リュータ&アヴェンジャー◆GTQfDOtfTI
正義はこの大地にはなく
在るのは絶望渦巻く血と涙で塗り固められた残骸のみである。
私たちの救いは、楽園は、何処にあるのだろう。
世界から争い事がなくなり、平和に幸せに生きていける未来。
そんな夢を、いつまでも願い続けたい。
日記の遺稿より
皇歴四九六年
△
リュータ・サリンジャーが記憶を取り戻すのに、そう長くは時間はかからなかった。
聖杯戦争。知ったことも聞いたことのない催しではあるが、この程度では、自分の怨嗟を消し去ることなんてできやしない。
どれだけの絶望が降りかかろうとも。どれだけの戦いを経ても。どれだけの絆を紡ごうとも。
絶やしてはならない炎がある。忘れてはならないモノがある。
リュータの運命を決定づけた出来事。正義による虐殺。
自分を育ててくれたファミリーは悪党だった。因果応報の末路をいつ迎えてもおかしくない人間しかいない、報いの果てが其処にある。
「俺にとっては大切な家族だった。何よりも。誰よりも」
どんな悪行を重ねていようとも、ファミリーの人達はリュータにとっては大切な存在だった。
殺されて当然の屑だろうが関係ない。彼らがリュータへと親切にしてくれた事実は揺らがないし、塗り替えられない。
「許せるはずがない。どんな大義があろうとも、俺の家族を殺した事実は絶対に消えない」
大事なのは、許せるか、許せないか、だ。大義など、知った事か。
高尚な理想を持つのは大いに結構だが、その礎に自分達がなるのはまっぴら御免である。
その死に、その虐殺に意味があったとしても、リュータは認めない。
「アーチェスだけは絶対に殺してみせる。ただし、その仇は此処にはいないときたら、笑っちまうぜ。神様俺のこと嫌い過ぎだろ?」
例え、その仇が自分の想像を超えた傑物であろうとも。
アーチェスの抱いた理想が世界を救うものであろうとも。
リュータはその理想ごと彼の全てを踏み躙ると決めたのだ。
法は彼を縛らない。天や神は救いなんてものを与えてくれない。
ならば、自分がやるしかない。自分の手で復讐を遂げる意外に道はなかった。
殺して、壊して、跡形もなく消し去らないと気が済まない。
アーチェス・アルザンテというクソッタレは必ず殺す。
どんな汚い手を使ってでも、家族の仇を討つ。
その為に、乗り込んだ戦いが聖魔杯であり、自分はその戦いの真っ最中だったはずだ。
――そして、アイテム探しのダンジョンで見つけた白紙のトランプ。
それが、この異なる戦争への入り口だったのだろう。
気づけば自分は記憶を奪われ、よくもわからない街へと飛ばされていた。
今の自分に起きている出来事は夢か現か、それさえも確かではないというのに。
幸いなことに装備は仮住まいのゲストハウスに一式残っていたので、安心である。
「まあ、そうなってくるとよ……この戦いで勝ち上がるしかねぇ。優勝しなきゃ帰れねえって言うんならやるしかねぇよな」
残された道は聖杯戦争で優勝して、元の世界に帰るものだけである。
生き残るが為に。勝ち上がって、憎き仇をこの手で殺す為に。
そうすることでしかこの内々に眠る怨嗟は晴らすことができないのだから。
「なぁ、アヴェンジャー。俺にお誂え向きのサーヴァントさんよ」
そして、それは引き当てたサーヴァント――アヴェンジャーも同じである。
何せ、名前からして復讐ときているのだ。まるで、自分が引き当てることが運命であったかのように。
相対する男は黙したまま、リュータを見つめ続けている。
両の眼は遮光眼鏡に隠され見えないが、リュータにはわかる。
アレは、自分を見定めている。復讐という言葉の中身を、吟味しているのだ。
砂色の髪、細さを極めた顔つき。健康的な肌の色とはとても思えない土塊のような顔つき。
刻まれた傷は縦横に広く付けられている。
「俺には、死ねない理由がある。他の奴等にとってはンな理由はくだらねぇの一言で済ませられるかもしれねぇ。
けどよ、俺はただこの理由の為だけに生きてきた。強くなろうって誓って、ずっと走り続けてきた」
一目でわかる。彼もまた、自分と同じく奪われた者なのだ、と。
理不尽に奪われ、泣き喚き、そしてその果てに一つの決意を固めた復讐者。
自分の辿る可能性とも言える存在が今、此処にいる。
「誰が何を言おうとも俺自身の手でアーチェスを殺す。俺の復讐は俺だけのものだ、誰にも邪魔はさせねぇ」
改めて、自分にも、サーヴァントである彼にも誓う。
この復讐こそが生きる理由であることを。
世界を台無しにしてでも成し遂げたい願いなのだと。
「…………その末路が、何も生み出さないとしても」
ぼそり、と言葉が返ってくる。
捻れ、歪み、本来の声から掛け離れた、この世全てに裏切られたかのような悲痛さが混じった声。
たった一言。それだけで、リュータの全身には怖気がはしる。
人はここまで、“終わってしまう”のか。
何も振り返らず、何も認めず、何も許せず。
ただひたすらに理想の極地にまで歩くその様は、殉教者のようで。
「それでも、右手を伸ばすか」
彼は問いかけているのだろう。ここから先は後戻りができない一本道である、と。
これ以外に道はない、賢しげに回り道など許されない修羅へとなる覚悟。
アヴェンジャーは、まだ戻れるのだと言外に伝えているのかもしれない。
「決まっているさ。いや、決まっていた、最初から、あの日、あの時ッ!
