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 龍賀沙代という人物の評判を一言で表すなら、『大和撫子』という言葉を誰もが挙げるだろう。



 戦前から続く大地主であり、画期的な医薬品の開発で戦後で疲弊した日本を支え高度経済成長期を迎えさせた、戦後の立役者とまで言われる名家。
 一時は国政をも左右する立場にも置かれた特権階級の子女でありながら、その気質は穏やかなるもの。
 自らは目立たず慎み深く、他者への理解は欠かさず常に細やかに気遣う。
 偏見や立場を理由にした差別をよしとしない、別け隔てなく優しく接する心の持ち主だ。
 それでいて尊き血筋としての佇まいを崩さぬ楚々とした所作は、天上から降りた花の如し。
 普段から和服を好み、現代の風流に迎合せず古式ゆかしい作法を通す様が、いっそう独特の典雅さを引き立たせる。
 夫の影踏まず、三歩後ろをついていくの体現であるような貞淑さ。
 旧態然とした差別意識の表れと取られかねない姿勢も、当人に卑屈さがなければこうも印象が違って見える。
 その上器量よしときて、それに驕らず日々研鑽を欠かしているのだから、貴人の鏡と言う他ない。

 社会勉強の一環で地元から離れ、経済の中心地である東京での一人暮らし、家の庇護から遠ざけられた世間の荒波にも、沙代の顔に影が差す事はなかった。 
 勉学に励み、友人と朗らかに談笑し、身の回りの家事雑事にも精力的に取り組んでいき、それらを全てそつなくこなしていく。
 まさに将来を嘱望された若き才女であり、淑女かくあるべしと手本にされる、理想的な女性であった。


「本当に沙代さんは素晴らしい方ね」
「凄く優しくて」
「あんな大きな家なのに全く偉ぶったりしないもの」
「こんな私達にも良くしてくれるの」
「よほど家の教育が行き届いているのね」


「……やめてください」


「それに凄く綺麗」
「化粧なんて殆どしてないんですって」
「天然で髪や肌って、あんな美しくなるんだ」
「きっと小さい頃から家でやってる特別な美容法があるのよ」


「私、そんなに綺麗じゃないんですよ」


「ああ、沙代さんと結婚できる人が羨ましい」
「どんな人なのかしら」
「そりゃあ龍賀だもの、釣り合うぐらいの格のあるぐらいでないと」
「有能な人を婿養子に迎える為に、って線もあるかも」
「いっそ好きな男と駆け落ちとか?」
「やだ意外と情熱的?」


「私……悪い女なんです。許されない事をされてきて、許されない事をしてきました。身も心も穢れてるんです」


「やっぱり沙代さんは素敵ね」
「沙代さんは綺麗ね」
「沙代さんは清らかだ」
「沙代さんは乙女だ」
「沙代さん、好きだ」
「沙代さんは」
「沙代さんは」
「沙代さん」
「沙代さん」 
「沙代さん」
「沙代さん」
「沙代さん」
「沙代さん」
「沙代」



「だから……やめて下さい」



「まあ」

「けっきょく、全部夢(ウソ)なんだけどね!」



「私を……………………これ以上、見ないで」



 ◆


 日も沈みきった時分を見計らって、沙代は外に出た。

 音もなく部屋から抜け、住まいである寮の門を越える。
 寮には防犯用のカメラが置かれ、警備員も巡回している。電子キーで施錠された門を開けるには管理人からの許可が必要で、敷地内の塀には飛び越えられるような高さではなく、よじ登るだけの窪みもない。
 にも関わらず、沙代は外へ脱出していた。誰にも気づかれず、何の苦労もなく。
 自由に空を飛び回れる翼でもない限り不可能な行動は、沙代の背にも同様の機能がある事を意味する。

 ただしそれは翼ではない。壁を越えて跳躍する脚でもない。
 何しろそれに翼どころか脚もなく、そして皮も肉も張り付いていない。
 なのに重力の制約をなきものにして中空を浮遊し、自在に移動をしている。
 血肉の削げ、襤褸を纏った下半身の無い白骨死体が、沙代の肩を掴み飛んでいる。
 万人にある安易な幽霊のイメージが陳腐に映らないのは、紛れもない現実だからに他ならない。


