月のない夜の事だった。
新月という、月輪が夜天から完全に消え去る日であり、尚且つ、空は盈月の光ですら地に届かぬ程の、分厚い雲に覆われていた。
そんな夜は、きっと人外化生が跳梁する。
人にとって────陽光の恵みを受けて生きる全てのものにとって、よくないものが現れる。
正邪善悪を問わず、法のもとに生きる者も、法の外に生きる者も問わず。誰もがそんな不吉な事を考えてしまう。
ある者は下らぬ妄想と笑い。ある者はそっと愛しい誰かを抱きしめる。
そんな夜だった。
灼熱の炎と、凍てつく吹雪が荒れ狂う。
狂風が吹き荒び、雷が夜闇を切り裂き空気を震わせる。
人が居ない。獣が居ない。虫が居ない。
街という、人が住み、日々の営みを行う場所が、鬼哭啾々たる,人はおろか生物が立ち入らぬ荒野の如き有様を示していた。
「ああ…やっぱり本物の人間は旨ぇよなぁ。エヌピーシーってやつは、味がイマイチ薄かったからなぁ」
闇が動いた。こんな声を出す者の傍には居たくないと。闇すらが逃げ出す声。人の持つ悪性を練り固め、音とすればこんな声になるだろう。そんな声。
「ククッ…。こんなもんかよ英霊ってのは、ヒュンケルに比べりゃ、雑魚と呼ぶにも値しねぇ」
闇が震えた。声に含まれた比類無き暴性に怯えたかの様に、闇すらが震える声。人の持つそれとは根本からして異なる“暴”。
事の起こりは10分と少し前。鎬を削る二騎のサーヴァントと、二人のマスター。この冥奥領域、冥界に存在する東京では、珍しくも無い光景だった。
そこに乱入して来た主従もまた、珍しくは無いだろう。
珍しいのは、主従ともにヒトの形をしておらず。
その強さが、破格であったという事だった。
高いステータスと対魔力を誇るセイバーは、近付いただけで火傷を負いそうな、燃え盛る炎の左半身と、触れただけで皮膚が裂け、鮮血を噴き出しそうな右半身を持つ異形と対峙した。
異形の放つ魔術の炎弾を、対魔力で寄せ付けず、口から吹き付ける氷雪にも耐え、瞬時に肉薄し剣を振おうとしたセイバーは、異形が五指から放った五つの炎弾により、全身が炭化して息絶えた。
人を超えた身体能力を持つのがサーヴァント。その中に於いても最速を謳われるランサーのクラスを得て現界した神速の英霊。
それが、三振りの刀身を鼻面から伸ばした漆黒の獣の影すら捉えることが出来ずに、全身を爪と刃で斬り刻まれ、世界を白く染めて落ちた雷に撃たれて微塵と砕けた。
後は単純な話だ。戦場に立つマスターから、屠殺場に引き出された豚へと立場が急転直下した二人のマスターは、二つの異形に嬲り殺され、そして獣の“エサ”となった。
「こっちの奴は魔術師か。魔力のある人間ってのは旨ぇなぁ」
獣が嗤う。サーヴァントを従えていた時の選民面が崩れ、涙と鼻水と糞小便を垂れ流しながら命乞いをした男の姿を思い出して。
「セイバーよ。さっきのサーヴァント共はどうだった」
氷炎の異形────
フレイザードは、愉しげに嗤う己がサーヴァントへと尋ねる。
魔界の神とも称される大魔王バーン。その麾下の六大軍団長の一角として、己が従えるサーヴァントには、あの程度の雑魚は歯牙にも掛けない強さを、フレイザードは望んでいた。
多少なりとも、あのセイバー程度と互角だったランサーを認める様ならば、フレイザードは落胆と共に、縁切りを考えただろう。
「弱ぇ。あの程度なら、俺が殺してきた字伏共の方が、まだ楽しめたぜ」
獣は嗤う。人の身に余る偉業を成し、人を超えた存在へと昇華されたサーヴァントをして、問題外だと嘲り笑う。
獣の名は紅煉。嘗て居た世界に於いて、世界そのものを滅ぼし得る大妖を除けば、最強であった獰悪の獣。
人も妖も寄せ付けなかった凶猛さを以って、英霊を問題にもならぬと嘯き、それが虚勢でも嘘偽りでも無い妖。
「ククク…それなら問題ねぇ。あんなゴミを少しでも認める様だったら、外れを引いたとガッカリしちまうところだった」
