四つ葉町の森の丘陵、その上空に突如赤い閃光が迸る。
光は一瞬で収まり、そこから四つの人影が投げ出される。
数メートルの高度からの落下。加速も伴っており、衝突に近い形で地面に叩きつけられる。
「イタタ……ここはどこ? っていうか、なんであたし変身解けてるんだろう?」
「アタシもブッキーもよ。何が起こったというの?」
「多分、アカルンが何かしたんだと思う」
「…………あの遠くに見えるのは、館ね」
占い館の地下で繰り広げられた、勝ち目の無い戦い。
危うく爆発に巻き込まれるところだった。絶体絶命の窮地を救った赤い光。
それは、イースをエスポワールシャワーから守った光と同質の力のように見えた。
祈里は懐を探る。しかし、入れていたはずのアカルンの姿は無かった。
転移と同時にプリキュアの変身は解除され、イースだけが戦闘形態のまま残された。
イースは現状の確認よりも館の様子が気になるのか、険しい表情で見つめる。
ほどなく館は、それが蜃気楼であったかのように消失した。
「消えちゃったね、せつな。壊れてなくなったの?」
「……違うわ、あれは隠蔽モードを起動させたのよ。ゲージと館の破壊は失敗よ」
「まあ、みんな無事なんだし、ひとまず結果オーライよね」
「良かったね。でも、アカルンはどこに行ったのかな?」
「オーライですって! もう同じ手段で潜入はできないのよ!」
美希と祈里の安堵の声に、イースが喰ってかかる。激しい憤りと悔しさをあらわにする。
ムッとする美希と、びっくりして目を丸くする祈里。
すかさずラブが割って入る。イースもすぐに謝った。
二人に当たるのは筋違いだと気が付く。失敗したのは自分なのだから。
「とにかく今日は帰ろう。全員が無事だったことだけは、喜んでいいと思うんだ」
「そうね、帰りましょう」
「うん、本当に良かった」
「――――そうね」
「待って! どこに行くの、せつな。一緒に帰ろう」
「帰る? 私が……どこに?」
「おかあさんが言ってたの。せつなが元気になったら家に連れて来たらいいって」
背を向けて立ち去ろうとしていたイースが振り返る。
一瞬驚いた表情をして、やがて静かに首を振った。繋がれたラブの手をそっと振りほどく。
「私はあなたたちと一緒には行けないわ。この手で、壊してきた街なのよ」
「だから――――それは!」
「任務で潜入することならできる。でも、今さら好意にすがるなんて……許されるわけないわ」
「ラブが、どんな思いであなたを助けようとしたのかわかってるの?」
「行くところ、ないんでしょ? せつなさん……」
「わかってる……。よく、わかってるわ。でも、私は――――幸せになってはいけないの」
イースはラブたちに向き合ったまま後ずさり、背中から落ちるように崖から飛び降りた。
高さは二十メートル以上、生身で追いかけられる地形ではない。
そのまま森の中に落ちて、姿も見失った。
ラブの、絶叫だけを残して――――
懸命に探したにもかかわらず、せつなの行方はわからなかった。
イースの姿のままだったから、怪我をしていないのは確かだった。それだけが救いだった。
ラブが家に帰ったのは、夜遅くになってからだった。
今日一日、色々なことがありすぎた。心の余裕がなくて、連絡を怠ったのが失敗だった。
家の中はちょっとした騒ぎだった。
仕事を終えて病院に向かったあゆみが見たものは、空っぽの病室と――――
ゴミ箱の中に、散り散りに破り捨てられた手紙。
やっとの苦労で繋ぎ合わせて、更に驚愕する。それは――――遺書にも似た内容だった。
すぐに警察に捜索願いを出す。仕事を早退してきた圭太郎と懸命に心当たりを回る。
絶望的な想いで一旦家に帰って来た。その直後のラブの帰宅だった。
「何があったのかは、どうしても話せないんだな?」
「ごめんなさい……。あたしは間違ったことはしていない。それしか言えないの」
「わかった。信じよう」
「おとうさんっ!」
真っ青な顔であゆみは圭太郎に詰め寄る。しかし、結局あゆみもラブに強く問い正すことはできなかった。
手紙に書かれた真剣な想い。命すら賭ける覚悟。それを――――知っていたから。
「それで、せつなちゃんはどうしたの?」
「いなくなっちゃったの。どこに行ったのかわからないの。だから、探さないと!」
「もう遅い、僕が行ってこよう。ラブは食事を取って休みなさい」