 やがて地面に降り立った沙代がいるのは、寮より一地区ほど離れた公園だ。
 休日の昼には花見目的で家族連れの集団を収めるだけの広さと木々の数が両立した空間。
 深夜になれば誰一人残らず、森の覆いに姿を潜められるここを、沙代の引き連れる従者を実体化させる場所に決めていた。
 万全を期するなら、近くにある物置小屋や小売店の奥にでも忍び込めばより見られる危険もなくなるのだが、自重している。
 それだけ沙代の召喚した英霊は異様な外見であり、そして容易に身を隠せないほどの体躯を誇っていた。

「ライダー、出てきてください」

 呼び声に間を置かず応じて現れるサーヴァント。
 実体化して出来た影は少女を優しく包み込むように明かりを遮断して、沙代を更なる暗闇に落とす。
 手足を地に着けた跪いた態勢であるのに、ほぼ垂直になるまで首を上げなくては顔すら窺えない。
 赤子と父親でもここまでの身長差は出ないだろう。森の中という状況も相まって、沙代は熊と対峙しているような錯覚を覚えた。
 だが脅威の程でいえば、それは人と熊どころの差ではない。
 腕を振り抜けば人間の顔面を剥ぎ取る爪も、腹腔を食い破り腸を引きずる牙も、この巨人には通じはしまい。武装など必要とせず、張り手の一発を食らわせただけで即死に至らしめる。
 未だ、己のサーヴァントが戦う様を目にした事のない沙代には、彼がどれだけの強さなのか判然としていない。
 疑いようのなく屈強で強靭な肉体であるのは見ての通りである。圧倒的な身長と体重を掛けた数値は、生半な神秘という曖昧な幻想を凌駕して叩き伏せる現実だ。
 その上で……沙代がライダーと呼ばれる英霊に抱くのは頼もしさよりも、痛ましさであった。

 英雄というにはあまりに見窄らしい、襤褸同然でしかない薄衣。
 召喚された当初からその身体は負傷だらけで、見た目だけならばもう満身創痍だ。
 傷口から溢れる血液と露出した肌からは、人間とは完全に違う種類の油の臭気と、銀色の繊維。
 全身が切り裂かれ、焼け焦げた全身に突き刺さったままの刀剣が、彼を歴戦の兵士ではなく、敗走した落ち武者として映している。

 剛勇とも絢爛とも程遠い、戦死者の墓標が積み重なって人の形を成したような悲壮さ。
 偉業を達成した栄光や、救国を果たした信仰といった、英雄に纏わる「称賛」の念が、沙代には一切感じ取れない。
 恐怖や戦慄よりも先に沸き立つ、哀れみの感情。
 ライダーを見るたび、沙代は常にそんな思いに駆られている。
 どのような戦争を経験して、どのような悲劇を体験すれば、こんな人でなくなった姿に貶められてしまうのか。ここまで人は、奪われる生き物なのかと。


「ライダー、私は決めました」

 胸中の蟠りをおくびにも出さず、毅然とした態度を維持した。
 至らぬ身で幾ら案じようともライダーの過去が変わるわけでもない。
 今の沙代はマスター、彼の主だ。過去の英雄の御霊を傍に控えさせる以上、それに足るだけの器を示さなければならない。

「この戦争で……私は戦います。
 御国の為でなく、龍賀の為でなく。私を知る者が誰一人いないのでしたら、ただ私自身の為だけに戦いましょう」

 成人もしていない年頃でありながら、参戦の意志に臆する震えは見えない凛とした振る舞い。 
 領域内で再現された街の時代と、沙代の生きた時代には、大きな隔たりがある。
 半世紀前の人間とは、戦という概念との距離感がまず違う。
 約七十年前───二度目の世界大戦で敗北し、立ち直るべく奮闘する高度経済成長期の黎明の人間だ。

 無用な戦は好まない。しかし争いが避けられないのならば立ち向かうべし。
 常在戦場とはいかずとも、昭和の女である沙代の価値観は、帝国軍人が掲げた気風の名残りがある。