フレイザードは笑う。此処での初戦で試した紅煉の強さは本物だと確信して。
これならば聖杯を穫れると。フレイザードはサーヴァントを相手取っても、己が負けるとは思っていないが、万が一という事も有る。
サーヴァントがマスターよりも遥かに強いというならば、六大軍団長のフレイザードがマスターとしている以上。サーヴァントには軍団長に比肩する者が居てもおかしくは無い。
その懸念は、紅煉が示した強さにより確信となった。このサーヴァントは、フレイザード達六大軍団長に匹敵し得る。
そして、紅煉の様な強者がサーヴァントとして他にも召喚され、聖杯を求めて、この冥奥に牙を研いでいるかも知れぬ。
フレイザードが単体であれば、苦戦は必至。或いは敗北するかも知れないが、紅煉が居れば話は別だ。
軍団長級が二人ともなれば、フレイザードの上に立つ、魔軍司令ハドラーであっても苦戦は免れない。
ましてや、人間などでは、例えサーヴァントといえども勝負にもなりはすまい。
紅煉を召喚した時点で勝利は確実。万能の願望機である聖杯を手に入れ、大魔王バーン様に捧げれば、フレイザードの勲は誰もが及ばぬものとなる。
「俺もだぜマスター。あんな弱ぇ奴等に、少しでも苦戦するようなら、縁切って別の奴探すところだったぜ」
紅煉は喜悦に顔を歪める。口が耳まで裂けて、地獄へと通じる深淵を思わせる口内が見えた。
このマスターは“当たり”だ。強さでも魔力量でも一級どころではない領域。そして、性格の悪逆無道さ。
己を使う者として、認めるにやぶさかでも無い。
これならば、紅煉は聖杯を穫れる。聖杯に願い、黄泉返って、紅煉への復習を果たしたと安堵している鏢を嘲りながら、鏢が守ろうとした女と子供(ガキ)を眼の前で嬲り殺してやれる。
標の絶望と憤怒を思い、クツクツと紅煉は笑った。人の心の内に在るドス黒いモノが、口から濁流となって流れ出しそうな笑みだった。
遠くから耳障りな音が近付いて来るのが聞こえた。爆発音を派手に響かせ、挙句に落雷まで起きたのだ。不安に駆られた近隣住民達から複数の通報を受けた警察が出動するのも当然と言えた。
「人間共が、ワラワラとやって来やがったぜ」
フレイザードが凶悪に笑い。
「どちらが多く殺せるか、勝負してみるか。マスター」
紅煉が獰猛に牙を剥く。
「おお、良いぜ」
応じたフレイザードが眩く輝く火球を放ち、近付いて来た車列の、先頭のパトカーを爆発炎上させた。
「やるじゃねぇかよお!!」
負けじと紅煉が右腕を接近して来る音の方へと向けると、数十条の稲妻が放たれ、数台のパトカーが爆発炎上する。
突如起きた惨劇に、車を停止して、パトカーから降りた警官達へ、暴悪の主従は悠然と歩き出した。
【CLASS】
セイバー
【真名】
紅煉
【属性】
混沌・悪
【ステータス】
筋力: A+ 耐久:A + 敏捷: A+ 魔力:B 幸運: C 宝具:B+
【クラス別スキル】
対魔力:A
A以下の魔術は全てキャンセル。
事実上、現代の魔術師ではセイバー に傷をつけられない。
騎乗: ー
騎乗の才能。『何かに乗った』という事が無い事と、セイバーの体型的に騎乗という行為に向いていない為に機能していない。
代わりに高ランクの飛行能力としての効果を持つ。
【固有スキル】
字伏:A+
字伏と呼ばれる極めて特殊な妖(バケモノ)としての格を表す。
セイバーは字伏と呼ばれる妖(バケモノ)の中でも、最強の存在の為このランク。
極めて高ランクの天性の魔、怪力、再生、魔力放出(風雷)の効果を持つ複合スキル。
怪力の効果は破格であり、人の身では到達不可能な領域。身体能力のみで宝具に迫る。魔力放出(風雷)の威力は凄まじく、並の対軍宝具に匹敵する。
戦闘続行:A
往生際が悪い。
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。
加虐体質:B+