「ごはん……。せつなも食べてないのに食べられないよ! 行かないと!」
「わたしが一緒に行くわ。おとうさんだけじゃ、せつなちゃんの顔がわからないし」
ラブに無理やり食事を取らせてから、もう一度三人で探しに出ることにした。
その捜索は深夜まで続いたが、結局見つけることはできなかった。
日の沈んだ、暗い森の中を少女は歩く。
その手には何も持たず。
その瞳には何も宿さず。
その足取りは、目的地すら持たず。
その心に、深い悲しみと後悔を宿して。
やがて、森を抜ける。
視界一杯に広がる美しい草原。
木々に覆われ、一筋の光も差さなかった夜空。
今は満天の星々の輝きと、緩やかな月の光に照らされて。
足元には一面のクローバーの花が咲き乱れる。
暗く深い森にも出口はあって、その先には優しい風景が広がっている。
ほんの少しだけ救われた気がして、その日はそこで一夜を明かすことにした。
一輪の花を摘み取った。
クローバー。シロツメクサの白い花。花言葉は――――
“幸せ”
私が奪ってきたもの。
私が望んできたもの。
私には届かないもの。
私には、求める資格のないもの。
ありもしないペンダントを求めて胸に手をあてる。
クローバーの草のベッドに倒れこむ。瞳に熱いものが浮かび、星空が歪む。
せつなは両手で顔を隠すようにして眠りに付いた。
眩しい朝の日差しを浴びて、せつなは目を覚ました。
夢を――――見た。
ラビリンスにいた頃の夢だった。
同じ服装の人々。感情を宿さず、自らの意思を持たず。ただ、与えられた役目を黙々とこなす。
まるで、ラビリンスという国家を形作る部品であるかのように。
その中に自分も居る。いや――――かつて、居た。
次々に新しい部品が作られ、役に立たなくなった部品は廃棄される。
寿命と、人口の管理の名の下に。
それは嫌だった。それは寂しかった。それは悲しかった。
だから――――特別な部品になろうとした。
優秀な道具としてでいいから――――愛されたかった。
そんな願いも、望みも失われてしまった。いや、自らの手で断ち切った。
今の私は、壊れた部品。
どこにも適合することのない、壊れた部品。
「ねえ、せつな。せつなの幸せは何?」
どこからか、声が聞こえたような気がした。
「今からでも、きっとやりなおせるよ!」
声のする方に足を進める。その先に一筋の光が見えた。
それは煌くアクセサリー。四葉をモチーフにしたペンダント。
ラブからもらった幸せの素に、自らの手でチェーンを付けたもの。
そっと持ち上げる。手のひらに乗せる。
触れたとたんに、粉々に砕けて、風に飛ばされて散っていく。
わかっていた。夢の中なのに、こうなることはわかっていた。
一欠片も残らなかった。やっぱり――――自分の手には何も残らなかった。
「行ってみよう……」
昨日の朝に病室を出て、丸一日何も食べていないことになる。
お腹は空いていたが、以前のように体が痛むわけではない。
(このくらい、どうということはない)
ポケットを探る。お金は持っていなかった。
入っているのは、一組のトランプだけ。
わかっている。何も無いのはわかっている。
でも、昨日とは違う。一つだけ違う。
今の自分には、目的地があるのだから。
せつなは、しっかりとした足取りで歩き出した。
四ツ葉町を発って半日ほど過ぎた。遠くに目指す建物が見えてくる。
そこは壊れたドーム。自分が壊したドームだった。
初めて正体を明かし、ラブと向かい合った場所だった。
大切にしていた幸せの素を、自らの手で砕いた場所だった。
建物はバリケードで覆われ、立ち入り禁止の看板が高々と掲げられていた。
瓦礫撤去の工事が巨大な重機で進められる。
まだ、それは入り口の方だけ。中は手を付けられていないようだった。
せつなは、作業員やガードマンの目に付かないように侵入を開始した。
バリケードを飛び越えて、姿勢を低くしたまま駆け抜ける。
ドームの観客席に出る。惨状と呼ぶに相応しい徹底的な破壊の爪痕。
どれくらいの人々が、コンサートを楽しみにしていたのだろう。
誰と一緒に来て、どんな夢を描いていたんだろう。
ラブも、楽しみにしていた。
していたのに……私の看病を優先して、病室でテレビを見ていた。
そんなラブの夢を砕いたんだ……。コンサート会場ごと――――私が!!