「ライダー。あなたは私を守ってくれますか? 一緒に戦ってくれますか?」

 それは本来なら確認するまでもない、当然の契約。
 マスターはサーヴァントを戦わせなくては聖杯を手に入れられず、サーヴァントはマスターがいなくては聖杯を得る事が出来ない。
 一蓮托生の関係性だからこそ、人と英雄の共闘は成り立つのだ。
 気づけば脳に装填されていた知識を承知で、沙代はライダーに問いかけた。ある疑問を、解決する為に。

「御主人サマの、仰セの通リニ……」

 跪いたまま、恭しく頭を垂れるライダー。沙代の胴ほどもある頭部が目の前にまで落ちる。
 英雄の誇りの欠片も見当たらない姿勢、ただそこには権威や情欲を目当てにすり寄る卑屈さは見られない。ある筈もなかった。
 誇りや卑しさといった"感情"の発露自体、この巨漢の何処を探しても存在しないのだから。


「ライダー……あなたに、願いはありますか?」
「御主人サマの、仰セの通リニ……」 


 繰り返す。


「あなたは、私を裏切りませんか?」
「御主人サマの、仰セの通リニ……」 


 繰り返す。


「あなたは、私を醜いと思いますか?」
「御主人サマの、仰セの通リニ……」 


 最期の問いを、繰り返す。


 沙代は理解した。
 ライダーには、人の心が入っていない。

 始めからそうだったのか、今の格好にされた時の環境でそうされたのかは、分からない。
 現在のライダーは道具……兵士の扱う銃に等しいのだろう。その異形と破壊の規模を思えば、戦車の方が正しい喩えかもしれない。
 使った者の意志を問わず、善悪を構わずに、入力された命令を実行する殺戮機械。
 撃てと命じれば即座に銃を撃つ。殺せと命じれば躊躇なく殺す。
 どれほど残酷でも無意味でも何の疑問も抱く余地もなく。是非を突きつけられるのは命じた所有者のみ。

 ライダーは沙代に忠誠を誓って従っているのではない。
 個人の秤は介在しない。誰であろうが、マスターと認定されたら常に同一の反応で『稼働』するのだ。
 ミサイルの発射スイッチを持つ者の違いで、ミサイルの性能が変わったりしないのと同じように。
 故に───沙代が何者であるかなど、どうでもよいことなのだ。


 そこまで理解して、沙代は顔を伏せてライダーから目を逸らした。
 俯き、項垂れ、一無での風で揺れる木の葉の輪唱が木霊していき……やがて、低くくぐもった声を出して唇を弧に変えた。



「……ふふ」



 薄い、笑みの形に。


「ふふ、ふふふ……!」

  ──────ああ。やはりここは地獄なのだ。
 背後から刺され燃え上がり、骨灰となって死んだ沙代が、どうして生きているのか。
 冥府という、戦争の舞台についての説明をされてからの疑問に、全て得心がいった。

 あの悪夢は、まだ続いたままだ。
 哭倉村という、毒蟲の詰まった壺。
 片田舎の因習では到底収まりきらない、悪意と呪いで練り固められた底なしの泥沼。
 そこから逃れたつもりになっても、身に染み付いた穢れが沙代を離さない。刻まれた呪いは解かれない。

 現に沙代は既に、呪いを行使している。
 醜く汚れた叔父と叔母に、実の母。残らず串刺しにした一族の血で全てを終わらせた。
 そうして壺から出たところで、毒蟲は毒蟲。安寧に微睡む休みが待つ筈もない。
 むしろ淘汰して生き残った蟲には他の蟲の怨毒が乗り移り、より腐臭を増していくだけ。

「あははは……! そう……結局、逃げられないのね……龍賀からも、あなた達からも……!」

 腰を曲げ狂い笑う。
 脊髄を駆け巡る甘美な絶望がおかしすぎて耐えられない。
 粗相をしたところで咎める者など誰もいない。叱りつけてくれる相手もいない。傍にいるのはただの道具だ。
 ならどれだけ無様を晒してもいい。清純な乙女を装う必要もない。