ファミリーが殺された時から、俺の運命は全部示されていたッ! 復讐以外の道は、考えられない!!!!」
それでも、リュータは復讐を選んだ。
この選んだ道が間違いではないと信じている。
自分だけは、その選択肢を後悔しないと胸に刻んでいる。
「………………いいだろう。その言葉、嘘偽りがないものと受け取った。この時より、私はおまえのサーヴァントだ」
伸ばした右手は取られ、彼らの願いは一つの意志となる。
復讐という大きなうねりとなって、聖杯戦争を荒らしていくだろう。
「アヴェンジャー――ズオ・ルーがこの聖杯戦争を塗り替える」
我欲で、浅ましく。それでいて、決して捨てきれない綺麗な思いが一欠片。
二人の復讐者は前へと進むしかない。
それは、断ち切れない運命の輪であり。世界は、いつだってこんなはずではということばかりなのだ。
そんな理屈を認められず、足掻き続けた馬鹿な人間達が――復讐者と呼ばれるのだろう。
【クラス】
アヴェンジャー
【真名】
ズオ・ルー(レメディウス・レヴィ・ラズエル)@されど罪人は竜と踊る
【ステータス】
筋力:C 耐久:B 敏捷:B 魔力:A+ 幸運:E 宝具:B
【属性】
混沌・悪
【クラススキル】
復讐者:A
あらゆる調停者(ルーラー)の天敵であり、痛みこそがその怒りの薪となる。
被攻撃時に魔力を増加させる。
忘却補正:B
復讐者は英雄にあらず、忌まわしきものとして埋もれていく存在である。
正ある英雄に対して与える“効果的な打撃”のダメージを加算する。
彼の存在は正しく伝えられることなく、戦火の焔へと埋もれていった。
自己回復(魔力):A
この世から怒りと恨みが潰える事がない限り、憤怒と怨念の体現である復讐者の存在価値が埋もれる事はない。
これにより、魔力に乏しいマスターでも現界を維持できる。
【保有スキル】
鋼鉄の決意:EX
絶望に絶望を重ねても尚、理想を保ち続けた強靭な精神力。
ランクに応じて精神的な攻撃を跳ね除ける効果を持つ。
咒式:A
魔法とも言える超科学。もしくは科学による魔法。
才能と知識が必要な技術を彼は苦もなく操ることができる。
軍略:B
多人数を動員した戦場における戦術的直感能力。
一流の策謀家をして本当の天才と称される彼の繰り出す一手は神算鬼謀である。
ただし、その策謀は論理と正しさだけに頼り切りであり、不可解な物事には弱い。
道具作成:B
レメディウスは生前の経験から魔杖剣――魔力を帯びた器具を作成できる。
【宝具】
「内なるナリシア」
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:1人
咒式を戦闘や破壊作業等で使用するために必要な武器。
そして、最愛の少女の名前を冠にした忘れ得ぬ罪の象徴。
【weapon】
内なるナリシアを媒介に繰り出す咒式。
【人物背景】
全てを奪われた男。最後に残った理想すら護れなかった哀れな男。
もしも、もしもの話――彼がアヴェンジャーではなく、キャスターとして呼ばれていたら、きっと救いはあっただろう。
【聖杯にかける願い】
復讐を。理不尽に抵抗を。
【マスター】
リュータ・サリンジャー@戦闘城塞マスラヲ
【マスターとしての願い】
復讐を。どんな道理があろうとも、報いを受けさせる。
【能力・技能】
卓越した身体能力、数々の経験、そして不屈の精神力。
手持ちの銃火器、日本刀、ナイフを難なく操る戦闘力も高い。
【人物背景】
家族を奪われた男。そして、その怨嗟から解き放たれるはずだった男。
【方針】
生き残る。
最終更新:2016年12月05日 11:38