せつなは唇を噛みながら走り出した。
目的の場所は――――もう、すぐそこだったから!
「この辺りだったはず……」
椅子の下、通路の隅、目を凝らして必死に探す。
風に飛ばされてしまったのか、チェーンすら見つけることができない。
何をやっているのだろうと思う。
仮に見つかったところで、元の形に直るわけじゃないのに。
壊れてしまったものが、元の姿に戻るはずなんてないのに。
戻ったところで、それで私の罪が許されるわけではないのに。
それでも、見つけたかった。何か、名残でもいいから手にしたかった。
何も――――無いのは寂しかった。
そして、視界の先に緑色に煌く欠片を捉える。
「あった……。あった、あったんだ……」
そっと、手のひらに乗せてみる。
割れた破片の一つ。かろうじてハートの形をとどめていた。
今度は、砕けて消えることはなかった。それを両手で大切に握りしめた。
まるで――――懺悔するように。
何かに――――祈りでも捧げるように。
せつなが再び四ツ葉町に帰って来た頃には、もう夜もふけていた。
都合がいいと思った。まだ、見ておきたいものがあったから。
これで二日が過ぎた。髪も、服装も、自信が無かった。
もう、昼間に街を歩けば人目に付くかもしれない。
記憶を辿り、一つ一つ廻っていく。
自分が壊した街並みを。破壊の痕跡を。
ジュースの水流で壊した喫茶店。結婚式場にテレビ局。いくつかのダンス会場。
中には完全に修理されていたものもあった。
壊れたままでも、営業を開始していた店もあった。
修理の目処がつかないまま、放置されている建物もあった。
ズキン ズキン ズキン ズキン ズキン ズキン ズキン ズキン
心が痛い。胸が苦しい。喚き声をあげて、逃げ出したいような気持ちに駆られる。
それでも、ちゃんと見ておきたかった。それが、今の自分にできるたった一つのことだったから。
そして、足がクローバータウンストリートの大通りに伸びる。
そこの一角に、赤と白の看板が並ぶ。(通行禁止)(危険・立ち入り禁止)横に迂回路が設けられる。
ラブが、とても大切にしている場所だった。
ラブと、初めて街で出会った場所だった。
ラブと、最後に戦った場所だった。
強力な炎によって溶かされたアスファルト。怪力でなぎ払われたお店の数々。
半壊のまま放置されているお店。下手くそな応急処置で、なんとか営業を再開しようとしているお店。
閉店と売却の張り紙が張られているお店もあった。
大きな建物ではないだけに、決して豊かな人たちのお店ではないだけに、よけいに悲しかった。
せつなの瞳に、とめどなく涙が溢れては流れ落ちる。
そして、座り込んで号泣した。
少し離れたところにある、公園のブランコに腰をかける。
時刻はそろそろ日付が変わる頃。怪しむような人通りもなかった。
そこも、ラブに案内してもらったところ。ラブが小さい頃に遊んだ場所。
蒸し暑い夜だった。ベトついた汗で、下着がへばりついて気持ち悪かった。
少しでも風が欲しくなって、ブランコを動かす。その時、ゾワッとせつなの背筋に悪寒が走る。
せつなの戦士としての本能が、迫る危険を察知したのだった。
「童心にでも帰ってるのかい? もっとも、僕達にそんな経験なんてあるはずもないが」
「サウラー……。決着を付けに来たというわけ?」
