五月乙荘の暦日和

   不思議な苗字の普通の女の子達のお話。


 五月某日。
「五月乙荘にようこそ。あなたがひつきさんね。ええっと」
「あ、違うんです! 日付の日にお月様の月でたちもりといいます! 五月乙さんってこのアパートのお名前そのままですよね。ぴったりで素敵な苗字だなって思っていたんです!」
 ところで。
 郵便受けに並べられた漢字を見た私は首を傾げた。
「このアパートでは誕生日を郵便受けに書くんですか? 変わったところですね」
「違いますよ、このアパートに済む皆さんの苗字なんです」


204号室
八月晦日
203号室
十二月晦日
202号室
八月一日
201号室
十二月一日
200号室
五月乙(管理人室)
104号室
六月一日
103号室
五月九日
102号室
日月
101号室
四月一日






日月 陽葵(たちもり ひいろ)
 102号室に引っ越してきた高校二年生の女の子。誰とでも仲良くなれる明るい性格の持ち主で敬語は建前。抜けた話し方をする。
 焦げ茶の綺麗な髪を短く二つ結びにしている。

四月一日 実(わたぬき みのり)
 101号室の小柄な女の子。高校二年生で千秋高校に通っている。ヌイグルミが大好きで部屋の中はファンシーな壁紙を初めかわいい小物とヌイグルミで覆われている。日月さんのことを知っていたらしい。

五月九日 小峯(つゆり こみね)
 103号室の住人。高校1年生で千秋高校に通っている。背の順は常に一番前。このアパートにいる幻の男の子に恋をして追い続けている。

六月一日 愛(うりはり あい)
 104号室の住人。15歳の高校1年生でで千秋高校に通っている。
 秘密事があるらしく、家には絶対に入れてくれない。背が小さく気も小さいために追い詰められると顔を真っ青にして縮こまってしまう小動物基質。

六月一日 未(うりはり まい)
 104号室のもう一人の住人。一人暮らし用とはいえ住民登録もせずに匿われていた。中学三年生だが不登校をしている。姉と瓜二つで女性的な顔立ち、変声期を迎えなかった声など見分けがつかない。姉より少しだけ気は強いがそれでも強者を察知して隠れる臆病者。

五月乙 小百合(さおとめ さゆり)
 このアパートの管理人。玄関上の200号室に自宅がある。おっとりとしたお姉さんで、歳は23歳。親からぽんと任されてしまい困っていたところ、当時からの住人だった十二月一日さんから「女子学生だけのアパートにしてしまえば?」という提案を受けて承諾。大家としてよく働いている。

十二月 一日 蕾華(しわすだ らいか)
 201号室に居座っている住人。今いくつか分からないけど兎に角大学生なお姉さん。豪快で姐御基質。なんとかなるさでなんとかなるからすごい。イベント事が好きなため、五月乙さんと一緒に何か企てては全員で楽しもうとする人。

八月 一日 いお(ほずみ いお)
 202号室の住人。大学二年生で右も左も分からなかった日月さんをお世話してくれた一人。毎朝走っていたり夜遅くまで帰ってこなかったり、休日は必ず外に出たりと活動的な人。多趣味らしく部屋の中はいろんなジャンルのものでうめつくされている。

十二月晦日 朔良 (ひなし さくら)
 203号室の住人。文系なあの子。髪を弄るのが好きなので綺麗な黒髪を長く伸ばしている。俗にいうツンデレ属性で凄く口下手。メールや文でなら素直で綺麗な言葉遣いをするのになんでと疑問を持たれている。

八月晦日 望月(はつみ みづき)
 204号室の住人。理系なあの子。ボーイッシュで背も高く体つきもしっかりしているために男物の服を好んで着ている。口下手な十二月晦日さんのいい通訳係で、文面になると酷く難しい文を書いてくる不思議な人。





最終更新:2016年10月25日 11:50