 ───背中に骨だけの手を置く、怨念の顕。
 沙代の死に引きずられ、共に冥府にまで彷徨う業を追った呪詛の魂。
 妖怪・狂骨も、沙代の笑いに呼応するようにカタカタと震えている。
 最早怨みの標的を忘れ、見境なく取り憑く悪霊に堕した証なのか。それとも少女に何も届けられない自らの慟哭なのか───。  

「あははははは……………!」

 止めどなく流れる涙に構わず、沙代は笑い続ける。
 死後までも苛まれる罪悪に。
 自分を救い出してくれる運命などではなく、自分と同じ囚われの人形を充てがわされた皮肉に。


 日本のある文豪の書いた小説を思い出す。
 地獄に落ちた男へ御仏が慈悲で垂らした一本の糸に、男以外の罪人が我先によじ登り糸が切れ、男と罪人諸共地獄に取り残される話だ。
 自分だけが助かろうと罪人に怒鳴りつけた事で糸が千切れ、欲得で救いを手放してしまった男の話。

 罪人達は救われたい一心で糸を登り、助かった筈の先頭の男をも巻き込んで機会を奪われてしまった。
 この戦争も同じだ。
 生き返りたい。やり直したい。必死の思いで一本の糸を巡って争って、先に昇った相手の足を掴みながら、最後には全員が真っ逆さま。

 きっと皆、帰りたい場所なんかない魂ばかりで、だからこんなところにまで来てしまった。
 ならば、私も堕ちてしまおう。
 誰も彼も巻き込んで、一緒に燃え堕ちてしまえばいい。
 今度こそ体も魂も荼毘に伏すよう、念入りに、念入りに。
 そうすれば、この身体に染み付いた穢れの痕跡も、消えてくれるだろうから。


「…………………………」

 いつまでも狂った笑いを止めない沙代を、ライダーは沈黙したまま眺めている。
 観測装置に継げ替えられた眼は、自身のマスターの認証を持つ者の生体情報が崩れてないのを確かめたきりその場を動かない。
 主に危害が及ぶか命令が下されない限り、彼が動く事はない。
 騎士が掲げる守護の誓約などと高潔さは無縁。あるのは塗り潰された自我の代わりに搭載されたプログラムのみ。
 それが今の彼の在り方。たったひとつの愛の為に己の全てを擲った、優しすぎた男の末路。
 国王。暴君。海賊。革命軍。父親。
 残らず捨て去られ与えられたものは"無敵奴隷"の称号。
 堕落した世界の王の末裔。形ばかりの貴族の玩具にされた慰みもの。

 バーソロミュー・くま
 この冥界で彼をそう呼ぶ者は、誰もいない。





【CLASS】
 ライダー

【真名】
 バーソロミュー・くま@ONE PIECE

【ステータス】
筋力A+ 耐久A++ 敏捷C 魔力E 幸運E 宝具B

【属性】
中立・中庸(本来は善)

【クラススキル】
王下七武海:─
 政府に協力することで手配を免れ、海賊の抑止力として機能する者達を示すスキル。
 海賊が持つ嵐の航海者スキルと、海賊を捕らえる罪人への攻撃力上昇効果を併せ持つ。

騎乗(奴隷):B-
 奴隷である今の彼は騎乗するのではなく「騎乗される」もの。
 何の才能も経験もない者だろうと快適に乗せて移動する。

【保有スキル】
バッカニア族:B
 遥か過去に大罪を犯した一族と伝えられている、既に絶滅していた種族。
 巨人の血を引くとされ、常人離れした屈強な肉体と怪力を備える。

パシフィスタ:A
 ───バーソロミュー・くまの全身に施された機械改造。
 鋼鉄以上の硬度、手足や口からレーザー兵器等を搭載した人間兵器をパシフィスタと呼ぶ。
 肉体から脳に至るまで全身に改造を受けたくまはバッカニア族の特性も合わせて、人の身では絶対に不可能な耐久のランクに到達している。