「そういう指令は確かに出ている。寿命の尽きた君が歩き回るのは好ましくないが……」
「はっきり言ったらどうなの?」
「もうわかったはずだ。この世界に君の居場所は無い」
サウラーは、ゆっくりせつなとの距離を縮めながら話しかける。
意思の力だけで寿命管理の支配を解き放った。これは脅威であると同時に、評価の対象でもあると。
拘束を受け入れ、自らの意思でラビリンスに戻るならば、寿命も延ばしてもらえるかもしれないと。
「断ると言ったら?」
「ここで僕と戦うことになるね。今の君の体の状態で、勝ち目があると思うかい?」
サウラーが更に詰め寄る。同じだけせつなは下がる。頭の中では必死に計算を働かせていた。
ここで捕まれば、また占い館に入ることができるだろう。しかし、前回とは状況が違う。
当然、警戒されているだろう。拘束されて、変身もできないだろう。
本国に送られれば、洗脳されて、ラブの敵に仕立て上げられるかもしれない。
メリット無しと判断して、戦う決意を固める。その時だった、更に二つの気配が近づいてきた。
「せつなちゃん!」
「君がせつなちゃんか? そこの男! その子から離れるんだ!!」
「あなたたちは?」
「ラブの父親と母親よ。話は後で、早く逃げなさい!」
姿を見れば、相手がラビリンスの幹部であることはわかるはずだった。
それなのに、駆けつけてきた男の人はサウラーにしがみつく。
ラブの母親を名乗った女の人は、せつなをかばうように前に出て立ち塞がった。
敵うはずなんて――――ないのに。
「ダメよっ! 早く逃げて! 人間に太刀打ちできる相手じゃないわ!」
「あなたこそ逃げなさい! 時間だけでも稼ぐから、早くっ!」
「とても不愉快だよ、命令でなければ誰がこんな仕事するものか」
「ぐあっ!」
サウラーは軽々と男の手を引き剥がす。そして、ゴミでも捨てるかのように無造作に投げた。
男の人はそのまま気を失う。そして次の障害物である、女の人に歩み寄る。
「おとうさんっ!」
「どきたまえ、無力の者をいたぶる趣味はない」
「誰が――――どくものですか!」
「ならば、悪く思わないでほしい」
「きゃあ!」
サウラーは女の人の肩に手を添えて、軽く横に払った。彼にしてみれば限界まで加減したつもりだった。
しかし、それだけで地面に叩きつけられて気を失う。
「しっかり……しっかりしてください!」
自分が庇われている。その状況が理解できなかった。それで反応が遅れてしまった。
なぜ? 何のためにこの人たちはこんなことをしているの?
生まれて初めて、ラブ以外の人から向けられた純粋な好意。優しさ。思いやり。愛情だった。
女の人の額から、一筋の血が流れ落ちる。
――――ゾクリ。
せつなの背筋から、脳に向かって何かが駆け上る。
それは悲しさ。それは悔しさ。それは怒り。
それらが一つに結びつき、全身を焦がす激しい感情となる。
それは――――憎悪。
よくも――――よくも!
よくも――――よくも――――よくも!
よくも――――よくも――――よくも――――よくも!
倒れた二人の男女の姿が、砕け散った幸せの素と重なる。
せつなの中で、破壊された街並みと重なって映る。
これが、幸せを奪うということ。
これが、私が今までやってきたこと。
これが、彼らがこの先も続けていくこと。
許せない!――――絶対に――――許さない!!