戦闘時、自己の攻撃性にプラス補正がかかる。これを持つ者は戦闘が長引けば長引くほど加虐性を増し、普段の冷静さを失ってしまう。
攻めれば攻めるほど強くなるが、反面防御力が低下する。
カリスマ:D
軍団を指揮する天性の才能。団体戦闘において、自軍の能力を向上させる。
精神異常:A
精神が錯乱しているため、他の精神干渉系魔術をシャットアウトできる。ただし、同ランクの精神汚染がされていない人物とは意思疎通ができない。
ギリョウさんの声もガン無視できる。
【宝具】
破妖霊刀
ランク:B+ 種別:対人宝具 レンジ:1~10 最大捕捉:1人
人間が白面を滅ぼす為に鍛えた三振りの霊刀を
白面の者が奪い、紅煉に与えたもの。現在は刀身だけが紅煉の鼻面にブッ刺さっている。
純粋な刀剣としての性能も高いが、最強の大妖である白面の者を滅ぼすためのものである事から、魔性に対する特攻効果を持つ。
更に魔性に対する再生阻害能力も有り、この刀で斬られた魔性がAランク以上の再生若しくはそれに類する能力を持たぬ限り傷が塞がらなくなり、斬られたものが魔に属する場合、傷口が融解していく。
喋ったり何か食ったりしたら舌切れるんじゃね……………?細かいことは気にするな。
黒炎
ランク:C 種別:対軍宝具 レンジ:聖杯戦争のエリア全域 最大捕捉:1000人
紅煉が魔力を消費して身体から産み出す妖(バケモノ)。
サーヴァントに換算した場合、筋力: C 耐久:C 敏捷: C 魔力:C 幸運: Cのステータスと、魔力放出(風雷):C 怪力:C のスキルを有する。
強化型として、妖気を収束して光線として撃つ『穿』及び、突き刺さると根を張り、対象をその場に縫い止める『千年牙』を持つ黒炎も生み出せるが、魔力消費は多め。
最終決戦時に麻子の親父に殴り倒されていた…………?都合の悪い事は忘れろ。
数の暴力で人類最強候補の凶羅さん仕留めてたでしょ!!
【Weapon】
破妖霊刀
【人物背景】
元々『捉影』という名の人間が、獣の槍を得て、そのまま槍に魂を梳られて獣と化したもの。
なお人間だった時から、人間殺すよりも獣の槍使って妖ぶっ殺す方が楽しいと語っており、真正の悪人である。
その邪悪極まりない性状を白面に見込まれ、スカウトされて、白面について妖怪や同族の字伏を殺しまくる。
通常、獣の槍に魂を梳られて獣となってものは、槍の持つ白面の者への怨念に支配されるのだが、此奴は全く気にせずに白面の手下をやっている。
配下の黒炎達の指揮統率をそつなくこなしているが、どこでそんな技能覚えたのかは不明。
復活した時に、ある家を襲い、その時に妻と娘を喰われた男の、命を賭けた呪法により死亡。
【聖杯への願い】
復活。自分を殺した鏢の前に甦って、鏢が守ろうとした母娘を鏢の眼の前で殺して喰う。
【マスターへの態度】
気は合うし、魔力実力共に申し分ないので、言うことを聞く事にしている。
【マスター】
フレイザード@ドラゴンクエスト ダイの大冒険【マスターとしての願い】
復活。聖杯をバーン様に捧げる【能力・技能】
炎と氷の呪文や息吹(ブレス)を行使する。
メラゾーマ五発を同時撃ちする五指爆炎弾や、自身の体を弾丸とする氷炎爆花散
全身を砕いて無数の岩の塊となって、敵を滅多打ちにする弾岩爆花散といった技を用いる。
【人物背景】
魔軍司令ハドラーが禁呪法を用いて創造した人造生物。誕生して一年しかない為に勝ち続ける事でしか己を証明出来ない為に、勝利と栄光への周年は凄まじいものがある。
炎の凶暴さと氷の冷徹さを併せ持ち、粗暴な言動とは裏腹に、狡猾で頭が切れる。
参戦時期は死亡後。
【方針】
サーヴァントが二騎居るようなモノなので、力尽くでゴリ押しも出来るが、敵を見定めて確実に勝てる相手を襲い、手強ければ勝てる状況を作る。
【サーヴァントへの態度】ウマが合う上に軍団長に比肩し得る強さな為に文句の付け所が無い。
最終更新:2024年04月23日 06:29