者達にとって彼の姿は反抗の象徴として映った。
人々は皆『V』と同化し、国家の転覆を見届けた。
精神干渉の成功率が上昇し、自らの言動・行動によって他者に影響を与え易くなる。
彼に心より魅入られた者はやがて深淵へと突き進む。

【宝具】
『仮面は虚飾に非ず、素顔で歩くことは叶わず(ヴィー・フォー・ヴェンデッタ)』
ランク:C+ 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:-
彼は怪物。血の復讐に囚われし狂人。
仮面の下にある理念は決して死なない。
アヴェンジャーがガイ・フォークスの仮面を被り、Vとして行動している限り自動で発動し続ける宝具。
あらゆる判定の成功率が上昇し、更にAランク相当の単独行動スキル・気配遮断スキルを獲得する。
行動や気配を悟られることなく、文字通り神出鬼没の『怪人』と化す。
また致命傷を受けた際に一度だけ自身にガッツ効果が付加。
例え霊核に損傷を受けたとしても最大15ターンの現界が可能となる。

【武器】
複数本の短剣。
時限爆弾やなど生前に利用した道具を魔力で生成することも可能。

【人物背景】
第三次世界大戦を経て全体主義国家と化したイングランドに現れた怪人。
常にガイ・フォークスの仮面を被り、国家の転覆を目論み数々のテロ行為を働く。

彼の復讐は既に終わりを告げている。
されど今の彼は『国家を転覆した復讐者』として召還された姿。
それ故に彼は生前と同じように『血の復讐』を果たさんとする。

【サーヴァントとしての願い】
殺し合いを強いる聖杯への復讐。

【方針】
マジカルデイジーと共に戦う。
悪と聖杯に正義の鉄槌を。




【マスター】
マジカルデイジー(八雲 菊)@魔法少女育成計画restart

【武器】
デイジービームを始めとする魔法少女としての能力。

【能力】
『魔法少女』
魔法少女としての力。
変身することで常人を凌駕する身体能力と肉体強度を獲得し、更にそれぞれ固有の能力となる魔法を使える。
また魔力を扱う存在であるため魔術師と同等以上の魔力量を備える。
マジカルデイジーは数々の反社会組織と戦ってきたベテランの魔法少女であり、体術も相当に練り上げられている。

『必殺のデイジービームを撃てるよ』
マジカルデイジー固有の魔法。
指先あるいは掌からあらゆる物質を瞬時に分解する光線を放つ。
命中した箇所は分子単位で結合が解け、砂と化して崩れ落ちる。
極めて高い威力を持つが、魔法の国によって生命体への使用を禁じられている。
魔力で構成された肉体を持つサーヴァントに対しては効果が弱いが、使い魔程度なら本来の威力と然程変わらないダメージを与えられる。

【人物背景】
普段はごく普通の女の子。
しかしそれは世を忍ぶ仮の姿。
彼女の正体は花の世界から留学してきたお姫様なのです!
ピンチになると魔法少女『マジカルデイジー』に華麗に変身っ★
マスコットキャラクターのパレットといっしょに今日も反社会的団体を蹴散らすよ!
「それじゃいくよおっ!デイジービィーム!」

……という設定でアニメ化されたこともあったベテラン魔法少女。
「花の世界から留学してきたお姫様」という設定を除けば事実を概ね再現していた。
今では反社会的団体との戦いも概ね片付き、パレットとも別れ、すっかり落ちぶれている。
魔法少女としての活動で青春を犠牲にしたことで遊びやお洒落、バイトにもろくに手をつけられず。
現状と将来に不安を感じながら、寂しい大学生活を送っている。
参戦時期はrestart前巻のプロローグ時、『魔法少女育成計画』からのメールを確認する直前。

【マスターとしての願い】
なし?

【方針】
人助けや悪人退治。そして、戦いたい。

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最終更新:2016年12月26日 10:09