私には、何もないなんて嘘だ!
私には、戦うための力がある!
“スイッチ・オーバー”
立ち上がり、手を合わせて――――開く!
全身に電流が駆け巡る。体内の細胞が、戦うための配列に切り替わる。
黒髪は白銀の輝きを宿し、夜空に浮かぶ月のような純白の衣に覆われる。
運命を自らの意思で切り開いた証。イースが手にした新しき力。大空を翔ける自由なる翼。
その力が、今、弱き者を守るために揮われる。
赤い瞳が憎悪に燃える。それはサウラーに対する怒りだけではない。
過去の自分に対して! 助けてあげられなかった。今の、自分に対して!
そして、幸せを奪う理不尽な暴力。管理国家ラビリンスの、存在そのものに対して!!
「疲れた体に、冷静さを失った頭か。やめたまえ、そんな状態で僕に、グボッ!」
「その不愉快な口を、永遠に黙らせてあげるわ!」
飛翔を思わせるような、超高速の踏み込みから放った拳がサウラーの腹部に突き刺さる。
間髪入れずに放つ回し蹴りが頭部を襲う。サウラーはかろうじてガードして後退する。
しかし、その背後にはイースが廻り込んでいた。
上下左右から、拳が、膝が、蹴りが、逃げ場など与えないと言わんばかりに牙をむく。
「バカ……な。この前よりも強くなっているだと!」
「心が生み出す力。あなたたちには決して理解できない力よ!」
イースが更に追撃を加えようとする。そして、サウラーがナケワメーケを呼び出そうとしていた時だった。
ラブがせつなの名を呼びながら駆け寄ってきた。その手にはリンクルンが握られている。
「ここは引いた方が良さそうだね。この借りは必ず返させてもらうよ」
「クッ、待て!」
イースは一瞬サウラーを追いかけようとして、踏みとどまった。
今は、傷付いた二人の介抱が先だと思ったからだ。
簡単にラブに事情を話す。ラブもまた、イースに経緯を伝えた。
ラブは時間が遅いため留守番していたが、連絡が途絶えたので見に来たらしい。
イースは変身を解除して、あゆみの介抱に当たる。
ラブは圭太郎を看た。すぐに目を覚まし、特に怪我はないようだった。
あゆみは頭に小さな傷を負っていた。濡らしたハンカチを額にかけたら気が付いた。
「おばさま、大丈夫ですか? 傷は痛みますか?」
「せつなちゃん! 怪我はない?」
「怪我をしてるのはおばさまです。でも、ありがとう」
「そう、良かった」
「僕は無事だ。もちろんラブもね」
「もう、おかあさん。心配したんだから!」
せつなは丁寧に圭太郎とあゆみにお礼を言ってから、背を向けて去ろうとする。
その手がしっかりとつかまれる。それも予想していたことだった。
払おうと振り返り――――そのまま抱き寄せられた。
その手はラブではなく、あゆみだった。
「おばさま?」
「家にいらっしゃい、せつなちゃん」
「そうだ、行くところがないなら家に来るといい」
「せつな……お願い!」
理性が拒絶を命令する。
自分にはそんな資格はない。断るべきだと。
でも、温かかった。
抗えないほどに、心地良かった。
突き放すなんてできないほどに、嬉しかった。
「私は、幸せになっては、いけないような気がするんです」
「そんな子いないのよ。ひとつひとつ、やり直していけばいいの」
あゆみは、さらにせつなを抱きしめる腕に力を入れる。
決して離さない。そう主張しているかのように。
せつなの髪に顔をうずめるように、頭を寄せてくる。
汚れているはずなのに、そんなこと気にする風もなく、強く――強く――――
「はい」
せつなは、たった一言だけ、そう答えた。
そして、あゆみの腕の中で泣き崩れた。
その日から――――桃園家に新しい家族が加わった。
最終更新:2011年02月06日 15:10