無敵奴隷:─
 世界政府の犠牲の象徴。狂気の表れ。
 バーソロミュー・くまの人格は機会化改造の最後に消去され、世界貴族・天竜人の奴隷に身を落としている。
 バーサーカークラスの狂化スキルに似てるが、暴走のリスクがある狂化と違い、こちらはマスターの如何なる命令にも無条件で従い、実行する。
 また「奴隷は主人から徴収しない」理屈により、マスターからの魔力提供を必要としない(現界の要石を示すパスは必要)。
 戦闘に必要な魔力は霊基に負荷をかける事で捻出する。通常の英霊で即座に霊核が砕けるが、バッカニア属の強靭な肉体でなら長時間耐えられる。

ニキュニキュの実:A
 食べた者に様々な能力を与える代償に海(流水)に弱くなる体質になる悪魔の実、その内の超人系(パラミシア)に属する能力。
 掌にある肉球があらゆるものを弾き、吸収する。
 大剣豪の斬撃を柔らかく受け止め、大陸を隔てた距離まで相手を弾き飛ばす。空気といった不可視の物質、疲労や痛みという形のない概念にも作用する。
 こうして飛ばした肉球状のエネルギーは、誰にも与えない(攻撃しない)まま放置すると元の持ち主に還っていく。

守護の誓約:A+→D
 陣地防衛に対してプラス補正。自陣メンバー全員の防御力を上昇させる。
 聖人と呼んでも差し支えない博愛精神を持っていた頃のくまにとって、自陣とは目に映る人全てに等しい。
 無敵奴隷となり本来なら完全に消失しているスキルだが……どういうわけか、低ランクながら維持されている。

【宝具】
『無慈悲なる鋼鉄の平和主義者(パシフィスタ・マリンズデスマーチ)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1~30 最大捕捉:1体につき20人
 くまのデータによって造られたパシフィスタは人造人間として量産され、海軍の新たな戦力に投入された。
 マスターから命令される事で真名が解放し、パシフィスタの軍団を魔力の許す限り召喚する。
 この宝具だけはマスター自身の魔力を消費する。

『熊の衝撃(ウルススショック)』
ランク:C+ 種別:対軍宝具 レンジ:1~50 最大捕捉:300人
 ニキュニキュの能力で周囲の大気を圧縮し弾にして放ち、極大の衝撃波を発生させる。
 反動が大きいのである程度の距離を空ける必要があるのを、くま自身の頑健さでリスクを踏み倒している。

【weapon】
 パシフィスタの肉体、ニキュニキュの実、全身に搭載された兵器

【人物背景】
 死んだ方がいい世界に生まれてきた男。
 誰も憎まず、誰をも愛し、最も愛すべき者の為に本当に全てを捨てた、ある父の末路。

【サーヴァントとしての願い】
 ……………………。

【マスターへの態度】
 仰セの通りに御主人サマ……。



【マスター】
 龍賀沙代@鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎

【マスターとしての願い】
 救い出してくれる運命の人……そんな人はいなかった。ならせめて自分の中の穢れの痕跡を消し去りたい。

【能力・技能】
『狂骨』
 井戸に捨てた死体の無念から生まれる妖怪。
 龍賀に仕える裏鬼道衆は、ある妖怪を一族尽く捕らえ狂骨を生ませ、閉じ込めた結界でその怨念を呪詛返しする事で強力な狂骨を生み出していた。
 ■■■■により一族の血の濃さを維持して生まれた沙代には高い霊能力の素質があり、
 練達である裏鬼道の術者の呪具を介した巨大な狂骨を、逆に使役して(あるいは、狂骨に憑依されて)凶行を繰り返していた。
 狂骨と犠牲者の無念は、今なお沙代に憑いている。

【人物背景】
 泥だらけの手を取ってくれる運命のいなかった女。
 全てを呪うには優しすぎ、全てを受け入れるには侵されすぎた、どこにでもいた少女。

【方針】
 戦後の生まれだけあって殊更に戦いを忌避したりはしない。
 ……既に殺人が選択肢の中に入り込んだ今は倫理が崩れかけており、邪魔者の排除に躊躇がなくなってしまっている。


【サーヴァントへの態度】
 忠実な人形。絶対に自分を裏切らない従者。
 哀れみを抱くと同時に、それを引き当てたという皮肉に自虐している。

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最終更新:2024年04月20日 22:54